二次創作小説(新・総合)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】完
日時: 2019/06/06 18:55
名前: 内倉水火 (ID: Re8SsDCb)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12396

御尻川おしりかわスウィーツ様及び御友人の皆様
 この度皆様を、本日開業の音楽クラブ、ハウスオブ音羽おとわに御招待致します。
                       ハウスオブ音羽 支配人』

「ねぇ皆、これ見てよ!」
そう言って招待状を差し出したのは、受け取った張本人であり、竜宮小7年C組の学級委員、御尻川スウィーツであった。
クラスメイトである松田名作まつだめいさく、ウィンドウズノキオ、団栗林どんぐりばやしむすび、F・ボルト、そして今年入学したばかりの1年生、上井うえいつるこうが、スウィーツの手に握られたその仰々しい紙を見つめる。
「は、ハウスオブ音羽?」
「うん」
「めっちゃ高そうです…」
「大丈夫! この招待状が有ればタダで入れるんだよ!」
「「えぇ!?」」
スウィーツの爆弾発言に、残る5人の驚きの声が重なった。
「何故だ! 何故タダだ! 答えろ貴様!」
やたらと筋肉質な亀のボルトが、声を震わせる。
「何か脅迫してるみたいだぞ!?」
ツッコミ役の名作はボルトにツッコミを入れながら、内心こう思っていた。
_ディ○ニーに怒られる…!

Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.23 )
日時: 2018/11/17 13:54
名前: 内倉水火 (ID: GbhM/jTP)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

【お久し振りのバンド組パートです。本編を知らない方には分かりにくい話も有るかも知れません。by筆者】

***

あんなに冷めきっていた観客達が、今はアトラクションで夢中になって遊んでいる。子供は勿論、大人さえも無邪気な笑い声をあげてはしゃぐ。
__此処までテンションの落差が激しいパフォーマンス、今まで有ったか?
騒ぐ人々に紛れて、子卯辰巳のボーカル、墨野継義は思う。彼は間もなく訪れる出番に備え、メンバー達と共にスタンバイしていた筈であった。
しかし、今はこうして独り、夢のテーマパークの片隅に立ち尽くしていた。他の者のようにはしゃぐ訳でも、夜空に見とれる訳でもなく、只視界に広がる光景を見て、物思いに耽っている。
__そういや、憂城達は何処に行ったんだっけ。
継義はふと、脳裏に彼等の顔を思い浮かべる。会場があの光に包まれる瞬間まで一緒にいた筈のメンバーは、いつの間にかいなくなってしまっていたのだ。
きっとアトラクションを巡っているのだろうと考え、ジェットコースター、フリーフォール…と、順番に探していく。すると、
__いた。
継義の直ぐ側に有るコーヒーカップに、それらしい姿を見つけた。双子の長幸と剛保である。
2人はカップの1席に乗り込み、ぐるぐると回っている最中であった。弟の剛保が無理矢理連れて行ったのだろう、長幸は腕を組んでいて、あまり楽しそうではない。対する剛保はハンドルを何度も回して、げらげらと笑っている。そのせいで、2人を乗せたカップだけは異常に回転を増していた。
__巳のお兄さんだけ酔うパターンだな、あれ。
確かに、長幸は殆ど乗り物酔いをしない体質だったので、結末は見えているも同然であった。調子に乗って相手が酔うまで回し続けていれば、自分が酔ってしまう。
因みに、巳のお兄さんとは、剛保の呼び名である。
子卯辰巳というバンド名は、メンバー全員の干支からとられているらしい。継義は子、憂城は卯、長幸は辰、剛保は巳。
双子である長幸と剛保の干支が別れている理由は、継義にも分からない。バンドを結成した頃の記憶は、何故か殆ど残っていないのだ。きっと何かのショックで忘れてしまったのだろう。
そうこうしている内に、剛保の顔が青ざめてきた。吐き気もするようで、口元を手で塞ぐようにして項垂れる弟を前に、長幸はハンドルを逆方向に回す。ハンドルが回るにつれ、段々回転も収まっていった。
「…愚弟め」
と言うように彼の唇が動いたと思えば、そっと剛保の頭を撫でる。その時の長幸は、幸せそうな笑みを浮かべていた。まるで、弟の世話を焼くのが嬉しい事であるように。
一連の流れを見届けた後、継義は視線を外し、夜空に流れる旋律に耳を傾けた。
「願い事…か」
何故だったかは忘れてしまったが、継義は願い事を100程考えていた時が有った。いや、100には収まらない程の、無数の願い事を。
もしかしたら、その願い事は既に叶っているのかも知れない。どんなに些細な願いさえも。

Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.24 )
日時: 2018/11/20 19:16
名前: 内倉水火 (ID: pD6zOaMa)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

【バンド組に限らず、登場人物達の間での恋愛感情は無いつもりで執筆しています。しかしそれっぽく見えたら好きに解釈して頂いて構いません。by筆者】

「あっ、ネズミくーん! 探したよー」
双子を呼び戻す事もせずに、未だぼんやりと立ち尽くしている継義。其処へ、もう1人のメンバーである憂城が駆けて来た。本当に探していたのか、はたまたアトラクションで遊び惚けていたのかは分からないが、彼の額には白髪が一筋へばりついている。
ネズミ君とは継義の呼び名であった。干支の動物に因んで呼んでいるのだろう、憂城は長幸をドラゴン君、剛保をヘビ君としていた。
継義が憂城の顔を見てから、数秒の間が有った。丁度今考えていた事を彼に話そうか考えるのに、少々時間を要したのだ。
「…あのさ」
「何?」
結局切り出すと、相手は首を傾げる。声のあどけなさはまるで小動物のようだが、表情はそれとは違う、獣のような狂気が見え隠れした。
しかし、継義は尻込み等する事もなく続ける。
「この曲聴いてて思ったんだけど…あんたに願いって有る?」
人間味が有るのかどうかさえ怪しい彼に敢えて訊いた。彼の願い事でも叶うものなのか、継義は少し気になっていた。
__叶ってたら世界が滅びてそうだけどな。
質問の内容に驚いたのか、憂城は目をぱちくりと瞬かせる。それから顎に指先を添え、逆に質問を返した。
「ネズミ君のお願い事は何?」
「俺の願いは…数えきれない位だ。殆ど忘れちまったけど、どうしても叶えたい事からどうでもいい事まで、色々有った気がする」
質問した自分が逆に答える羽目になってしまった。
すると、対する憂城はにっこりと微笑む。
「じゃあ全部叶ってるんだろうね、君の願いも僕の願いも」
自分が考えた事と全く同じ事を言われ、継義はほんの少し目を丸めた。そもそも彼に叶えられるような願いは存在していたのか。
憂城は尚も笑って告げる。
「僕はね、ずっとお友達が欲しかったんだ」
誰にでも叶えられるような、純朴な願い事。それだけに、酷く切実に聞こえる。
継義が何か返そうとしたが、口を開きかけると辺りが眩しい光に包まれた。モーツァルトが何やら叫んでいる。ドイツ語なので意味は分からない。
__夢が覚める、か。
何となくそんな感覚を覚えた。そのまま、眩しさに目を瞑ってしまう。

彼は知らない。夢が覚める直前、憂城が酷く寂しげな顔をしていた事を。
自分が何を忘れてしまったのかも、勿論知る訳がなかった。

Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.25 )
日時: 2018/11/22 18:13
名前: 内倉水火 (ID: k9gW7qbg)

【無事にDas endeしました。名作&ビルド組、バンド組と来て、お次は音羽組です。by筆者】

***

夢の遊園地が消え去ってしまった後、会場には割れんばかりの拍手と歓声が響き渡った。あれが夢なのか現実なのかは、観客達には分からない。只、あれが素晴らしい楽曲と素晴らしい"神童"の手で作り上げられた至高である事は、誰の目にも明らかだった。
一瞬にしてファンになってしまったのだろう、幾人かの少女は必死に手を振り叫んでいる。その様子に、モツは満更でもない表情であった。ついにやけ顔になってしまうのを抑えて、営業スマイルを振り撒く。
『皆有り難う! まったねー!』
そう言うが早いか、あっという間にステージから姿を消してしまった。あれ以上立っていたら、堪えきれずににやけ顔を曝してしまうかもしれない。
舞台裏に戻ったモツは、備え付けのタオルで額や首もとを拭う。長時間タクトを振るっていたせいもあって、酷く汗をかいたのだ。タオルが自らの汗でびちょびちょに濡れてしまうまで拭いていると、1人の見知った娘が歩いて来る。
彼女は怒りからか、眉間に皺を寄せていた。対するモツは、怒られるのだろうと思い肩を竦める。
「モツ。ステージであんな事言うのは止めてって言った筈よ」
彼女、音羽歌苗が言うあんな事とは、勿論あの最低な質問である。ステージ上での失言が多いと考えられ、モツには口を酸っぱくして注意していたのだ。しかしその努力も虚しく終わり、歌苗は舞台裏で1人呆れ果てていたようだ。
「それは御免、つい言っちゃったんだよね。でも代わりに会場は盛り上げたからさ!」
茶目っ気たっぷりに告げるモツ。出来る限りの償いはした、許して、とのメッセージも受け止められる。そのメッセージを受けた歌苗は、大きく溜め息を吐く。
「…分かった。もうこれ以上は言わないから。それで…」
「いやっふー!」
歌苗が何か告げようとした次の瞬間、モツは駆け出して遠くへ行ってしまった。
「え!? ちょっと待ちなさい! モツ!」
走って行く方向からして、どうやら会場へと向かうようだ。きっと少女をナンパしに繰り出すのだろう。
「モーツー!!」
許すんじゃなかった、と後悔する歌苗であった。

Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.26 )
日時: 2018/11/24 16:38
名前: 内倉水火 (ID: sFi8OMZI)

***

モツが退場した後も、夢心地な名作達は拍手をし続けていた。何だかあっという間に過ぎてしまって、寂しいような気もしたが、まだパフォーマンスは続く。もっと楽しもうじゃないか、と名作は考えていた。
またホログラムの司会者が姿を現す。
『モーツァルトさん、有り難う御座いました。皆さんは彼の”ムジーク”、お楽しみ頂けたでしょうか?』
問い掛けられると、収まりかかっていた拍手は再び喝采となる。
しかし、彼の言い回しに疑問を感じたらしい。スウィーツを始め、何人かが首を傾げた。
「ムジークって何だろう?」
すると、すかさず戦兎が説明した。
「ムジークは、ドイツ語で”音楽”って意味だ。モーツァルトの母国語はドイツ語だから、それに因んだんだろ」
「「へぇー!」」
スウィーツは勿論、その場の全員が納得し、感嘆の声を上げる。それから少し間をあけて、1つ付け加える戦兎。
「…あくまで推測だが、音楽だけじゃなく、さっきみたいな特殊能力の意も込められているのかも知れない。まぁ、あのテーマパークが能力によるものなのかも良く分からないけどな」
その考察には、つる公も軽く頷く。
「アトラクションはどれも乗れたっすしね。魔法とかならとりま納得っすわ」
一方、インテリ達の話についていけないのか、万丈とスウィーツは目を瞬かせるばかりだ。その2人を見て、名作は誰に言うでもなく呟く。
「やっぱり分かってない人がいたか…」
彼等の会話が繰り広げられる中、司会者は続ける。
『それでは、次のアーティストに登場して頂きましょう。子卯辰巳の皆さんです』
言うが早いか、足音も立てずにいなくなった。人間という事で通しているのか、瞬時に消え去りはしない。
子卯辰巳は男性4人で構成されるバンドグループだった。察する通り、ボーカルである継義を除くメンバーには出会っている名作達。
「何かあの人達見た事ある!」
思い切り叫んでしまった。思った事を口に出してしまうのは、名作の悲しい性である。
「さっきのウエイターもいるまんねん」
「ウィスキーみたいな麦茶と、ワインみたいなブドウジュースを出して来た奴だ!」
ボルトやノキオも口々に叫ぶ。
「いや、どんなウエイターだよ」
当事者ではない戦兎達は、只呆れるばかりだ。
「ももも!? 同じ人が2人いる!」
「もしや…別の時間帯から連れて来たですか!?」
スウィーツとむすびも叫ぶが、あまりにも異様な発言内容だったので名作がツッコミを入れた。
「いや、双子!」

Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.27 )
日時: 2018/11/25 18:54
名前: 内倉水火 (ID: sFi8OMZI)

【バンド組が大分ボケます】

「パイセン方静かにするっす!」
つる公に注意されてやっと名作達が落ち着いた頃には、既にMCが始まってしまっていたらしく、メンバーが目の前のマイクに向かって順に自己紹介をしている。まずはボーカルからだ。
『えっと…俺は墨野継義。ボーカルで子年です。…好物はチーズです。好きなスポーツは特に有りません。後好きな本も特に有りません。それと…』
「長いわ! 子供の自己紹介か!」
名作は叫んでしまった訳だが、継義の自己紹介は大分長ったらしく退屈なものであった。強いて言えば、お楽しみ会で子供が良く言うフレーズのようだ。
他の人々も流石に長いと感じたのか、一区切りついた所で無理やり次のメンバーへと交代した。スポットライトもすかさず動く。次はベースの番だ。
『辰のベース担当__遊ぶ金欲しさにやって来た、たつ…いや違う、積田長幸!』
「思っくそ噛んだ!」
先程とは違うキャッチーなフレーズで名乗った長幸だが、噛んでしまったのは間髪入れずつっこまれる。ついでに、むすびもわなわなと震えた。
「しかも遊ぶ金欲しさって…お金が勿体ないです!」
「いやそっち!?」
金にがめついむすびらしいと言えばらしい発言であるが、かなりずれていた。
さて、次は長幸の弟であるギター担当。
『巳のギター担当__遊ぶ金欲しさにやって来た、積田剛保!』
「ベースとほぼ一緒じゃん!」
「応用出来るならボーカルにも教えてやれよ! 可哀想だろ!」
名作に続いて、今度は万丈がツッコミを入れる。ふと見ると、ライトの当てられていない継義は軽く項垂れているようだった。
彼等のツッコミ__というよりは野次だが__は華麗にスルーして、剛保は続ける。さっきとは打って変わってテンションが下がり、神妙な面持ちとなった。
『…ブログにはまだ書いてねぇが、実は今朝、ペットのアーサーが帰らぬコモドドラゴンとなりました』
「帰らぬコモドドラゴン!?」
どうやら剛保のペットであるコモドドラゴンが死んでしまったらしい。確かに、動物に帰らぬ人、と言うのは間違っているのだろうが、帰らぬコモドドラゴンと言うのも語呂が悪い。
「そんな…アーサー君…」
会場の全員が唖然としている中、1人の少女がショックで涙ぐんでいた。清楚な雰囲気を持つ彼女は、剛保のブログの読者のようだ。その姿を、剛保はしっかりと見付ける。
『其処の姉ちゃん、アーサーのファンか。名前何だ?』
「はい…さあやです」
少女は白いハンカチで目元を拭いながら答える。そして、その美しく良く通る声で訊いた。
「あの! アーサー君、ちゃんと供養してくれましたか?」
『勿論したぜ…焼いて食って供養したさ!』
自信満々に答える剛保であったが、当然名作達の席からはツッコミの嵐が吹き荒れる。
「彼奴コモドドラゴン食ったのかよ! 良く生きてんな!」
「てか供養の仕方ワイルド過ぎるだろ!」
「え? 食べちゃ駄目なの?」
ツッコミの意味が分からなかったスウィーツの為に、戦兎が説明する。
「コモドドラゴンの口には、大量のウイルスが生息してるんだ。だからコモドドラゴンを捕食した動物は一発で死ぬ」
さて、長丁場となったが、最後はドラム担当こと、ウサ耳のウエイターの番である。名作はごくりと唾を飲み込んだ。何故だか知れないが、緊張するのだ。
『卯のドラム担当__異常にやって来た、憂城。えっと、取り敢えず身内話が長過ぎるヘビ君の人間性を疑うよ』
「これは仕方ないっちゃ仕方ないね」
一先ず胸を撫で下ろした。コモドドラゴンの衝撃からの更なるインパクトは無さそうだ。
しかしそう思ったのも束の間、憂城はもう一言付け加えた。恐ろしいまでに無表情である。
『後客席でツッコミまくってるボウシ君。煩すぎて君の人間性を疑うよ』
「すみませんでしたぁぁぁぁぁ!!」
彼のドスの効いた声に、思わず顔を強張らせてしまう名作だった。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。