二次創作小説(新・総合)

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【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】完
日時: 2019/06/06 18:55
名前: 内倉水火 (ID: Re8SsDCb)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12396

御尻川おしりかわスウィーツ様及び御友人の皆様
 この度皆様を、本日開業の音楽クラブ、ハウスオブ音羽おとわに御招待致します。
                       ハウスオブ音羽 支配人』

「ねぇ皆、これ見てよ!」
そう言って招待状を差し出したのは、受け取った張本人であり、竜宮小7年C組の学級委員、御尻川スウィーツであった。
クラスメイトである松田名作まつだめいさく、ウィンドウズノキオ、団栗林どんぐりばやしむすび、F・ボルト、そして今年入学したばかりの1年生、上井うえいつるこうが、スウィーツの手に握られたその仰々しい紙を見つめる。
「は、ハウスオブ音羽?」
「うん」
「めっちゃ高そうです…」
「大丈夫! この招待状が有ればタダで入れるんだよ!」
「「えぇ!?」」
スウィーツの爆弾発言に、残る5人の驚きの声が重なった。
「何故だ! 何故タダだ! 答えろ貴様!」
やたらと筋肉質な亀のボルトが、声を震わせる。
「何か脅迫してるみたいだぞ!?」
ツッコミ役の名作はボルトにツッコミを入れながら、内心こう思っていた。
_ディ○ニーに怒られる…!

Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.38 )
日時: 2018/12/27 13:08
名前: 内倉水火 (ID: 1CRawldg)

名作達は無我夢中で入口まで逃げた。途中、何かの機材にぶつかった気がしたが、構っている暇はない。只、たった今感じた恐怖に従い、駆け抜けるだけだった。
やっと廊下へと出てきた所で、全力で走ったからだろう、疲れ果ててその場にしゃがみこんでしまった。最後に出てきたスウィーツも腰が抜けて尻餅をつく。と、同時に…。
「わぁああん!! ボルトが! ボルトが!」
恐怖がまざまざと甦ったのか、泣き出した。
「お、落ち着けよ…だ、だ、大丈夫だ、きっと…」
宥めにかかるノキオの声も、明らかに震えていた。むすびやつる公の表情も恐怖に染められている。
「ボルトが…絵にされた…?」
目の当たりにした時は、何が起こっていたのかさっぱり分からなかった。が、口に出して呟くと、名作の中でそれは確信と化した。
ボルトは間違いなく、"ムジーク"で襲われた。シューベルトは通り魔のように、一瞬にしてボルトの姿を変えたのだ。
しかし、先程までステージで『ます』を演奏していた彼が、ああも豹変したのは何故だろうか。スタジャン姿になっていたのも気になる。
泣き止む処か、より一層涙を流すスウィーツを尻目に、万丈が廊下の壁を強く殴った。
「一瞬だったとはいえ、ボルトを助けられなかったか…畜生」
__助けられなかった…。
彼等が事実に打ちのめされようとしている中、モツが口を開いた。しかし、その話し方は酷く重々しい。
「…あれは"魔王エルケーニヒ"だよ。対象を壁画にしちゃう"ムジーク"」
そういえば逃げている時、馬の蹄のような旋律が聴こえた気がする。"魔王"の有名な伴奏部分だ。
しかし、万丈はピンと来ていないのか反論した。
「"魔王"って、中学で習うクラシックだろ? ヒップホップしか聴こえなかったぞ」
「…シュー君、ヒップホップやってたんだ。他にもレゲエとかね。前に色々あって、今は殆ど手をつけてなかったみたいだけど」
その色々が引っ掛かった名作だったが、少し話が見えて来た気がした。

「パットしない」、「音楽を全否定」、「殆ど手をつけていなかったヒップホップとレゲエ」…。

Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.39 )
日時: 2018/12/30 14:33
名前: 内倉水火 (ID: 1CRawldg)

***

「…一体何がどうなったってんだよ? 此方がのんびりクラシック聴いてりゃ、いきなりヒップホップが始まって、挙げ句に観客の何人かはスプレーアートになった。誰かに説明を乞いたいもんだなぁ?」
荒れに荒れた会場で、苛立たしげにそう告げたのは、子卯辰巳のギター担当である積田剛保だ。
剛保が殆ど一息で説明した通り、シューベルト__"魔王"というべきか。彼の謎の暴動により、会場は異様な雰囲気へと様変わりしていた。
豪華過ぎて緊張すると言われていた装飾の数々は、嵐でも過ぎ去ったかのようにボロボロになり、彼が暴れたステージは、それまでの輝きをすっかり失い、散らばった瓦礫等のせいで足の踏み場も無いようだった。更に、その汚れきった床や壁には、逃げ遅れてアートとなった人々が張り付いていた。
__水族館から廃墟って、変わり果てるにも程があんだろ。
バンドのボーカル、墨野継義が心の中で溜め息を吐く横で、ベース担当であり剛保の兄、長幸が弟を宥めていた。
「まぁまぁ。きっと何かの演出だろうよ、特殊能力の類いみてぇだし。な、弟ちゃん?」
「にしては乱暴過ぎるだろうが。今までのは終わったら直ぐ会場に戻るってのに、いつまで経っても廃墟のまんまだぜ。お兄ちゃん?」
この状況でいつものように会話しているのは流石と言わざるを得ないが、確かに何の脈絡もなくこの演出はおかしい。それに、あの年端も行かない支配人代理がこんな危険な事を許可するとは考え難いのだ。もしそうなら、ドラム担当の憂城でなくても人間性を疑いたくなる。
実際、彼の暴動が起こり、観客がアートにされた直後、殆どの観客は逃げてしまっている。"魔王"が去り、アートにされた人々が一向に戻る気配が無いのも、これが本物の事件である事を裏付けていた。
継義が黙々と考えていると、ずっと黙りこくっていた憂城が声を上げた。
「あれ、誰かいるよ」
と、憂城が指を差した先には、2人の男女の姿があった。目を凝らして見ると、白髪頭の男と、オレンジのミニドレス姿の娘がステージから出てきた所だ。
「…音羽さん?」
継義が思わず声を掛けると、ミニドレスの支配人代理、音羽歌苗は彼等を見つけ、直ぐ様怒鳴り付けた。
「継義さん!? ちょっと、何でそんな所にいるんですか! 早く"降りて"来て下さい!」
継義を始め、子卯辰巳のメンバー達は紛れもなく、壊れかけのシャンデリアの上に腰掛けていたのだ。

Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.40 )
日時: 2018/12/31 14:04
名前: 内倉水火 (ID: 1CRawldg)

子卯辰巳の4人は、傾いたシャンデリアに腰掛けていた。"魔王"の手から逃れる為、ステージから死角となる天井へと登っていたのだ。彼の無差別的な攻撃がシャンデリアに直撃したのは予想外だったが、事なきを得たようだ。
「もう! 早く降りてってば! シャンデリアが落ちたらどうするんですか!」
支配人代理は、そんな彼等を地上から怒鳴り付ける。他の観客と一緒に逃げなかった事に対しても、呆れるなりしているのだろう。実際、継義もこんな場所に登ったメンバー達に呆れつつある。それこそ人間性を疑いたいものだ。
代理にしつこく言われ、とうとう長幸が言い放った。
「分かった。其処まで言うなら降りてやる…よッ!」
ついでに__自身の弟を抱えて、シャンデリアから落ちた。
__は?
継義が呆気に取られていたのも束の間、今度は自分がシャンデリアから振り落とされた。否、振り落とされたのではない。憂城に担がれ、飛び降りたのだ。
突然の事に、代理も慌てふためいた。
「えぇええ!? ちょっと! ベト、何とかして!」
彼女が隣の白髪男の名前を呼ぶ内に、彼等は地上へと降り立った。そう__全員が無傷で降りたのだ。
憂城は確かに継義を担いで着地していたし、隣の長幸は剛保を下ろしている。__数センチ浮いて。
そう言えば、シャンデリアへ登った時、継義はやはり憂城に連れられて来た訳だが、着いて見れば既に双子が座っていたのだ。飛んでいたなら説明はつく。
「貴方達…何者なんですか?」
無傷の彼等に、音羽歌苗は尋ねた。すると、長幸は代表して答える。
「只の一般人に他ならねぇよ、今はな」
「…小娘、此奴等は良い。今は事の発端を探すのだ」
白髪男、ベトが口を挟んだ。発端とは"魔王"の事だろう。
「そうね。貴方達、凄いのは分かりますけど、今は私達について来て下さい」

「子猫ちゃん! 心配したのよ!」
「歌苗、ルー君! …と、誰?」
「あ、あのぐだぐだなバンドじゃねぇか!」
舞台裏に連れられると、中にいた人々が代理やベト、そして継義達に駆け寄って来た。
役者は揃った。

Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.41 )
日時: 2019/01/02 17:45
名前: 内倉水火 (ID: YzSzOpCz)

「んで、何でこんな事態に陥っちまったんだ? 支配人さんよ」
剛保は集まった全員を一瞥した後、歌苗を見て訊いた。本当なら既に帰れていた所を、こんなアクシデントで時間を無駄にしているのが気に食わないようで、先程から蛇のような目で彼女を睨んでいる。
対して、反論しつつも目を伏せながら答える歌苗。
「そんなにカリカリする事無いじゃないですか。…原因なんて良く分かりませんよ、お人好しで真面目なシューさんが、無差別に人を攻撃するだなんて」
「"お人好しで真面目"? はっ、それこそ凶悪犯罪者の近所に住んでるババアが言う台詞じゃねぇか。そういう奴は大抵腹に何か抱えてんだよ、些細な事でも根に持ってたりな」
声のトーンを上げて捲し立てる剛保を、兄の長幸が「まぁまぁ」と宥めた。
しかし、口こそ悪いものの、剛保の話は大分的を射ているように名作は感じる。事件直前のリストやショパンの話、そして直後のモツの話と照らし合わせると、ぴったり噛み合う気がするのだ。
すると、憂城が口を挟む。
「ヘビ君、同じような経験があるから分かるんだね」
剛保は露骨に顔をしかめる。この性格からして、お人好し等と言われるのが嫌らしい。
「はぁ? 俺がいつ"良い奴"になったってんだ?」
「ううん、凶悪犯罪者の方」
「…お前に言われたかねぇんだよ、この殺人鬼が」
名作は一度蒼白になったが、直ぐ様話を戻そうと努めた。
「いきなり会話が怖いんだけど!? というか、今はシューベルトさんの話ですから!」
「そうですよ! それに、些細な事って一体何ですか?」
「他人の事なんざ知るかよ。てめぇら身内で考えるこったな」
そう言って舌打ちをしたきり、彼は何も言わなくなった。長幸も宥めるばかりで、意見を出す気配はない。この双子、滅多に他人に協力する事はないのかも知れない。
代わりに、戦兎が質問した。
「さっきモーツァルトから聞いた話なんだが、彼奴が過去にヒップホップとレゲエをやっていたのは本当か?」
「…はい」
「どっちも、最近はやっていない。そうだな?」
「そう、ですね。何故かは分かりませんけど、突然止めちゃったんです」
歌苗の証言を聞きながら、戦兎は顎に指を当てて考えているようだった。
「…成る程。突然って事は、止める直前に何かあったんだろうな。根に持っている何かが」
「音楽を否定されたんじゃないか?」
戦兎が言い切るか否かの所で、誰かが呟くように言った。ノキオだ。
「ヒップホップの時も、レゲエの時も、誰かに音楽を全否定されたんだよ!」

Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.42 )
日時: 2019/01/04 13:56
名前: 内倉水火 (ID: 3w9Tjbf7)

【此処から怒涛の捏造タイムです。何ならとっくに入ってます】

全員が目を見開く中、ノキオは再び叫ぶ。
「ヒップホップもレゲエも、誰かに全否定されたんだよ!」
「重要な事だけど3回も言うな」
思い出したようにボケられた名作は、ずっこけそうになりながらも突っ込む。
それには構わず、戦兎がノキオの意見を掘り下げる。
「確かに、全否定される事によってプライドやメンタルが崩壊寸前っていうのは納得出来る。でも、いつそんな話を聞いたんだ?」
「リストさんとショパンさんが話してくれたんだ、まだ魚が泳いでた時」
「…皆は魚に夢中で聞こえなかったみたいだけど、真後ろで話してたんだ。シューベルトさんの音楽が、パッとしないって」
ノキオに加わって、名作は続けた。まだ涙目のスウィーツやむすび、つる公を見る。それから、リストとショパンを見つめて言った。
「あの時ショパンさん言ってましたよね、シューベルトさんは"直ぐ何かにかぶれる"って。リストさんも似たような事を言ってた。つまり、自分の音楽をころころ変えるあの人を快く思ってなかったんじゃないですか? 誰が全否定したとかじゃなくて」
その言葉に、ショパンは気まずそうに目を逸らした。図星だったのかも知れない。一方、リストは一度目を閉じて息を吐くと、語り始めた。
「…最初は、やっと自分の道を見つけて良かったと思ったんだけどね。たった1人に否定されただけで、あっさりヒップホップを捨てたのよ、彼奴。否定した方は確かに嫌な子だったけど、それだけに直ぐ折れた彼奴にも腹が立ったわ。何も言い返さなかったのかって。自分の好きな音楽を"黒歴史"なんて言われて落ち込むだけなのかって」
彼女の言い分は、名作にも通ずるものがあった。
自分の好きな物語を一度貶されたからと言って、それを嫌いになってしまうのは違う。だったら二度とそんな事は言わせまいと努力すれば良い。良さを伝えれば良い。好きを貫かないなんて、本当にそのものを好きと言えるのか。
リストに感化されたかのように、ベートーヴェンが続ける。
「乗り換えた後のレゲエもそうだった。世界的に有名になったというのに、また同じ小僧に否定され止めたのだ。"自信がないのが見える""人として恥ずかしい"と。確かに平和を謳い人々を操っていたのはおかしい。調子には乗っていた。しかしそれでも、彼奴は本当にレゲエに感服し、歌いたいと思ったのだ。だと言うのに、只泣くばかりの奴に腹が立ってな__思わず小僧に加勢してしまった。"己の旋律で歌え"と」
ベートーヴェンが言い切った後、継義は溜め息を吐く。事が起こってから話しても遅いと呆れているのか、どうでもいい事をだらだら話す彼等に苛立っているのか、はたまた別の何かなのか。名作にはいまいち読めなかった。
何処か納得出来なかったのか、万丈が戦兎を見て訊く。
「何で否定されただけで彼処まで追い込まれるんだろうな」
「真面目な奴はな、どんな言葉でも真面目に捉えてしまうんだよ。それに悲しんでる時は、マイナスな方向に持って行き易い…って、人の心理を俺に訊くな」
一方、歌苗は何やらショックを受けているようだった。リストの時はそうでもなかったが、ベトの"小僧"という言葉を聞いてから様子がおかしい。

「歌苗! …って、何か人数増えてね?」
ふと、廊下から1人の少年が走って来た。切羽詰まった表情だったが、此方の大所帯に驚く余裕は有るらしい。
「奏助! この人達はお客さんとさっきのバンドの人よ。それで、どうかしたの?」
「あぁ、そうそう! 実はさっき…」
その先は聞く事が出来なかった。
奏助と呼ばれた少年の姿は、一瞬にして消えた。否、違う。
_まさか!
名作が恐る恐る横の壁を見ると、其処には_デフォルメ調の奏助の姿が描かれていたのだ。


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