二次創作小説(新・総合)

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【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】完
日時: 2019/06/06 18:55
名前: 内倉水火 (ID: Re8SsDCb)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12396

御尻川おしりかわスウィーツ様及び御友人の皆様
 この度皆様を、本日開業の音楽クラブ、ハウスオブ音羽おとわに御招待致します。
                       ハウスオブ音羽 支配人』

「ねぇ皆、これ見てよ!」
そう言って招待状を差し出したのは、受け取った張本人であり、竜宮小7年C組の学級委員、御尻川スウィーツであった。
クラスメイトである松田名作まつだめいさく、ウィンドウズノキオ、団栗林どんぐりばやしむすび、F・ボルト、そして今年入学したばかりの1年生、上井うえいつるこうが、スウィーツの手に握られたその仰々しい紙を見つめる。
「は、ハウスオブ音羽?」
「うん」
「めっちゃ高そうです…」
「大丈夫! この招待状が有ればタダで入れるんだよ!」
「「えぇ!?」」
スウィーツの爆弾発言に、残る5人の驚きの声が重なった。
「何故だ! 何故タダだ! 答えろ貴様!」
やたらと筋肉質な亀のボルトが、声を震わせる。
「何か脅迫してるみたいだぞ!?」
ツッコミ役の名作はボルトにツッコミを入れながら、内心こう思っていた。
_ディ○ニーに怒られる…!

Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.18 )
日時: 2018/11/09 18:32
名前: 内倉水火 (ID: zh8UTKy1)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

【回想が少し続きます。by筆者】

「音楽クラブって…コンサートとかライブとかやる所?」
長い三つ編みの上に大きな帽子を被ったモツが、歌苗に訊いた。彼は音羽館に住まう住人の1人だったのだ。同じく出演者となっていたベトや、シューも同様である。
「多分そんな感じ。後ご飯も食べられるようにするって、お母さん張り切ってたけど…」
歌苗は溜め息混じりに返すと、目の前に聳え立つ、やけに豪華な施設を見上げた。母親の日芽歌が大金を叩いて、急ピッチで建設したハウスオブ音羽である。開業すると宣言されてから、まだ1週間も経っていなかった。
__決めたら直ぐにやっちゃう人なのは、昔からなんだけどね。
そんな事を考えながら、もう一度深い溜め息を吐く。恐らく日芽歌が宣言してくる以前に、此処の建設は始まっていたであろう。
「すっげぇ…此処で演奏してみてぇ…!」
歌苗の心情など気にも留めず、ひたすらにハウスオブ音羽への憧れの眼差しを向けているこの男子高校生は、神楽奏助かぐらそうすけ。彼女の幼馴染みである。ミュージシャンになりたいと思ってはいるが、音痴を克服しようともしない時点で無理な話だ。
「…それで、皆にお願いがあるんだけど」
奏助が喚いているのを無視して、歌苗は音羽館の住人達の方へと向き直った。自分が支配人代理を務める事になる施設を、彼等にも見せたかったのだ。
「悪いが、雑用はせんぞ」
住人であるベトが、歌苗の言葉を遮る。労働自体があまり好きではない彼等が、スタッフに等なる訳が無かった。
しかし、歌苗は表情1つ変えずに続けた。
「知ってる。スタッフになったってろくに働かないだろうから、この際そんな事は言いません。皆さんにお願いしたいのは、ステージへの出演です」
ベートーヴェンやモーツァルトの名前からお気付きだろうが、音羽館の住人達は、全員が音楽の天才である。ステージに立てば大ウケ間違いなしだ。
コストも削減出来る上、観客も喜ばせられる。歌苗にとっては一石二鳥だった。
これに対し、住人の反応は、
「良いじゃん、面白そう! 女の子もナンパ出来そうだし…」
「うむ、俺のギターを民衆に聴かせられるのに良い機会だ」
「先輩の仰る通りです!」
「会場を愛でいっぱいにしてあげたいわ~」
「え、出たくない…」
1人を除いて、中々の好反応だった。
「よっしゃあ! 待ってろよハウスのオーディエンス!」
対象ではない筈の奏助まで、テンションを上げて張り切っていた。その様子を見た歌苗は、シンプルながら辛い一言を浴びせる。
「あ、奏助は普通にスタッフだから」

Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.19 )
日時: 2018/11/10 17:32
名前: 内倉水火 (ID: 62e0Birk)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

>>17にて、奏助君の係の訂正です。ライト係です。ステージの幕は開け閉めしませんので、注意して下さい。では、息抜きの名作くん&ビルドパートをお楽しみ下さい。by筆者】

***

一方、ステージでは、先程歌苗に指示を出されていたボーカルユニット、ツインラブの出番が終わり、メンバーである少女達が退場する処であった。
「俺も愛してるよ! ルールー!!」
「此方こそセンキューですー! えみるー!!」
前述の通りアイドルオタクであるノキオとむすびは、彼女等の姿が見えなくなるまでサイリウムを振り回していた。ノキオはミステリアスな雰囲気を持つルールー推しで、むすびはドジっ子属性のえみる推しらしい。サイリウムも2人のイメージカラーである。
「本当、色々なアイドル推してるよなぁ」
最後まで全力であるノキオ達を見て、名作が呟いた。ツインラブは勿論、名作も推す事になった洗濯に行く、ボーカロイドの代表格である初音はつねミクも応援しているのだ。
戦兎は彼等を尻目に、万丈と顔を見合わせて笑っている。決して馬鹿にしているようには見えず、寧ろ何かの面影を懐かしむような、好意的な笑みであった。万丈も同じ事を思い出したのか、同じく肩を竦めて笑う。
ツインラブが退場して間もなく、青髪の司会者がステージ中央へと歩いて来た。
『ツインラブのお二方、有り難う御座いました。可憐ながらも力強いギターと歌声、如何でしたでしょうか』
司会者の涼やかな声が、マイクを通して会場へと届けられる。名作達観客はショーの開始以降、ずっと彼の姿を見ているのだが、汗をかいている様子もなく、身に付けている燕尾服も依然として整ったままである。変化のないその美しい顔を、名作は何処か不気味に思った。
「なぁ、名作」
司会者に釘付けになっていた名作に声を掛けたのは戦兎だ。何やら楽しげに笑っている。
「名作、どうしてあの司会者が綺麗なままなのか、知りたいか?」
視線の先の彼へ抱く感情を見事に読み取った彼は、此方を向いて酷く驚いた様子の名作を見つめる。
「え? まぁ知りたいですけど…」
「…実はな、彼奴は人間じゃない。ホログラムで出来た3Dモデルだ」
一瞬信じられなかったが、戦兎は自称物理学者である。学者というのが事実ならば、見抜けるのは当然であろう__ホログラムが物理学に含まれるのかは甚だ謎だが。
『…では、次のアーティストの出番と行きましょう。ハウスオブ音羽所属の"神童"、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトさんです!』
ホログラムの司会者が高らかに告げる。それが至極当たり前であるかのように。
「モーツァルト!?」
名作は今度こそ信じられない言うように、思わず席から立ち上がった。
__とっくの昔に死んでしまった天才が、ハウスオブ音羽に所属だって!?
他の観客もざわついている。やはり、驚いているのは名作だけではないようだ。

そんな動揺を他所に、モーツァルト__モツは、ステージに姿を現す。

Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.20 )
日時: 2018/11/12 19:03
名前: 内倉水火 (ID: Yv1mgiz3)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

【息抜きパートでなかった事をお詫びします。by筆者】

「あれが…モーツァルト?」
司会者と入れ違いにステージへと上がって来たその男に、名作は呟く。
他の観客達も、どよめいたり、彼に見とれたりしていた。当然だろう、現れたモーツァルトは音楽室の微笑む肖像画とは、全く違う容姿だったのだから。
鮮やかな桃色の髪を三つ編みで束ね、透き通った肌に、空を映したような瞳。モーツァルトの名前を聞いていなければ、可愛らしいヨーロピアンの少女と間違えてしまうだろう。
そんな彼は、ステージで無邪気に飛び跳ねながら、遠くの席にも手を振っている。子供のような仕草にときめいたのか、女性客の黄色い歓声も聞こえた。
『あはは! やっほー! ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト、略してモツでーす!』
マイクを通して響くのは、彼の口から発せられる天真爛漫な挨拶であった。
「略して良いんだ!?」
「別に良いだろ、本人が言ってんだからよ」
思わず叫んでしまう名作に、万丈が言う。万丈は先程運ばれてきた豚骨ラーメンに、持参のプロテインを掛けてすすっていた。
「またプロテインかよ、外食で位止めときなさいよ」
モツから一旦目線を外し、戦兎が呆れた。口調のせいか、何処か母親のように思えた。
『ねぇねぇ皆、ちゃんとう○こしてるー? 便秘じゃなーい?』
名作達のやり取りに気付く訳もなく、モツが続けた__最低な質問を。
図らずも、辺りは水を打ったように静まり返った。今の今までキャアキャアと叫んでいた女性達も、呆気に取られている。
同時に、万丈とスウィーツが噎せた。スウィーツも万丈と同じく、運ばれた料理を食べていたのだ。
「な…何言うてんねん!」
質問の被害に遭った先輩の背中を擦りながら、つる公は言った。ドン引きした様子だ。
「あぁ…やっぱ下ネタか」
「やっぱってどういう事だ?」
同じく万丈の背を擦りつつ、戦兎が言う。ボルトもそれに対して首を傾げた。
すると、自分が訊かれた訳でもないのに、名作の口が勝手に動き出す。
「モーツァルトはね、音楽の天才だったのは確かなんだけど、実は下ネタが大好きだったんだ。彼が親戚に宛てた手紙にも、今みたいな大便の話が書かれていたんだって。結構セクハラ紛いのエピソードが多い人なんだよね」
「天才じゃなかったらとっくに訴えられてそうだな」
名作の話を聞いて、ボルトは率直な意見を述べた。言ってしまえば、天才であろうと無かろうと、訴えられる可能性があるのは同じなのだが。

Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.21 )
日時: 2018/11/14 18:54
名前: 内倉水火 (ID: tVX4r/4g)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

【突然の下ネタ、すみませんでした。by筆者】

『あれあれー? どうしちゃったのー?』
自分の発言が如何に問題だった事に気付いていないのか、モツは首を傾げる。その瞳は純真無垢な子供のようだ。
対する会場は見事に白けてしまっていた。聞こえるのは微かな苦笑位である。
「良くあんな事言えるな」
ほんの10分前まで推しに骨抜きにされていたノキオが言う。一連の出来事で既にテンションは下がっており、冷酷と言っても過言ではない表情である。10分であんなに盛り上がっていた会場を白けさせたモツも流石であるが。
「まぁ、悪気は無いんだろうけどね」
名作が返した。
「…ぷはぁ…それだけに質が悪いよな」
戦兎に渡された水を飲み干した万丈も続けた。プロテインラーメンを食べていた彼は、問題発言のせいで噎せてしまっていたのだ。
そのやり取りの一方、モツは困った様子で会場を見渡している。殆ど何の反応も示さない人々に、いい加減事の重大さに気付いたのであろう。
『どうしよう…あ、そうだ!』
しかし、そうしていたのも束の間、何かを閃いたようだ。
「曲でも演奏するんですかね?」
「でも楽器ねっすよ? アカペラなんすかね?」
やっと始まるのか、と思うのは名作であったが、むすびとつる公の会話の通り、ステージには楽器の1つも置かれてはいなかった。モツ自身も楽器を持っている様子はない。
『じゃあ皆、準備OK?』
だが、モツは自信満々に笑っていた。その笑顔に、すっかり引いてしまっていた観客達の顔色も変わっていき、何が始まるのか興味津々である。
『せーの…Hoer mai, meine Musik!』
モツが謎の呪文を唱えた瞬間、辺りは目映い光に包まれた。

Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.22 )
日時: 2018/11/15 18:26
名前: 内倉水火 (ID: 3i70snR8)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

【戦兎がやたら音楽に詳しい人になっておりますが、変わらず緩い世界観としてお楽しみ下さい。by筆者】

目映い光に思わず目を瞑った名作が、ゆっくりとその目を開く。
「…え!?」
目の前に広がる光景に驚き、周囲をぐるりと見回した。
先程までハウスオブ音羽の会場であった筈の此処は、ファンシーな世界観のテーマパークと化していたのだ。
シャンデリアの有った天井には大きな満月が浮かび、その横を流星群が通り過ぎて行く。何処から伸びているのか、巨大なラッパ型のスピーカーが空中に垂れ下がっていた。カラフルに彩られたジェットコースターやコーヒーカップ等のアトラクションでは、次々と観客達が乗り込み遊んでいる。
どの顔も楽しそうで、キラキラと耀いていた。
「わぁあっ! めちょっく!!」
フリーフォールで友人と共に絶叫する少女。
「はぁ…大したパフォーマンスだこった」
1人夜空を見上げて微笑む男性。
各々が違う形で、その夢のような場所を満喫していた。いや、もしかしたら本当に、モツが案内してくれた夢なのかも知れない。
その証拠に、パークの中央、高台になった場所に立ち指揮をするモツの姿が見えた。赤いフリルの付いた正装を身に纏い、笛の形をしたタクトを振っている。
彼の指揮に合わせ、あのスピーカーからは音楽が流れた。初めて聴くような、懐かしいような旋律であった。
「アイネクライネ・ナハトムジーク」
名作の直ぐ後ろから、そんな声が聞こえた。振り向くと、戦兎が立っている。
戦兎は頭を掻き乱して続ける。
「モーツァルトの代表曲だ。…にしても、会場が突然テーマパークに変化する…か。流石の俺でも分からないな」
「そりゃそうですよ。こんな現象、前例なんてないだろうし」
名作も首を傾げた。
暫く2人で考え込んでしまっていると、遠くからスウィーツの声が聞こえて来た。
「おーい、名作ー! 一緒にジェットコースター乗ろうよ! 早く!!」
スウィーツの急かすような声に、戦兎も名作も、考えるのが馬鹿らしくなってしまった。
「…行くか。今は楽しめば良い」
「そうですね、だって今夜は…」
歩き出した彼等の会話に、スピーカーから流れる旋律が重なる。

皆が踊り出して 歌うセレナーデ
君の願い事全部 叶える夜をプレゼント


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