二次創作小説(新・総合)

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【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】完
日時: 2019/06/06 18:55
名前: 内倉水火 (ID: Re8SsDCb)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12396

御尻川おしりかわスウィーツ様及び御友人の皆様
 この度皆様を、本日開業の音楽クラブ、ハウスオブ音羽おとわに御招待致します。
                       ハウスオブ音羽 支配人』

「ねぇ皆、これ見てよ!」
そう言って招待状を差し出したのは、受け取った張本人であり、竜宮小7年C組の学級委員、御尻川スウィーツであった。
クラスメイトである松田名作まつだめいさく、ウィンドウズノキオ、団栗林どんぐりばやしむすび、F・ボルト、そして今年入学したばかりの1年生、上井うえいつるこうが、スウィーツの手に握られたその仰々しい紙を見つめる。
「は、ハウスオブ音羽?」
「うん」
「めっちゃ高そうです…」
「大丈夫! この招待状が有ればタダで入れるんだよ!」
「「えぇ!?」」
スウィーツの爆弾発言に、残る5人の驚きの声が重なった。
「何故だ! 何故タダだ! 答えろ貴様!」
やたらと筋肉質な亀のボルトが、声を震わせる。
「何か脅迫してるみたいだぞ!?」
ツッコミ役の名作はボルトにツッコミを入れながら、内心こう思っていた。
_ディ○ニーに怒られる…!

Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.28 )
日時: 2018/11/27 19:49
名前: 内倉水火 (ID: Z/MkaSMy)

***

子卯辰巳のトンデモ自己紹介の最中、ベートーヴェンとシューベルトは、次々と道具の行き交う廊下を2人で並び歩いていた。直ぐ側を通り過ぎる楽器やスタッフを横目で見送りながら、ステージ裏を目指しているのだ。
2人の間にそれまで会話はなく、只互いに革靴をコンコンと鳴らすだけだった。
「…先輩」
しかしシューベルトが、自らの斜め前を行く先輩、ベートーヴェンを呼び止める。急ぎ足で歩いていた彼はその歩みを止めて、シューベルトを見据えた。厳格な雰囲気を帯びたその表情が、シューベルトへと向けられる。
シューベルトは少々尻込みしつつ、言葉を紡いだ。今更彼の顔が恐いという訳ではなく、寧ろ敬愛すべきベートーヴェンに面と向かって話すのが、畏れ多かったのだ。
「…やはり私も、"ムジーク"を出さなければならないのでしょうか」
シューベルトは不安であった。先程モーツァルトが魅せた特殊能力、"ムジーク"は、音楽家の名前を持つ彼等全員が使える、この場に丁度良いパフォーマンスだ。ベートーヴェンもまた、この特殊能力でステージに臨もうとしている。ところが、シューベルトは自身の"ムジーク"にかなりのコンプレックスを抱いている。ステージで魅せられるようなものではないと考えているのだ。
そんな後輩の心情を軽くでも汲み取ったのか、ベートーヴェンは答える。
「不安か。…しかし、俺達の演奏で出し惜しみは許されないのだ。魂の結晶で築いた曲を、余す事無く聴衆に届ける。お前はその結晶を恥じるな。お前自身が築き上げた、その旋律を」
決して怒鳴りはしなかったが、長年敬愛してきた先輩の言葉は、やはり清らかで正しかった。自分の曲を魂とは、素晴らしい喩えである。
シューベルトは、こくりと大きく頷いた。
「はい!」
かといって不安が全て消えた訳ではなかった。ステージでの演奏は、彼にとって酷いプレッシャーだった。

Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.29 )
日時: 2018/11/29 13:00
名前: 内倉水火 (ID: 0dFK.yJT)

【もうちょっと静かに聴けよとのツッコミがありそうですが、相変わらず駄弁っております】
***

さて、ステージでは子卯辰巳のぐだぐだなMCも終わり、今は演奏が始まっていた。
曲はツナ義ーズのように熱血な感じでもなく、かといって完全なるダウナー系でもない、言うなればハーフハーフだった。曲によってかなりの触れ幅がある。
「良い曲だな、割りと」
ボルトがステージを見ながら呟いた。目線を此方に全く向けない程、聴き入っている様子である。
__割りとは余計な気がするけど…まぁいっか。
対する名作は苦笑するだけで、何も言わなかった。ステージから直々に注意され、目立つ訳にはいかないと自重しているのだ。
そんな中後ろでは、戦兎と万丈が何やらひそひそと話し合っていた。
「…確か彼奴等も、俺達と同じ…だよな」
「多分な。でも、あの中の…だけ、…らしいぞ」
少々気になって、耳を傾けてみた名作だったが、演奏に隠れて断片的にしか聞こえない。すると、会話が聞こえたのか、スウィーツが戦兎達の方を振り返った。
「ねぇ、何の話?」
戦兎は何でもないと言うように首を横に振り、スウィーツに返答した。
「あぁ、バンドのメンバーと地元が同じって話をしてただけだ」
__何か誤魔化してるみたいだな。
相変わらず後ろで聞いていながら、直感的にそう考える名作。地元が同じという世間話をしていたなら、あんなに低いトーンで話し合う訳がない。明らかに重要な話だった。
しかし、そんな事に気付く素振りも見せず、スウィーツは普通に納得しているようだった。
「へぇー」
やがて、最後の曲が終わり、子卯辰巳が退場する頃となった。
『…これで、俺達の出番終わりか。有り難う御座いました…』
継義がやや気だるげに頭を下げると、立て続けにメンバーが最後の挨拶をする。
『帰ったら汁粉飲みてぇな。それじゃあ』
『有り難うアーサー、そしてじゃあな、さあや』
『バイバイ、僕等のお友達ー』
やはり何処かシュールだったが、無事にライブは終わった。

Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.30 )
日時: 2018/12/02 13:53
名前: 内倉水火 (ID: u5wP1acT)

「…ん? あれってモーツァルトじゃね?」
子卯辰巳が退場して間もなく、ノキオは向こうを指差して言った。釣られて指差す方向に注目する一同。
モーツァルトといえば、つい先刻"ムジーク"で観客全員を魅了したばかりだ。そんなに直ぐ会場へと下りて来るものなのかと思った名作だったが__彼の姿を発見した。
「いた! モーツァルト!」
名作に続き、つる公や戦兎も彼を発見したようだった。残る4人は中々見つけられないのか、頻りに目を凝らしている。スウィーツに関しては、目を細めすぎて糸のようになっている。
「そんなに遠い所にいないから…」
ほらあのテーブル、と名作がモツのいる場所を説明する。やっと見つけたらしい万丈は、ふとこんな事を言い出す。
「確かにモーツァルトっぽいけどよ、また戦兎の時みてぇに間違ってんじゃねぇのか?」
言われてみればそうだ。戦兎と万丈に出会ったのも、スウィーツ達が戦兎を佐藤太郎と勘違いしたからだった。考えると、そんな気がしてきた。
モツは、テーブルに座る女性に話しかけているようだ。何を話しているのかは分からないが、女性は頬を染めて、こくこくと頷いている。やがてその女性とも別れ、モツは此方へと歩いて来た。無論、名作や戦兎の席を目指している訳ではなく、そのまま通り過ぎてしまうようだ。
彼が丁度2つのテーブルの間に入ったその時、急ぎ足で此方へと駆け寄る娘の姿があった。
「あの人…!」
竜宮小の6人が目を丸める。その娘はオレンジのミニドレスを纏ったうら若き支配人代理__カナエさんこと音羽歌苗であった。
歌苗は勝手に会場へとやって来たモツを睨んだが、同時にその脇の席の名作達に驚く。
「皆!?」
「おい、知り合いか?」
彼等の関係を知らない戦兎が訊く。名作が答えた。
「此処の支配人代理の歌苗さんです。実はスウィーツが招待状を貰って…」
ついでに、自分達がハウスオブ音羽へと至るまでを説明する。自分でも上手く説明出来たのかは不安だったが、2人はちゃんと理解してくれたらしい。
「成る程。大体分かった」
「…つーか俺達もタダで来たんだけどな」
万丈が気になる事を呟いたが、詳細は聞き出せなかった。招待状の話を聞いたモツが、唐突に提案したからである。
「招待状を貰ったんならさ、タダなだけで帰っちゃうのは勿体ないよ。もっと特別な所に案内してあげる! 隣の2人も一緒にね!」
"神童"の提案には、その場の全員の声が重なった。
「「えぇっ!?」」
「「はぁあ?!」」

Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.31 )
日時: 2018/12/04 18:10
名前: 内倉水火 (ID: j9SZVVec)

***

会場に比べ、かなり簡易的な舞台裏。其処に備え付けられた出演者用の楽屋。
『Beethoven』と書かれたドアを開けて廊下に出てきたのは、ベートヴェンその人であった。そろそろ出番なので、休憩を終えてステージへと向かう所だ。
楽器の行き来が一通り済んだのか、辺りはショーが始まった頃とは打って変わって静かだ。何人かのスタッフや出演者が足早に通り過ぎるだけである。
ベトもまた同じように、黙ってステージへと歩いている。
しかし、ステージに近付くにつれ、妙に騒がしい声が聞こえてきた。大勢で談笑しながら移動しているようで、時折笑い声も響く。ツッコミのような叫び声もまた然りだ。
中には、同居人のモーツァルトや音羽歌苗の聞き慣れた声も聞こえる。しかし、それでも声の大半は耳新しい子供の声のようだった。彼は不審に思う。出演者に小中学生が交じっているのは聞いていたが、これ程大勢な訳は無いだろう。
考えている内に、突き当たりに差し掛かった。確か此処を右に曲がれば、ステージに着く筈だ。くるりと方向を変えて進んで行く。
例の声もステージ側が音源のようだ。どんどん大きくなる。
ベトはようやく、声の主の姿を確認出来た。聞き取った通り、大勢の人々が其処で談笑している。目を凝らして数えると、子供は4人のようだ。全員が男児である。
近付いて、彼等と一緒に話している歌苗に声を掛けた。
「小娘、其奴等は一体誰だ?」
来客がいようと構うまい、彼はいつもの上から目線だ。歌苗も大した反応をせずに振り返る。
「あぁ…ベト。紹介するね、スポンサーの御尻川さんの息子のスウィーツ君と、その友達の名作君、ノキオ君、むすび君、ボルト君、つる公君。後、物理学者の桐生さんと元格闘家の万丈さん」
一息で全員の名前を言ってしまうので、ベトは少々困った。それに、色々と気になる事もある。
「おい待て、一度に何人も覚えられる訳が無かろう。後何だそれは! 何故米粒と亀が立って喋っている!」
見ると、歌苗達と話していた中にはおむすびとやたら筋肉質な亀が交じっていた。しかし誰1人、それを気にする者はいない。平然と会話していたようだ。
ベトが喚くと、オーバーオールを着た少年が同情的に一言返した。
「気持ちは…分からなくもないです」

Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.32 )
日時: 2018/12/06 17:40
名前: 内倉水火 (ID: vpptpcF/)

謎の生物達を前に、もしかしたらおかしいのは自分1人なのではないかと思い始めたベートーヴェンだったが、オーバーオールの少年のお陰で少し安心した。後から話を聞いたが、米と亀は少年達の級友であり、何故このようなみょうちきりんな姿なのかは良く分かっていないのだという。
以前宇宙人と出会い、自らも"ムジーク"を使いこなせるベトでも、まだ分からない事があるという訳だ。いや、むしろその謎が在るからこそ、音楽への創作意欲が沸き立つのだが。
__其処に立っているキリュウとかいう学者も、そう思っているに違いない。
創作も研究も、謎を探るのが醍醐味である。そんな事を考えながら、ベトは名もろくに知らない物理学者を同志として捉えていた。
その他にも、暫く彼等を見て思う処は多々あるのだが、此処には書ききれないので割愛させて頂こう。
口の中でもごもごと呟きながら此方を見ている男に不審感を覚えたのか、2、3人の子供達は表情を曇らせて半歩程身を引いている。変な人、と桃を被った少年__人間ではあるが個性的だ__が呟くのが耳に入ったが、ベトはお構い無しに物思いにふけっている。
「…この人はいつもこうだから」「そうそう、目玉焼き見てもあんな感じだし」
身内である歌苗とモーツァルトが告げる。まるで少年や学者達に対し、気にしないでと伝えているようだった。というか、完全にそう伝えている。元々彼があれこれ考える時は、後輩のシューベルト以外はあまり近寄って来ない。絡むと面倒臭いとでも思っているのだろう。ベトとしては、1人で集中していたいのでその方が有難いのだが。
と、ベトは一旦思考を止めて、顔を上げた。来客以外の気配を感じ取ったのだ。それも良く知る同居人の気配を。
片方は金髪の美女、もう片方は前髪の長い痩せ柄の青年の2人組であった。
「あら、お客さん? 初めまして。私はリストよ」
「…知らない人無理」
リストと名乗る美女が笑顔で歓迎したのとは対照的に、青年は目線すら合わせず彼女の後ろに隠れた。昔から人見知りが酷い彼の名はショパンである。無論、2人共音楽の超人的な才能を持った天才だ。
「リストって…男じゃなかったの?」
確かメイサクという名の、オーバーオールの少年が首を傾げた。すると、リストは昔はね、と一言で片付けてしまう。この姿になった理由もまた、ハッキリしていないのだ。
__毎日見れば不思議にも思わんがな。
これについてはもう探る気も起きないというのが、ベトの率直な思いだ。


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