空色ばいく   チュチュ / 作


プロローグ   ~02~



こまりの通う幼稚園は小高い丘の上にある。
かわいい風見鶏が特徴だ。

帰り道は長い。片道45分。
今から、この長い道を上り下りをくり返さなければ
ならないのだ。

気が遠くなる。
でも、仕方ない。

菜穂ちゃんが病院にいかなければならないのだから。

(海にでもよっちゃおうかなぁ・・・)

そんなことを考えながら海に視線を移す。
太陽はもうあんなに上まで上がっている。

白い雲がソフトクリームに見えてきた。
よく考えれば、朝ご飯を食べていない。
こまりは、ちゃんと食べたのか心配になったが
それよりもお腹がすいた。
そして、疲れた。

(ここで止まって、少しだけ休もう。
お昼には帰ればいいんだし、ゆっくりしようかな。)

自転車を止めて、防波堤に上る。
ドラマの撮影みたいでおかしかった。

ここは海がちょうど見えるカーブの地点だ。
ここからの海の眺めは特別綺麗に見える。

波のさざなみ。
風が心地いい。

ずっとこうしていたくなる。



そのときだった。
雑音が聞こえてくる。

(バイクの音??)

思った瞬間、すさまじい音がした。

後ろを振り返ると自転車がない。
変わりに転倒している大きなバイクと人。

「だっ、大丈夫ですかっ!!?
あのっ、今、助けますっっ!!」

とは言ったもののバイクはかなり重く、
動かすことができない。

「アンタの力じゃ無理だよ。俺は大丈夫だ。」

「いえ、そんな感じには見えませんよ??」

「ちょっと、どいてくれないか。出れるから。」

「えっ?」

すると、男の人はするりと簡単に出てきた。
ヘルメットを取ったとたん、叫びそうになった。

髪はワックスでツンツン、おまけに明らかに不良。
微妙にメイクもしてるようだ。怖い。

「悪い。ごめんな。チャリ、つぶしちまった。」

「かまわないんです!!そんなモノ!
置いてた私が悪いんですからっ!!!ごめんなさい!!」

手と足ががくがく震える。

「おい、こわがってんじゃねーよ、馬鹿。」

(ひぃっ!!)

男の人の手が頭にかぶさる。

(殴られちゃうっっ!)

すると、顔が近づいてきて

「ごめんな、本当に。」

と一言。


ドキッとした。
今まで、こんな経験はしたことがない。

あんなに怖かったのに
そういった彼がとても優しく見えたからだ。

ドキッが止まらない。


そう、これが彼との出会いだった。