空色ばいく   チュチュ / 作


第1話    ~07~



夕食はおばがごちそうしてくれた。

「今日は主人がパリから帰ってくるのよ。」

「知ってますよ。一週間前からずっと
言ってましたもの。良かったですね。」

「ありがとう。正直、ドキドキしちゃうわ。
空色ちゃんもいつかこの気持ち、分かるはずよ。」

正直、一番ドキドキするのは私だ。
一体何の話が始まるというのだろうか。

「ねぇねっ、こまりは?もうすぐ分かるの??」

「あらあら。こまりちゃんはまだまだよ。」

「えぇ~??」


そうこうしているうちにおじが帰ってきた。

「まぁ、おかえりなさい。待ってたのよ。」

「やぁ、ただいま。パリというものは、疲れるな。」

「おかえりなさいませ。」

「空色ちゃんじゃないか。しばらく見ないうちに
綺麗になったね。今夜はゆっくりしなさい。」

「ありがとうございます。」

「さっ、みんなそろったところでディナーよ。」

おばは七面鳥の丸焼きやフレンチサラダなどを
ごちそうしてくれた。

「いつもはごめんなさいね。本当はあなた達も
ごちそうしてあげたいのだけれど。」

「そっ、そんなずうずうしいことはできません。
ここで暮らさせていただいてるだけでも
感謝してますから。」

食事中におじはパリの土産話を聞かせてくれた。
おばは普段の楽しい話や菜穂ちゃんのことなど
をおじに聞かせていた。

食事も終盤になってきた頃、おじが真面目な顔で
口を開いた。

おばがデザートの苺のパフェを持ってきた時だった。

「空色ちゃん。君に学校へ行ってもらいたい。」

「え?」

「君は桜ヶ丘財閥の後継者だ。
高等学校への進学はやはりしなければならない。」

一瞬、口が開けなかった。
言葉が出てこないとはこのことだ。

「でも、両親のお金は使えません。
たくさんあるとしても私の進学に使うだなんて。」

「そういうと思って手続きは私がしておいたわ。」

「おばさん・・・」

「あなたに学ぶべきことを学んでもらいたいの。
学費は主人が日本へ帰ったから、あたし達が
払うわ。安心してちょうだい。」

「そんなっ!!そんなこと・・・」

「何だい?」

「わるいです。本当に、そんな。」

「遠慮はしなくていいっていったでしょう?
私達はもう家族同然よ。違うって言いたいの??」

「・・・おばさん。・・・おじさん。」

「私立の『英光明第一学園』っていう高校だけど
いいかしら??編入ができる学校はここの他は
偏差値が低すぎるとこばかりでね。」

「どこでもいいですっ。そんなっ。本当に
感謝してもしきれないです。」

目が熱くなるのを感じた。
視線を横に移すとこまりが不思議そうに笑っていた。


制服も教科書も全て届いていた。
このことはだいぶ前から決めてくれていたらしい。


「もぅ、ケーキ屋は閉めようと思ってるんだけど。
いいかしら??」

「えっ?」

「駄目??」

「あのっ、駄目っていうか。えっと・・・」

「あなたが続けたいのなら続けてもいいわ。
でも、私はもう関われなくなってしまったわ。
あなたが後継者に戻るまで私達で経営したいの。」

「じゃあ、私が頑張ります。」

「そう。わかったわ。」


苺パフェがとてもおいしい。
ピンク色のシャーベットが暖かく感じた。