空色ばいく チュチュ / 作

第1話 ~04~
結構キツい。
後ろのタイヤの辺りがへにゃっとなっている
自転車を押すというのは思ったより疲れる。
(痛ッッ!!)
ふぅ、これで何回目だろう。
バランスを崩してこけてしまう。
(はぁ・・・遠いなぁ。)
日が照ってきて暑い。
そのとき、聞き覚えのある音がした。
後ろを振り返ると前が少しへしゃげたバイクが
近づいてきている。
バイクは目の前で止まり、キキィッと音を少しならせ
「近くねえじゃん。家。」
とあの彼がニカッと笑って一言。
*
こ・・・言葉が出ない。
できればここから飛び降りたい・・・
怖い・・・怖すぎる!!!
「キャァァァアァァア!!!!」
「しっかりつかまってろよ!とばすぜ!!」
「嫌っっ!!やめてぇぇえ!!!」
必死に彼の背中にしがみつく。
とばしすぎだ。
彼は頭がどこかおかしいのではないかと真剣に思う。
「風になったみたいだろ??気持ちよくね??」
答える余裕はない。しがみつくだけで精一杯だ。
「お、アレ、アンタの家か?」
スピードをおとしてくれた。
「え・・・・、あ・・・あれ・・違うけど・・この・・・近くだから
・・・もう大丈夫・・。ありがと。」
「大丈夫かよ?悪い、いつもの癖でさ。
とばすのって気持ちいいもんだろ?
チャリより良かっただろ???」
「良くないっっ!!怖すぎだよっっ!!私、初めて
ジェットコースターより怖いの乗ったよ。」
「はははっっ!!お前のチャリは俺が処分して
日曜に金払うよ。家にくるから。」
「いやっ、家じゃなくて、あの場所にしよ。」
「何で?」
「私っ、あの場所が好きなの。
日曜はあの海が見えるカーブでよくいるから。」
「ふーん。アンタもよく遠いとこまでいくな。」
「だって、好きだから。」
「そんじゃな。」
「えっ。」
「何だよ?」
「・・・ううん。何でもないよ。」
「あっそ。じゃ、日曜にな。昼頃に。」
「うん。ありがとう。送ってくれて。」
「あぁ、ま、当然のことだよ。じゃあ。」
彼はいってしまった。
今度こそ本当に。
少しだけ、安心したような、だけど寂しいような、
そんな不思議な感覚。
(まさか・・・これが恋なの?)
あの『ドキッ』もこの気持ちも。
(だけど、まさかね。そんなはずない。
だって、初恋の人があんな不良っぽい人だなんて。)
まだ、どこかで響いてる。
それを忘れさせるように風が強く背中を押した。

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