空色ばいく チュチュ / 作

第1話 ~05~
「空色ちゃん、どうしたの?手がとまってるわ。」
「あっ、すみません。気をつけます。」
ケーキ屋は定休日とはいえ、この間に生地やクリーム
などの準備をしなければならない。
「疲れているのね。ごめんね?菜穂が風邪でね、
こまりちゃんのおむかえは私が行くわ。」
「いつもすいません。」
「あら、それは言わない約束でしょう?」
「あっ、そうでしたね。ふふっ。」
「空色ちゃん。じゃぁ、生地ができたらもう
お休みしてね。これからずっと。」
「え?」
「ふふふ。大事なお話があるのよ。
それは主人が帰ってきてからにするわね。」
(??・・・どういうことなの??)
嫌な予感といい予感がする。
おばの口調からするといい知らせなのかもしれない。
だが、最悪の知らせが待ち受けている。
・・・・としたら、胸がさわさわして
不安でしかたなかった。
ケーキの生地はきつね色で柔らかく甘い香りを
はなっている。
「じゃぁ、菜穂の面倒を見てくるわ。
あとはよろしくね。」
「はいっ。お疲れ様でした!」
「お疲れ様っ。」
ケーキ屋は私の部屋のすぐ横にある。
言い忘れていたが、おばは家を三軒もっている。
同じ敷地内に、一番立派な家と
少し小さいが、綺麗な家。
そして、もう一つは小さなケーキ屋だ。
私達は少し小さな家を貸して貰い暮らしている。
おばには本当にお世話になりっぱなしだった。
私の母がおばの姉だ。
『桜ヶ丘』の家柄は元華族の立派な家柄だった。
私の実家は今は空き家だがかなり立派な屋敷だ。
初めておばの家に来たときは嫌な目でみられる
と思っていた。
だが、違った。
笑顔で優しく迎え入れてくれたのだ。
そして、高校に進学させてあげられないと
いうことに涙してくれた。
(おばさんには、感謝しても感謝しきれないわね。)
ふと、窓の空をみる。
真っ白な雲が優しく空を包んでいた。

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