空色ばいく チュチュ / 作

第1話 ~06~
私は自分の部屋へと帰った。
少しこぢんまりとした家だが
こまりと私だけ暮らすにはもったいないほどの
大きさである。
キッチンやトイレやお風呂はもちろん、
部屋の数は全て合わせて五部屋もある。
貸して貰っている部屋なのでいつも綺麗にしている。
私の日課はいつも掃除が入っている。
朝は早く起きて少しだけ勉強をする。
ケーキなどの勉強ではなく高校の勉強だ。
中学はまずまずの成績だったので、
本来なら難関私立の『城ヶ崎学園』に進学だった。
だが、私立のため、お金がかなりいる。
両親のお金はたくさんあるが、ほぼ多くのお金は
母と父がイギリスで公演会をするためのお金だった。
大切なものを使うわけにはいかない。
おばは高校に行く方が大切だと言ったが
どうしても使うことができなかった。
父がピアニストで母は桜ヶ丘財閥の娘。
母は父に習い、素人ではあるが
ソプラノ歌手として、同行していた。
そういう訳で公演会のためのお金は絶対に使えない。
母と父が残した音楽をなくせないから。
だから、高校にはいかず自分で時間を見つけては
参考書で自主学習をする。
昼は主にケーキの焼き方や商品などに磨きをかける。
おばのケーキ屋とはいえ、ほとんど私の店に
最近はなっているのだ。
夜はこまりと夕食を食べ、適当にテレビを見て
普通に暮らす。
「お姉ちゃんーー!ただいまッッ!!」
「あら、こまり。おかえりー。」
「ねぇね、今日ね、お夕食は作らなくていいって。
おばちゃんがね、いってたよ。」
「えっ?そうなの?」
「うん。ほんとだよ。」
(あ、もしかして、例の話のことなのかな。
はぁ、緊張してきちゃう。)
「お姉ちゃん??どうしたの??」
「えっ?何でもないよ。それより、うさぎさんと
遊んできたらどう?寂しがってたよ。」
「えぇ!?本当にー!嬉しいなぁ。」
こまりがパッと顔を輝かせた。
「気をつけてね。」
「はぁーい。」
(ふぅ、これでやっと勉強ができる。
一応、学校にはいっていないとしても
常識ぐらいは知っておきたい。
私も一応、財閥の娘なんだし、大きくなれば
あの屋敷に戻って、仕事をしなくちゃ。)
ノートを開き、数学の参考書も開く。
訳の分からない数式がまるで私の心境みたいに
思えておかしかった。

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