イナイレ*最強姉弟参上?!*

作者/ 伊莉寿



第12話



る「ねえ、この島に霧って出るの?」

ビクン、とお母さんの肩が反応した。しかし、答えない。

る「ねえ、何を知ってるの?」

あの顔の陰り。何かを知っている、と考えての質問。

桜「るり…私はこの島が大好き。でも、それ以上にあなた達が大好き…」

る「?!」

桜「だからっ、断れなかったの…!」

――吉良財閥の依頼を……!!

当然、2年前の私には分からない。吉良財閥が私達を人質にとっていた事なんか。

桜「あの霧はね、依頼されて私達が作ってしまった“人を狂わせる霧”。フェイ君達のご両親はその霧の犠牲者。」

る「……!吉良財閥は、そんな霧を使って、何をしようとしてるの…?!」

お母さんは、目線を私に合わせて、首を横に振った。

分からない、と。

桜「その霧、持ってっちゃったから。さっきの人達が。」

あっさりとお母さんは言った。あまりにもひどいと思う。

る「お母さん、無責任すぎるよ!!!止めようって、今思ってないの?!」

桜「止める…霧の狂う作用を、無効化…そっか。できるかもしれない!!!!」

ありがとう、るり。そう、笑顔でお母さんは言って、お父さんに報告に行った。

――良かった。本当に、そう思っていた。

翌日から、私とかいとも参加して、霧の作用を無効化するスプレーの研究がスタートした。

案はいくつもあった。

しかし、吉良財閥は手強かった。

狂わせる成分の他に、別の成分を新たに組み込んでいたのだ。

それでは、お母さん達と作ったスプレーは効かない。

何度やっても、無駄。1日、1日と過ぎていく。

霧は毎日の様に目撃され、その作用で狂う人が私の家の近くの崖から、笑って落ちていく。

止めても、柵を立てても、聞く耳を持たない。

お母さんは再びやつれだした。

上司らしき人と電話をしていた、あの時もお母さんは悩んでいたのに、私は何もできなかった。だから、力になりたい…

でも、結局スプレーは完成せず、2年経ち、現代から1カ月前。

大「瑠璃花、魁渡。来い。」

雨の日の夕方、1階のリビングにいた私と魁渡は、2階の寝室に居るお父さんに呼ばれた。

――嫌な予感がする。

それは、かいとも同じ様で、顔をしかめていた。

しかし、行かない訳にはいかない。階段を上がり、2階の寝室に行った。

か「…これ…」

渡されたのは、透明な、青い6角形の粒。

桜「私達の手では、もうこの島を救えない…」

る「お母さん…」

どうして。もう、あきらめるの?

そんな事、言えなかった。毎日、窓に目を向ければ、霧が出ている中、崖から島民が飛び降りていく。

ここまで追い詰められるのは、ある意味あたりまえ。

お母さん達が選んだのは、自殺の道。

桜「嫌なら、いいから。…先に逝くね。」

思わず目を閉じて、ゆっくり開けてみた。その時には、もう彼らは…。

か「…俺、水がないと飲めない。」

かいとは階段を下りて1階に行った。

私も、飲まないと。真っ白になった頭でそんな事を考えてたっけ。

口に入れた。

る「……苦ああ!!!かいと、これ、ゴーヤ級!!!」

そう叫んで、1階に駆け下りていった。…姿を見ると、笑ってしまう…

こうしてかいとは苦い思いをせずに済んだ。



私達が選んだ道は、自殺ではない。吉良財閥に敵を討ちにいくこと。

か「じゃあ、船の手配を…」

かいとが電話を入れる。その時。

る「!かいと!伏せてッ!!!」

〈バリイイーン!〉

窓ガラスが突然割れ、入ってきたのはサッカーボール。

か「なんで…こんなことにサッカーを使う??!」

雨の向こうに見えた人影。それは、金髪の2人。

殺意をその瞳に燃やし、黒いサッカーボールに足をかけているのは

か「…何でこんなことをする?!フュイ、フェイ!!!」

――その2人は、すでに1カ月前に、島を出て行った2人だった。