幻想終着点 [ inzm11/BSR ]

作者/ 桃李 ◆J2083ZfAr.



【円秋or円夏sss/一之瀬が秋に依存気味】



 彼はずっとサッカーが好きで、そんな彼が好きだったから、私は何も言えなかった。そんな無理を言っても、彼は振り向いてくれないだろうし。私は彼が好きで、彼のサッカーも好きで、どうしようもなく好きだった。もう過去形になってしまったけれど。仕方がないのだ。彼は私を求めてはくれなかったけど、一之瀬くんは私を必要としてくれている。私がいないと嫌だと、泣いてもくれた。だから私は、きみを想うことを諦めるよ。素敵な時間を有難う、とだけ言っておこうかな? 嗚呼、でも、やっぱりあと一つだけ。

 きみに出会えて良かったです。
 願わくば、円堂くんにたくさんの幸が訪れますように。


(  失恋に望む。  )




 どうしてこんなことになってしまったんでしょう?
 あんなに大好きだったのに、私はもう彼の笑顔に魅力を覚えられなくなっていた。サッカーは好きだったけど、何故好きになったのか、そんな理由さえ忘れかけていた。ねえ、何故かしら? どうして私、こんなに哀しいのかしら? 円堂くんは私を好きだと言ってくれているのに。失恋した訳じゃ、無いのに。ぐるぐると廻る感情をどうすることもできないまま、薄らを微笑を浮かべた。引き攣っているのは自覚しているし、仕方がないと諦めている。きっとそうなんでしょう、雷門夏未?

 私は今、好きだと言われて、失恋に気付いたんだわ。
 好きだと私に告げる貴方を好きではないと、こんなところで気付くなんて。


(  恋したキミは夢の中  )




 好きだよ、夏未。
 そうはっきり自覚したのは、いつの話だったか。俺は鈍いから、本当はもっと前から想っていたのだろうけど。まあ、遅かれ早かれ想いが伝わって良かったと思う。本当に、良かった。――そのはずなのに。なぜか胸の動悸が治まらない。緊張とかそういう類のものではなくて、恐怖というか、後悔というか。お互い無得点で迎えた延長戦で、ゴールを許してしまったような喪失感。嗚呼、どうしようなんて怖いんだ。手がぶるぶると震え、頭が痛む。……あ、思い出した。そう言えば、彼女を好きだと自覚したのは、一之瀬がアメリカから来た時だったかなあ。その時、秋は、俺の知らないところで、一之瀬の前でボロボロ泣いたらしくって――、あれ? なんだよ、この胸騒ぎは。

 まるで、もう戻れないと知っているような、


(  終わった初恋に酔いしれる  )