罪とDesert Eagle~

作者/檜原武甲 ◆gmZ2kt9BDc

 

第二階戦 『藤崎灯&桜策士VS二川一&二川一』 Part2


上の階から爆音が響き渡った。壁を軽く揺らすほどの爆音は多分どっかの仲間が戦っているからだろう。
「コード24!!」
策士の叫びと同時に灯は後ろへ跳躍し、二人の医療用メスでの攻撃を躱した。攻撃が当たらなかったためか、兄弟は宿題を忘れたときのような焦りを表していた。
「……叩きつけろ」
灯は二人の頭めがけて今度はとげが付いていないナックルを同時に振るった。兄弟は転びそうになっていたところを狙われたため対処法を考える暇もなく叩きつけられた。
「「痛い!! 頭が割れる!!」」
地面とのファーストキスを逃れた兄弟は後転しながら後頭部を押さえていた。
「まったく……青あざが」
「できちゃったよ」
青あざができる予定らしい所をゆっくりなでながらゆっくり立ち上がろうとするところを灯は逃さなかった。
「……死ね」
立ち上がるということはまず足をあげてから胸をあげて元の姿勢に戻すことだ。ならば、片方に喉へのアッパーを利かせながらもう片方へ首の骨へ肘鉄を食らわせればよい。灯はナックルをもういちど握りしめると走り出した。
「そんな簡単にやられてたまるかよ」
右目を隠している……兄がバク転するようにして上手に灯の顎に爪先での蹴りをお見舞いした。そのカウンターが決まっている最中に弟は全力で奥の部屋へ走って行ってしまった。
 顎にヒットを食らったものの舌を噛み切らずにすんだことをホッと思っていたが、その心境を顔に出さずに逆に渋い顔で弟が逃げて行った先を見つめながら
「……おい。仲間が逃げたぞ」
「あれ。やっぱり逃げちゃったか~ あいつ、戦いになると逃げちゃうんだよな」
兄は仲間が逃げたのにまったく動揺せず、逆に一人のほうが強いと余裕のそぶりで肩をすくめた。まず、仲間に裏切られても気にせず、逆に「それが当り前だ」と言っているこいつらテロリストの考えがまったくわからない。策士は、溜息をつきながらコードを発した。
「コード13」
コード13、個々撃破の暗号だ。弟はほっといてまず、兄を倒すことが効果的だと判断した。
「……了解」
灯はつぶやくとナックルをさっきの戦闘用とげつきナックルを装着した。赤く鈍く光る金属は背筋が凍るぐらい恐怖を与えることができるだろう。大体の人間はビビるのだがこの二川一(兄)は逆に高笑いをしてその武器を出迎えた。
「そんな武器でも無駄無駄無駄!! 宣言しよう。僕は勝つ!」
「五月蠅いな……」
灯は右腕でのフックで兄の肩を狙った。鋭いうなりをあげたフックは――――

 肩の肉に食い込んだ。
「!?」
灯が驚くのは当然だろう。避けられるのがわかっていたから左のアッパーの準備をしていた。余裕そうに笑う兄の顔を見て冷や汗が一滴垂れた。
「僕は整形外科の医者なんだよな」
そうつぶやくとメスを素早く灯の右腕に振るった。