罪とDesert Eagle

作者/檜原武甲 ◆gmZ2kt9BDc

どたばた短編集♪

非日常的な赤毛の不運で不幸な人生生活 i話「僕はまったく空を飛んだことは無い」-4


「うるさいだと? それは悪かった。私に気づかれないように喋ったみたいだが、実は私も韓国語がわかるのだよ」
ギルは気分が悪くなる笑いを止めると謝ってきた。静かに日本語をしゃべった。僕は悪口を見抜かれて後悔よりも驚愕していた。悪口を見抜かれたのはこれが初めてだ
「私は、英語と日本語、韓国語、中国語、フランス語、ドイツ語、イタリア語などいろんな言語を知っていて普通に使える。」
「君はいったい何のかな…… 普通の会社員じゃないだろ」
「会社員とはだれも言っていない。そうだね……お前ぐらい面白い人間はいないから私のニックネームを教えてやろう。
私のニックネームは

【天災と天才】

と言っていいだろう。 もちろんギルは偽名だ。私の本名は【シュリ】。」
静かに地球滅亡を待っている男という人間と認識した。ギル……いやシュリはいったいどんな仕事についているのだろうか……とても気になる。
 シュリは静かに東さんの口からアーモンド臭をもう一度確かめると、座席の方へ向かった。さっきまで僕のことを見ていた乗客はそれぞれ好きなことをして空港までの暇つぶしをしていた。

「OK…… La causa di forza maggiore disse di essere una mossa di genios……」(さぁ…… 天才と言われた天災が動きますよ……)

シュリはイタリア語でつぶやくと座席へ向かった。だれにもわからないようにイタリア語で喋っただろうけど残念ながら僕はイタリア語を知っている。親が英語の塾にいれようとして満員で入れず、不運だがイタリア語を習いそれでも英語の塾が満席で中国語を習った。だから英語塾の席が空くまでいろんな語学を学んでいる。だから彼と同様いろんな言語知っている。ほんと僕は不運で不幸だ…… 
「おかしいな…… 青酸カリウムは即死という訳ではなく最大15分は生きることが出来る…… なのに【ダイイングメッセージが無い】」
座席を探してもまったく変わっていない座席を見て、シュリは考え込んだ。10分間静かに目をつぶっていたが突然溜息をついた。
「【ダイイングメッセージは無い】これがダイイングメッセージだ。私には謎が解けた。お前も静かに眠るといい……【お前は絶対に無実だ】」
シュリはウインクをすると名刺を手裏剣のように僕に渡し、優雅にビジネスへ戻って行った。何故シュリにはわかったのだろうか……もうすこし探ろう。そして東さんのために犯人を見つけてやる!!
 気合を入れなおして席を立つと通路を挟んだ左側の席の20代の日本人女性が腕をつかんだ。長く伸ばした黒い髪で薄化粧の美人だった。
「会長のために静かに眠ってください」
その声はさっきの男の声だった。この女、いや男なのかもしれないがそんなことどうでもいい! 犯人を見つけたのだから!
 腕をつかみ高々に犯人を捕まえたと言おうとしたとたん、眠気に襲われた。
視界が歪み、頭痛が始まる。睡魔に苦しみながら後ろを向くと注射針を持った【シュリ】だった……
「……シュリ! 何故君は!」
「東さんの為だよ。頼む……お前と私の為に眠ってくれ」
――――ほんと僕は【赤毛】だ。



今、僕はアメリカで刑務所エンジョイしているのでなく、アメリカのニューヨークで買い物を楽しんでいるわけでもなく――――


「この前は大変失礼しました」


日本の普通の一軒家で薄化粧の美人とテーブルでお話をしていた。
「……確かに失礼しただろうよ。ま、僕は無実だったから日本へ戻れた」
お茶をすすった。宇治のお茶は渋みがあることで有名……
「私の名前は二四三七三(ニシミナミ)です。変な名前でしょう? 南の予定でしたが、祖父が勝手に三七三にかえたのです」
フフフと口を隠して優雅にしゃべった。この人もシュリのような人間だなと思った
「僕もアメリカで、じっくり東さんがなんで殺されたかを考えて正直分かったよ……」
また一口お茶をすすると溜息とともに言葉を吐き出した
「あまりにも裏社会で生きていたから消したかったんだろ?」
永田町と言えば日本の政治家がわんさか群がっている場所……そして闇献金が多いところ……トップに近づけば近づくほど裏社会へ染まっていたのだろう。だから家族や会社にも悪影響を与える……
「そうですね。祖父はいろんなところへチョッカイを出していましたから。」
「だから、殺したと?」
普通の一般人の会話とは思えられない……
三七三さんは馬鹿にするように嘲笑した。
「その通り! 会社も消されたら大変なので…… しかし、あの金髪の人は頭がいいですね。貴方も考えたらあの状態が危なかったとわかったでしょう?」
冷静に考えれば【人が死んでいるのにほとんどの人が静かに思い思いのことを飛行機の中でしていたということが異常だった】。
三七三さんはお茶を飲みほし僕の方へ湯呑をスライドしてきた
「ま、祖父をこの世から消すのは大変だったよ。なにしろ【一度に何百人のも仲間を入れるのは】…… おかわりね」
つまり、三七三さんは【飛行機内を自分の手に染まった人間だけにして殺そうとした】。 密室だからできることであり、膨大な金が必要だ。
 ゆっくりとお茶を注ぎこぼさないようにコトンと机に置き頬杖をついた。
「……一秒の間に僕とシュリが入ったのは不運だった。 もしあの時暴れていたら僕は殺されていた。ねえ、【シュリ】」
お茶を注ぐと三七三さんへスライドで渡した。その同時に玄関が開いてオールバックのシュリが現れた。
「ま、私が麻酔を持っていたからお前を助けることが出来たわけだ。良かったな。私にもお茶をくれ」
「ほらよ。シュリは天才だからな」
天才発言を別に喜ぶ様子もなく普通に席に着いた。何故訪ねてきたのかは一目瞭然だろう。そして僕が落ち着いているのはいつも【ややこしい、めんどくさい場所に遭遇するからだ】
「そして、【保険金が欲しさに殺したんだろ?】」
シュリが三七三を人とは思っていない様だ。顔が恐ろしい顔つきになり、飲むときも荒くなる。
「ええ、私には大切な夫がいますから。」
すらっと挨拶をするように殺したことを認めた。三七三さんはいろんな修羅場を乗り越えてきたのだろう
「僕の予想ですが…… 東さんが心臓病で余命宣告されていたのでは?」
三七三さんの喉が止まった。一秒ぐらいたつと静かに喉は動き始めた
「へぇ…… なんで?」
「まず、僕が眠っていた時「【爆弾】を持参してきたか?」という意味の言葉を話していました。僕は爆弾を【ニトログリセリン】だと推測します」
ニトログリセリン……超危険な爆弾の材料と言ってもいいが、これは心臓病の薬にもなる。
「へぇ…… 良く見抜きましたね。」
「さらに……東さんは【まるでこれが最後の飛行機】のような発言と行動をしています。まだ60ぐらいの現役で下っ端の時を思い出して泣くなんて死ぬ前の人間しかいませんよ。」
僕の推論を聞いた三七三さんは湯呑を静かに置くと机の上に札束を置いた。見たところ100万ぐらいだろうか……
「ま、これを迷惑料と思ってください。ではさようなら」
札束を冷たく見つめたシュリは帰ろうとする三七三の背中にきつい言葉をふっかけた
「これで黙っていろと?」
「別に喋ってもいいですが……【命は無いと思ってください】」
すこし笑った顔を見せるとドアを豪快にあけ僕らの視界から消えて行った



僕はゆっくりと心の中でこめられていた日本語をしゃべった。
「東さん…… 貴方…… 殺されそうになっていることを知っていたでしょう……」
シュリも気が付いていたようで驚きもせずにお茶を飲んだ。僕は、口直しと茶菓子を持ってくると静かに貪った。
「ま、どう見ても薬を持ってきていないし…… 死因が【心臓病】だったことも東さんの策略と言っていいでしょう。これもまた【孫娘への愛】だったのか……」
僕も静かに呟いた。最初から飛行機内で死ぬことだと思っていたのだろう。だから苦しそうになり、僕のことをからかったのだろう。孫娘の為に自ら毒を飲んで、汚れていた自分を代償に孫娘を助けようとした。だから【ダイイングメッセージ】を残さなかった。これは単なる考えで会って違うかもしれない。

だからと言って確実に、



【僕を容疑者に仕立て上げようとした人生最後の悪戯はとんだ迷惑だ】


「ねえ。シュリ……」
茶菓子を食べながらぼそぼそと呟いた
「ん? なんだ?」
「一緒に探偵やらないか?」
「俺も思ったんだ。不幸と不幸が掛け算になって幸運になるといいな」
「いや……足されてもっと不幸になると思う……」
僕とシュリは固い絆を結んだ。
結びながら今回の一連からこう思った。

【本当に僕は赤毛と言われて当然だろうな】


                  ――――とある非日常的な赤毛 i話終――――