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*117*
「ブルーハワイで」
「はいよー」
私が店員さん――恰幅のいいおばさんに頼むと、笑顔で頷きながら答え、かき氷を作り始め、ブルーハワイをかけて私に渡してくれた。ちなみに、美樹と凜、そして逢坂くんは私より先に購入していたため、私の隣で美味しそうに食べている。
「イチゴがやっぱり一番よ」
美樹は頷きながら頬張る。凜も同じく頬張りながら言う。
「俺は俄然レモンだ」
すると、美樹は頬を膨らませて言った。
「イチゴのほうが美味しいわよ」
「だから、それはレモンだって」
めげずに凜も応戦。しかし、美樹だって負けない。
「いいや、イチゴよ」
「レモンだ」
「イチゴよ」
「レモンだ」
「はいはーい、喧嘩はそこまでだよ〜」
「メロンは口を挟まないで!」「メロンは口を挟むな!」
「え…」
というような感じで、逢坂くんは跳ね除けられてしまった。
私はそれを傍からクスクス笑いながら見る。
「やれやれ、本当お子様なんだから」
逢坂くんは肩を竦めて見せた。私も逢坂くんを真似して言う。
「でも、それが2人の可愛い所なんだけどね」
私は逢坂くんが笑ってくれることを予想して言ったのに、相に反して彼の表情は険しくなっていく。
「どう、したの…?」
私が恐る恐る尋ねると、逢坂くんは声を低くして言った。
「今、2人って言ったよね?」
「…言ったけど、それがどうかしたの?」
「…ちょっとね」
そう言って、彼は拗ねたようにぷいと顔を背けた。しかし、すぐに何か思いついたようにこちらを見た。
「今度はどうしたの?」
「いや、綾川さんのかき氷美味しそうだなーって思って」
「これ?」
私は手の中にある青いかき氷を見た。そして、そのままそれを彼に差し出した。すると、彼は笑いながら「違う違う」と言った。
「え?何が違うの?」
「俺のはメロンだからさ、これをブルーハワイに入れたら味が混ざっちゃうだろ?」
「確かにそうだね」
「だから食べさせてよ」
「うん、分かった。…って、ええ!?」
私はノリで頷いてみたものの、数秒後に意味を理解。なぜ私に!?と心底驚いた。
「ダメ?」
「ダメじゃないよ、全然ダメじゃない」
「それじゃあ、はい」
そう言って、逢坂くんは口を開ける。
…人生初の”あーん”だ。しかもその相手が好きな人とは…!!これほど緊張することはない。
私はそんなことを思いながら手の中のかき氷を一口掬って彼の口元に持って行った。しかし、次の瞬間ちょうど美樹との喧嘩が終わったのか、凜が物凄い速さで私のスプーンの中のかき氷をさらって行った。…そう、私は凜と初”あーん”をしてしまったのだった。