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恋桜 [Cherry Love]  ――完結――
作者: 華憐  (総ページ数: 176ページ)
関連タグ: 恋愛 三角関係 高校生 美少女 天然 
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*154*

――金曜日

昨日より一層ご機嫌の母に見送られ、学校へ登校。いつも通り授業を受けて、美樹や優那、涼香と他愛もない話をする。放課後になると、逢坂くんと一緒に看板制作を行った。

「……で、出来た!!」

私が立ち上がりながらそう叫ぶと、逢坂くんも嬉しそうに微笑みながら

「完成だね」

と言った。

「ここまでたどり着くのに4日かあ〜。逢坂くん、ここまで一緒に作業してくれてありがとう!」

私は4日分のお礼をするために、深くお辞儀する。すると、逢坂くんは慌てて私と同じようにお辞儀した。

「そんなことないよ。俺だって楽しかったし、お礼を言うのはこっちだよ」

そしてしばらくそのままの状態を保っていると、その沈黙が何だか可笑しく感じて、互いに笑い合った。そして、十分に笑いあった後は、看板が出来たことをえーちゃんに報告し、看板の出来栄えを見てもらった。

「おお〜〜!!凄い凄い!こんなに派手なの初めて見たよ!」
「あ、派手なの駄目でしたか?」

私は少し肩を落としながら言うと、えーちゃんはにこにこしながら言った。

「違うわよ!あたしが言ってるのはそういうことじゃなくて!桜田高校にも新しい風が吹いたってこと!」

私はその言葉を聞いて、えーちゃんの顔をまじまじと見つめた。そして、えーちゃんが真剣に見つめ返してくるのを見て、改めてその言葉が嘘ではないことを知った。

「本当ですか!?嬉しいです!!」

私は飛び跳ねながら喜びを露わにすると、えーちゃんも逢坂くんも微笑んだ。その笑みが、可笑しくて笑ったのか、微笑ましくて笑ったのか、それとも他意があったのかは分からないが、取り敢えずプラスのイメージと言うことで捉えておこう。

「それじゃあ、この看板は月曜日のLHRでお披露目ね。はい、それじゃあご苦労さん。暗くなる前に帰りなさい」
「はーい」
「はい」

こうして校舎を後にした私達。今日はそこまで暗くはないが、逢坂くんに送ってもらい、胸いっぱいの気持ちで玄関の扉を開けた。すると、久しぶりの男物の靴がきちんと揃えて並べてあるのが目に飛び込んできた。間違いなく……父だ!!私はそうとわかれば、ローファーを脱ぎ捨て、スリッパに履き替えると、急いでリビングに直行した。そして扉を開け放った瞬間に、まだスーツ姿の父がソファで横になっているのが見えた。

「父さん!お帰り!」

私はそう言いながら、父の首に抱きつく。しかし父は寝ころんでいる身。私に首に抱きつかれると、酷い目に合うわけで……。

「うぐっ」

エリートらしからなる、低い呻き声の後に下から私を睨みあげる父。しかし私はそんなのお構いなしで話を続ける。

「クロアチアはどうだった?この間、EUに入った国でしょ?すっごいリゾート地なんだってね。私も行きたかったな〜」

私がうっとりしながらそう言うと、父からの一声が。

「真奈、どけ」
「はい」

私はそう強く命令口調で言われると逆らえない。なぜかは分からないが、昔からの性質なのだ。性質と言えばなんだか変なのだが。

「賢司くん」
「ああ、菜々」

台所から豪勢な食事を運んでくる母。本当に幸せそうだ。聞いたところによると、某有名海外大学のサークルで2人は出会ったとか。現在、母は43歳。父は45歳である。

「今日は賢司くんが好きなものを用意したのよ〜」
「おお、本当だな。上手そうだ。……真奈、いつまで制服でいるつもりだ」
「父さんだって同じじゃない」
「何言ってるんだ、俺は……」

そう言って、自分の服装に目を落とした父。目に飛び込んできたスーツ姿の自分に何度も自分の目を擦っている父の姿があまりにも滑稽で母と2人で笑い転げた。そしてそんなこんなで、私と父はルームウェアに着替え、食卓に着いた。久しぶりに家族全員揃って囲む食事はとても美味しかったし、楽しかった。母の腕が良いというのもあるけれど、やはり一番は場の雰囲気だ。いつだって母の料理をまずいと思ったことはないが、これほどまでに美味しいと思うことはあまりない。何かが欠けている感じがするのだ。それがまさに父であるわけだが。

「真奈、学校の方はどうだ?」
「すっごく楽しいよ?親友も出来たし、あと3週間もすれば体育祭が始まるの!父さんはいつまで日本に?」
「そうだなあ。俺は、2週間後には北京へ行かなくちゃいけないんだ。あの煩い奴らに呼び出されてな。まったく、昔のよき中国に戻ってほしいものだ。なぜあんなに利己的になったのか……。理解できん」
「まあまあ、賢司くん。落ち着いて」

母が宥める。

「そっかあ。父さん、私の学校には来れないんだね……」
「すまんな、真奈。毎回行ってやれなくて」

父が眉尻を下げて申し訳なさそうに言う。私はこの時決まって微笑むことにしている。父に余計な心配を掛けて、仕事に支障が出ないようにと。

「大丈夫よ、父さん。あと2年は桜田高校にいるんだから」
「そうか、それならよかった。文化祭、行けたら出席するよ」
「うん!」

私はその言葉に胸を膨らませながら、その後の食事を楽しんだ。そして、風呂に入り、自室に戻った後、ふと亮さんの顔が思い浮かんだ。そして、水曜日からずっと触れていない、あのメモ書きをカバンの中から探り当てた。丁寧な綺麗な字で書かれたそのメモには”逢坂亮”の文字と、彼の電話番号とメールアドレス、そしてご丁寧に、LINEのIDまで書かれていた。これは連絡しないとダメな気がしてきた。もう既に約3日経っているわけだけど……まあ、いいよね。私はそう思い、スマホに手を伸ばした。するとその瞬間に、徹くんの言葉を思い出して、取り敢えずLINEだけということにした。LINEでID検索をすると、すぐに見つかった。そして友達登録をして、トークルームで話しかける。

”こんばんは”
”お久しぶりです”
”綾川真奈です”
”3日程、音沙汰なしですみません(・・;)”

私はこれだけ打ち、暫くしても既読のメッセージが付かなかったので、これ以上待っても無駄だと判断し、その日は眠りについた。

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