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*64*
「テスト返しするぞー」
今日は、毎時間、そう言いながら各教科の先生が教室に入ってくる。
その度に皆の表情には緊張が走った。
ちなみに3時限目の今は、数学?のテスト返しだ。
「名簿順で行くぞー。逢坂ー浅井ー綾川ー石島ー…」
こんな風にして名前を呼ばれては皆はテストを受け取りに行く。
そして、緊張しながら点数が掛かれている部分だけをチラリと見る。
その瞬間に、喜ぶ人と嘆く人に分かれる。
1-Bはほとんどの者が嘆いていた。
そんな様子を見て、先生は苦笑い。
しかし、すぐに先生は顔を引き締めた。
「いいか、皆。よく聞け。今日の昼休みに”張出”がある。それをよく見るんだ」
「どうしてですかー?」
後ろの方の席の男子が挙手しながら質問する。
すると、先生はふっと笑いながら答えた。
「このクラスの中に学年トップスリーがいるんだよ」
「…えぇ!?」
教室中にどよめきが起こる。
私も興味を示した。
「一体、誰なんだろう…?」
私がそう呟くと、凜が振り向きざまに前の席を指した。
「えーっと、それはつまり逢坂くんってこと?」
「そういうこと。絶対こいつがトップだろ。だって、あいつの数?の点数見てみろよ?」
私は言われるがままに身を乗り出して逢坂くんの答案を見る。
ま、丸しかない!?
ていうか、間違えてない!?
「てことは…まさか」
「そのまさかなんだよなー。こいつ満点だぜ?」
そう言って、笑う凜。
確かに笑うしかないかも。
「ちなみにお前は何点だったんだ?」
「えー、嫌だよ。言いたくない」
「なんだよ、それ」
少し不機嫌になる凜。
「わかった。じゃあ、凜も見せてくれたら私のも見せる」
「OK。それじゃあ、交換だ」
私達はそれぞれの答案を交換した。
そして、同時に開く。
「え?おま、え?」
凜が困惑気味に私の答案をまじまじと見る。
私も凛の答案を見る。
凜の点数は98点だった。
私の点数はというと…
「お前、99点だったんだな。あとちょっとで満点じゃねーか」
「凜だってそうじゃない」
「2点の差は大きい」
そう言って、溜め息を吐きながら私の答案を返してくる凜。
負けたのが悔しかったのだろうか?
頭を掻きながら問題と自分の答案を見比べている。
そして暫くすると、自分のケアレスミスに気が付いたのか「あっ!」という小さな呻き声と共に、物凄く悔しそうな顔をしているのが見えた。
そういうとこ、昔から変わらないよね。
そんなことを思いながら彼の後姿を見ていた私だった。