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恋桜 [Cherry Love]  ――完結――
作者: 華憐  (総ページ数: 176ページ)
関連タグ: 恋愛 三角関係 高校生 美少女 天然 
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*65*

――食堂にて

「聞いてよ、真奈!」

美樹が常に学生に人気の”日替わり定食”を前にしながら、口を尖らせて言う。
私はというと、持参のお弁当だ。
いつも自分で作っている。

「どうしたの?」
「あたしの数?…」
「うん」
「死んだ…」
「ポテトチップスはお供えしてあげる」
「そーじゃないでしょ!」

美樹のそんな的確な突っ込みに安心感を覚えた。

「で、何点だったの?」
「聞きたい?」
「うん、聞きたい」
「しょーがないなぁ?じゃあ、教えてあげる。あたしの点数は…89点でした!」
「全然悪くないじゃん!」
「でしょ?死んだってのはあたしの喜びを隠すためよ!私の周り皆…逢坂は除くけど、そのほかは60点台だったのよー」
「そ、そうだったんだ」

私は美樹のあまりにも凄い勢いに負けそうになっていると、美樹が自ら墓穴を掘るような発言を…。

「ちなみに真奈は何点だったの?」

そうやってにっこり微笑まれると、私が点数を告げた次の瞬間の行動と表情が怖いんだけどなぁ。

なんてことは言えるわけもないので、言うしか道は残されていなかった。

「私の数?の点数は…99でした」
「…へ?」

美樹はナニソレ?オイシイノ?とでも聞きたそうな目で私を見てきたかと思えば、今度は手に握っていたお箸の先で皿をカンカンとたたき始めた。

「ですよねー。ですよねー。知ってましたよ?真奈さんが超お勉強ができることくらい。でもねーさすがにねー、あたしの数?がねー、馬鹿にされたようにしか思えないんだよねー。そりゃねー、あたしがねー妙な自信を持ちながら真奈に聞いちゃったのが悪いんだけどねー」

と永遠に続きそうな愚痴を言い出した。
私はそれを見て、苦笑しながらもコメントをすることはなかった。
いや、コメントできなかったのほうが正しいかな。
だって、今の私が美樹になんと声を掛けても嫌味にしか聞こえないだろうから。

「はぁ、何かもう、疲れた」

愚痴り終えたのか、美樹はそう言って、机に突っ伏した。
いつの間にか2人とも完食していた。

「よし、それじゃあ、そろそろ食堂は出ますか」

美樹のその掛け声とともに立ち上がり、私達は食堂を後にする。
勿論、美樹はちゃんとトレー等を返却口に返却しに行ったが。

「さーて、何する?恋話でもする?」

美樹の提案に私は目を輝かせながら答える。

「I\\\'d like to!!」
「どうしてそこ英語?」
「次の授業が英語…文法のほうだから」
「そうだったっけ!?うっそー。そんじゃあ、それもまたテスト返ってくるじゃん!」
「だね」
「あー、もう!真奈に理由なんて聞くんじゃなかった!余計に暗い気持ちになった」
「あはは」
「…それだけかい!」

そんな会話をしながら私達の足は自然と1-Bへと向かう。
こういう時って大概は屋上に行くのだろうけれど、春って夏よりも紫外線が多いらしいから…。
メラニンが増えたら、シミになっちゃうしね!という訳で教室でしゃべる。

「うわ!人、少ない!」

美樹が教室の扉を開けての第一声はそれだった。

「確かに、人少ないね」

そう相槌を打ちながら私も教室中を見渡す。
本当に3人しか人がいなかった。
1人は本に熱中しており、1人は机に突っ伏しており、1人はヘッドホンで音楽を聴いていた。

「…なんかこの学校って自由よね」
「そう?」

美樹が苦笑いした理由もよく分からずに、私は答えると、適当に近くにあった椅子に腰かけた。
美樹もそれに倣って椅子に腰かけた。

「あ、なにはともあれ、最近はどう?」
「最近?そーだなー。特には。というか、メーアドすらも交換してなよ」
「え!?そうなの!?なんで!?」
「だって、恥ずかしいじゃん」

恐らく今の私の顔は真っ赤に染まっていることだろう。
だって、美樹がニヤニヤしているのだもの。

「そういう美樹はどうなの?」
「何が?」
「メーアド」
「あぁ!それは大分前から交換済み」
「え?そうなの!?」
「うん。だって、あたしら中学の時からの付き合いだよ〜?」
「そういえば、そう、だね」

私はその言葉に、笑みを浮かべながらも心のうちに寂しさをひしひしと感じた。

私には、凛と3年間ものブランクがあるんだね。
美樹の恋は応援したいはずなのに、どうしてこんな気持ちになるんだろう?
…あぁ、そうか。
幼馴染の特権である”時間共有”を美樹に奪い去られたような錯覚を感じたのか。
本当、私って最低。

私はそんな黒い気持ちと葛藤しながら悶えていると、美樹が心配そうに私の顔を覗き込んできた。

「どうしたの?」
「…ううん、何でもない」
「そっか」

こういうところが、私は好き。
今までの友達って何かあるたびにどんちゃん騒ぎでそれはもう落ち着けるのが大変なくらいだった。
それに比べて美樹は意外とあっさりしている。
そんなところが付き合いやすい所だし、美樹と一緒にいたいと思う1つの理由だと思う。

「そうえいば!今思い出したんだけど!」
「うん、何?」
「逢坂のお兄さん、どうやって見よ!?」
「あはは、またそれね」
「何よー?」
「別にー」
「まぁ、いいけど。それにしても、あの時の逢坂は怖かったなぁ」
「うん」
「視線だけで人を殺せそうな目だった」
「あはは、言い過ぎだよ」
「ううん、過言ではないね。きっと、余裕がなかったんだね、逢坂にも」
「どういうこと?」

私は美樹の言った意味が分からず、首を傾げる。
すると、美樹は「やっぱ、何でもない!」と言って、話題転換をした。

一体、美樹は何を知っているのだろうか?
逢坂くんはどうしてあんなにも怒ったような顔をしたのか…?

私の心の中に疑問が積もるばかりの中間テスト開けだった。

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