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恋桜 [Cherry Love]  ――完結――
作者: 華憐  (総ページ数: 176ページ)
関連タグ: 恋愛 三角関係 高校生 美少女 天然 
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「…な!真奈!」
「…ん?」

美樹の荒々しい声で気が付いた。

「…美樹?」
「あ、もう良かったぁ〜。さっきから話しかけてるのに、ずっと上の空でさ〜、どうしたのかと思ったよ」

そう言って、心底安心したように笑う美樹。
私はそんな美樹に対して謝ると、辺りを見渡した。

…もうバスの中、なんだね。

全く気が付かなかった。
記憶の中に入り込んでいたような感覚が今でも残っている。

…あの子の名前、聞くの忘れたなぁ。

先程の記憶をもう一度思い返しながら思う。

そういえば、”兄さん”って呼ばれてたよね。
お兄ちゃんだったんだね。
もしかすると、あの子の弟さんは私と同い年かもしれないなぁ。
だって、あの子は私より2・3歳年上みたいだったし…。

考えを巡らせていると、またしても美樹の声が聞こえてきた。
今度は先程のような不安げな顔ではなく、”呆れ”と言った方が正しい顔をしていた。

「どうしたの?」
「どうしたの、じゃないわよ。もう…。本当、さっきから何考えてんのよ?」
「んー、昔の思い出を振り返ってた」
「昔の思い出?」
「うん」
「何で今更?」
「わかんない」

そう、そこが疑問なのだ。

美樹に手を握られて、笑顔で何か言われた後に、フラッシュバックのように記憶の続きが鮮明に思い出された。
だが、私が先程見た記憶の中にはそれらしい仕草は全くなかった。

…ということは、この記憶にはまだ続きがあるってことなのかな。

「まぁ、そんなことよりさ、せっかく沖縄なんだし楽しもうよ」

逢坂くんが、話題を断つように笑いながら言う。
美樹もそれに賛同した。

「そうよ。昔の思い出を思い出すなんて向こうに帰ってからでも全然できるじゃない!ね?」
「そうだね。そうだよね。沖縄、せっかく来たんだものね」

私は半ば自分に言い聞かせるように言う。

「そうよ!そういう訳で…先程逢坂にあげたお菓子、奪還作戦を決行する!」
「なんだそれ?」

凜が美樹の話に食いつく。
というか、美樹が凜のこと好きって聞いてから、2人が話しているのを見ていると、どうしてもニヤニヤしてしまう…。

「ちょっと、真奈!何二ヤついてるの?」

自分で言って、数秒後理由に気付いた美樹。
顔を真っ赤にして

「ぜ、前言撤回!そ、そういえばさっき浅井、あたしに何か質問してなかった!?」

と言って、逃げた。
しかし、まぁ、”凜”からは逃げられてはいないのだが。

「おう、聞いたぜ?お菓子奪還作戦って何するんだって」
「あ、ああ!そのことね!それなら簡単よ。…もう一度逢坂と勝負するの」
「へ〜。面白そうじゃん」

逢坂くんも勝つ気満々でその話に乗る。

「で?今度は何するの?」
「さっきはババ抜きだったから…今度はUNOをやるのよ!」
「UNOでも俺は一緒だと思うが」

凜は横目で逢坂くんを睨みながら言う。
しかし、それに対して美樹は不敵な笑顔を浮かべながら言う。

「あたしがどれだけUNOが強いか…教えてあげようじゃない」
「それじゃあ、お手合わせ願おうかな。美樹師匠?」

逢坂くんも挑発したような笑みを浮かべる。
美樹もそれに乗る。

「いいわよ。その師匠って呼び方、この試合が終わる頃には冗談で呼べなくなってると思うけど?」

こうして、なぜか私まで巻き添えを食らって、お菓子を掛けてUNOが始まった。

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