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四章残された希望論
白い、暖かい光が僕を包む。そして、流れ込むアオバの記憶。
走馬燈なんて、見たことはないがそれに酷似したものを見ているのだろう。生まれた土地の事、両親の愛、夢への苦悩、度重なる挫折、恋した女性の素顔、忘れられない友の死。
全部、全部、僕が知るべきでないこと。アオバの人生という歴史。それが、滝のように、鉄砲水のように、流れ込む。
頭を切り開かれ、その中に無理矢理押し込まれるような感覚。自らの人生か錯覚しそうなほど鮮明に、記憶の奥底に眠らされていく。
あまたの音が、あまたの感触が、あまたの感情が、心に刻まれていく。刻まれる心は、悲鳴をあげている。自らが、今誰なのか、
分からなくなりそうだ。
悲しかった、辛かった、嬉しかった、楽しかった、切なかった、面白かった、歯がゆかった、憎かった、
愛したかった。
知りたかった。
分かってしまった全て、感じた当事者はもういない。望んだ当事者はもういない。学者として、感情を解き明かしたかったアオバはもういない。
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