完結小説図書館
<< 小説一覧に戻る
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~ 100~ 110~
*89*
五章空虚な持論
帝国所属研究所、大層な名前の場所。誰もが知らない、地下の施設。戒学李の管轄で活動する場所である。
「あー。全く、最悪だ。」
狼は、あの地下水路を脱出していた。そして、この場所を訪れている。何故か、それは近かったから。それだけであり、特に意味はない。
「しかし、この研究所、本当に研究所かよ。風呂、飯、ジムまであるぜ。お、衣類も全サイズある。旅館としたら、最高だな。」
そう、研究所でありながら、すべての施設が揃っている。部屋の数もかなり多い。
「おう、狼じゃねえか。」
後ろからの声に、驚いた声も動作もせず、答える。
「忌瀬。お前も、風呂目当てかよ。」
「当然な。帝国の城はよ、兵士もみぃんな、おんなじ風呂でよ。きたねぇこと、きたねぇこと。この上ねぇ。垢まみれで、何処が良いのかわからねぇな。」
忌瀬、そう呼ばれたこの男。名を藤河忌瀬という。鍛えられたその体は筋骨がはっきりと見てとれる。そして、その肉体には黒い入れ墨があり、顔にもにた模様のそれがある。凶悪さと、粗暴さを感じさせ、同時に威厳のようなものが同居している。その濃く渋い顔や、鋭い眼光は年忌の入った強さを余すことなく伝えている。
PR