完結小説図書館
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~ 100~ 110~ 120~ 130~ 140~ 150~
*118*
「あとどんだけ走りゃあいいんだ!?」
「あと少しのはずだ。でっかい柱が見えるはず」
じれったそうに叫ぶ仁の問いに冷静に郡司は答えた。
そのまま走っているかぐやたち一向。
すると、足元に物凄い寒気を感じた。
「うううっ。なんだか寒〜い……」
「さっきまでは平温だったのに……!?」
寒そうに肩を抱きしめる美也子を温めるように手を握るかぐや。
警戒しながらきょろきょろとあたりを見渡すが、特に目立った痕跡もない。
無言で秀也は通路の左側にあった扉に向かって歩く。
すると、躊躇なく如月で一刀両断した。
切り刻まれた扉とともに出てきたのは胴体が2つになってしまったイリヤだった。
「殺気が丸出しだ。こんなものど素人でもわかるぞ……?」
「はははっ。さっすがレオンを倒すだけの人間が集まってるだけのことはある。俺の殺気が出ていたとはいえ、すぐにばれちゃうなんてさ」
胴体が2つになっているはずのイリヤの体。
だが、その胴体の間から冷気が漏れ出し、ガチガチと音を立てながら少しずつ元に戻っていく。
「……レオンは最初敵に隙を与えるような行動をしていたみたいだけど――俺はそうはいかないよ。すぐに…終わらせる!クローディア様の為にも!」
――――−バキバキバキバキ!
と、上空から氷柱が作られる。
「美也子!」
「OK!」
秀也に名を呼ばれた美也子はすぐさま輪廻ですべての氷柱を叩き落とす。
完璧に叩き落された氷柱を見て、イリヤは軽く拍手をした。
「おー、やるじゃん。じゃあこれは!?」
ヒュゴォォォォ……。と凄まじく冷たい雪風が横から吹き抜ける。
吹き抜けるだけではない。
確実にイリヤ以外の全てを死に向かわせていた。
「うおっ!さっぶ!」
「アトラスの時とは格が違うってことね……!」
「当たり前だよ。弱気ゆえに生を手放したアイツとは違う。確実に騎士と姫以外の命は貰っていく」
手を突き出しながらイリヤは勝気な笑みを浮かべて言う。
くしゃみをしながら仁とかぐやはブルブル震えていた。
秀也は容赦なく仁の頭を殴り飛ばす。
「動け。もうすれば少しはましになる。……おい!」
「【おい】でわかる私って天才かも〜」
秀也に顔を向けられた美也子は全てわかったように輪廻を郡司とかぐやの足元に向けて連射した。
もちろん2人にけがはないが、疑問はある。
「な、何すんのよ!?」
「素直じゃないなぁ、秀也は。行こうぜ、かぐや」
「ちょっと、教えなさいよ!」
引きずられながらかぐやは郡司の腕に連れ去られてしまった。
その様子を見てイリヤは少し不機嫌になり、チッと舌打ちをした。
「あーあ。貴重な生贄たちが。まあいいや。こいつら殺したら後で捕まえよ」
「できたらな!」
仁が好戦的な目を浮かべて槍を構える。
美也子は肘で秀也の脇を突いて言う。
「素直に言えばよかったのに〜。ここは俺に任せて先に行けって」
「黙れ。只、ここが俺たちの戦う最良の場だと考えただけだ」
「またまた〜。じゃあさ、俺等ががんばったらお礼にかぐやに告白しろよ、秀也」
「……!?ふざけるな、なぜそうなる」
雰囲気に似つかぬ仁の言葉にガンスタイルを構えた秀也は驚きであんぐり口を開ける。
便乗するように美也子も言った。
「私もそれがいいな〜。だって、10年以上も片思い拗らせてる秀ちゃんもう見たくないし」
「黙れ!」
「きゃんっ」
耐え切れなくなった秀也は顔を真っ赤にしながら美也子の頭を思い切りチョップした。