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*38*
「はぁあー……」
「……何かしら雑音が聞こえるわ……」
「雑音って!?酷いなぁ、零奈」
髪の色は茶色でセミロングにしている高身長な少女――陸奥花江(むつはなえ)は疲れ切った表情でため息をついた。
怪訝な目で花江を見る脛くらい銀髪のツインテールの少女――西園寺零奈(さいおんじれいな)に向かってブーッと頬を膨らませる。
かなり西園寺に手痛く言われるものの、慣れているのかサラリと流す花江。彼女らは隊に所属するAランクバスター。
西園寺はオールラウンダー、花江はガンナーである。
彼女たちは今日、学校を返上して防衛にあたっている。
「雁渡さんが今いないからって気を抜かないことね……。よくある映画ではあなたみたいなモブがこうやって油断しているところを怪物に喰われるってことがよくあるわよ……」
「モ、モブ!?か、怪物!?」
淡々と話す西園寺に花江は思わず体を硬直させる。
なんだか妙にありそうで怖かったのだ。
すると、近くからズゥゥン……。と、何か大きいものが現れる鈍い音が響いた。
「……近くにいるようだね、殲滅者」
「多分……。しかも、1体だけじゃない様ね……。雁渡さんに連絡を取りつつ、二手に別れましょう……」
「OK!」
背中合わせだった体勢から、2人は一気に各々の場所へと駆け出して行った。
No7 お家大騒動
「捕まえたわよカラスっ!」
「グギャーガギャー!」
執念と根性とコンビネーションでついにコソ泥カラスを捕獲したかぐやと郡司。
その場所は山沿いにある道路だった。
かぐやの自宅から数キロ離れているこの地だが、首飾りのためだ。
仕方がない。
「……?かぐや。このカラス首飾り、持ってないぞ」
「何言っているのよ。確かにこのカラスが……」
郡司はまじまじと捕獲されたカラスの全身を見る。
彼につられる様にかぐやもカラスの体を見る。
だが、どこにも首飾りはなかった。
それを理解したかぐやはギャーッと大きく悲鳴を上げた。
「な、何で!?確かに咥えてたでしょっ!?ま、まさか飲み込んだんじゃあ……」
「いやー、カラスは賢いからあんな得体のしれないもん飲まないと思うし、カラスって光物を集める習性があるらしいから多分首飾りを取ったのもそれだと思うけどな」
「じゃ、じゃあ捕まえてる最中にコイツが落したってことになるじゃない!」
ダッとかぐやは駆け出し、ガードレールに身を乗り出すように真下にある木々をキョロキョロと見渡した。
……が、どこにも光に反射するような物体はなかった。
「……ゴメンかぐや」
「何諦めてるのよ!?こうなったら最後まで探すわよ!」
「……本当に、悪い」
「やめてよ何だか永遠に見つからない気がするじゃない!」
※
「よかったぁ〜。もし5体ぐらい殲滅者がいたらどうしようかと思ったけど……。1体で良かったよ」
ジャコッと花江は自らのガンナー用ブレイブである弓型の武器、【リカバリー】を布に収める。
そして安心したように静かにため息をついた。
空を見上げていたらキラッと眩いものが視界に入る。
「……ん?あれは……?……いったぁっ!!」
ガン!と、花江の額に眩いものが直撃した。
痛さに悶えながらもその眩いものはしっかりとキャッチする花江。
「何なんだ一体」
そーっと手にあるものを見る。
「首飾り……?」
上品な装飾で作られている鍵型の首飾りを見て、花江は首を傾げた。