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*65*
―――ジャギン!!!!
アトラスのレイピアによる斬撃を受けたのは、かぐやだった。
彼によって凍らされた腕と斧の部分を力ずくで動かし、レイピアを受け止めたのだった。
覆われている氷の部分で腕が貫かれることはなかったが、刺し傷は受けてしまう。
痛みでかぐやの顔が歪んだ。
「……ぐっ……!」
「お前……何で。俺を庇う必要なんかなかったじゃねえかよ。むしろ、あんなお前を突っぱねた俺を放置したってよかったってのに」
「バカねアンタ。わたしの仲間がピンチだったら助けないわけないじゃない!」
呆れたようにいうかぐや。
―――今まで表面上だけの言葉を言うやつは腐るほどいた。
【あの人】以外は。だけど、こいつは。かぐやは違う。
きっと仲間のことは“死んでも”見捨てないのだろう。
「こ……この下賤め!!姫君に血を流させるなどをぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!」
「動きが直線的すぎんだよ、てめえは」
「許さん……!許さぁぁぁん!!」
ビリビリと空気が振動する。
ブワッと広がる風圧、つまりアトラスの殺意にかぐやと花京院は体勢を崩さないようにそれぞれのブレイブを構えた。
その瞬間、花京院は今まで見せなかった淡い笑みを浮かべた。
「………お前に対して敬意を表してやるよ。知ったかぶりに戦闘をしている奴の言い分よりかは、お前が隊長になら俺は従うのによ」
「そりゃどーも!でも残念だけど隊長は郡司だからね!」
「……マジかよ。でもまあ、そこらへんのゴミどもよりかはマシか」
花京院の言葉にかぐやは勝気な笑みを浮かべる。
ザッと2人はアトラスの懐へ飛び込む。
花京院がアトラスの胴体を狙い、横一線に斬ろうとするがそれを読んでいた彼はそれを氷の盾で防いだ。
「油断してるんじゃないわよ!上よ!」
「しまった――――……っ」
ズバッ!!
と、かぐやの斧による攻撃がアトラスの肩に直撃する。
「く、そ……」
血が出る肩を抑えながらアトラスは顔を歪ませる。
(……少しよけられた……!腕一本はさすがに無理か……!)
スタッとかぐやは着地する。
刺された腕に痛みが走るがそんなこと気にしていられない。
その時、ズサッと崩れ落ちることがした。
かぐやは振り向くと、花京院は苦しそうに腹部を抑えながら膝をついていた。
「……こんな傷でこのザマか。……情けねぇ」
「空悟!」
慌ててかぐやは彼のもとへ駆け寄る。
血があふれ出ている。このまま治療を施さないと死んでしまう可能性も―――。
ギッとかぐやはこの状況をどう打破しようかとアトラスを睨みつける。
だがアトラスはスッと眉を少しひそめて、かぐやを指差した。
「―――姫君は少しお転婆のようですね。申し訳ありませんが少々大人しくしてもらいます。―――来い!!」
―――ズズ。
地中から現れたのは全長5メートルぐらいの人型の殲滅者だった。
この形のものはかぐやでも初めて見る。
「これは我々の国で作った殲滅者の中で最新物。名をドルーグといいます。ほかの殲滅者に比べて戦闘力も防御力も比になりませぬ」
―――ドォォォォォン!!
ドルーグの手の一振りでかぐやの真横にあった地面は粉々に崩れ去った。
このまま花京院を庇って戦えば確実に死ぬ。
覚悟を決めるしか―――……!
そう思っていたかぐやだった。
「やっと見つけた。かぐや」
「郡司!どうしてここが……ってまた“観えた”のね」
「そー」
ヒュウウウ……。と風に靡かれながら現れたのは郡司だった。
かぐやは驚いたように彼を見上げた。
郡司を見てアトラスは目がこぼれるぐらい目を見開いて、彼を睨みつけた。
「貴様ぁぁぁぁ!!裏切り者のクソッタレナイトが!!気取ってんじゃねーぞ!!!!」
「……こりゃ、古文書以上だな」
スッと郡司はブレイブを抜く。
いつもの、如月ではなく、だ。
「ぶっ殺す!!!!!」
怒り任せで郡司に向かってくるアトラスに向かって【別の刀】を抜いた。
かぐやはそれを1度だけ見たことがある。
それは彼の【ソウルブレイブ】だったからだ。
「――――――慄け、蒼龍(そうりゅう)」