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*76*
「……さっき竜堂先輩呼ばれてたよね。なんかしたのかな」
「するわけないだろ!あのヒーローのかぐやさんが!」
「脇、開いてる。隙あり」
「あ、ずりぃぞ!!」
訓練室で特訓している聖と櫟。
話し合いながら対戦していたのだが、ボソリと櫟はかぐやの名を出した。
そんなことない、と反論した間にできた隙を狙って櫟は聖に弾丸を撃ち込んだ。
『活動維持体限界、緊急脱出』
無機質な音声とともに訓練待機室まで戻された聖の体。
ちゃん口すると同時にど持ってきた櫟に向かって感情のまま、ビッと彼に指差した。
「正々堂々と勝負しろよ!」
「したじゃん。心理戦もちゃんとした戦略だよ」
相変わらず人を食ったように笑う櫟を見てムキーッと聖は顔を真っ赤にした。
そんな彼を無視して、櫟は通路側を見ながらロビーのソファーにどっかりと座って聖に行った。
「……竜堂先輩が呼び出されたのと同時にさ、秀也さんも会議室“そっち”に向かったんだよね。これってさ、“何かないわけない”と思わない?」
「……確かに最近の三城さん目つき凄いからな―。何かはありそうな予感はするけど。そういや、お前三城隊志望だっけ?」
「うん」
天井を見上げながら聖の問いに櫟は大きく頷いた。
そして、どこか憎々しげに目つきが鋭くなったのだ。
「―――姉さんを殲滅者に殺されたからね。あの隊は俺にピッタリなんだよ」
※
「お前も体験したと思うが――神光国家の使者が来た、しかも、お前を狙っているということはわかっているな?」
「ええ。そのくらい知ってるわよ」
会議室のいすに座る勇魚の重低音に物怖じせずにかぐやは答えた。
そしてスッと勇魚が指差したのはかぐやの首飾り基――【王の鍵】。
「先ほど梶原君と研究員がその王の鍵を調べ上げた結果、神光国家、あるいは殲滅者に呼応するブレイブだということが判明した。まだ謎はあるが―――」
「取り上げる気?」
かぐやは睨みつけるように勇魚を見る。
弁解するように梶原はかぐやの顔を見た。
「違うんだ、かぐや。これは……」
「そう、捕えてもらっても構わない。そして、お前の存在が市民に危険が及ぶかもしれない。これからお前はこの本基地に常在してもらう」
「な……!勇魚さん、話が違うじゃないか!」
あまりにも予想外な言葉だったのか、梶原はガタッと椅子から思い切り立ち上がった。
見守るように瀬良隊は壁に背を向けていたが、話す権利は彼らにはない。
ただ、黙っていた。
かぐやは少し震える手で王の鍵を握った。
「……確かに、私の存在は一般市民に被害を及ぼすかもしれない。でも絶対にこの王の鍵は渡さない!ブレイブとかストライドとかじゃなくて、これは竜堂帝唯一の形見なのよ!?渡せるはずないじゃない」
ジャリッとかぐやは半歩下がった。
梶原は「かぐや……」と何か言いかけた。
すると、そんな梶原を邪魔するかのように勇魚はフゥ、とため息をついた。
「……仕方ない。予め準備しておいてよかったよ」
「……どういうこと……?」
怪訝な顔をしてかぐやは勇魚を見る。
すると、ブンッ!と首襟を思い切り掴まれ、開いていた窓を目掛けて投げられたのだ。
「何よ行き成り……!」
一瞬、地面に叩き落とされるかと思ったが、そこは会議室のすぐ前にあるベランダのような場所だった。
ベランダのよう、といっても大きさは10倍ぐらいあるのだが。
そのため、かぐやは尻餅をつくだけですんだ。
「いった……」
「立て、竜堂」
チャッと冷淡な声がする。
立ち上がろうとしたかぐやの首元には如月が付きつけられていた。
恐る恐る少し首を上げたら、そこには秀也がいた。
「ここでお前には三城と戦ってもらう。ここでお前が負けるようであったら先ほどの件、すべて了承してもらおう」
「待ってください勇魚さん、いくらなんでも……!」
梶原が勇魚に食いつくが、彼は聞く耳も持とうとしない。
さすがにこれはやばいと察した瀬良も秀也に言葉を投げかける。
「おい秀也!こんなこと……!相手はかぐやだぞ」
「……俺はただ……命に従うだけだ!!」
―――−ズバァァン!!!!
と、かぐやを一刀両断にする。
だが、彼女は転がることで難を逃れていた。
「―――制限時間は無し。好きに暴れろ」
無情に、勇魚の声が響いた。