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*77*
「……いいのか?瀬良さん。三城のこと止めなくて」
「それに竜堂さんもですよ。引く気が見られない」
「………」
ベランダを覗き込むようにしてかぐやと秀也を静観する瀬良隊。
草薙と麗は真剣に彼に言うが、瀬良は腕を組んだままで何も言おうとはしなかった。
――ただ、思い出していた。
【ここ】に来る前のことを。
―――秀也?お前も呼ばれたのか?任務でか?
――……瀬良さん……!最近また眠っていないようだな。みんな心配しているぞ。
―――今に始まったことじゃないだろ。俺はいいんだよ。……あんときの償いでさ。寝るよりだったら働いたほうが贖罪になると思ってな?……おいてか話逸らすなよ。
―――呼ばれたのは任務じゃない。
―――任務じゃなかったら……何でだ?
――――後で、わかるさ。
No13 かぐやと秀也
「王の鍵を守るためだったら……こうするしかないのね」
「ああ。俺を殺せたら、だ」
「!!」
秀也の言葉に大きくかぐやは目を見開かせる。
「殺す」という言葉に反応してか、斧を持つ手が震えていた。
そんな彼女を見て苛立ちを隠すことなく舌打ちをした。
そして勇魚に顔を向ける。
「勇魚司令官。戦闘を開始してもよろしいのですね」
「先ほどもいった通りだ」
「了解」
簡潔に会話を終わらせる。
そして如月をしっかり握ると、かぐやに思い切り迫る。
―――ガキィン!!
―――キィィィン!!
「どうした!剣筋が鈍っているぞ」
「そういうアンタは如月に集中しすぎよ!リザルテ!」
――――ドォォォォォン!!!!
かぐやは背後に隠していたリザルテを秀也に浴びせる。
直撃はしていなくとも、煙で目くらましにはなっているはずだ。
そう思っていたのだが――背中にパンパンと乾いた音とともに鈍痛が走る。
「……いつの…間に……っ」
「お前がリザルテを発射したときだ。すぐにお前の背後に配置した。リザルテの煙は前方にしか噴射されないからな」
「さすが秀也ね!」
「……ぐっ!」
すぐさまかぐやは秀也に足かけをした。
体勢を崩した隙に、かぐやは斧で秀也の脇腹を斬った。
だが、背中へのダメージが残っているためか、かぐやは苦痛で顔を歪ませた。
何事もなかったかのように秀也は立ち上がる。
大したダメージではなかったようだ。
「―――なぜ戻ってきた」
「それは」
「一回姿を消したお前が!!なぜ戻ってきた!?」
ギィン、キイン、と。
如月と斧の金属の交わる甲高い音が響き渡る。
かぐやの言葉を聞かない秀也。その眼は怒りに満ち溢れていた。
「聞いて秀也!わたしは……」
「言い訳なんぞ聞くか!!!!」
「うっ――――……!」
ズザァ、とかぐやは後ずさってしまった。
今、確実に劣勢なのはかぐやだった。
先ほどより格段に剣筋が上がった秀也と、その戦う相手が秀也だという事実がかぐやを戦わせないようにしていた。
否。おそらくこれが目的だったのだろう。
これが成功すれば王の鍵とかぐやの軟禁は確実だ。あの堅物な勇魚がやりそうなことだ。
瀬良はしばらく考えた末――――……。
「悪いな、草薙、麗。ちょっくら出てくるわ」
「!?どこに?」
「あの……肝心なところで出ないクソSランクのとこだよ!!」
珍しく怒り任せに叫んだ瀬良。
バン!と乱暴に扉を閉める。
麗と草薙は顔を見合わせて、のちに梶原の顔を見た。
梶原も瀬良と同じ考えだったらしくその表情は少し笑顔だった。
「……絶対郡司さん殴られるパターンだよね」
「絶対にな」