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デッドバスター 
作者: KING ◆zZtIjrSPi.  (総ページ数: 151ページ)
関連タグ: 友情 バトル 
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*84*

―――勇魚司令官に、かぐやの王の鍵の強奪を任命されたとき背筋が凍った。
 だってそれは、あの帝さんのものなのに。遺品なのに。
 8年前かぐやがボロボロになりながら、大切にしたものだったのに。

「……その任務、三城隊は丁重にお断り……」
「……神光国家は竜堂を狙う。この任務断れば奴が攫われる確率が格段に上がる。……そうなるよりだったら、本基地に置いて“縛って”おいたほうがいいだろう?」

 それって、監禁じゃないか。そう思った。
 けど、かぐやを守れるなら。
 そう思った、誓ったはずなのに。
 当の本人は俺を目の前にすると悲しそうな眼をして。俺は心にもない言葉を投げつけて。
―――嗚呼。結局俺はあの子を傷つけることしかできないんだ。



No16   ここにいて



「かぐや………っ」

 音を立てずにかぐやは落ちていく。下は瓦礫やコンクリート。直撃したら死は免れない。
 息をのむ様に吐かれた郡司の言葉。
 だが、反射的には対処できなかった。花京院は車いすに乗っていたので尚更だ。
 担架に乗せられた秀也は大きく目を見開いた。

――――秀也!秀也はわたしを置いて行ったりしないでよね!
――――……お前がそこまで言うなら、そうしてやる。仕方ないがな。

 幼き日のあの約束。
 彼女はきっと覚えてもいないだろうが俺はずっと覚えてる。
 誓ったんだ。姉さんと帝さんが亡くなったあの日。どんな汚い手を使ったってかぐやを守る。
 飛来じゃなくて俺が。
 それが俺の使命――――!

「かぐやぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

 担架が壊れるほど秀也は高くジャンプし、かぐやの場所へ落下した。
 落下スピードも速く、すぐにかぐやに追いつくが風圧がすごくて目もまともに開けられない。
 だが、それも構うことなく秀也はかぐやの服をつかんだ。

「く……そっ!」

 ガッとかぐやを抱きかかえると秀也はギンと彼女を睨みつけた。

「おい大丈夫か!?」
「え、ええ……」
「……お前、落ちたら瓦礫に直撃するところだったぞ」
「嘘!?危なかった……」

 真下を見てかぐやは至極驚いたような声を出す。
 そんな彼女を見て呆れたように秀也はため息をついた。
 秀也は呆れながらも彼女を横目で見た。

「……着地できるだけの体力はあるのか?俺もそろそろ限界だが」
「無理ね」
「おーい秀也!」
「秀ちゃーん!かぐやちゃーん!」

 どうしようかと悩んでいるときに、真下から仁と美也子の大きな声が聞こえる。
 2人は大きく手を振っていた。
 仁は手をメガホンのように形作る。

「さっき梶原さんがでっけー簡易式トランポリン渡してくれたからよ!何とかここで着地してくれよなー!」
「着地点しくじっちゃダメだよ〜〜〜〜!」

 仁に続くように美也子も叫ぶ。
 美也子は手早く簡易式トランポリンを作り上げる。
 そして秀也に親指でグッとサインした。
 いつもは殴られる対象の2人だが、今回ばかりは感謝の気持ちでいっぱいだ。

「……しっかりつかまってろ」
「わ、わかってるわよ!」

 秀也に言われるがまま、ギュッとかぐやは彼の服の裾を握りしめた。
 落下してしばらくしてからポーンと跳ね返る感触を覚えた。
 つまり、無事着地することができたのだ。

「いやーびっくりしたぜ。瀬良さんが慌しく走るから事情聞いたらお前ら戦ってるっていうからさ〜」
「何で残念そうなんだ」

 どこか残念そうに口をとがらせる仁。
 秀也は冗談じゃない、と軽く仁の頭をかぐやを抱きかかえながらチョップした。
 続けて美也子もホッと一息ついたように胸をなでおろした。

「しかも着いたら着いたらで2人とも落下してんだもん〜。梶原さんにトランポリン持ってけって言ってたのはこういうことだったんだ〜……」
「落ちたのは竜堂だ」
「え〜?でもさっき名前で呼んでたし、かぐやちゃんをお姫様抱っこしてるし秀ちゃんかぐやちゃんの中で絶対レベル上がったよね!王子様ランクが!あとちょっとで郡司さんに追いつくんじゃない〜?」
「……真っ二つにされたいようだな」

 どこかからかう様な美也子の口調に軽く殺意を沸く秀也。
 もしかぐやに聞こえてたらどうするんだ、と言いたかった秀也。
 だが仁が秀也の腕の中にいるかぐやを見て「おお」と軽く声を上げた。

「かぐやの奴、寝てるわ」
「じゃあさっきの会話は……」
「聞かれてないね〜!って痛い痛い痛い!!!!」

 これでもかとぐらいに美也子の頭の中心部分をグリグリ殴りつける。
 彼女は痛みを堪えきれずに悲鳴を上げていた。
 秀也からかぐやをバトンタッチした仁は楽しそうにつぶやいた。

「―――寝かせてやろうぜ、かぐやを。ついでに秀也もな」



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