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しりとりシリーズ 『死す』の『その後』
……………………………………………………痛かった。
単純に痛かった、人って刃物で相当痛く感じれる、そんな存在だったのか、そう思いながら、俺は記憶が混濁する中、目を閉じてそう思った────
「起きろ、おい」
「はへぇ?」
男としては気持ち悪い声を出しながら、俺は目覚めた、周りが白い部屋に男が二人、女が一人いる──はて、此処は何処だろう? そして何で俺はこんな所で寝転がって居るのだろう?
「全く──昨日来た事も忘れているのか、お前は?」
金髪の男が俺の胸倉を掴む、えっと、いきなり何なんだ……?
そして俺は起き上がる、すると女が起こすのを止めるが、それでも俺は起き上がってみる、その瞬間、腹部に激痛が──何で俺の腹部が痛いんだ?
「安静にしなよ、昨日お医者さんにも言われたでしょ? 『あまり起き上がらないで下さい』って──」
「あの……それってどういう意味ですか? そして貴方達は……?」
俺が呑気な声で聞くと、黒髪のカジュアルなメガネの青年がいきなり立ち上がって、俺の胸倉を掴む、その時に金髪の男は俺の胸倉から手を離す。
「てめぇ! 昨日さんざ言ったってのに! 忘れんなこの野郎!」
すると金髪の男が俺に殴ろうとする黒髪の男を抑える。
「落ち着けって! 元番長!」
「そうよ、彼はまた記憶を無くしたのかもしれないのよ?」
記憶? 無くした? まず、この人達は何を言っているのだろうか?
「ん? 不思議そうなツラをしやがって……俺等はお前の友達だ、とりあえず、それを覚えとけ、そしてお前は腹の傷が原因で記憶を『ほぼ』無くしちまった、そう言う事だ」
金髪の男が言うと、茶髪の女の人が言う。
「まぁ、簡単に言えば、お腹の傷の所為で記憶が一時的に消えたって事よ」
「へぇ……それで貴方達が──」
「そう言う事だ」
黒髪の男の人が俺の胸倉を離す、そして座る。
「まぁ、呑気に生きようや、まだ時間は残っているからなぁ」
「そうよね、今からでも遅くは無いわ、ゆっくりと私達の思い出を作れば良いからね」
黒髪と茶髪の男女が喋る、この人が友達──何だか気さくそうだ。
そして俺は呑気に傷を治して、退院をする、目指すは自宅だ。
「あぁ、貴方ですか、退院おめでとう御座います」
猫耳カチューシャを着けた少女が俺に向かって言う、はて、この人は誰だろう? まぁ、良いか、自宅に戻って記憶を思い出さなくては──
「へぇ……俺に彼女が居たのか……」
その瞬間、今は治った腹部に痛みが走る、思い出したくないのか?
そう思いながら彼女の事を忘れようとする、さて、次は何の記憶を思い出したら?
「…………」
無言のまま、新聞を見つめる、自分に有益な情報は無いか調べてみる、無いかもしれないけど、一応は確認がしたい。
そして一か月分の新聞を見遣る、まぁ、結構有益な情報もあった、そして俺が入院している二週間で色々起き過ぎている、まずは、政権交代、他にも戦争とか──本当に戦争は勘弁して欲しい、日本に飛び火しなければ良いが──
そう思いながら新聞のチラシを見る、これは良い物を見つけた──そう思いながら俺は急いで準備をする──
三ヵ月後──
「さぁ、行こう──」
大きなリュックサックに、財布、縁が360度ある帽子を被り、ベージュの服装で俺は旅に出る事にした、旅をして少しは記憶が戻るかもしれない、そう思いながら俺は最初の一歩を踏み出す──その後俺こと青年はこの街に戻ってくる事は無かった──
どっかの田舎で元気に過ごしているか、逆に日本を飛び出ているかもしれない──
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