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しりとりシリーズ 『帝都』の『その後』 3 帝都戦争 開始
「ふむ、結構書類の処理は終わった、さて次は志摩が帰ってくるのを待つだけか」
そう言いながら椅子から立ち上がって、体を動かす、完全に体が鈍ってしまった、こうも平和だと平和ボケしてしまいそうで怖いな──そう思っていると、不意に戦車のキャタピラの動く音がする、何だ、と思いながら外を見る、何だ、予行演習か、そう思っていると急に戦車の砲台から弾を発射する、えっ? 何をしているんだ、戦車は?
そう思っているとその砲弾は何処へ行くのかと思えば皇居のど真ん中、天皇様が住んでいる場所に向かって砲弾を撃っていた、おい! 何をしているんだ!? 一応警邏なのでその戦車に向かって走って近付く、すると戦車から髭面のおっさんが現れて叫ぶ。
「俺は反乱軍だ! 今から天皇を殺す! そして新たな天皇にさせる! 死にたくなかったら逃げやがれ!」
何とも優しい反乱軍だな、心の中でそう思いながら俺は皇居に来ているお客さんを逃がしていく、すると反乱軍は俺に気づいたようで。
「お前、何もんだ?」
と、髭面の男がそう言うので、俺は丁寧に答える。
「俺は警邏の、久比里色也(くびり しきや)だ、お前は何者だ? 場合によっては殺す」
俺はそう忠告すると髭面の男は答える。
「俺はただの反乱軍、まぁ、反乱軍幹部だがな──俺の名前は枝垂裂木(しだれ ざき)だ! よく覚えておきやがれ!」
「いや、覚えないよ、何故ならお前が現在の天皇様を殺すって言っているのだからな」
そう言いながら俺は腰にかけてある短刀を枝垂に向かって投げる、だが戦車に潜って短刀の攻撃を回避する。
「おいおいおいおい、危ないなぁ、死ぬかと思ったぜ」
「殺す気で投げたのだが──」
そう言いながら俺は一気に枝垂との間合いを詰めて、枝垂の額に拳銃を突きつける、そして冷酷な目で言う。
「はい、これで逃げられないだろう? さっさと降参したらどうだ?」
そう言うと涙目で枝垂は言う、流石に今此処で殺したくは無いが、辞世の言葉位は聞いてやるか──そう思いながら拳銃を離す。
「わ、分かった、今から帰るから離してくれ、なっ?」
枝垂はそう言いながら懐からピンを外した手榴弾を投げる、そして枝垂は悪どい顔をしながら言う。
「『今から帰る』のは、お前だ! 今から『冥土』に帰りやがれ! 国家の狗共!」
ほう、手榴弾か、中々良いタイプのを持っているな、あまり傷つけたくないが、仕方無い、どう対処するか少しだけ考えるか──そう思いながら、枝垂を見る、枝垂は戦車の中に隠れて、扉も閉じている、完全に俺だけが攻撃を受ける破目になっている、全く──何て面倒な事をしてくれた──さて、今二つ三つの案が浮かんでいる、まず一つ目は、『そのままぶった切る』だ、生憎俺に短刀は無い、投げてしまったからな、だったら二つ目の案も使用不可となる、その案とは、『刀の峰で遠くへ飛ばす』だ、今は短刀を持って居ないので不可能となってしまった、だから今残っている選択肢は、ただ一つ、『拳銃の銃身で遠くに飛ばす』!! 拳銃を野球のバッドの様に持ち、思いっきり、前へ飛ばす──ぐっ、案外重いな、手榴弾って……昔触った事があるが、ここ迄重かったか? いや、簡単に言えば火薬がそれ程詰まっているのか、それなら納得するな、そう思いながら、思いっきり、拳銃を振った、すると綺麗に手榴弾は前へ吹き飛び、空中で爆発する、ちゃんと周りを確認して前へ吹き飛ばしたので安心だ。
爆発して喜びながら戦車の出入り口を開ける枝垂、だが生きている俺を見て、扉を閉めようとする、だがそれはダメだ、もうお前を生かしてはおけない、法律で、『国家反逆罪』を犯したからな──そう思いながら拳銃で枝垂の頭を撃つ、綺麗に血が出て、少しスッキリする、俺は法律に遵守したから極楽で過ごさせてくれよ? そう思いながら戦車が来た道を見る、すると何台も戦車が向かってくる、はぁ、今日は反乱日和かよ、そう思いながら短刀を回収して、枝垂の戦車前に立って、何台ものの戦車に向かって俺は短刀を突きつける、さぁ、掛かって来い、俺が天皇様を守ってやる──
「うーん、中々見付からないなぁ……」
そう呟きながら各務志摩(かがみ しま)は迷子の少年にジュースを奢って、二人でジュースを飲んでいた。
「ジュース、美味しい?」
と、志摩が聞くと少年は可愛い笑顔で言った。
「うん! 美味しい! 後はお母さんが早く見付かればなぁ……」
……それは確かにそうかも──志摩はそう思いながら周りを見る、何も無いこの皇居、本当に楽しむ場所が無い、本当に天皇様は此処が楽しいだろうか? 志摩はそう思いながら溜息を吐く、すると少年が『お母さん!』と大声で叫ぶ、すると息子に気付いた母親が少年に近付く。
「お母さんだ! もう、探したんだよ?」
「ゴメンねぇ、お母さん、方向音痴で……」
まさかの母親が方向音痴か、息子大変だな、そう思っていると、自分の自己紹介を忘れている事に気付く志摩。
「あの、私、警邏の各務志摩と申します、お宅の息子さんを預かっていました、見付かって良かったね?」
「うん! 有難うお姉さん!」
少年はそう言いながら母と一緒に行動する、その瞬間だった、ドガン、と皇居に大きな砲弾が突っ込まれる音がする、えっ? 何なんだ? そう思いながら志摩は砲弾の音が起きた場所へ向かう──急がないと、何かが危ない! そう思いながら全速力で走る、色也の近くに志摩が向かっている事は色也は知らなかった──
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