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しりとりシリーズ 『レトロ』の『その後』 十六夜満月堂活動記 8 犯人は誰?
「おぅい、六五姉さん、呼んできたぜぇ」
病室のドアを開けて三四が言う、すると六五は『あぁ、分かった』と言って、髪を結う。
「お待たせしてすまない」
「おや、良いですよ、情報を得れるのなら、自分は幾らでも待ちますから、どうぞ、自由に時間を有効活用して下さい」
「有難う御座います」
六五は笑顔になって、百乃目は近くの椅子に座って、ペンとメモ帳を用意する。
「それでは、昨日、起きた辻斬り事件の内容を事細かに詳しく教えて下さいな?」
「はい、分かりました──あれは昨日の事です──」
百乃目の言葉に反応する六五はゆっくりと昨日の事を思い出す──
「昨日は百乃目さんを治療した後の話です……私は次の患者の家に向かっている所でした、すると急に自分の影が二つになったんですよね、背後には月があったので、月の光で二人に見えたんでしょうけど、流石にそれは無いです、なので私はすぐに察しましたよ、『辻斬りだ……』とね──そして何とか走って逃げたんですけど、『可笑しな事』が起きましてね?」
「お、可笑しな事? 一体何なんでしょう?」
「それは、『自分の動きが見透かされていた』んですよね、右に行こうとしたら、右の方から刀が襲ってきて……左に行こうとしたら、左の方から刀が襲ってきて……」
「な、成程……それは怖いな……って、ちょっと待て、それって自分の時は起きなかったな、鎖帷子していたからか?」
「多分それもあるでしょうね、だけど私みたいな低級妖怪の力を持つ存在には鎖帷子なんて用意している筈もないですからね」
「ま、まぁ、十六夜満月堂は色々な物を扱っているので、鎖帷子もお安く売りますよ?」
「今はそんな話している場合では無いよなぁ?」
六五と百乃目の会話を切る三四、百乃目は『おぉ、怖い怖い』と呟いて、六五から話を聞く。
「それでは話を続けて下さい」
「えぇ、分かりました──何とか逃げ切ったのですが、何故か場所が判明されてしまい、私はそのまま……」
六五はそう言って、服を少し脱いで、綺麗で華奢な体を百乃目に見せる、もしも二人きりなら情欲が湧いてしまう所だ、そんな事は置いといて、百乃目は六五の体を見て、驚愕する、六五のその体には『右から左下へと流れる様に綺麗な線』があった、それも痛々しい傷跡であった。
「まぁ、私の作ったお薬を急いで体に塗りつけたから、傷は結構回復しましたが……」
「お、おぅ……大変痛そうですね、自分より」
百乃目がそう言うと六五は半笑いで返答する。
「いえいえ、傷も痛みも結構引いていますよ? 流石自分の薬です! ……いえ、自画自賛じゃないですよ?」
六五の発言に百乃目は苦笑する。
「あはは……それで、傷を受ける前、何か話し合いとしましたか」?
「いえ、何にもせず、ただ、一閃に──ですね」
「そう……ですか」
百乃目はそう言って、あまり有益な情報が手に入らなかったな、と思いながら立ち上がる、すると六五は静かに百乃目に言う。
「百乃目さん、貴方は『辻斬りを受けて生き残った唯一の男、でありながら私と同じ日に辻斬りを受けた身』だ、だから私は貴方に包み隠さずに言います」
「は、はぁ? ど、どういう事ですか? 警察にも言っていない事、ですかね?」
六五の台詞に百乃目は驚いて聞き返す、六五は静かに頷いて言う。
「えぇ、そうです、私は『同じ日に辻斬りにあった貴方だからこそ信用しようと思う』、『私の言葉を信じて辻斬りを逮捕して欲しい』です、だから逮捕宜しく御願いします……!」
六五はそう言って、ベッドの上で座りながら頭を下げる、百乃目は静かに六五の顎を上に上げて、顔を上げさせて、六五に言う。
「……あぁ、絶対に辻斬りは逮捕する! 任せてくれ、六五さん……!!」
百乃目はそう言って、椅子に座って、六五の話を聞く。
「あ、有難う御座います……! 『これ』は結構大変でした、隠すのは……」
「あぁ、覚妖怪もいるもんな」
「えぇ、そうです」
「えっ? 覚妖怪が? すげぇな、警察……」
六五と百乃目の会話中、三四がまたも横槍を入れる、そんな三四に対し、一二が三四を睨み、萎縮させる。
「その覚妖怪から心を隠すのは一苦労しましたよ……それでは言いますね──」
遂に話すのか、そう思いながら百乃目は気を引き締める──
「百乃目さん、私達鎌鼬の妖怪っていうのは分かりますよね? 実はその辻斬りは草履を履いていたんですよね、なので隙を突いて、草履の鼻緒の部分、ありますよね? そこを『切って』おきました、なので、切れた場合は草履屋や履物屋に向かい、修理しますよね? そこから足がつくと思うんですよ、どうです? この情報、必死に隠していた情報です」
「そ、それなら、結構な程人数が絞られる……! 有難う御座います、六五さん!」
百乃目はそう言って六五の両手を握る、そして百乃目は急いで病室を出る、突然出てきて焦る琥音虎に百乃目は言う。
「犯人が分かるかもしれない! 急ごう、琥音虎!」
「えっ!? は、犯人がぁ!?」
琥音虎の言葉に百乃目は頷く、そして病院を出て、急いで履物屋を探す──履物屋で辻斬りの犯人が見つかるかはまだ分からない──
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