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しりとりシリーズ 『レトロ』の『その後』 十六夜満月堂活動記 7 新たな被害者、六五
資料を渡されて、翌日、何とか残り一冊、と迄資料を読み漁った百乃目は相当体力を辻斬り事件の資料で奪われていた。
「お、おい、百乃目? おにぎりじゃぞ? 後、温めのお茶も……」
琥音虎が割烹着姿で台に乗ったおにぎりとお茶を持ってくると、ゆっくりとした手つきでおにぎりを掴み、口に運ぶ、その動作はとても遅く、せっかちな人間にとってはイライラしてしまいそうな程遅かった。
「早よう食えぃ!」
琥音虎はそう言って、百乃目の頭を叩く、するとスッキリした顔で、素早くおにぎりを食べる。
「有難う、頭を叩かれて、少しスッキリしたわ、さて、リフレッシュ出来たし、後は皿の上のおにぎりとお茶を食べるだけだな」
「お茶は飲み物じゃ、食べるのではなく、飲むのじゃ」
冷たくツッコミを入れる琥音虎に対し、両手におにぎりを持って、食べる百乃目、その目は少し眠たそうな感じだが、瞳には真剣な眼差しが感じられた──
「さて、もう一冊だし、後は頑張るかな?」
おにぎりを食べ終え、お茶を飲みきった百乃目はそう言って、最後の資料を見る事にする、琥音虎も食べ終わって、安心して、炊事場に向かう。
「それにしても、資料を見るのに一日掛かるとは……警察とは結構激務な場所じゃのう……」
琥音虎はそう呟いて、蛇口を捻り、水を出して、お皿と湯飲み茶碗を洗う、すると十六夜満月堂の戸を開ける者が居た、琥音虎は蛇口を捻って、水を止めて十六夜満月堂の戸に向かう、すると其処には汗を掻いた阿覚が立っていた、凄く焦っている様で、百乃目は驚いていた。
「い、一体どうしたんですか阿覚さん?」
焦りながら百乃目が言うと、阿覚の口からとんでもない言葉が出る。
「じ、実は……鎌居達三姉弟の内の末っ子、鎌居六五が……鎌居六五が辻斬りの被害に遭った──」
その言葉を聞いた瞬間、百乃目は急いで資料を机に置いて、十六夜満月堂を走って出る、まず六五が何処の病院にいるか分からない、というのに……! 琥音虎はそう思ったが、阿覚は覚の妖怪、『琥音虎の『何処の病院に居るか分からない』という心の発言を聞いており』、阿覚は琥音虎に六五が寝ている病院の名前と場所を伝える。
「あっ、有難う……!」
そう言って琥音虎は百乃目を追いかける、阿覚は息を切らして、十六夜満月堂に来ていたが、何とか、息切れから、通常の呼吸に切り替わる──
「……って、病院の名前と場所聞いていなかった!」
百乃目は走って数秒でそれを思いつく、すると百乃目に追いついた琥音虎が言う。
「だと思ったよ!」
そう言って頭に折り曲げた紙を当てる、何なんだよ? と百乃目は思いながら折り曲げた髪を広げる、すると其処には病院の名前とその病院のある住所が書かれていた。
「ナイス! 琥音虎!」
「それ書いたの、儂じゃが、教えてくれたのは阿覚じゃ」
「そうか! 後で御礼を言わないとな!」
琥音虎から紙を受け取って、その病院へと走って向かう百乃目、琥音虎も百乃目に着いて行く──そして数分が経った、百乃目は息を切らしながら病院に着く、琥音虎は息を切らしていなかった。
百乃目は病室を探して、六五の居る病室を見つける、そしてその病室に向かい、頭を下げて、病室の中に入る。
「全く……姉ちゃんを辻斬りした奴は一体誰なんだ!? 野郎、絶対俺がとっちめてやる!」
「まぁまぁ、三四兄も落ち着いてね? 六五姉だって、刺されただけで死んだ訳じゃないんだからさぁ?」
「だけどよぉ! 一二姉ちゃんももっと心配してあげなよ! 鎌居三姉弟、一人でも欠けたらダメじゃん!」
「いや、まぁ、そうなんだけどね? だけど、病人の前に居るんだから、少しは静かにして看てあげないとぉ?」
「うぅー! 俺に力が無いのが悔しいぜ! 力さえあれば姉ちゃん二人を守れるのに……!」
「一二姉さん、三四兄さん……!」
百乃目は三人の姉弟の話を聞きながら抱き締めあう三人の中を裂いても良いだろうか? と思いながら頬を掻く、すると六五が百乃目に気が付いた。
「あっ、百乃目さん……」
「あっ、辻斬りに遭った、と聞いて、駆けつけて来ました、つまらない物も無いけど、辻斬りの話が聞きたくて、来ました」
百乃目がそう言うと三人の内の一人、鎌居三四(かまい みよ)が百乃目を見る。
「アンタも大変だな、胴体に大怪我負ったのに、動き回るなんて」
「アハハ、まぁ、仕方無いよ、自分だって辻斬りの犯人を探しているし」
百乃目がそう言うと三四が驚く。
「は、はぁ!? 胴体に傷を負ったまま辻斬りの犯人を捜してるって!? アンタすげぇな、俺には真似出来ねぇ……」
三四がそう言うと、奥に居る三人の内の一人、鎌居一二(かまい ひとふた)が百乃目に言う。
「すいませんが百乃目さん、妹の六五は色々な警察の関係者に話を聞かれて、精神が疲労しているんです、だから明日明後日にも……」
「いや、いいよ、少し休憩するだけで良いって……あ、えっと、百乃目さん? 話を聞くなら少し休憩を頂きたいのですが?」
「あぁ、いいよ、何分位休憩する?」
百乃目がそう言うとベッドに座っている六五が言う。
「精々十分程度ですかね、後で一二姉さんか、三四兄さんに呼びに行ってもらいますので、待合席でお待ちしてて下さい」
「あぁ、分かった」
百乃目はそう言って六五に言う、六五は頷いて、休憩する事にした。
「良い情報が有ると良いのう」
そう言って待合席に座って琥音虎が言う、もうじき指定の十分が経つ、その間、ジュースを飲んで、二人は待機していた、すると三四が現れて、二人に言う。
「休憩は終わった、さぁ、来てくれ、百乃目さん」
そう言われて、百乃目は立ち上がって病室の前に移動する、琥音虎は六五が他の人、妖怪に襲われない様に病室の前で待機する事にした、病室の前、百乃目は大きな深呼吸をし、病室の戸を開ける、さぁ、どんな話を得る事が出来るだろう? そう思いながら百乃目は病室の中に入る──
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