コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- これってラブコメ?
- 日時: 2014/11/25 17:46
- 名前: 夕陽 (ID: jP/CIWxs)
こんにちは!夕陽です。
前作が完結したので新しいのを書き始めることにしました。
アドバイスなどをいただけると嬉しいです。
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- Re: 森にある泉には天使と悪魔が住んでいるらしい ( No.58 )
- 日時: 2014/03/26 19:49
- 名前: 夕陽 (ID: fhGKSFmU)
三十三話 仁は翼にあやまるつもりらしい
「学校行きたくないなあ」
「いきなりどうしたのさっ、もしかして昨日の事悩んでいるの?」
天と真琴には昨日のことをすでに話している。
「確かに殴るのはよくないかもしれないが、そこまで気にする事か?」
「そうだよっ。別に気にする事じゃないじゃん」
「気にする事だよ。だって顔合わせづらくなるじゃん……」
はあ、と知らぬ間にため息をついてしまう。
「でも大丈夫だと思うよ」
天は優しく微笑んで続けた。
「仁はすぐになんで殴ったか理解して謝ってくれると思うよ」
そうだといいなあ。
「じゃあ、学校行こう。空先輩待たせちゃうよ」
私達は朝食も程ほどに駅に向かった。
「待たせてごめんね」
待ち合わせぴったりに来るとすでにいる空と合流する。
天と真琴はここからバスで学校に向かうが、私は空と電車で学校に行くのである。
「別に、待っていない」
言葉だけだと起こっているように感じるが、表情はそこまで不機嫌そうではない。
「そういえば空は何分くらい前にここに来てるの?」
ふと感じた疑問を空にぶつける。
「……5分くらい前」
特に表情は変化していないように見えるが、最近少しずつ見せる表情が分かりやすくなった気がする。今のは照れかも知れない。
「そういえばさ、今度見に行きたい映画あるんだ。一緒に行かない?」
ちょっと恥ずかしかったけど、デートを提案する。まだ一回も一緒に出かけた事ないからね……。
「別にいいけど……どんな映画?」
「うーんと、簡単に言うとファンタジー。魔法がでてくるんだよ!」
簡単に映画の内容を話していると、降りる駅になったのでいったん話を中断する。
電車を降りたら五分くらいで学校だ。
しばらく無言で歩いていたが、
「最近翼……無理してない?」
空が口火を切った。
「そう? 別に無理はしてないけど……」
「なんか、この前危ない状況になった時から……翼、変」
この言葉に私は今までの自分を考えてみる。……そんなに変だっただろうか?
「私はいつもと同じつもりだけど」
「前は、そんな風に作り笑い……しなかった」
作り笑い……?
今すぐに鏡を見て確かめたかったが、近くにそれらしきものはない。
「なんかあったなら相談して。一応僕は、彼氏だよ?」
空の心配そうな表情で、胸が苦しくなった。心配してくれるのが嬉しくて。でも、
「今のところは大丈夫。でもあまりに大変そうなら、空にも相談するから」
私は空のいう“作り笑い”をして中等部の校舎へと入った。
教室にはもう仁がいた。
出来る限り近づかないように迂回して自分の席に着く。
とりあえず、今日はあの人に近づかないようにしよう。
しかし、そう簡単にはことは運ばなかった。
放課後、校門から出て何とかあの人に話しかけられなくてよかったと思っているうちに拓に会い、強制的に仁の家に連れてかれた。
「ごめんね? 悪いようにはしないから」
特に被害はなかったので大人しく言うことを聞く。
「契約者に頼まれちゃって。翼を連れてこいってね」
なんだろう?
やっぱり怒ってるんじゃ……。
「ちがうよ〜。むしろ逆かな」
逆? どういうことだろう?
すると、部屋のドアが静かに開いた。
「翼いるか?」
ドアを開けたのは、仁だった。
「う、うん」
戸惑い気味に頷く。
その返事を聞くと仁は緊張がほぐれたように近くのソファに倒れこんだ。
「はあ、よかった。来てくれて。実は話したいことがあるんだ」
そしてまた改まったように話を切り出す。
「最初に、いろいろと迷惑をかけてごめんな。妹だからって何しても許されるわけじゃないのにな」
ぽつりぽつりと話し始める仁の言葉に私は耳を傾ける。
「それで、お前の記憶を本当のほうの記憶に書き換えようと思うんだが、いいか? いや、お前は別にいいだろうけど、俺が怖いんだ。このことを思い出して嫌われるのが。勝手だよな」
本当に勝手だ。
でも、嫌われたくないと思うほど好かれてたと思うと少し嬉しい。
「じゃあ、本当の記憶に戻してほしい」
私はきっぱりと思いを告げる。
「そうだろうな……。じゃあ、戻してやってくれ」
仁は拓を促す。
「じゃあ、ちょっと目をつぶっててね」
私はぎゅっと目をつぶると、今までの記憶とは別の、黒く苦い過去が頭の中に流れ込んできた。
- Re: 森にある泉には天使と悪魔が住んでいるらしい ( No.59 )
- 日時: 2014/03/28 20:58
- 名前: 夕陽 (ID: muYb3TAR)
三十四話 仁が家族をばらばらにした原因らしい
私が目を開けたとき、私は真っ黒い世界に浮かんでいた。
いや、違う。よく見ると真っ黒い世界に白っぽい光が見えた。
そこが出口だろうと解釈し、私はそこへ向かった。
白い光を潜り抜けると部屋があった。
少し新しいけど、きっと今私が住んでいる家だ。
クリスマスツリーが飾られているから十二月だろう。
その中には四人がテーブルを囲って食事をしていた。
「ねえ、お母さんこのお肉とって」
五歳くらいの少女が自分の手では届かない範囲の食べ物を取るように催促している。
「はいはい。ちょっと待ってね」
お母さんと呼ばれたひとが、少女の取り皿にお肉を少しのせる。
「これくらいでいい?」
お皿を少し傾けて確認を取っている。
「全部ほしい!」
「翼、ずるいぞ。俺もほしい!」
「お兄ちゃんはケーキを沢山食べるからいいじゃん」
翼、お兄ちゃんということは少女は私、お兄ちゃんは仁ということだろう。確かに少し面影がある。
「こらこら、けんかするな。せっかくの飯がまずくなるぞ!」
きっとこの人はお父さんだろう。最近両親の姿を見ていないから、なんか不思議な気分だ。いろいろ話したいけど、この姿だと認識できないだろう。それにこれはテレビのようなものと拓が言っていたから物に触れる事もできない。あくまで見るだけの世界だ。
「お肉ならまだあるから、二人で仲良く分けるといいわ」
お母さんが席を立って、冷蔵庫からお肉を出す。
「今から作るからちょっと待っていてね」
お母さんはキッチンと食卓の間にあるカーテンの奥へと消えた。
「早くできないかな〜」
昔の私は出来上がりをもう楽しみにしている。
そのとき、カーテンの奥からお母さんが出てきた。
「お父さん、ちょっと買ってきてほしいものがあるんだけど」
「自分で買ってくればいいじゃないか」
確かにそうだ。私の記憶が正しければ、お母さんは車の免許は持ってなかったが、バイクは持っていたはず。
「でも、お酒飲んじゃったから」
「そうか。じゃあ行ってくる」
お父さんは車のキーを持つとスーパーへと向かった。
「じゃあそのうちにお母さんは他の料理作っちゃうわね」
食卓には私と仁だけになった。
「翼、面白い事教えてあげようか?」
そのいきなりの問いに昔の私は
「うん、おしえて〜」
と即答した。
二人が向かったのは子供部屋。今は天が使っている所だ。
「これだよ、これ」
仁が持っていたのは、
「なに……これ?」
どう考えても私の家になかったカードだ。
「最近俺のクラスではやっているカードゲームのカードだよ。カッコイイだろ」
自慢げに見せびらかす仁。
「そんなの、いつ買ったの?」
昔の私は不思議そうに問う。
「買ってなんかないよ。拾ったんだ」
「どこで?」
「公園で」
「それってドロボーじゃないの?」
「知らん。でも、一週間位置きっぱなしだったから別にいいだろ」
なんでもないことのように言う。でも、私の両親はそういうことに厳しかったはず。
そのとき私は気付いた。
この話の結末と、仁の言っていた“家族がばらばらになった”原因。
そういうことだったんだ。
仁が公園に落ちていたものを拾った。
それを私に教えてくれた時、内緒といわれたのにけんかしたときその事を言ってしまって。
それをきいた両親が怒って、仁とけんかになった。
その後仁は出て行った。海外に住んでいる、知り合いの家に追い払われた。
でも、それは私も原因だった。
だってその事を報告する時の言い方が、
——まるで、仁が物を盗んだかのように言ったのだから。
ということは、私も悪いじゃないか。
なんで、仁は自分だけが悪いと勘違いしたんだろう。
私も仁と同じ位悪いのに。
もやもやした気持ちの中、頭の中で
「もう、過去は思い出せた?」
と声がした。その後、私が見ていた風景は黒い世界に溶け込んだ。
「ごめんな。今の見たら分かるように俺は最低な奴なんだ。もう、嫌いになったかもな。でも、元々嫌われているか……」
はじめてあったときとは全く印象が違う。
昔の堂々とした態度とは正反対のくよくよしている人。
それが今の印象だ。
「今までの話見た。でも仁が、お兄ちゃんだけが悪いとは思わなかった。私は、お兄ちゃんのこと嫌いじゃないよ」
私が励ますように言うと、少し顔が明るくなったように感じられる。
「よかった。嫌われたと思っていたよ。これからは中三のふりしないで高三のまま生きるようにするよ。まあ、学校はこのまま紅葉学園に通うけど」
そういえば、一応中三のふりしてたんだよね。背丈とかも魔法でいじっていたみたいだし。
「あと、お願いがあるんだけど……、俺も元の家に戻りたいんだけど」
仁の言う事も一理ある。でも、
「ごめん、実は天と真琴がいるから空き部屋ないんだ」
「大丈夫。実は秘密の部屋があるから、俺はそこで住むよ」
そんなものがあったんだ。今まで暮らしてきたのに知らなかった。
「じゃあ、明日土曜日だから引っ越すから」
どうやら勝手に決まってしまった。
「翼も早めに帰った方がいいぞ。天とか真琴が心配するだろ」
私は、しぶしぶお兄ちゃんの家を後にした。
〜翼が過去を見ている間・拓視点〜
「もしもし、翼の調子は?」
挨拶もそこそこに単刀直入に聞いてくる。
「今、過去を見ている。これで少し君が目指している不幸になるかも」
僕も翼をよくは思っていないが、ここまで恨んではいない。
「そう、まあ後で確認するからいいわ」
彼女は、翼の近くに無数のカメラなどがあるらしい。あっちの世界の道具で、指定された人物を追うカメラが。
「そうして。でも、空に敵意を植えつけるのは難しいよ?」
忠告はしておく。
「でも、可能性はゼロじゃないでしょ?」
「まあね。でも、失敗する方の確率が高いよ」
でも、そう簡単にきく子じゃなかったか。
「じゃあ、しばらく様子見してだめだったら敵意植えつける」
こっちが返事する前に電話を切られた。
彼女の魔法は、人の意思をある程度操れる。
でも、正反対の意思だとそれは出来ない。
だから、空に敵意や嫌悪感を植えつけるのは難しいだろう。
空は翼のことをすごく大事に思っているから。
「ちょっと楽しみかな」
彼女が敵意を空に植えつけることが出来るのか。
そして、時計を見る。そろそろ過去話が終わる時間だ。
「じゃあ、翼を起こしに行くか」
僕は翼を起こすために自分の部屋を出た。
- Re: 森にある泉には天使と悪魔が住んでいるらしい ( No.60 )
- 日時: 2014/03/29 19:15
- 名前: 夕陽 (ID: muYb3TAR)
三十五話 翼と空がけんかをしたらしい
皆はけんかしたら、どうするんだろう?
そんな事を考えてしまうのは、きっと私がけんかしたからだろう。
「どうしたの? いつもより顔が暗いよ」
天が私の顔を覗き込むようにして心配そうな表情を覗かせる。
「何かあったのか?」
真琴は、現場を見ていないからか首をひねっている。
しばらくして、
「もしかして、空とけんかしたのか?」
心を読んだのか、ずばりと回答をいう。
「そうなんだよ……」
「だから空はいつもより不機嫌そうだったのか」
無表情な空が、真琴にも分かるぐらい不機嫌な表情をしていた。ということは、結構怒っている……。
「そんなことはないと思うぞ。理由を説明して、謝れば大丈夫だと思う」
真琴は慰めるようにいうが、私の心はまだ晴れない。
「とにかく真琴にも分かるように説明しなよっ」
天が催促するので私は一部始終話すことにした。
朝。いつも通り待ち合わせ場所に行き、一緒に電車に乗っている時の話だ。空が急にこんな事を言った。
「翼、なんか隠している事ない?」
無表情なので表情はよく分からないが、きっと怒っているだろう。
「特にないと思うけど……」
私は今まで起こったことと、空に話した内容を思い浮かべてみる。
……特に話していないことはないと思うけど。
「あるでしょ?」
いつもより声が低い。これは相当怒っている。
「何のこと? 天と真琴の事も話したし、テストの結果も話たし他にもいろいろ話したよ?」
何に怒っているかわからず聞いてみる。
「……家族の事」
ぽつりともらしたヒントを元に考えるのを再開する。
家族といえば、両親とお兄ちゃん(仁)の事だ。
両親は家にときどき帰ってくるってことを話している。お兄ちゃんのことも一応会話に何度か出てきているはずだ。兄弟ということも知っているはずだし。
その事をそのまま伝えると空は、
「でも、同居していることは知らなかった」
ぷいっ、と顔をそらす空。
子供っぽい仕草で普段なら可愛らしいと思うが、今はそんな気持ちより、怒らせてしまってどうしようと考えてしまう。
今まで小さなけんかは何度もしたけど、ここまで本気のけんかはした事なかった。
私達は、全くしゃべらずに学校へと向かった。
「というわけなんだよ」
思い出しただけでも、胸が苦しい。
「大丈夫か? でも、そういうことは言っておかないと、心配されるからな」
真琴は気持ちを読めるからか、こういうことは的確なアドバイスをしてくれる。
「そうだね。私、しっかり謝る!」
仁の事黙ってたのは確かに悪いし。
そう決心して私は夕飯の準備をしはじめた。
- Re: 森にある泉には天使と悪魔が住んでいるらしい ( No.61 )
- 日時: 2014/03/30 10:33
- 名前: 夕陽 (ID: xfU/M4IU)
三十六話 空は夢に敵意を植えつけられたらしい(空視点)
翼と言い合いをした日の夕方。僕は、制服のままベッドに寝転がる。
本当は、最初に制服に着替えるけど今は疲れていてそんな気分になれなかった。
「……なんで翼、あの事僕に隠していたんだろう?」
ひとり言だから、返事なんて求めてない。なのに
「それは、あなたのことが嫌いだからじゃない?」
僕以外誰もいない部屋なのに、空耳かな?
「あ、私の姿が見えないのね……。ちなみにここにいるわ」
僕の勉強机に腰掛けている女の子が現れた。
「……君は、誰?」
僕は、二つ驚いた事があった。
一つ目は、いきなり彼女が出てきた事。
もうひとつは……
「もちろん、翼じゃないよ? 私は、夢。一応拓の元カノ」
容姿が、翼にそっくりな事だった。
肩にかかるくらいのきれいな黒髪や、気弱な感じのたれ目とか一つ一つのパーツが翼に酷似している。
「拓……? あ、いつも仁のそばにいる——」
「悪魔だよ」
そばにいる人、といいかけた所を夢と名乗る少女が引き継ぎ、意外なことを言う。
「悪魔なの……?」
「うん、私も悪魔だけどね」
「なんで、悪魔がこんな所に」
「それはね、君に魔法をかけるためだよ。……翼に、敵意を植えつけるね」
いままでと全く声音や調子を変えないまま恐ろしい事を言う。
「なんで……そんなことする必要が、ある?」
「ないわ……といいたいところだけどあるわね。だって、あの子に私は恨みがあるから」
翼に恨みがある……?
翼はそこまで嫌われたことはないはずだ。前一緒に帰るときにクラスに寄っていったが、そこそこ仲よさそうにクラスメイトと話していたはずだ。
「まあ、君のせいでもあるんだけどね」
……僕のせいでもある?更に意味が分からない。
「とにかく、呪文かけるからじっとしていて。まあ、じっとしていなくてもかかるけど」
夢は何かをぶつぶつと呟く。
「これで完了」
夢はそういって窓の外へと消えた。
その言葉と同時に、僕は翼に対して負の感情を抱き始めた。
「なんで、翼のこと好きになったんだろう?」
僕はとても不思議な気分になった。
- Re: 森にある泉には天使と悪魔が住んでいるらしい ( No.62 )
- 日時: 2014/03/31 20:23
- 名前: 夕陽 (ID: 4fHAeWMT)
三十七話 翼は空と仲直りしたいらしい
空とけんかして次の日の朝。
私はがんばって仲直りするぞ! と気合を入れる。
「おー、翼起きるの早いねっ」
天がいつも通り起こしに来てくれたみたいだ。
「うん、今日こそ早く集合場所に行って早めにあやまる!」
「その意気だ! がんばってねっ」
私は朝食もそこそこに家を出た。
駅の待ち合わせ場所に行くと誰もいなかった。
ちょっと早すぎちゃったかな?
でも、いつもの空なら来ているはずなのに……。
十分近く待っても空は来ない。
もうそろそろ行かないと遅刻だ。
休みだったのかな? でもそれだったら連絡くれるはずだ。
とにかく、本人に聞かないと分からない。そんな事を考えつつ、電車に乗って学校に向かった。
なんとか学校に間に合った。
でも、やっぱり変だ。さっき、真琴に聞いたら普段通り学校に来ているらしい。でも、様子がなんかいつもと違うとのこと。
「なんか心が読めないんだってさ」
真琴と携帯で電話していた天は簡単に空のことを教えてくれた。
「そうか……。何でだろう?」
「おかしいね。いつも読めていたのに」
魔法でもかかっているのかな?
「うん、可能性はないことはないね。でも、そんな魔法使える人、近くにいたかな?」
私の近くにいる天使や悪魔。今のところは、天・真琴・拓くらいだ。
凛・蘭はもうあっちの世界に帰ったから。
「でも、どの天使も悪魔もそんな能力つかえないよね?」
「うん。まあ、拓が何か隠している可能性もあるけど……」
あの悪魔は隠し事できなそうだけどなあ。
「私もそう思うけど……演技の可能性もあるわけだし」
演技かあ。その可能性もないと思うけどな。
「なんで?」
だって、あの人契約者以外の命令は聞く耳もたなそうだもん。
それに、契約者は私のこと前よりも優しく接してくれるし、うらむとは思えないしね。
「まあ、そうだね」
少し微妙な表情だが、納得してくれたようだ。
「じゃあ、聞いてみようか。真琴に拓のこと」
「うん」
私達は、昼休みに真琴のクラスにいくことにした。
「まっことー」
天は大声で教室の中の真琴を呼ぶ。
こういう時、私は天を心から尊敬する。私はこんなことできないから。
ちらりと教室を覗いてみると、真琴の席の隣は無人だった。確か空の席だよね?
「なんだ?」
天とは対照的に小さめの声。
「聞きたいことがあって」
天はここじゃまずいからと場所の移動を促す。
私は二人についていった。
「ここら辺でいいかな?」
天が真琴を連れてきたのは、中庭だ。
お弁当の時間はにぎわっているが、昼休みは基本グラウンドか校舎内の二択なので中庭は人が少ない。
「ちょっと、拓のこと教えてほしいな」
天は単刀直入に聞く。
「拓のことといっても僕が知っていることは少ないぞ?」
真琴は困惑している。
「いいよ、じゃあ私の質問に答えて」
天は決して何も見逃さないというように鋭い視線を投げかける。
真琴はその迫力に少し後ずさったが、なんでもないことのように先を促した。
「ああ、いいぞ。とにかく質問してみてくれ。僕が答えられることなら答えよう」
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