コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- これってラブコメ?
- 日時: 2014/11/25 17:46
- 名前: 夕陽 (ID: jP/CIWxs)
こんにちは!夕陽です。
前作が完結したので新しいのを書き始めることにしました。
アドバイスなどをいただけると嬉しいです。
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- Re: 森にある泉には天使と悪魔が住んでいるらしい ( No.48 )
- 日時: 2014/02/14 22:29
- 名前: 夕陽 (ID: DnKkGOto)
本編の途中ですが、今日はバレンタインデーなので、ちょっとした番外編を書きます。
小池翼は望月空にチョコを渡すらしい
2月14日、バレンタイン。
この日のために恋する乙女は必死でチョコを作り、想い人に渡す。
そして私もその恋する乙女の一人だった。
つまり、今私の持っている鞄にはチョコレートが入っているのである。もちろん、空に渡すチョコ。
……ちなみにだが、私達は最近から名前を呼び捨てで呼ぶようになった。
この学校は学園長はまじめだからか校則に突飛なものはない。この近くにある秋桜学園はすごいと聞いたことがある。
しかし、学園長の息子がまじめとは程遠い存在でその息子が勝手にバレンタインデーに限りチョコ持ち込みオッケーになった。
私としては願ったり叶ったりだ。だって本当は持ち込み禁止だったんだから。
ただ、一つだけ問題があった。
それは、私は人にプレゼントを渡したことがないのだ。
小さい頃から人見知りが激しく、仲がいいといってもたまに話す程度が最高で誕生日プレゼントなどを人に渡したことはない。
そして、プレゼントをもらった事もほとんどない。私の父親はほとんど出張でいなく、母親は昼間はいるが夜は帰ってこない。そのためすれ違いが現在進行形で進んでおり、あったのは今までで数えるくらいしかない。なので誕生日プレゼントももらったことはない。
サンタさんは例外だったが。
「ねえ、どうしよう」
天に声をかけてみるが、無視された。きっと心の中で毒づいているんだろうな……。
「真琴は、どうしたらいいと思う?」
「僕は普通に渡せばいいと思うぞ? だって恋人同士だろう」
そりゃそうだけど……。その普通が分からないのっ。
「恋する乙女は大変だねっ」
にやりと笑いながら、天は私のほうを見る。
正しくは、私の鞄のチョコレートだろうか。
「ほんとにどうしよう。渡せないよ〜」
弱気になってしまうなあ。
「っていうかさ」
天が口を挟む。
「告白するわけでもないでしょ? そんなに緊張する事なの」
確かに一般人から見たら最もな疑問だ。……そう、一般人にとっては。
「私は、緊張するの」
だって、チョコ嫌いかもとか、受け取ってもらえなかったらどうしようとか思うんだもん。
「まあ、それは分かるが……」
真琴も経験があるんだろうか。
「とりあえず、さっさと渡しちゃいな。もう学校に着くしね」
天の言葉通り、学校は目の前だ。
もう、渡すしか道はない!
「いや、別に渡さなくてもいいと思うが」
そう思わないと渡せない気がするのっ。
「勝手にしろ」
なんか真琴、冷たいなあ。
いつ渡そうかといじいじ考えていたら結局放課後になってしまった。
いや、渡そうとは思ったんだよ?
でも、無理だったんだ。
とりあえず、帰る前に空を捕まえなくては……。
「空先輩を探しているの? 空先輩ならあそこにいるよっ」
天が私の心をよんで、教えてくれた。
ほんとだ。
「ありがと、天」
お礼を言って、私はその方向に駆け出した。
「空、まって」
その言葉に空はぴたっと止まった。
「何?」
短い言葉だが、最近は十分裏に隠された言葉をわかるようになってきた。今のはどうしたの? というような意味だろう。
「あの、歩きながらでいいから」
追いついて歩くのを促す。
空はびっくりしつつも私に歩調を合わせてくれた。
……優しいなあ。
それはおいといて、
「あの、えっと、空。ちょっと、渡したいものがあるんだけど……」
つっかえつっかえ出てきたその台詞。不審に思われていないだろうか?
「何?」
どうやら、思われてないようだ。
私はがさこそと鞄をあさり、チョコレートを取り出す。
「はい、これ。今までありがとうと、これからもよろしくねの気持ちをこめたんだよ」
空に渡すと
「ありがとう」
と優しげに微笑んでくれた。
「翼からくれるなんて……嬉しい」
「もしかして、忘れていると思った?」
からかい半分で聞いてみると、空は首を横に振った。
「ちがう。僕からも、あるんだ。……チョコじゃ、ないけど」
何だろう?
「はい、これ」
差し出されたのは、銀色のチェーンにハートの飾りがぶら下がっているネックレスだった。
「きれい……」
思わず、声が漏れた。
「気に入って、くれた?」
空の問いに
「もちろん。ありがとう!」
私は笑顔で答えた。
来年も、再来年も、ずっとずっとこんな風に仲良く出来ればいいなと思ったバレンタインデーだった。
—END—
- Re: 森にある泉には天使と悪魔が住んでいるらしい ( No.49 )
- 日時: 2014/02/15 15:06
- 名前: 夕陽 (ID: DnKkGOto)
二十四話 翼には、兄がいるらしい
ピンポーン。
時計を見ると七時三十分。
「翼、空先輩が来たよっ」
天が叫んでいる。
叫ばなくても分かるのに……。
「空、待ってて。あと、二分ほどで支度終わるから」
私も玄関に向かって叫ぶ。
「本当に、二分ちょうど」
呆れ半分、尊敬半分で呟いた空。
「ごめんね。じゃ、行こう」
今日からは天と真琴じゃなくて、空と学校へ行く。
「なんか幸せだなあ」
気分は今日の天気と同じ位すがすがしい。
「僕も、幸せだよ?」
顔が見る見るうちに赤くなっているのが分かってしまって顔をそらしてしまった。
最近気付いたが、空は好意を率直に伝える事が多い。そのたびに顔が赤くなってしまうので何とか直したいなあ。
「そろそろ着くよ」
空の声に顔を上げると、紅葉学園の制服が多くなってきている。
正門をくぐり、中等部と高等部の分かれ道まで進む。
「じゃあ、空。また、放課後会おう」
私は中等部の玄関に行き、空は高等部の玄関へと向かった。
「ねえ、転校生来るんだってー」
私が教室に入ったとき、一番最初に聞こえてきたのはこんな言葉だった。
話しているのはクラスでも少々派手めな子達だ。
情報早いなあ……。私は感心してしまう。
「おっはよー。翼」
この声は天だな。
「おはよう、天」
本日二度目の挨拶だ。家でも言ったしね。
「そういえばね、転校生来るんだって」
うん、言っていた人がいたね。
「ちなみにその人は——」
天が何か言おうとした時、
「席につけ。席に着いたら、お前達の楽しみにしている転校生を紹介するぞ」
先生が教室に入ってきた。
みんなは慌てて席に着く。……ちなみにこの日はいつもの席に着くのにかかった時間よりもはやかった。
「じゃあ、入ってこい」
先生の声に促されて入ってきたのは、男子だった。
「名前と簡単な自己紹介をしてくれ」
「森山仁だ。この学校に来たわけは、知り合いがいるから。よろしく」
そっけなく挨拶を済ますと先生が席を指定しようと視線をさまよわせる。
「森山は、沢田の後ろの席な」
どうやら、一人席のようだ。羨ましい。
「じゃあ、朝の会やるぞ。当番の人よろしくな」
授業も全て終わった放課後、私ははやめに支度を終わらせ帰ろうとした。
「小池さん、ちょっと待ってくれるかな?」
その時、私の肩をつかまれた。振り返ってみると森山仁が立っている。笑顔を浮かべているが、なんか裏がありそうな感じがする。
「あの、私今から約束があるので」
そういって去ろうとしたが
「すぐ終わるから、待っていてくれない?」
有無を言わさない口調だった。
「じゃあ、少しだけ」
みんな部活があるのか、すぐにそれぞれの活動場所へと散って行き、教室には私と森山仁の二人となった。
その瞬間、
「はあ、やっと話せるね」
いきなり笑顔が消え去った。
能面のような顔で、彼は続ける。
「あのさ、君今すぐ死んでくれない?」
森山仁は、一瞬でこちらに近づき、私の首にカッターを当てる。
「抵抗したら、一気にグサッっていく。抵抗しないなら、今の状況説明してから一発でしとめてあげるよ」
結局どちらでも死ぬじゃん……。どうすればいいんだろう……?
「よしよし、大人しくなったね。じゃあ、簡単に説明してあげるよ」
実際は恐怖で腰を抜かして動けないのだが、殺されないようでよかった。
そして、教えてくれたのは長いので簡単に省略すると、私と仁は兄弟(しかしお母さんが違う)。なぜなら私は、お父さんの愛人の子供だからだ。仁は本妻とお父さんの子供らしい。そしてお父さんは二人も一気に子供が生まれてどちらか一人しか支えるだけの財力しかなかった。それで選ばれたのは、翼の方だった。そのせいで仁の方は、お母さんが働きに出てしまい、いつも寂しく過ごしていた。その時思ったこと。それは、翼って奴さえいなければ……。その思いは天井知らずで育っていった。それで今この状況にいる。(あんまり省略できてないかもしれないが本当はもっと長かったのだ)
「これでいいかな? じゃあ、もうやるね。大丈夫、痛みは感じないように一発であの世に送り出してあげるからさ」
まるでライオンが獲物を見ているようなぎらついた瞳に体が硬直してしまう。
「翼、大丈夫?」
その時教室のドアが開き、空が入ってきた。
「君、刃物は人に向けちゃだめだよ」
冷静に注意しているが、森山仁は全く聞く耳を持たない。それどころか、
「これ以上近づいたら、こいつは一生目を覚まさないようにするぞ?」
と脅しをかけてきた。脅しなんて卑怯だ! そして私はまだ死にたくない。万事休すだ。
と思ったが、いきなり森山仁がカッターを投げ出した。
私もびっくりしていたがそれは相手も同じようで、
「翼、今のうちに逃げよう」
と逃げ出した。呆然と自分の右手を眺めている森山仁を教室においてきて。
校門から出ると、天と真琴がいた。
「翼、大丈夫だった?」
天が心配してくれるなんて珍しい。っていうか知ってるの?
「ああ、もちろん。急にあいつがカッター投げ出したろ? それは天の力さ。人の体を操る力を使ったんだよ」
今度は真琴が答えてくれた。
「そうなの? ありがとね、天」
天にお礼を言うと天は少し照れたように言った。
「いや、別にいいよ」
「……そういえば翼、何話していたの?」
空が聞いてきた。私は隠す事でもないので一部始終話した。
「翼、その人には気をつけて」
聞き終わった時、天が忠告した。
なぜかは分からなかったけど、あまりに真剣な表情をしているので私は首を縦に振った。
- Re: 森にある泉には天使と悪魔が住んでいるらしい ( No.50 )
- 日時: 2014/02/16 12:34
- 名前: 夕陽 (ID: DnKkGOto)
二十五話 仁にはパートナーの悪魔がいるらしい
「それにしても昨日はひどい目に会ったなあ」
起きてから、最初の一言はこれだった。
だって、夢に出てきたんだもん。
怖くて起きてしまった。ベッドの元にある目覚まし時計を見ると、5:32と表示されている。あと二十八分は寝れるが、今から寝ても熟睡するためには時間がかかる。
じゃあ、たまには私が朝食を準備するか。いつも真琴に頼りきりだし。
私は一階に下りてキッチンに行く。
考えてみれば、私が作れるのってなんかあったけ?
……目玉焼きと味噌汁くらいだな。
じゃあ、作るかと冷蔵庫を覗くと卵がきれていた。しょうがない、今から買いにいくか。
スニーカーに足を突っ込み、ドアを開ける。
「いってきます」
小さい声で呟き、コンビニへと急ぐ。
コンビニで卵を購入し、家に帰る。
しかし、それを邪魔する影があった。
「君、小池翼?」
意地悪そうな笑みを浮かべた口元や勝気な目がなんだか怖い。
無視して帰ろうとすると、腕をすごい力でつかまれた。
「無言ってことは認めてるんだよね?」
「あなた、誰ですか?」
やっと出た言葉は弱弱しく、すぐに消えそうだった。
「俺? 俺はね、拓って言うんだ」
拓……、誰だろう?
「君のクラスメイト、森山仁との契約者って言ったほうが分かりやすいかな?」
森山仁って、私のことを憎んでいる……。
「そう、そいつだよ。俺を呼び出した人間さ」
そこで私はあることに気付いた。
「君、悪魔……ですよね」
「何でそう思うの?」
だって、私の心を読めてるし、契約者とか人間とか天使や悪魔が言いそうな事いってるし。
「そっかー。でも、天使かもしれないよ?」
挑戦するように、にやりと笑う。
「違うと思ったのは、あなたがいる理由です。天使は契約できないので」
もう少し補足すると、天使は意識して出すことは出来ない。悪魔は意識して呼び出せる。例えば魔方陣などで。
「なるほどね〜。意外と頭いいじゃん」
ところで何しに来たの?
「えっと、君を誘拐しに来たんだよ」
は?
「だから、君を誘拐しに来たんだよ」
二回言えとはいってません。何でですか?
「君、意外と冷静だね。もう少し慌てるもんかと。なぜならば、誘拐してこいって言う契約者の頼みだからね契約者が満足しないと俺は元の世界に戻れないからな」
でも、誘拐なんて出来ないでしょ? じゃあ私帰るから。
「それが出来るんだな〜」
パチンと指を鳴らすと、めまいが私を襲ってきた。その後、私は力が抜けて倒れてしまった。
「よし連れて帰るか」
——その後、残ったのはレシートと割れた卵が入っているレジ袋だった。
脳の奥でパチンという音が響いてきた。
目を覚ますと拓の瞳と目が合った。
「ね、出来るでしょ? これくらい朝飯前だよ」
時計を見ると5:45あまり時間がたってない事から近くに誘拐されたのか、拓の能力が瞬間移動かのどちらかだろう。
「ちなみに瞬間移動使ったんだよ〜」
じゃあ遠い可能性もあるのか……。どうしよう。
「ちなみにここどこですか?」
これぐらいは教えて欲しい。
「ここはね〜、契約者の家だよ」
つまり、森山仁の家か。やばい、生きて出られるだろうか?
「まあ、簡単に殺しはしないと思うよ? あいつだってそこまで鬼畜じゃないし」
その言葉、昨日聞いていたら信じていただろうね。
「昨日、殺されかけたんでしょ? でもあれ冗談らしいから気にしなくていいよ〜」
そうなんだ。よかった。私だって命はむやみに失いたくないです……。
「ご苦労様。っていうか、誘拐した犯人とその被害者がする会話じゃないね」
確かに今更だけど、和やかだね。
「おい、拓。うるさいぞ」
そんな和やかな雰囲気を壊す人が来た。
お前がなっとかいいたいけど昨日の恐怖が身に刻まれているので目さえあわせられない。怖いから早く消えてくれっ!
「って、もう誘拐してきたんだ。早いな」
森山仁は私に気付くとニヤリと笑った。
これは、死亡フラグがたつんじゃ……。
「これで君に復讐し放題だね」
怖い。もう泣きそうなんだけど。泣いていいかな?
「こらえた方がいいと思うよ?」
だったら拓何とかしてよっ。
「無理。そんなことしたら帰るの遅くなっちゃう」
こうなったら頼れるのは自分自身だけ。
そうだ!
「開けゴマ!」
そう、これで魔獣が召喚されるはず……。
「何がありました? 主」
出てきた。もう君だけが頼りだよ、魔獣。
ちょっとこの状況何とかしてくれない?
「何とかするってことは……やっちゃっていいですか?」
殺さない程度なら。
「オッケーです。我輩の手にかかれば、相手を大怪我させる事くらい朝飯前です」
まあやっぱり虎だもんなあ。そりゃ、狩りは得意なわけか。
「まさか、魔獣を持っているとは……。しょうがない、俺たちも魔獣を召喚しよう」
え? あっちから不吉な会話が聞こえてきたような……。
「開けゴマ!」
そうすると、あちらはうさぎに似た可愛らしい魔獣を出してきた。
「こんにちはぴょん。私はぴょんって言うぴょん。よろしくぴょん」
可愛い……。けれどなんの役に立つんだろう?
「ふっふっふ。私の能力をなめてもらってはこまるぴょん。私の能力は……寝ると味方が回復するんだぴょん」
うーん。それって今の戦いにおいてはあんまり意味ないんじゃない?
だって、
「なるほど……。なら死ぬぎりぎりでやっても死なないな」
虎の目が完璧殺そうとする野獣の目に変わってるし。
「何でだぴょん。って、攻撃するなぴょん。私が寝れないじゃないかぴょん」
「ほう、それは困る。お前にはこのくずらを回復してもらわないと。主に殺しちゃだめと厳命されているからな」
「うう、私はどうしたらいいぴょん」
戻ればいいんじゃないかな?
「それはいい方法ぴょん。というわけで私は帰るぴょん」
ブレスレッドに触れるとぴょんは吸い込まれるように消えた。そして今いるのは生きている人間(私)と気絶している人間×二(仁&拓)、魔獣だった。
「今のうちに逃げるからブレスレッドに戻って」
「了解」
私の魔獣もブレスレッドに消えた。
そして私はこそこそと逃げ出した。(道は近くに紅葉学園があったのですぐ分かった)
ちなみに家に着いたとき、天と真琴に心配された。(だって朝からどこで歩いていたんだってなるもんね)でも一部始終を話すとびっくりして今日は休んだ方がいいといわれた。確かに危険だ。
というわけで私はずる休みをする事になったのであった。
- Re: 森にある泉には天使と悪魔が住んでいるらしい ( No.51 )
- 日時: 2014/02/17 21:13
- 名前: 夕陽 (ID: DnKkGOto)
二十六話 真琴と拓は知り合いらしい(真琴目線・回想)
僕が悪魔のいる世界にいたときの話をしよう。
僕は、天使だったからかあまり悪魔の世界になじめなかった。
それに、周りの悪魔もいじめまではいかないものの、少し避けられていた。他の皆(元天使だった悪魔)もそうだったらしい。
しかし、そんな事を気にせずに話しかけてくれた悪魔がいた。
その子ははじめ、一番怖いと思っていた子だったから意外だった。
その子の名前はよく覚えてない。けれど、顔はよく覚えている。
意地悪そうな笑みを浮かべた口元に、勝気な目。茶色が混じっている髪の毛は、寝癖など一度もなった事がないといわれたら信じそうなくらいきれいに整えられていた。
その子は僕みたいに元天使の子と普通にしゃべれる子だった。ただ単に気にしていないだけだろう。それを見て、僕は嬉しいような寂しいようないろいろな気持ちが混ざり合った感情が出てきた。
けれど、結構仲良くなり、段々その子に惹かれていく自分をはっきりと感じられた。
恋人として付き合っていきたいほどの好きではない。
けれど、このまま友達としていたい。
それが自分の思いだった。
その思いは決してぶれる事もなかった。
しかし、あるとき起こった事によって、僕は自分の気持ちがぶれてしまった。
「俺、付き合っている子がいるんだ〜」
あくまでも友達に報告するような態度だった。それは別にいい。
けれど、僕の心の底から嫉妬やねたみの感情が渦を巻いてしまった。
その後した返事は覚えてない。
返事どころか、その日の行動さえ全て吹っ飛んでしまった。
僕はそんなにその子が好きなのか……と自嘲気味に笑ってしまった。
でも、そんな恋も忘れ去られる時がきた。
人間界に派遣される事になったのだ。
今では、翼という少女と天と一緒に暮らしている。
もしまた会えることになったら、その子に僕はなんて伝えるんだろう?
- Re: 森にある泉には天使と悪魔が住んでいるらしい ( No.52 )
- 日時: 2014/03/01 20:23
- 名前: 夕陽 (ID: SHqg2dMH)
二十七話 翼たちと仁たちは放課後会ったらしい
目を開けると、真っ暗で何も見えなかった。
しかし目を凝らしてみると、跳び箱や、ボールのようなものなどが見える。多分、体育館の倉庫だろう。
ぼんやりする頭でそこまで考えると、どこからか声が聞こえてきた。
「翼、どこっ?」
この声は、天だろうか。ここだよ、と言おうとしたけれど声が出なかった。いや、ちがう。出たが、すごく小さな声だった。
「翼っ。よかったここにいて!」
暗い闇から、一本の光が見えた。
一本の光は天が持っている懐中電灯から発せられているようだ。
「心配したんだよ? いつも四時に帰るのに、職員室に呼び出されて十分位目を離していたらいなくなっていたんだから。しかも五時になっても帰ってこないし。空先輩にも電話したんだけど、いないって聞いてがんばって探したんだからっ」
一気にまくしたてる天に私は心の中で、だってしょうがないじゃんと呟いた。
「しょうがなくなんかないよっ。一体何が起こったの? まさか、あいつに関わること?」
天がいないうちに気絶して気付いたらここにいた。
「そっか。とりあえず、真琴に来てもらうね」
ポケットからスマホなようなものを取り出し少し話すとすぐさま電話を切った。
「大丈夫か? 翼」
姿を現したのは、真琴。瞬間移動でここに来たらしく、いきなり現れた。
私は真琴に大丈夫という意味で頷いたそのとき、ドアがガラガラと開いた。
「あれ? もうばれちゃっていたんだ。残念」
ニヤニヤ笑いを貼り付けながら、仁は中に入ってきた。その後ろには拓もいる。
「というかこんな形で会うとは思わなかったよ。これからもよろしくね。でもおかしいなあ。自分の役目を果たしたら、帰るはずなのに。君たち、何でここにいるの?」
人をいたぶる事が楽しくてたまらないと言うように仁は笑う。
しかし他のみんなは黙っている。いや、違った。
「そんなこといいじゃん! それより翼を誘拐してここに閉じ込めたの、あなたでしょっ。これ、犯罪だよ!?」
天は、鋭い目で仁を射抜く。
しかし、そんなこと気にしないというように仁は私のほうを向いた。
「その対策も、しっかり考えてきているよ。そんなことしたら翼に催眠術をかけるって拓と決めているんだ」
仁は後ろを向いて拓にそうだよね? と目で問いかけた。拓はこくりと頷く。
「まあ、そうしないと契約者の気がすまないらしいので」
拓は肩をすくめた。
「あなた達、さっきから聞いていれば自分のことを悪くはないように言って……」
しかしそんな言い訳を許す天ではない。うつむいて低い声で呟いた。
「天、私は大丈夫だから」
その言葉を言おうとするが、声が出ない。その様子に仁は
「そういえば、まだ魔法といてなかったね。拓、もうといていいよ」
「分かりました」
拓はぼそぼそと何かをしゃべる。
何をやっているんだろう?
「これでしゃべれるでしょ?」
拓に促され、
「あ、あ……ほんとだっ。声が戻ったよ」
声を出してみると戻っていた。よかった。
「よかった。声が戻ったようで」
真琴の声が安堵している感じがする。
まあ、天と真琴は心の中でも会話できるから大丈夫だけど。
「真琴? もしかして、昔天使から悪魔になった人?」
私の心の中を読んだのか拓が声をあげた。
「ああ、確かにそうだが……。会ったことあったか?」
首をかしげながら真琴は問う。
「覚えてないかな? 結構話したはずなのに……」
少し寂しそうな表情と共に拓はいった。
「もしかして……拓?」
自信なさそうに真琴は拓に向かって言った。
「そうだよ。覚えてくれたんだね」
拓はほっとしたように笑った。見たものを全て落ち着かせるような温かい笑みだ。そのほほえみに天も和まされたのか前よりも優しく問いかけた。
「ところでさ、なんでここに翼をつれてきたの?」
私の疑問を天は単刀直入に訊いてくれた。
「それはね……」
仁は途中で区切って
「やっぱり秘密。君たちには関係ないんだから。拓、帰るよ」
真琴と話していた拓と一緒に瞬間移動で帰っていった。
「一体なんだったんだろう? とりあえず帰るか」
私の一言で私たちも家に帰った。
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