コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- これってラブコメ?
- 日時: 2014/11/25 17:46
- 名前: 夕陽 (ID: jP/CIWxs)
こんにちは!夕陽です。
前作が完結したので新しいのを書き始めることにしました。
アドバイスなどをいただけると嬉しいです。
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- Re: 森にある泉には天使と悪魔が住んでいるらしい ( No.53 )
- 日時: 2014/03/08 19:21
- 名前: 夕陽 (ID: 6u4BhLhh)
二十八話 仁は翼と仲良くしたいらしい
「翼、ちょっと待って」
拓が私にそういったのは放課後帰る時の事だった。
今、天と真琴は部活中だ。しかし私は今日中に持ってこなくてはいけないものを忘れてしまったので、家に帰ろうとしていた。
「拓……だよね? どうしたのこんな所に来て。仁はもう帰ったはずだけど」
拓の事だからきっと仁を探していると思うけど……。
「いや、ちがうよ。探しているのは翼。ちょっと話したいことがあるんだ。契約者について」
はじめ、私は行こうとも思わなかったが契約者と聞いて心が揺れた。
そういえば、あの人のことをあまり知らない。
私は反射的に首を縦に振っていた。
「えーと、とりあえず昨日はごめんね。本当は悪気がなかったんだ。僕も、契約者も」
コーヒーを二つ頼み拓はウェイトレスが去ったのを見計らって言った。
「別にいいよ。結局怪我とかしなかったし」
まあ、天に見つけられてなかったら大変だったけど。
「本当にごめん。ただ一つだけお願いがある」
真剣な色をした瞳で拓は私を見る。
「あのね、契約者は……」
そこまで拓が言うと私の携帯から着信の合図である音楽が流れてきた。
「ちょっと、でてもいい?」
拓に確認を取ると、大丈夫のようだったので私は電話にでる。
「翼、今どこにいるのっ。いくらなんでも遅いよっ」
その瞬間、天の大きな声が携帯から流れた。
こえが大きすぎて周りの人がこっちを見ていた。
「今、拓と一緒にカフェにいる。大丈夫、特に被害はないから」
「そういう問題じゃないよっ。昨日あんなことがあったばかりなんだから、今すぐ帰ってきてっ」
「分かったから、そんな大声で叫ばないで。じゃあ、今からいくね」
必要な事だけ伝えて電話を切る。
「どうやら、今日は無理のようだね」
苦笑気味に拓は言った。
「ごめん。続きはまた今度」
私はお金を置いて立ち去ろうとしたが、
「お金は気にしないで。僕が払うから」
しかし、そんなわけにはいかない。
「だってコーヒー飲まないでしょ。僕は飲むからさ」
「でも、私の分まで飲まないでしょ?」
「いいよ。契約者を呼ぶから」
そこまで言うならお言葉に甘えよう。
「いろいろありがとね。また今度」
私はそういってカフェを去った。
〜翼が去った後・三人称〜
翼が去って数分後、拓の正面に人が座った。
「契約者、早いね」
その人は森山仁。拓の契約者だ。
「まあ、近くにいたからな」
無愛想に仁は言う。
「ふーん。まあいいけど。って言うかさ、いつまで翼を脅していればいいの? かわいそうだよ。兄弟なんでしょ、本当の」
自然に、でも探るような鋭い瞳で拓は訊いた。
「確かに兄弟かもしれない。でも、あいつは俺の事嫌っているからな」
仁は誤魔化すわけでも、逃げるわけでもなく答えた。
「なんでそんなこと気にしているの? もうその記憶は僕が消してあげたのに」
意味が分からないなあ、と拓は首をかしげた。
「まあ、いつかは本当のことはなさなきゃいけないな」
仁は遠くを見つめたまま呟いた。
- Re: 森にある泉には天使と悪魔が住んでいるらしい ( No.54 )
- 日時: 2014/03/09 21:09
- 名前: 夕陽 (ID: 6u4BhLhh)
二十九話 翼は自分の家の掃除を始めたらしい
「うわ、こんな所にほこりが」
私は今、家の掃除をしている。
今は中学生として最後の定期テストがあり、テスト勉強していた……はずなのだが、途中で飽きて机周りを片付けているうちに大掃除並みの掃除を実施している。なぜこうなったのだろうか。
「まあ、天と真琴は何でかしらないけどいないしなあ。どこいったんだろう?」
いつもならにぎやかなこの家だが、天と真琴がいないことで昔のように静まり返っている。最近はお母さんも帰ってこないし。
ちなみにお母さんは出張中で、お父さんは私が物心ついた時にはいなかった。
「とりあえず、もうここまで来ちゃったら全部やるか。あとこの押入れだけだし」
私は、昨日に比べきれいになっている部屋を見て、会心の笑みを浮かべた。……きっと明日になったら見れないだろうから写真でも撮っておこうかな?
とりあえず、写真を二、三枚撮り押入れの中を除く。
中にはいろいろなものが押し込まれているようだったので少しずつ出してみる。
「え? 何で賞味期限の切れた私のお菓子がここにあるの!?」
はじめに出てきたのは、チョコレート。しかも賞味期限切れ。
きっと天の仕業だろう。次は……
「何でアイスが? というかここ、押入れだよね?」
アイスや、お肉などどう考えても冷凍庫に入れるものが入っていた。
気を取り直して捜索を続ける。
「あっ。このぬいぐるみなくしたと思っていたやつだ! よかった、見つかって」
昔、このぬいぐるみがないと寝れなかったんだよなあ。
「えっと、これは何だろう?」
ティッシュ箱くらいの大きさの箱だった。あけてみると手紙がぎっしりつまっている。
「これ、全部友達にもらったやつじゃん」
昔、小学生低学年の頃、手紙の出しあいがはやっていた。そのとき、お母さんが保存していてくれたのだろう。
「この子、もう転校しちゃった子だ。後の子もみんな公立の中学校に行ってあってない子ばっかりだ……」
少し昔が懐かしくなってきたが、更に中にあるものを取り出す。
「これ、昔旅行にいったときに買った自分へのお土産だ」
手にしたのは風景画だった。自然に囲まれている、見ているだけで癒される絵だ。
そういえばこのとき、すごい事件があったような気がするんだけど……なんだっけ?
まあいいか。きっと、どうでもいいことだろう。だって昔の自分は、折り紙で鶴を作れる事をすごいといっていたほどだから。
「さて、他には何かあるかな」
探ってみると、手に固い感触が伝わってきた。
引き出してみると、アルバムだった。
「これ、私が生まれた頃のじゃん。うわー、ちっちゃい」
私が生まれてから間もない頃の写真がずらりと並んでいる。
しばらく、ページをめくっていたが、途中でふとその手を止めた。
「これって……」
そのページには、私の誕生日パーティーをしていたようでケーキを中心に四人の人が並んでいた。
一人目は、お母さん。優しいというよりも、きびきびしている印象を与えるしゃっきとした顔だ。
二人目は、私。大体五歳くらいで、カメラに向けてピースサインを向けている。
あとの二人は私の友達。一人は、カメラに向けてにっこりと笑っている。確かこの子はちーちゃんだったかな? 本名は覚えてないけど。もう一人は、ちーちゃんに隠れてあまり顔が写っていない。恥ずかしがりやだった子。名前は多分、紅実。
懐かしいなあ。今、二人は何しているんだろう?
そして次のページをめくると、
——仁がいた。
しかも、私とツーショットで。
背景は近くの公園だ。
なんで? なんであの人がここにいるの?
私はあの人と会ったことがないはずなのに。
腹違いの兄弟なんでしょ?
そういっていたのに、なぜ?
私はしばらく呆然としていたが、呆然としていてもしょうがない。それなら本人に直接聞かないと。でも、そんな事を聞く勇気はない。どうしよう?
私はふと、あの人の契約者を思い出す。
——悪い人じゃなさそうだし、聞いてみようかな……。
私は明日、仁の事について拓に聞くことにした。
- Re: 森にある泉には天使と悪魔が住んでいるらしい ( No.55 )
- 日時: 2014/03/10 19:59
- 名前: 夕陽 (ID: Ex55yMPi)
三十話 翼は拓に仁について聞くらしい
「ごめんね。急に呼び出したりして」
休日の朝。私と拓は、カフェでミルクティーを飲んでいた。
「大丈夫だよ。まあ、あまりいないと怪しまれるから十分だけね」
拓はおいしそうにミルクティーをすすった。
私も一口ミルクティーを口に含む。ほんわかとした温かさと甘さが口の中に広まった。とってもおいしい。今度空と来ようかな……。
「とりあえず、訊きたい事だけ訊くね」
私は、深呼吸をして続けた。
「私と仁の関係って本当に腹違いの兄弟?」
じっと拓を見つめる。拓はうつむきしばらく考えた後
「うーん、半分ほんとで半分嘘……かな」
一つの答えを口にした。
「半分ほんとで半分嘘?」
オウム返しになってしまったが、拓はためらいつつ全て話してくれた。
「えっと、本当なのは兄弟って事。嘘は腹違いって事」
本当なのは兄弟で、嘘は腹違いってことは……
「本当の兄弟だよ」
拓は私の考えた事をずばりと言った。そのときの拓の顔は無表情だった。空の無表情とは違う、人形だってもう少し表情があるくらいに。
「ほんとうの……兄弟?」
私は今まで仁にされた事を思い出す。どう考えても兄弟に対する態度じゃなかった。
しかし、あることに思い至った。
「でも、それはありえないよ。だって私は八月生まれだから、同じ学年に双子でもない限り生まれるわけないよ。しかも仁は二月生まれだったはずだし」
「違う。あれは年齢を偽っているんだ。本当は三歳年上」
っていうことは本当は十八歳なのか。なんで年齢を偽っているんだろう?
「君には言えない。また今度仁に訊いた方がいいよ」
そんな言葉を残し、拓は席を立った。
〜仁の家にて・三人称〜
「やばいよ。もう気付いてるよ、翼は。早めに本当のこといったら?」
拓は帰宅するなり、ただいまも言わずにそう言った。
「そうか。昔から時々勘が鋭い時があったからな」
「多分、時間がたたないうちに来るよ。真相を聞きに」
一瞬、拓の瞳に挑戦的に光ったような気がしたが仁はそれに気付かなかった。
「だって、そうなるように魔法をかけたからね」
小さい声で呟いた拓の声は誰にも聞こえなかった。
- Re: 森にある泉には天使と悪魔が住んでいるらしい ( No.56 )
- 日時: 2014/03/18 22:11
- 名前: 夕陽 (ID: Su8t9C5g)
三十一話 仁は翼に本当のことを話すらしい
「翼、朝だよっ」
天の声で私は目を覚ました。
「って、翼全然寝てないでしょ? クマできてるよ」
鏡を覗いてみると、私の顔にはくっきりと黒くなっていた。
「今日空先輩来るんでしょ? 早くおきな」
そういうなり天はさっさと食卓に向かって行った。
確かに昨日から今日にかけては全然眠れなかった。
仁のことを考えていたからだ。
何で、嘘をついてまで私と同じクラスになったのか。
何で、私を恨んでいるのか。
そんなことが次々にあふれ出てきて安眠を取ることなどできなかった。
「はやくー。朝ごはん食べる時間なくなるよー?」
天の呼びかけに私は
「はーい」
と返事をして階段を駆け下りた。
その日の授業中はまったく身に入らなかった。テスト前だからしっかり聞かなきゃと思うんだけどどうしても仁のことを考えてしまう。
どのタイミングで聞けばいいのかずっと悩んでいたが、そのタイミングは放課後にやってきた。
「翼。ちょっと話があるんだけど」
ためらい気味に話しかける仁に私はすぐにあの事だと思い当たった。
「分かった」
短く返事をして仁についていく。
人通りが少なくなった頃、仁は口を開いた。
「拓に聞いたんだって? 俺の事」
私はこくんと頷く。
「そうかあ。じゃあごまかしても無駄だな。率直に言おう。俺と、翼は本物の兄弟だ。あんなふうに怖い思いをさせてしまった事、あやまる。ごめん、本当にごめん」
きっちり頭を下げ、あやまる姿に私のほうが居心地が悪くなってしまった。
「別に気にしていないから」
私は無意識に目線をそらした。やっぱりこの人は苦手だ。なぜか分からないけど。
「ごめんな。本当はこのために戻ってきたわけじゃないんだ。でも、思い出されたら嫌われるような気がしたから。だったら自分から嫌ってやるって思って」
ぽつりぽつりとつむがれていく言葉に私は混乱してしまう。
とりあえず、言われた事を整理してみる。
戻ってきたということは前は別の所にいたんだろうか?
思い出したら嫌われるということは、なにかいけないことをしたんだろう。私に嫌われるような。
「一体、何があったんですか? 私とあなたには」
その場の緊張感からか私は敬語でたずねた。
「簡単に言うと、俺は家族をばらばらにした。俺のちょっとした行動のせいでな」
家族をばらばらに? でも、私のお父さんとお母さんは出張でいないはずだ。
「出張でいないって言うのは拓が植えつけた嘘の記憶だ。本当は、違う」
私に嘘の記憶を……? あの、拓が?
「俺が、頼んだんだ。親父やお袋に会ったとき、厄介払いされたから。翼にだけはそんなことされたくないと思ったから」
その言葉を聞いたとたん、私の心の奥底からなんともいえないような感覚が湧き上がった。自分自身のために人の記憶をいじるなんて。
「最ッ低!」
私はその言葉を残して逃げるように教室に戻った。
- Re: 森にある泉には天使と悪魔が住んでいるらしい ( No.57 )
- 日時: 2014/03/24 17:01
- 名前: 夕陽 (ID: fhGKSFmU)
三十二話 拓は他の悪魔と話していたらしい(拓目線)
「もしもし、拓だけど」
「もしもし、とりあえず今のとこどうなの?」
名乗りもせずに状況を説明するよう命令してくる。
「今のところ、契約者が嫌われている。話すことはそれくらいだよ」
一言で今日の出来事を伝える。
まあ、毎日話しているからそこまで長話にならないけど。
「ふーん。じゃあ、後ちょっとじゃないの? 早くしてよ」
少し苛立ちを含んでいる彼女の声。やばいな、今機嫌が悪そうだ。
「っていうかあんたは何やってるの!? 私が感情コントロールして翼の兄に敵意植え付けたのに、その敵意なくしちゃったじゃないの!?」
確かに敵意なくなってしまったかもしれないけど……。
「でも、翼は持ったみたいだよ。敵意まではいかないけど」
「翼が持っても意味ないでしょ! 翼が不幸になんないと」
彼女は翼に敵意を持っている。理由は昔聞かされた事があるので知っているが、ここまで根に持つのだろうか?
「とにかく、あんまりあんたがとろいようなら私はあんたの反対していた望月空に翼に対する敵意植え付けるからっ」
そういって彼女は電話を切った。
「でも、無理だと思うけどなあ」
空に敵意を植えつけることは。
「拓、ご飯そろそろ食べるぞー」
契約者の声で僕は食卓へ向かった。
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