コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 気まぐれ短編集〜ブレイクタイム〜
- 日時: 2017/02/18 17:23
- 名前: ゴマ猫 ◆js8UTVrmmA (ID: Mt7fI4u2)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=34896
初めまして、ゴマ猫です。
以前からやってみたいと思っていたのと、文章力を上げるためにも短編集を今回やってみる事にしました。
気まぐれに書こうと思ってるので、更新は基本的に不定期です。シェフの気まぐれサラダ的なやつです。はい。
ライトな話から、少々シリアスな話まで、色々な物語を書けたらなと思っています。読んで頂いて、少しでも面白かったと思ってもらえたら嬉しいです。
参照が8000を超えました!
読んでくださった皆様ありがとうございます!
以下は、自分が書いた作品です。短編集を見て「この人の違う作品も見てみたい」と思ってくださった、心優しい読者様は是非どうぞ。リンクをTOPページと1ページ目に貼りつけておきます。
【日々の小さな幸せの見つけ方】
こちらで初めて書いた小説です。騒がしくも穏やかな、日々を描いた作品です。文章が結構拙いかもしれません。完結作品です。
【俺と羊と彼女の3ヶ月】
2作目です。可愛いけど怖い羊が出てきて、記憶を消されないため、主人公が奔走します。完結作品です。
この作品は、2013年夏の小説大会で銀賞を頂きました。投票して下さった皆様、ありがとうございます!
【ユキノココロ】
3作目です。高校2年生の冬、清川準一はひとりの不思議な少女と出会う。主人公達の過去と現在の想いを描いた作品です。完結作品です。
【お客様】
スルメイカ様
記念すべき一人目のお客様。続きが気になると言ってくださった優しいお客様です。
朔良様
綺麗で繊細な描写をされる作者様です。とくに乙女の『萌え』のツボを知ってらっしゃるので、朔良様の作品を好きな読者様も多いです。かくいうゴマ猫もその一人ですね。
はるた様
爽やかな青春ラブコメを書かれる作者様です。甘酸っぱい成分が不足しがちな読者様は、はるた様の作品へどうぞ。言葉遣いなど、とても丁寧な作者様です。
八田きいち。様
さまざまな小説を書かれる多才な作者様です。いつも着眼点が面白く、続きが楽しみになるような作品を書かれています。
峰川紗悠様
長編ラブストーリーが得意な作者様。
更新も早く、一話一話が短めなので長編と言っても読みやすいですよ。
覇蘢様
ゴマ猫の中では甘いラブストーリーを書く作者様で定着しております。いつも読んでいる人を惹きつけるようなお話を書く作者様です。
コーラマスター様
コメディが得意な作者様。ゴマ猫の個人的な意見ですが、コメライでコメディ色を全面に出している作品、またそれを書く作者様は少ないです。おもわず笑ってしまうような物語を書かれています。
澪様
丁寧な描写で読みやすく、物語の引きが上手で続きが気になるような作品を書かれてる作者様。その文章のセンスに注目です。
せいや様
ストーリー構成が上手い作者様。
ゴマ猫の個人的な感想ですが、どこかノスタルジックな印象を受けます。物語のテンポも良いので、一気に読み進める事が出来ますよ。
佐渡 林檎様
複雑・ファジー板の方で活動されている作者様です。
短篇集を書かれているのですが、読み手を一気に惹き込むような、秀逸な作品が多いです。気になるお客様は是非どうぞ。
橘ゆづ様
独特な世界観を持つ作者様です。
普段はふわふわとした印象の作者様なのですが、小説ではダークな作品が多く、思わず考えさせられるような作品を書かれています。
狐様
ファンタジーがお好きな作者様。
複雑ファジー板の方でご活躍されているのですが、ストーリー、設定、伏線、描写、全てにおいて作りこまれており、気付いた時には、いつの間にか惹き込まれている。そんな作品を書かれています。
村雨様
コメライで活躍されている作者様。
バランスの良い描写と、テンポの良さでどんどんと読み進められます。今書いていらっしゃる長編小説は思わずクスッと笑ってしまうような、そんな面白いコメディを書かれています。
ハタリ様
遅筆気味なゴマ猫の小説を読んで頂いて、また書いてほしいと言って下さったお優しいお客様です。
こん様
多彩に短編を書き分ける作者様。
読みやすい文章と、心理描写が上手です。
亜咲りん様
複雑ファジー板の方でご活躍されている作者様。
高いレベルの文章力とダークな世界観をお持ちで、読みごたえのある小説を書かれています。読めば物語に惹き込まれる事は必至です。
【リクエスト作品】
応募用紙>>80(現在募集中)
【朔良さんからのリクエスト】
彼女と彼の恋人事情
>>87-91 >>96 >>99-104
【佐渡 林檎さんからのリクエスト】
無題〜あの日の想い〜
>>127-129 >>132-140 >>143 >>146-147 >>154
【短編集目次】
聖なる夜の偶然
>>1
とある男子高生の日常
>>2-3 >>6 >>9 >>14-15
私と猫の入れ替わり
>>18-19 >>22-28
魔法のパン
>>29-30 >>34 >>37-38 >>41
>>44 >>47 >>50-51
時計台の夢
>>54-66 >>69-71
(この物語はシリアスな展開を含みますので、読む際はご注意下さい。読みやすくするためリメイク予定です)
とある男子高校生の日常NEXT
>>72-75 >>78-79
(この物語は前作の番外編となっております。前作の、とある男子高校生の日常を見ないと話が繋がりません)
雪解けトリュフ
>>162-163
クローゼットに魔物は居ない
>>167-169 >>174-178 >>179
(この物語はシリアス展開を含みます。苦手な方はご注意下さい)
【SS小説】
想いの終わり
>>166
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- Re: 気まぐれ短編集〜ブレイクタイム〜 ( No.131 )
- 日時: 2015/06/02 18:49
- 名前: ゴマ猫 ◆js8UTVrmmA (ID: KG6j5ysh)
せいやさん
こんばんは、いつもコメントありがとうございます!
おぉ、せいやさんバスケをやっていたのですか。
ゴマ猫もやっていました。とはいえ、本格的という訳ではありませんが。結構スポーツは好きでしたので、バスケ以外も色々やっていましたね。
ただ、バスケの話がメインじゃないので、あまり描写としては出てこないと思います。せっかくそこに興味を持って頂いたのに、すいません( ..)
何だか意味深ですね。もしかして完結が近いとかでしょうか? それとも、さらなる秘密のストーリーがあるとかですかね? どちらにしても、更新応援しています(^.^)
やっぱり同時更新は大変ですよね。分かります。ゴマ猫自身もそういう経験がありますので。
そうですね、どちらか一本に集中した方が良いとは思います。
それか、簡易的なものでも良いので、プロットを作ると良いかもしれませんね。でも無理せず、ゆっくり更新で良いと思いますよ。
コメントありがとうございました!
- 無題〜あの日の想い〜【4】 ( No.132 )
- 日時: 2015/09/26 18:23
- 名前: ゴマ猫 ◆js8UTVrmmA (ID: KG6j5ysh)
「あぁーっ、今日もきつかったな。優斗、コンビニ寄ろうぜ」
「あぁ、そうだな」
夕闇の中、今日も今日とて真守と並んで帰る。この真守の練習後の気怠そうな雰囲気は毎度の事だが、昔からの知り合いが同じ部に居る事は心強かったりする。
真守とは、小さい頃から家が隣同士で学校もずっと同じ、いわゆる幼なじみというやつだ。しかし残念な事に、映画や小説に出てくる、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるような可愛い幼なじみなんかじゃない。
ガッシリとした体躯に、切れ長の目、厳つい顔、極めつけは坊主という、もう子供なら泣き出すレベルだ。もう一度言おう。本当に残念だ。だが、バスケの腕は確かだし、友人としても頼りになるやつである。
入部してから2ヵ月、レギュラー争いが激化する今は一番大事な時かもしれない。忙殺されて考える余裕がなかったが……あの屋上の時以来、水原さんとは会ってないな。今、彼女は何をしているのだろう。
「おっ、何だ、修羅場か?」
真守が校門前で急に足を止め、そんな事を言う。
俺は真守の視線の先を辿る様に、自分の視線を動かす。そうして見えたのは一組のカップル。どうも雰囲気的に穏やかな話ではなく、喧嘩のようだが。というか、彼氏(?)の方が、一方的に怒ってるような感じだな。彼女(?)の方は、俯いたまま立ちすくんでいる。校門前という事で、かなり目立つ場所なのだが、皆遠巻きに見ていくだけで、特に過剰な反応はしてない。これが、噂に聞くスルースキルというやつなのだろうか? ……それにしてもあの女子、どこかで会ったような。凄く見覚えがある気がするんだが——
「けっ、まーた、氷堂の野郎か」
「氷堂?」
俺が真守に問い掛けると、真守は顔をしかめながら頷く。
「あぁ、ちょっと顔が良くて、サッカー部のエースとか言われてるもんだから、調子に乗ってる奴だよ。二股とか三股とか平気でやる最低野郎だ」
そう言って真守は眉根を寄せて、その表情に嫌悪感を滲ませる。
真守の奴、えらく感情がこもっているな。しかも何気に詳しいし。あの氷堂とかいう奴と何かあったんだろうか? 因縁があるとか。
それはさておき、今どきそんな奴が居るんだな。興味本位でその様子を眺めていると、ある事に気付き、徐々に胸が騒ぎだす。先程の疑問の正体が分かってしまったかもしれない。
それは少し前に屋上で話した女の子、水原紗雪とそっくりだったからだ。そして水原さんは、あの日から俺が気になっていた女子でもある。
「あの子……」
「何だ? あの女子の方は優斗の知り合いかよ?」
そんな真守の問い掛けも右から左へと流れていく。
でも、もしかしたら見間違いかもしれない。あの日から、もう2ヵ月は経っている。確かに、あの時の光景は俺の脳裏に鮮明に焼き付いてはいるが、念のためしっかりと確認できるように、今いる場所から彼女の方へと少し距離を縮める。けれど、そこに居たのはやはり間違いなくあの時の女の子、水原紗雪だった。
「…………」
なんだ、水原さんは彼氏が居たのか……そりゃそうか。あんなに可愛い子、彼氏が居ない訳ない。うん? 何で俺ちょっと残念に思ったんだ? 一体、何を期待していたんだ。
理解できない感情に戸惑い、やや気落ちしながらも視線だけは外さない。彼女が水原さんなら、この喧嘩の原因が余計気になってしまう。まぁ、水原さんからしたら余計なお世話なんだろうけど。そんな俺をよそに、2人のケンカは続く。
「何度も言わせんな。そういうの、うざいからやめろ」
「で、でも——」
「知るか、俺の勝手だろ」
「……す、すいません」
……どういう状況かは分からないが、氷堂とかいう奴が、面倒そうに水原さんに言う。水原さんは水原さんで、何か言いたそうにしながらも言えずに謝っている。これから考えるに——
「おい、優斗。盗み聞きとか趣味悪いぞ」
そんな俺の思考を遮るように、背後から真守の低い声が耳に響いた。
俺は思考を一旦止めて、身体は動かさず顔だけを真守に向けて返事をする。
「これは、大事な事なんだよ」
野良犬を追い払うようなジェスチャーで真守に「あっちに行っててくれ」という合図をしてみるが、真守は真剣な表情をしながら俺の背後を指差す。
一体何だと思いながらも、視線を戻すと、そこに居たのは——
「…………」
綺麗な小豆色の瞳に、うっすらと目尻に涙を浮かべた水原さんだった。視線だけでこちらを見ながら、とても悲しそうに顔をしかませている。
——待て、俺が何かしたのか? そりゃ確かに、盗み聞きのような真似はしてしまったけど。まさか泣くほどの事だったのか? しかもよく見れば、ついさっきまで水原さんと一緒に立っていたはずの、あの氷堂とかいう奴の姿はなかった。
と、とにかく、何で水原さんが泣いているのか分からないけど、今は謝らなくては。
「あ、あの、悪い。泣くとは思わなくて、その……つい、気になったから」
「…………あはは、恥ずかしいところ、見られちゃいましたね」
そう言って、無理に浮かべた水原さんのその笑顔がとても悲しげに見えて、俺の胸の奥にチクリと小さな痛みが走った。
(続く)
- 無題〜あの日の想い〜【5】 ( No.133 )
- 日時: 2015/06/14 16:34
- 名前: ゴマ猫 ◆js8UTVrmmA (ID: kXLxxwrM)
「あぁー、俺、用事思い出したから帰るわ」
「えっ、ちょ、待て!」
真守がこの微妙な空気を察してか、そんな事を言い出す。
今、俺と水原さんの2人きりにされるのは非常に気まずい。俺は咄嗟に真守の腕を掴み、その進行を阻止した。
「何だよ? さっき邪魔みたいな雰囲気出してたろ?」
「バカ! お前、この状況で放置して行く気かっ! どう考えても無理だろ」
「ピンチを切り抜ける方法を考えて、最善の策を尽くす。それはガードというポジションのお前としては重要な事だと思うぞ?」
「……くっ」
真守の奴、ドヤ顔で偉そうな事言いやがって……。
大体、今バスケの話は関係ないだろ。この状況を何とかしたところで、バスケが上手くなる訳でもない。けど、泣いている水原さんを放っておけないのも事実であって……あぁ、もう! どうすりゃいいんだ!
「あ、あの……私の事でしたら、気にしないで下さい。本当、大した事じゃないので」
「…………」
そう言いながら水原さんは目尻に涙を残したまま、繕ったような笑みを浮かべた。まただ、またあの悲しそうな顔。その顔を見ていると、胸の奥が苦しくなる。葛藤する俺の背中に、ドンと衝撃が走る。何事かと振り返れば、真守が俺の背中を押したようだ。
「よくわかんねぇけど、優斗があんたに話したい事があるらしいから、もし暇だったら聞いてやってくれよ」
「おま——何言ってんだよ!?」
困惑する俺を尻目に、真守は拳を前に突き出して、親指を立てる。
多分「幸運を祈る」とか「適当に頑張れ」とか、そんな意味なのだろうけど、さっきのドヤ顔が脳裏に焼き付いていて、煽ってるようにしか見えない。俺は恨めしげな視線を送るが、真守は気にせずスタスタと俺達を残して帰っていった。
そして残されたのは、俺と水原さんの2人きり。泣いている女の子を前に、茫然と立つ男。傍から見ればこの状況はどう見ても、俺が何かして泣かしたように見える。
「……あの」
水原さんは、不安げな瞳で俺を見つめている。
きっと、さっきに真守に言われたデマを信じて、本当に俺が何か話したい事があると思っているのだろう。でなければ、すぐにこの場を立ち去っている。というか、俺ならそうするだろう。
「……迷惑じゃなかったら、聞いてもらえるか?」
俺は少し逡巡してから、何とか口からそんな言葉を押し出した。
***
学校を出て、近くにあった公園のベンチへと俺と水原さんは並んで座る。
目の前に見える大きな池を囲むようにして作られたこの公園は、水の傍だからか少しだけ空気が涼しく感じる。
しかし、その場の勢いとは怖い。確かに泣いている水原さんを見て、何とかしたいと俺は思った。ただ、2人っきりになって話をするなんてのは全く想像していなかった訳で。「聞いてもらえるか?」などと言ったものの、さっきから沈黙の俺。
そして水原さんも水原さんで、気まずそうに視線を地面に落としたままだ。だが、ずっとこのままという訳にもいかないよな。そう思い、俺は意を決して口を開く。
「……それで話なんだけど」
「は、はいっ!」
俺が話しかけると、水原さんはびくっと驚いたような反応をしてから、居住まいを正す。
——き、気まずいっ! きっと水原さんは真剣な気持ちで聞いてくれようとしているんだろうけど、これから話す事って水原さんの事だしな。
というか、一回しか会った事のない奴の話を聞いてくれるだなんて、水原さんは相当のお人好しなんだろうか? ちょっと無防備過ぎて心配になってくる。
「あぁー、話ってのは、水原さんの事なんだ」
「……私の、ですか?」
俺が切り出すと、水原さんは目を丸くしてそう言う。
「あぁ。その、プライベートな事というか、さっき喧嘩してた相手って……彼氏?」
「…………」
俺がそう尋ねると、返事はせずに水原さんはゆっくりと頷いた。
……やっぱりそうか。そりゃそうだ。あんな目立つ場所で喧嘩して泣くくらいなんだし。それに、これだけ可愛い子だ。彼氏くらい居て不思議じゃないだろう。——あれ、俺ショック受けてる? あの氷堂とかいう奴と一緒に居た時も残念に思って、付き合っている事が事実だと分かった瞬間、今度はへこんでる。……意味が分からん。
「……そっか。余計なお世話だろうけど、何で喧嘩なんてしたんだ?」
モヤモヤとした気持ちを残しながらも、俺は平静を装いそう続ける。
「……彼、氷堂くんのお父さんと、私のお父さんは昔からの友人で仲が良くて、小さい時から氷堂くんの家に遊びに行ったり、私の家に遊びに来たりもしてました」
水原さんは昔を思い出すように、目の前にある池を見つめながら静かに話し出す。俺は隣で黙ってその話に耳を傾けた。
「ある日、お父さんから言われたんです。彼が私の将来の結婚する相手だって。私は何の疑いもなく、将来は彼と結婚するんだと考えてました——」
……待て、待て待て。今どきそんな事ってあるのか? 昔ならいざ知らず、どんな家庭なんだよ。それに疑問も感じずに納得しちゃうとか、水原さんってもしかして箱入りなのか? そんな俺の驚きをよそに、水原さんは話を続ける。
「最初はお付き合いも順調でした。でも、いつからか氷堂くんは私を避けるようになって……最近は、いつもあんな感じです」
水原さんはそう言うと、伏し目がちになりながら唇をきつく結ぶ。
なるほど……水原さんとしては、氷堂とかいう奴の態度が最近冷たいという事で悩んでいるのか。それって、完璧に痴話喧嘩じゃないか。俺の出る幕なんて無いように思える——けど、そんな事言える雰囲気じゃないよな。
「あっ、すいません! 私ってば自分の事ばかりべらべら話しちゃって。森川くん、ちゃんと聞いてくれるから、つい……」
そう言って、水原さんは頬を染めながら、わたわたと自分の胸の前で手を振った。
そんな一つ一つの仕草が可愛い。知り合って間もないし、話したのは今日で2回目。それでも、彼女が良い子だってのは俺でも分かる。
だったら、彼女が笑顔になれるように俺が手伝ってもいいんじゃないか? 例えそれが、俺の気持ちとは裏腹な行動だとしても——
「……なぁ、もし良かったら、俺に協力させてくれないか?」
先程からずっと胸に残るモヤモヤとした気持ちを抑えながら、俺はそう切り出したのだった。
(続く)
- 無題〜あの日の想い〜【6】 ( No.134 )
- 日時: 2015/06/17 23:53
- 名前: ゴマ猫 ◆js8UTVrmmA (ID: wGslLelu)
「……うーん、あぁ言ったものの、どうしたらいいのやら」
水原さんと別れた後、自宅に戻ってきた俺は、自室にある机に向かい、椅子に深く腰を掛けながら独り呟く。
初めは俺の申し出に戸惑っていた水原さんだったが、何度も粘り強く説得した結果、了承してくれた。今考えると、何であんなに必死になって説得したのか分からない。確かに水原さんの事は気になって、何とかしてあげたいと思ったのは事実だが、氷堂とかいう縁もゆかりもない相手の為にそんな事をする義理などない。
それに、何かの誤解だったとしても、水原さんを泣かすような奴と仲直りさせようなんて……まったくどうかしてる。
「……俺だったら、絶対に泣かせたりしないのに」
口に出してから気付く。そうじゃないだろう、と。
ふぅと息を吐き、思考を切り替える。水原さんは、父親に言われたのがキッカケで、氷堂とかいう奴と付き合い始めたと言っていた。つまり、小さい時から決められた相手という事だ。自分の意志とは関係なく……と、それは少し違うか。嫌ではなく、ちゃんと好きなのだろう。そうでなければ、泣いたりしないはずだしな。
氷堂とかいう奴の方は、ちゃんと水原さんの事を想っているのだろか? もしかしたら嫌々という事もあるかもしれない。考えても詮のない事だけど、考えてしまう。しかもそれが——いや、やめよう。本当に無意味だ。今俺が考えなければいけない事は、水原さんと氷堂とかいう奴を仲直りさせる事だしな。
「問題はそこ、だよな……」
結局、この日は徹夜で解決策を模索してみたが、これといった妙案は浮かばないのだった。
***
「優斗っ! ボールいったぞ!」
「へっ?」
バンという、乾いた音と鈍い音が入り混じった音が鳴り響き、遅れて俺の頬に強い衝撃と痛みが走る。ノーガードでもろに入ったバスケットボールは凶器だと今日初めて知った。
だが、おかげで昨日の寝不足による睡魔は撃退できたのでよしとしよう。……けど、痛いものは痛い。すげー痛い。しかも恥ずかしい。
「つっ、いたたっ……」
「大丈夫かよ? ってか、お前今日はずっとボーっとしてるじゃねぇか」
頬に手を当てて、コートに座り込む俺に、駆け寄ってきた真守は呆れた表情でそう言う。
確かに眠気もあって集中力は落ちていたのだが、練習の最中だというのに、俺の思考は水原さんの事で一杯になっていたようだ。さすがにこのままじゃダメだな。早く解決策を考えなければ——っと、そうだ。
「なぁ、真守、ちょっと聞きたいんだが、お前は好きになった奴に冷たくされて、その相手と仲直りしたい時ってどうする?」
大した事はないと思うが一応治療のため、練習の邪魔にならないよう俺は一回コートの外に出る。その途中、渋々ながら俺に付き添ってくれている真守にさりげなく尋ねてみた。自分で考えてもいい考えが出なかったので、ここは真守に聞いていい案を——って、なんだか真守に怪訝な表情で見られているな。なぜだ?
「優斗、お前どうした? ボールがぶつかったショックで頭がおかしくなったのか?」
「……俺は真剣に聞いているんだ」
真守の問い掛けに俺がそう返すと、真守は吹き出して笑い始める。
「ぷっ、ふはははっ、冗談はやめろよ。今日はやけに注意力散漫だと思ったら、まさかそんな事を考えてたなんてな……ぷっ、くくく」
今は練習中のため、自重しようとはしているみたいだが、堪え切れないといった感じで再び真守は笑い出す。俺は真面目に聞いているつもりなんだが……。
「……もういい、お前に聞いた俺がバカだった」
「あぁ、悪かった、そんなに怒るなって。いや、優斗は恋愛事とは無縁だって思ってたのに、相談してきたから。つい、な」
真守は謝りながらもカラカラと笑い、俺の背中をバンバンと叩く。
どうでもいいけど失礼な奴だな。あと、相談とは言ってないし、しかも正確には俺の事じゃないんだよな。……まぁ、いいか。
***
「なるほど、大体事情は分かった」
俺は練習終わりに真守に付き合ってもらい、学校からほど近くにある土手に座りながら事の顛末を話すと、最初に茶化していた雰囲気とは打って変わり、俺が話をしている間、真守は真剣な表情で聞いてくれた。
「まぁ、あまり氷堂に関わらない方がいいと思うぞ。絶対面倒な事になる」
「この前も思ったけど、氷堂って奴は知り合いなのか?」
俺がそう尋ねると、真守はバツが悪そうにしながら頭を掻く。
どうやら図星のようだけど、真守は氷堂とかいう奴と何があったんだろうか。
「……あぁー、まぁ、中学の時にちょっとあいつと揉めてな」
「うん? 俺は知らないぞ?」
「そりゃそうだ。あいつは別の中学だったしな」
そう言いながら真守は、近くにあった小石を拾って川に投げる。小石は綺麗な放物線を描きながら緩やかに落下、ポチャンという音を立て着水すると川に小さな波紋が広がった。
話しにくい事なんだろうか? まぁ、無理に聞こうとも思わないんだが、水原さんが絡んでいるせいか気になるのも事実だ。
目の前に見える大きな川は、夕日に照らされオレンジに染まっている。さっき投げた石の影響でゆらゆらと水面が揺れ、それはまるで炎の揺らめきにも見えた。
「まぁ、話したくないなら話さなくていい」
「……悪いな。ただ、相談するなら男の俺より女子の方がいいんじゃないか?」
「女子にこんな相談するほど仲の良い奴はいない」
それに、もともと相談なんてするつもりじゃなかったしな。
なりゆきで真守に相談する形になってしまったが、俺が欲しかったのは他の奴ならどういう思考になるのか知りたかっただけだし。
「ほら、やるよ」
そう言って差し出されたのは1枚の紙。制服のポケットにでも入れてたのか、その紙はとこどころ皺がよっている。メモ帳の紙を破ったようなもので、中には電話番号が書かれていた。
「何だこれは?」
「多分、俺よりアドバイスが上手い奴。女子だし、聞いてみればいいんじゃないか?」
「…………」
出どころ不明な連絡先、しかも名前すら書いてないという怪しさ。
ってか、勝手に人の連絡先渡しちゃダメだろ。ちゃんと許可取ってるんだろうか? あと、メモ帳に連絡先書くとか今どき古風だな、おい。それに、真守の知り合いって一体……。言いたい事は一杯あったが、他に方法がないのも事実なので、喉まで出かけた言葉を呑み込み黙ってメモ帳を受け取る。
「まっ、適当に頑張れ。それと、練習中は気を抜くな、以上」
真守は言いたい事を言い終えると、話は終わったとばかりに立ち上がり、そのまま振り向く事なく帰っていく。残された俺は、ぼんやりとそのメモ帳を見ながらこれからの事を考えていた。
(続く)
- 無題〜あの日の想い〜【7】 ( No.135 )
- 日時: 2015/06/25 22:55
- 名前: ゴマ猫 ◆js8UTVrmmA (ID: y68rktPl)
「……誰かも分からない番号に掛けるのは緊張するな」
自宅に戻った俺はベットに腰を掛けながら、真守にもらったメモに書かれた電話番号を見ながら独り呟く。他に手がないのは事実なので、俺は意を決してスマホに書かれた番号を打ち込み、そのまま勢いで発信。何度かコール音が鳴ってから繋がった。
『はいはーい、やっと掛けてきてくれたんだね〜! 待ってたよ、いと——』
——その声の主が話し終える前に、俺は無意識の内に通話終了の画面をタップした。
「…………何だよ、アレは」
異様なテンションな高さと、途中までの情報を加味して考えるに、真守はこの子に連絡するよと言っておいて、ずっと連絡してなかった。そして、俺が掛けた事により真守から連絡がきたと勘違いして、テンションが高くなったという事だろうか?
その経緯までは知るよしもないが、とても面倒な予感がする。俺の勘がそう告げているので間違いない。そんな事を考えていると、デフォルトの着信音とともに、低い音を立てながらスマホが振動する。
「……さっきの奴か」
ディスプレイに表示される番号は、先ほど俺が掛けた番号。
ご丁寧に折り返し掛けてくるとは。掛ける時に、非通知設定にしておくべきだったと後悔する。だが、無視するのも何だか後味が悪いので、画面をタップして電話に出る事にした。
『もしもし、私、私。私だよ兄さん——』
「俺に妹は居ない」
一言だけそう言うと、俺は再び通話終了の画面をタップした。
まさか、新手の詐欺師だったとはな。これはもう着信拒否にするしかない。というかその前に、真守の奴に問いただした方が良さそうだ。しかし、俺が電話帳をタップするより早く再び着信音が鳴り響く。操作をしていたせいか、間違えてタップして電話に出てしまう。
『ひどいよー、ちょっとしたシャレなのにぃ』
今度は半べそを掻いているような声音で、電話の主は喋りだす。どうでもいいが、間延びした声が妙に耳障りだ。語尾を伸ばすなと言いたい。
「あぁー、何か勘違いしてると思うが、俺は真守じゃないぞ?」
これ以上しつこく掛けられても面倒なので、俺はハッキリと言う。しかし、電話の相手は特に驚いた様子もなくマイペースに話しを続けてきた。
『あれ? まもちゃんじゃないの?』
「…………」
——まもちゃんって、誰だよ。そんな可愛い名前の奴を俺は知らない。
『あっ、分かった! まもちゃんの彼氏さんだ〜!』
「ちげーよっ! どう考えたらそういう結論になるんだよっ!」
俺が真守の彼氏って、想像するだけでも勘弁なんだが。どうでもいいが、さっきから一向に会話が噛み合わない。しかも完全に向こうのペースに乗せられているじゃないか。
本当にこんな奴がアドバイスなんてくれるのか? どう考えても真守に騙されたとしか思えない。というか今更だが、男子側の心理が知りたいんだから女子に相談してどうするんだという話だよな。
『うーん、じゃあ何かな? オレオレ詐欺?』
「それはお前だ! ……そうじゃなくて、俺は真守と友達で、真守からお前の連絡先を聞いたんだ。お前、恋愛相談とかやってて、そういうの解決するの得意なんだろ?」
『へっ? ううん、全然やってないし、得意でもないよ?』
無意味っ! 俺の時間を返せ! はぁ、今までのやり取りは何だったんだ……これはもう、明日真守に昼飯を奢らせるしかないな。
「手間を取らせて悪かった。どうやら俺は真守に騙されたらしい」
これ以上会話を続けても無駄な事は分かったので、適当に通話を終わらせようとすると電話の主が「ちょっと待って」と言ってきた。
『オレオレ詐欺さんの役に立つか分からないけど、話くらいは聞くよ〜?』
「別に話を聞いてほしい訳じゃないから。それとオレオレ詐欺さんじゃねぇ」
『遠慮しないで良いよ〜、まもちゃんの友達は私の友達だから』
遠慮してんじゃなくて、ハッキリお断りしてんだよ。察しろよ。あと、何だよその理論。俺はお前を友達とは思っていないからな。
『まもちゃんの友達って事は同じ学校?』
「あぁ、けど本当にもうい——」
『よし、じゃあ明日私がそっちまで行くから、放課後校門前で待ち合わせね! ……あと、まもちゃんも連れてきてくれたら嬉しいかも。という訳で、また明日!』
「お、おい! ちょっと待て————切れた」
言いたい事だけ言って、電話は切れてしまった。何か知らん間に、話がどんどん進んでいたな。しかも明日かよ。……まぁ、今からもう一度連絡するのも面倒だし、明日直接断ればいいか。それも面倒だけど。
(続く)
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