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【リクエスト作品】ザ・オールスターズ【感想募集!】
日時: 2016/07/23 20:29
名前: 全州明 ◆6um78NSKpg (ID: GrzIRc85)

初めに

本作はモンブラン博士のリクエストにより、モンブラン博士のオリジナルキャラクター五人全員を登場させる短編集となっております。そのため、パクリ、盗作等では決してありません。

目次

第一話『最弱、故に最強。』 >>01 >>04-05 >>9-11 >>14-23

感想 >>02

第二話『他人の不幸は蜜の味』 >>26-27 >>30-33 >>35-42

第三話『不動の意志』 >>43-46 >>49-53 >>55-74

※注意

・作品の内容によっては、登場キャラの口調や設定が、一部異なっている場合があります。
・本作は二次創作です。そのため、本家様とは作風が異なります。

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Re: 【リクエスト作品】ザ・オールスターズ【九百回突破!】 ( No.60 )
日時: 2016/06/12 16:30
名前: 全州明 ◆6um78NSKpg (ID: GrzIRc85)

 幾度とない呼び出しに、不動が黙って応じ続けている理由に早美たちもいい加減気付くべきなのだろうが、ともあれ今日も公園の片隅で小規模なリアルヒーローショーが繰り広げられようとしていた。
 現れたのは二人の少女。それぞれ似たような衣服を身に纏いながらも、キャップの向きや髪を下ろす向きなど、右の少女は全て右、左の少女は全て左と、それぞれが対照的に統一されており、故意に違いを生み出していた。それは二人が双子であるという、偉く安直な理由である。
「ここで会ったが百年目、今日こそあたしたち〝ダブル・ミラーズ〟が打倒してやるわ!」
 踏み込んで声を張り上げたのは、左の少女ジュディアンヌ。双子の姉である。
「覚悟しな。ここがあんたの墓場よ!」
 そして意気込んだ割に姉の肩に隠れる右の少女は、妹、ジュディアンナ。今回の作戦に二人が抜擢された要因は彼女のじゃじゃ馬振りによるところが大きい。
「「ミュージック、スタート!!」」
 二人が全く同時に指を鳴らすと、どこからともなく軽快な音楽が流れ出す。それは公園全体を漏れなく包み込む、一種の包囲網だった。
「何!?」
「隙ありぃ!」
 困惑する不動に容赦なく飛びかかるジュディアンナ。だがその飛び蹴りは数センチ横の虚空を掠め、着地地点一帯に砂埃を撒き立てる。
「とぉーどぉーめぇーじゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーぁぁ!!」
 不動に向け間髪入れず飛び上がるジュディアンヌ。砂煙に消えた妹の代わりに標的となるのは無論彼女。それこそが本作戦の狙いなのだ。
 流れ続けるJ-POPによって一瞬反応が遅れるも、不動の拳はむしろベストタイミングでジュディアンヌの無防備な腹部に迫る。

 ————その時だった。

「ジュディアンヌぅぅーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
 一人の男がおよそあり得ないスピードで割って入ったのは。

Re: 【リクエスト作品】ザ・オールスターズ【九百回突破!】 ( No.61 )
日時: 2016/07/01 19:09
名前: 全州明 ◆6um78NSKpg (ID: GrzIRc85)

「あ」
 二人が気付いたころには時既に遅く、男は不動の拳を腹部に直撃させた上、味方であるはずのジュディアンヌの回し蹴りを襟首に喰らって失神した。
「ジャクソぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!」
 乙女の悲痛な叫び声は、夕方の街に消えた。

           *

「————で、何があった?」
 会議室にてなぜか半泣きの姉を胸元で抱きしめる妹に、もはや座ったまま問いかける早美。
「へへぇ、映像を見る限りどうもジャクソンがジュディアンヌの代わりに不動のパンチ力を測定したようですはい」
「ちょっと、待ってくれないか」
 話の腰を折ったのは、やはり社長だった。この状況に未だ馴染めずにいる彼は、知らない単語一つ一つに過剰に反応してしまう。
「さっきから、映像とか、ジャクソンとか、一体何の話をしているんだい?」
「第一、今回は偵察部隊を送り込んでいないんだろう? どうしてそのジャクソン君は瞬時に対応できたんだい?」
「「「愛です」」」
 即答だった。しかも半泣きのジュディアンヌを覗く三人中三人全員がである。
「愛って、そんなものなのかい?」
「はい。彼に限っては」
 早美が背を向けたまま面倒臭そうに答えたので、社長はそんなものらしいと強引に納得してこれ以上聞かないことにした。
「それで、弱体化時のデータは取れたのか?」
「へぇ、ばっちりでございますはい。それから、今回取れた音声データと今まで見せた様々な表情の変化から不動の精神を再現、シュミレーターの作成にも成功しました」
「そうか。……いよいよだな」
「へぇ」
「……あの、ところで映像はどうやって————」
「カメラを設置しました。公共仕様のものですので、不動とて迂闊に手は出せないでしょう」
「あぁ、……なるほど」
 社長の出番はいよいよなさそうだった。

Re: 【不動の意志】 第三話 「瞑王」 ( No.62 )
日時: 2016/07/01 19:12
名前: 全州明 ◆6um78NSKpg (ID: GrzIRc85)

 第三話 「瞑王」


 ————数日後。

 真昼間の街に、けたたましいサイレンが響き渡った。そして、どこからか放送が流れだす。
『————により、この街には避難勧告が出ています。住民の皆様は速やかに避難して下さい。繰り返します。不動の暴走により、この街には避難勧告が出ています。警報が解除されるまで、各自治体の指示に従い、既定のルートに沿って避難して下さい。渋滞が予想されますので、車での非難は出来るだけ控えて下さい。ご理解と、ご協力をお願いいたします。』
「ついに、この時が来たか……」
 四方八方を埋め尽くしていた人々の波が途絶えて行く中、元連絡員の男は街路樹の脇のベンチに腰掛けていた。平和ボケした能天気な表情の住民たちとは違い、彼の面持ちはいつになく深刻なものだった。が、ベンチの背になぜかひっそりと張られた張り紙『注意! ペンキ塗りたて』がその雰囲気を容赦なくぶち壊していた。
『————臨時ニュースをお伝えします。午前十二時ごろより、○○街全域に避難勧告が出されています。大変危険ですので、警報が解除されるまで絶対に近付かないでください。』
 ラジオの電源を入れると、音楽専門チャンネルでさえそんなニュースを流し出す。地方の局ではないというのに。
『今日未明、各国首脳らの緊急会議が開かれました。議題はもちろん、不動の暴徒化についてです。一晩で世界中を駆け巡り震撼させたそのニュースに、不動を刺激しないよう、戦争が一時中断された地域もあるとまで言われており、その影響力は————』
『我々は本当にその秘密結社〝アルティメット・エクストリーム・ゴールデン・エクスプロージョン・インターナショナル・ホールディングス・超改新AZスーパーハイパーDX(以下略)〟を信用していいのか。私はそれを問いたいのです』
『————彼らを信じるしかないでしょう。暴徒化した不動〝仁王〟を止められるのは、不動〝盟王〟以外にいない。』
 いくらチャンネルを切り替えても、ラジオの電源を落としても、どこからか、そのニュースは耳元へ飛び込んでくる。不動の暴徒化を、世間は皆信じ込んでいるようだった。

Re: 【リクエスト作品】ザ・オールスターズ【千回突破!!】 ( No.63 )
日時: 2016/07/03 13:38
名前: 全州明 ◆6um78NSKpg (ID: GrzIRc85)


           *

 そのころ早美総一郎は、遊撃部隊隊長として全国放送のニュース番組に出演中だった。
「————では、貴方方の総戦力を持ってすれば、暴走した不動をも止められるということですか?」
 何故か我が者顔で出演する書道家が、その割に浮付いた口調で尋ねてくる。
「その通りです。我々がこの日のために秘密裏に研究、開発した独自のシステムを用いれば、最低でも一週間以内に制圧が完了します」
「肝心のそのシステムと言うのは、いったいどういったものなんですか?」
 腕に巻いたピンクの時計を誇らしげに見せつけながら、アイドルきどりの女子アナが上目遣いをする。
「詳しくは言えませんが、広範囲にわたり不動を弱体化させる、一種のバリアーのようなものを張る装置です」
 早美はまたも身じろぎ一つせず即答する。
「バリアー、ですか。それを使えば弱体化できると?」
 早美の言葉を上の空で反芻するだけのその口からは、書道家としての威厳も、知性も、まるで感じられない。
「はい。ですがそれを持ってしても不動の力を完全に抑え込めるわけではありませんし、その装置自体人体に悪影響を及ぼす可能性がありますので、一般の方々はくれぐれも近づかないよう注意して下さい」
「強力な〝光〟を発することもありますので、望遠鏡などで覗くと失明の危険性があります。絶対に、使用しないでください。以上、ニュース速報でした。本日は特別に、書道家の押野信一さん、秘密結社(以下略)の、早美総一郎さんに、着て頂きました。ありがとうございました」
 最後は唯一知性を感じさせる、メガネの司会者役がしめた。


 控室のドアを後ろ手に締める早美の口元には、余裕と失望の笑みが浮かんでいた。
「まさか、ろくに本物と偽物の区別もつかないとはな。……情報操作するまでもない」
 そう、街で暴れる不動〝瞑王〟の映像が流れた際、その容姿が普段の不動〝仁王〟と所々違う事について指摘されるだろうとわざわざ情報操作用の台本や資料が用意してあったのだが、いざスタジオで出て見れば、皆不動を口々に非難するばかりで、誰一人としてその違和感に目を向けなかったのである。それは、本当は誰一人、不動の姿を知らないからかもしれなった。専門家気取りの解説者たちでさえも。
「へへっ、あの女子アナの腕時計も、どうみても偽造ブランドでしたしね」
「あぁ。しかもそれを自慢げに見せつけて来るんだ。あれには笑った」
 早美が出演した番組は例外のようだったが、実際、多くの報道番組が偽専門家たちの何の根拠もない情報に振り回され、素人でも分かるような矛盾や違和感に気付きもせずに全国放送で報道し続けている。確かに、今はどこも混乱しているのかもしれない。だが、何も分からないのなら、ただそこで突っ立っていればいいのだ。と、早美は思う。デマを言い振らし、余計な混乱を呼ぶよりかはよっぽどましなのだから。

Re: 【リクエスト作品】ザ・オールスターズ【千回突破!!】 ( No.64 )
日時: 2016/07/17 17:32
名前: 全州明 ◆6um78NSKpg (ID: GrzIRc85)

           *

 日常の風景から人だけが消え去り、スピーカーというスピーカーからサイレンの如くJ-POPが鳴り響く街を、不動仁王はかつてない焦燥と疲労の中駆けていた。無論不動は少し走った程度で息切れなどしない。フルマラソンなど準備運動にもならないくらいだ。よってこの場合の疲労は焦燥と同じものから来ている。つまるところ精神的な疲労感だ。それらの原因は数分前のやり取りに遡る。その時不動は、元連絡員の男と行動を共にしていた。

「思ったより被害が少ないな」
「あぁ、テレビ局が撮影する箇所だけに集中しているようだ」
「奴らの目的はなんだ?」
「恐らく、この状況を利用して都心を壊滅させるつもりなんだろう」
「何!? そんなことをしたら、万単位の人間が路頭に迷うことになるぞ!」
「あぁ、そして奴らにそそのかされ、一人残らず組織に引き込まれるだろうな」
「俺はどうすればいい!?」
「奴らの、秘密結社(以下略)の、本社に乗り込むんだ!! そこでこの放送を止める頃には、不動瞑王が駆け付けるだろう」
「そうか」
 待ち切れず駆け出そうとする不動を、元連絡員が慌てて呼び止める。
「一つだけ、言っておくことがある」
「————なんだ? 早くしてくれっ!!」
「瞑王の装備は絶対に壊すな」
「何故だ」
「どうも奴らは、その装備によって瞑王本来の力を押さえ込んでいるようなんだ」
「それがどうした? 俺はもう行くぞ」
 不動の背中に、元連絡員は叫ぶ。
「不動瞑王は、————お前より強いかも知れない!」
 それを聞いてか聞かずか、不動仁王の背中は、立ち止まることなく小さくなって行った。

 今、不動はかつてないほどに焦っていた。〝最強〟と言う、最大のアイデンティティが脅かされようとしているからだ。勿論装備を破壊した上で瞑王を倒すことが出来れば済む話なのだが、もし仮に、万が一にでも不動が敗北した場合、一体誰が、代わりに世界を救うのか。それが問題だった。
 自分のアイデンティティを保持するためだけに、世界の平和を脅かしていいはずがない。何か、自分が瞑王よりも強いという確証が無い限りは。
「————ここか」
 気がつくと、秘密結社(以下略)の本社ビルはもう目前に迫っていた。まだ、答えはでていない。それでも不動は大地を力強く蹴り上げて、躊躇なく突入するのだった。

           *

「うおおおぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーぉぉ!!!!」
 シャッターで締め切られた入口を、咆哮とともに突き破る。戦車の砲撃にさえ耐えるシャッターも、不動の前では弱体化して尚紙クズ同然である。
 勢い余って奥の二重扉まで貫通したらしく、不動は白いタイル張りの玄関ホールに躍り出た。そこは、並みの体育館が丸ごと入るほどの広々とした空間だった。J-POPは、相も変わらずけたたましく反響し、不動を苦しめる。
「————遅かったな。不動」
 声のした方を見やると、ホールの中央に、会社で使われるような回転式の椅子が一つ、ぽつりと置かれている。声の主はその上で手足を組み踏ん反り返っていた。
 眩い金髪に、皺一つない純白のスーツ。そして、一点を見据えたまま揺るがない、我の強い双眸。不動は、その男に覚えがあった。が、名前はわからない。
「お前がリーダーか?」
 不動が臆することなく問うと、金髪の男はおもむろに立ち上がり、スーツの襟を整えてから、自信に満ち溢れた顔で口を開く。
「そうだ。が、違う」
「なんだと?」
 不動は言葉遊びでからかわれた気分になり、眉間に皺を寄せる。
「俺の名前は、————早美総一郎だ!!」
 早美が踵で椅子を蹴り上げると、目にも止まらぬ速さで線となって吹き飛び、天井に突き刺さった。
「な……」
 その常軌を逸した脚力に、不動でさえ、驚きを隠せない。
「不動仁王。お前は今日、————ここで死ねっ!!」


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次回はいよいよクライマックス。順調にいけば最終話です。
諸事情により更新がやや遅れるかもしれません。ごめんなさい。


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