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【リクエスト作品】ザ・オールスターズ【感想募集!】
日時: 2016/07/23 20:29
名前: 全州明 ◆6um78NSKpg (ID: GrzIRc85)

初めに

本作はモンブラン博士のリクエストにより、モンブラン博士のオリジナルキャラクター五人全員を登場させる短編集となっております。そのため、パクリ、盗作等では決してありません。

目次

第一話『最弱、故に最強。』 >>01 >>04-05 >>9-11 >>14-23

感想 >>02

第二話『他人の不幸は蜜の味』 >>26-27 >>30-33 >>35-42

第三話『不動の意志』 >>43-46 >>49-53 >>55-74

※注意

・作品の内容によっては、登場キャラの口調や設定が、一部異なっている場合があります。
・本作は二次創作です。そのため、本家様とは作風が異なります。

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Re: 【リクエスト作品】ザ・オールスターズ【五百回突破!】 ( No.35 )
日時: 2016/03/14 17:34
名前: 全州明 ◆6um78NSKpg (ID: gF1/UC.2)

いつもコメントありがとうございます。ハニーちゃんにツッコミなんかさせちゃっていいのかなぁなんて不安だったので、助かります。

以降本編。
————————————————————————————————



 ————あれから何日か経ち、気付くとわたし達は学校にいる間中ずっと一緒に居るようになっていた。
「ねぇ、トイレ行かない?」
 放課中、普段より少し騒がしい教室で、静火がいつもより控えめなボリュームで言う。
 確かに、内容が内容だけど、でも、なんだか……
「あれ静火、今日はちょいテンション引く目だね」
「静ちゃんと呼びたまえ!」
 静火は途端に声を上げ、いつもの大げさな仕草で鼻息を荒げながら胸を張って見せた。
「いやだから、それはちょっと……あれだから、静火で行こうってこの前決めたじゃん」
「ん? あれ、そうだっけか? へへへ……」
 静火にしては、やけに歯切れが悪い。やっぱり今日は、あんまり元気ないのかな?
「まぁとにかくほら、行きましょうや!」
 今度は少し不釣り合いな声を上げ、ぐいぐいと背中を押してくる。なんか、やけに無理してる感じだな。
 もしかして、お腹痛い? だから元気ないのかな。
「うぅんまぁ、それはいいんだけどさ」
 違和感を拭いきれないまま、わたしはされるがままに教室から押し出され、女子トイレに連行された。
 あれ? そう言えば静火って、作り笑い嫌いなんじゃなかったっけ。

Re: 【リクエスト作品】ザ・オールスターズ【五百回突破!】 ( No.36 )
日時: 2016/03/14 17:36
名前: 全州明 ◆6um78NSKpg (ID: gF1/UC.2)


           *

「あ……」
 トイレにて、久々に見た〝それ〟に、思わず足を止めて見入ってしまう。やっぱり、浮かんでる。
「ん、どした? なんかついてた?」
「え? あぁ、いや、気のせいだった」
「そぉ?」
 そこは一応女の子なのか、静火も足を止めて鏡を覗きこみ、結び目の位置を調整し始めた。
 男子トイレより少し大きいらしいその一枚板の大鏡には、四苦八苦する静火の顔と、その目元までをも覆い尽くすような、巨大なもやもやが映り込んでいた。
 それにしても、大きいな。今まで見たのの比じゃない。まだ二時間目が終わったばっかりなんだけどひょっとしてわたし、早くも空腹極限状態?
 不自然にならないようにさりげなく、ゆっくりした動作でお腹に手を添えて見る。なるほど確かに、胃が空っぽな感じだ。……これは鳴り出す前に、なんとかしないとな。
 ぱっと目に飛び込んでくるものは、静火を取り囲むように浮かぶもやもや。
 これって、幻覚、なんだよね。ってことはゼロカロリー……
 いやいやいやいやいや、待て。待てわたし。そういう問題じゃないだろ。
 振り返り、目に止まった壁におでこをぶつける。
「どした!?」
「あ、うん。……何でもない」
「……?」
 さすがの静火も怪訝な顔を浮かべるも、すぐに作業に戻った。余程気に入らなかったのか、どうやら髪留めをほどいての本格的な結び直しを始めるようだ。
 今なら、バレないかな……
 気付かれたら絶対、頭おかしい人だと思われるよね。だって、紫の綿菓子が見えるなんて。でも、静火ならむしろ、喜んでくれるかな。
 なんて考えているうちに、いつの間にやらわたしの右手は、静火のもやもやを豪快に絡め取っていた。あぁあ、もう言い逃れできないなこれは。
「ねぇハ二ー?」
「え!? な、何?」
 静火が振り向きそうになり、慌てて右手を背後に隠す。
「なんでそんな驚いてんの? まぁ、いいけど……」
 静火はこちらをちらりと見るとすぐに向き直り、また髪をいじりだした。
 ホッと安堵の溜め息をついてから、さりげなく、後ろ手のもやもやに振り返る。やっぱり大きいな。

Re: 【リクエスト作品】ザ・オールスターズ【六百回突破!】 ( No.37 )
日時: 2016/03/17 20:58
名前: 全州明 ◆6um78NSKpg (ID: gF1/UC.2)

「————あたしって、変かなぁ?」
「え!? いや、そんなことないよ……」
「どうしたのさっきから」
「いや、ホント、なんでもないから。続けて」
「なんか、最近ね、あたし、嫌な感じがするの。その、視線とか、雰囲気とか、そういうの」
「そう? 気のせいじゃない?」
 そう言えば、今日は女子群が少し騒がしかったな。いつもはもっと大人しめなのに。
「そうかな。————そう、だよね。うん、そうだよ。きっとあたしの杞憂だよ」
「そうそう。最近はあの変な口調も直ってきたみたいだし」
「え。やっぱあれ、変、だったかな」
 静火は手を止めて、洗面器に両手をついた。少し俯いた背中で、その表情は窺い知れない。
 でも多分、傷つけちゃったかな、今。
「え? いやいやいや……」
 顔の前で手を振ろうとして、もやもやの存在を思い出し、わたしは咄嗟にパクリと一口で処理する。
「———そんなことないよ。わたしは、あれはあれで結構好きだったし」
「ホント!?」
 静火が顔を上げる。鏡を見なくても、喜んでいるのが分かる。
 まぁこれで、プラマイゼロだよね。口の中に溢れ返る蜜の味を噛み締めながら、静火の隣の鏡の前に立ち、わたしも前髪の微調整を始めた。

 ———翌日、静火は学校を休んだ。

Re: 【リクエスト作品】ザ・オールスターズ【六百回突破!】 ( No.38 )
日時: 2016/03/17 21:59
名前: 全州明 ◆6um78NSKpg (ID: gF1/UC.2)

「———さっき電話を入れたんだが、熊崎はまだ体調が良くないみたいでな。明日も来れそうにないらしい。先生は今日、出張に行かなきゃならんから、誰か、代わりにプリントを届けに行ってやってくれないか?」
 帰りのST中、担任の先生の間延びした声が響く。その声色からは、深刻さなんて感じなかった。ホッとしたような、ムッとするような、どっちつかずな気持ちになって、なんか、もやもやする……
「あれ……?」
 ハッとして手鏡を取り出して見ると、案の定、わたしの頭の上にはあのもやもやが浮かんでいた。でも、想像してたより、小さい? もしこれが、この気持ちから来るものなら、もうちょっと大きくてもいいはずだ。なのにわたしのもやもやは、今まで見た中で一番小さい。
「……じゃなくてぇ、ハ二ーちゃんがいいと思いまーす」
「え!? 何?」
 前の方の席で誰かの手が上がったかと思うと、教室中の視線が一斉にわたしの方を向き、慌てて手鏡をしまう。
「そうか? まぁ確かに、二人は仲良いもんな。それじゃハ二ー、行ってくれるか?」
「あぁ、はい。いいですけれど……」
 状況が飲み込めず、返事が尻すぼみになってしまう。でも今日の教室には、それを咎める人なんていなかった。いつもなら、『どっちやねん!!』なんて、静火が突っ込むんだろうけど。
「じゃ、ハ二ーはあとで職員室までプリントを取りに来なさい」
 そう言えばわたし、まだ静火の家行ったことなかったな。結構離れてるし。
 ———こういうのって、普通家の近い人が行くはずだけど……
 誰もいなかったのかな?

Re: 【リクエスト作品】ザ・オールスターズ【六百回突破!】 ( No.39 )
日時: 2016/03/19 21:41
名前: 全州明 ◆6um78NSKpg (ID: gF1/UC.2)


           *

 インターホンを押すと、控えめにドアが開いた。
「なんでしょう」
 そこからひょこりと顔を出したのは、知らない女の人だった。
 静火のお母さんだろうか。それにしては若いような……
「まだ体調が良くないと聞いたので、プリント持って来ました。あの、……静火、いますか?」
 表札は、一応〝熊崎〟なんだけど。ここに来るまでに二、三度は見かけたし、ひょっとしたら熊崎違いの可能性もある。
「静火の、———お友達?」
 女の人は、きょとんとした顔で首を傾げる。
「そうですけれど……」
「まぁ! いつもお世話になっております」
 パァッと晴れやかな笑顔を浮かべ、深々と頭を下げてくる。なんか、可愛いな。
「さぁさ、どうぞ中へ」
 先程の警戒心はどこへやら、ドアをほとんど百八十度開き、脇によって道を開けてくれる。
「……おじゃまします」
「いえいえ。あぁ、静火の部屋は二階にありますので、今、案内しますね」
 その声も今は、丸みを帯びたやさしい温もりに溢れている。
 パタパタ歩く女の人の後姿は、どことなく、静火のそれとよく似ていた。
「こちらです」
 言いながら女の人は、手のひらでやんわりと階段を示す。
「あぁ、はい」
 一歩足を踏み出そうとすると、
「足元、気を付けて下さいね」
「あぁ、どうも……」
 予想外の気遣いぶりに、少し、反応に困ってしまう。別に、タメ口でいいんだけどな。


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