コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 【リクエスト作品】ザ・オールスターズ【感想募集!】
- 日時: 2016/07/23 20:29
- 名前: 全州明 ◆6um78NSKpg (ID: GrzIRc85)
初めに
本作はモンブラン博士のリクエストにより、モンブラン博士のオリジナルキャラクター五人全員を登場させる短編集となっております。そのため、パクリ、盗作等では決してありません。
目次
第一話『最弱、故に最強。』 >>01 >>04-05 >>9-11 >>14-23
感想 >>02
第二話『他人の不幸は蜜の味』 >>26-27 >>30-33 >>35-42
第三話『不動の意志』 >>43-46 >>49-53 >>55-74
※注意
・作品の内容によっては、登場キャラの口調や設定が、一部異なっている場合があります。
・本作は二次創作です。そのため、本家様とは作風が異なります。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
- Re: 【リクエスト作品】ザ・オールスターズ【五百回突破!】 ( No.30 )
- 日時: 2016/03/07 17:58
- 名前: 全州明 ◆6um78NSKpg (ID: gF1/UC.2)
手をうちわにして仰ぎつつ、何事も無かったように再びガラスを覗きこむ。
「ん! ……あれ?」
最初は、ガラスが曇ってるとか、汚れてるとか、そんなんだと思った。
でも、いくらガラスを擦ってみても、わたしの周りを取り囲む、謎のもやもやは消えてくれない。ガラスが黒っぽいせいでわかりづらいけど、良く見るとそのもやもやは淡い紫色をしていて、なんだか綿飴みたいでおいしそうだったのを覚えている。
「って、あれ……?」
頭を振ってみてもビクともしないので、何気なく横にずれてみると、なんともやもやは、ついてこなかった。わたしの隣の空間に、もやもやと漂っている。
もちろんそこには誰もいない。綿飴機だってどこにもない。
なのにガラスの中だけで、その場にぷかぷか浮かんでる。❘あぁ、もやもやか、この場合。
振り返ってみても、多分誰も……
———いや、いた。車の流れが途切れるのを待つ、健気なサラリーマンが、一人だけ。
さっきは目の前のガラスに夢中になって見落としていたらしい。ゴメンね。
でも、彼の頭にもやっぱり、もやもやなんて浮かんでない。ガラスの中のもやもやは、位置的にちょうど彼の頭の辺りなんだけど。……それにしてもやっぱり、おいしそうだな。
ダメだとわかっていながらも、湧き上がる好奇心と空腹に負け、わたしは左手の人差し指を立てて、恐る恐る、彼の頭上に近づける。ガラスで位置を確認しつつ、慎重に。
そしてその距離がゼロに達した時、わたしは、意を決して掻き回した。
ガラスの中の、もやもやを。彼の頭の上で。
———これって傍目からだとちょっと危ない人に見えてるかも。
ふと浮かんだ邪念を、頭を振って振り払う。
いや待て、これはその、あれだから。ちょっと、トンボ捕まえようとしてるだけだから。うん、そうだ。そうしよう。知り合いとかに見られてたら、そういう事にしよう。
そうこうしているうちに、やがて指先に、糸のようなものがまとわりつく感触を覚えた。
「ひゃっ!!」
思わず、声が上がってしまう。何事かと振り返るサラリーマン。その背後で人差し指を立て立ち尽くす私。まさに絶体絶命と思われたその刹那、脳裏を神懸かり的なアイディアが駆け巡った。
- Re: 【リクエスト作品】ザ・オールスターズ【五百回突破!】 ( No.31 )
- 日時: 2016/03/08 20:09
- 名前: 全州明 ◆6um78NSKpg (ID: gF1/UC.2)
「くしゅん!!」
これだぁーーーーーーーーー!!!!
立てっぱなしの人差し指は、鼻を拭ってやりすごす。はい完璧。
一見不自然極まりないポーズを季節による自然現象とのコラボによってその辺に居る花粉症の人のポーズに化学変化させその上可愛さまでもを引きだすこの高等技術っ!!
男子ならイチコロね。
案の定紳士たる通りすがりのサラリーマンは高鳴る鼓動と揺れ動く感情を必死に抑え込み、わざとらしい咳払いをして向き直った。
わたしって、罪な女。
あぁ、やっぱりおかしいわ、きょうのわたし。ビルのガラスにもたれかかり、項垂れる。
顔を上げるとガラスには、わたしの顔と、その頭上を漂うあの紫のもやもやが映っていた。
改めて人差し指を立てて、頭の上でくるくる回して見ると、目には見えないけど、何か、蜘蛛の糸のようなものが絡みついてくる感覚がある。ガラスの中ではもやもやが人差し指に巻き取られ、綿飴のようになっていた。
人目を気にしつつ、恐る恐る、口に含んでみる。
ふんわりと甘い、蜜の味がした。
———それがわたしと、このもやもやとの出会いだった。
- Re: 【リクエスト作品】ザ・オールスターズ【五百回突破!】 ( No.32 )
- 日時: 2016/03/09 22:15
- 名前: 全州明 ◆6um78NSKpg (ID: gF1/UC.2)
以下現在編
————————————————————————————
*
————以来わたしは、少し大きめの手鏡を持ち歩くようになった。これで手入れをする振りをして、道行く人たちのもやもやを食べるのだ。
……ところであれからいくつか、このもやもやについてわかったことがある。もやもやは、どうやら何らかの形で満たされると消えてしまうようなのだ。
それは、もやもやが、不幸や葛藤からくるものだからかもしれないし、最悪極度の空腹状態が見せる、一種の幻覚かもしれない。わたし以外には見えないみたいだし。
「ハニーちゃん!? どうしたの? 鏡何か見て!」
「うわっ!!」
唐突に、クラスメイトの子が覗きこんでくる。身構えていなかったので、男みたいな低めの声が出てしまう。
「い、いや、その……ちょっとね」
軽く手を振るつもりだったのが、かなり大げさな動作になってしまう。相当パニクッてるなあたし。
———そりゃそうか。
「えぇ? なになに? 気になるじゃん教えてよぉー。ねぇねぇ」
言いながら、背中をぐいぐい押してくる。それにしても、馴れ馴れしいな。まだ四月なんだけどな。まぁ、こういうタイプも嫌いじゃないけどさ。
「ちょっと、前髪が気になって」
「えぇー何それ。変なのぉ」
いや、わたしの前の席の子も手鏡見てんじゃん。
けどその少し特徴的な口調も、口に手を当てて首を傾げる仕草も、演じているわけではなさそうだ。
それどころかこの子の声色は、嫌みも悪意もちっともなくて、明るくてはきはきとしている。
———なんか、仲良くなれそうだな。
横目でちらりと名札を見ると、『熊崎 悟朗』と書かれて———
「熊崎悟朗!?」
「わっ!! びっくりしたぁ。……なぁにぃ? もう」
「いやそれ、その名札!」
「え? あぁこれ?」
ブレザーの胸元を指さし、少し困ったように笑う。
「いやーそれが名札なくしちゃってさぁ。お兄ちゃんに借りたの」
「あ、あぁ、なんだ。そういうこと。アハハ……」
その場を取り繕うためつくり笑いをすると、熊崎さんの眉が、ピクリと反応した気がした。
————そんなにぎこちなかったかな?
- Re: 【リクエスト作品】ザ・オールスターズ【五百回突破!】 ( No.33 )
- 日時: 2016/03/11 23:33
- 名前: 全州明 ◆6um78NSKpg (ID: gF1/UC.2)
「それで、本名は何て言うの?」
「ん? あぁ、熊崎静火。よろしくぅー!」
なるほど、熊崎静火か。悟朗が静火に変わっただけで、鮭に襲い掛かる勇ましいそれから愛らしいテディなそれへとシフトした。————名前って、すごいな。
「そっか、それじゃあ……熊崎さんだね」
少し迷ってから、名字さん付けに着地する。いきなり下の名前や呼び捨てで呼ぶと、それだけで嫌われちゃうこと結構あるからね。まぁ、まさかこの子はないと思うけど。人によって変えるのも変だし、一応。
「えぇー!! よそよそシィなぁ、おい!」
案の定、熊崎さんは唇をCの字に歪ませて、自分なりの不満顔をする。というより変顔か。なんか、角が立たなくていいな。わたしは絶対やらないけど。
「静ちゃんでいいよぉ、静ちゃんで」
言いながら、酔った人を介抱するみたいに背中をさすってくる。
「いや、それは、ちょっと。……昔のド○えもんファンから苦情来そうだし」
必死に身をよじって脇腹をくすぐられるのを回避しつつ、丁重にお断りする。ていうか、ホント著作権とか大丈夫? ド○えもんを守る会の皆さん、ごめんなさい。多分この子、元ネタ知りません。だから許してあげてね。————って何の話よ。
「うぅん。それじゃあ、仕方ない……スティーブンでいいよ」
「いやこの一瞬のうちに何があった? 妥協し過ぎでしょ!」
やばっ。慌てて口元を手で抑える。だけどもう遅い。思わずツッコミ入れちゃった。それはまだいいとしても、今のわたし、完全に素に戻っちゃってた。イントネーションもなんか、関西弁みたいになっちゃってたし。恐る恐る、背後の熊崎さんの方へ振り返る。
「どした? 舌噛んだ?」
熊崎さんは、やっぱり熊崎さんだった。ホッと、安堵の溜め息が出る。
熊崎さんって、馴れ馴れしくてちょっと変わってるけど、外見も中身も、わたしなんかよりずっと綺麗だな。
こんなにすがすがしく人を羨むのなんて、初めてかもしれない。
こうゆう気持ちを、尊敬って、言うのかな?
……なんか、良い気分。
- Re:ザ・オールスターズ ( No.34 )
- 日時: 2016/03/12 10:09
- 名前: モンブラン博士 (ID: MQ1NqBYl)
ハニーちゃんは可愛いだけじゃなくて突っ込みもうまいんですね。
彼女の新しい一面が見れたので嬉しいです!
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
この掲示板は過去ログ化されています。