コメディ・ライト小説(新)
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- 憑きもん!~こんな日常疲れます~【第4章開始!】
- 日時: 2023/09/27 17:10
- 名前: むう (ID: viErlMEE)
中学2年生の私・月森コマリには一つだけ悩みがある!
それは、世にも珍しい【逆憑き】という体質なこと!
なんとなんと、自分の行い全てが悪い方向に行くみたい。
自分の存在自体が悪い妖怪とかを呼び寄せてしまうんだって。
治すには、悪い妖怪と一緒に集まってきた、いい妖怪か幽霊さんの力を借りるべし。
でもなかなか、そんな優しい幽霊来ないんですけど———!?
悪運強すぎJCの日常ラブコメディはじまりはじまりっ。
―-----------
《2023年夏☆小説大会 銀賞入賞!》
投票して頂きありがとうございます!!
作者とキャラの感想はコチラ→>>54
★重要キャラクターLog★
>>23
★応援コメント★
>>09 >>47
※不定期更新です!
※視点変更をメインとした展開です。毎話ごとの主人公がいます。ご了承ください。
※若干のシリアス描写がありますが、基本は日常コメディです。
---------------------
【目次】一気読み>>01-
〈第1章:新たな出会いは疲れます! >>01-17〉
プロローグ>>01
第1話「ヘンな同居人」>>02-04
第2話「誰だお前」>>05-06
第3話「ヘンな協力者」>>07-09 >>10
第4話「変化」>>11-17
〈第2章:新たな関係は疲れます!>>18-33〉
第5話「要らない力」>>18-21
第6話「契り」>>22-24
第7話「プレゼント」>>25-28
第8話「側にいれたら」>>29-33
アフタートーク>>34
閲覧数1000突破記念★キャラトーク>>46
閲覧数1400突破記念★キャラ深堀紹介>>51
〈第3章:〔過去編〕疲れたきみと僕の話>>35-57〉
第9話「幽憂レコード:前編」>>35-38
第10話「幽憂レコード:後編」>>39-40
第11話「禍と鳥:前編」>>41-45
第12話「禍と鳥:中編」>>47-50
第13話「禍と鳥:後編」>>52>>53>>55>>56
アフタートーク>>57
〈第4章:新たな試練は疲れます!>>58-〉
第14話「転校生がやってきた」>>58>>59
[記録Log]
2023年1月11日、本編執筆開始。
[参考文献リスト]
・新訳:古事記
・妖怪大辞典
・京都弁(YouTube講座)
- Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【第3章開始★】 ( No.55 )
- 日時: 2023/09/20 23:58
- 名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: viErlMEE)
Q:激しい戦いをしているのに、なぜ学校の先生たちに見つからないのですか?
A:大国主が結界を貼っているからです
---------------------」
〈再び正鷹side〉
「――勝利の天秤?」
俺は頬についた汚れを手の甲で拭いながら、掠れる声で言った。
「そんなの知らねえ。皿がどっちに傾こうが、俺は諦めない」
こちらが劣勢だということは、もちろん理解している。自分の身体がボロボロなことも、とても自分が適うような相手ではないってことも、ちゃんと把握している。
最強だと言われた自分の能力が、実は全然大したことなかったってことも。自分が勝手に己惚れていただけだということも。
「諦めない、ねえ。昔、同じことを云ったやつがいた」
禍の神は淡々と告げた。
「守りたいものがあるとか、やらなきゃいけないことがあるとか――。彼らは我を前にしてペラペラと希望を語った。そして、脆く儚い夢と一緒に散っていった」
あるものは、愛する人と再び会いたいと願い、あるものは、自分の力で世界を作り変えたいと願った。武器を持たず、装備もないまま立ち向かったものもいたし、その者たちを庇い自らを犠牲にして戦線に出た人間もいた、と彼は続ける。
「つくづく思った。人間は何も学んじゃいないと。力の差は分かりきっているだろう。未来を予知することはできずとも、予測することはできる。なのになぜ挑もうとするのだ。なのになぜ立ち向かおうとするのだ。なにが貴様らを奮い立たせる?」
ポツン。何かが鼻の先に当たった。生ぬるい感触。雨だ。
上を見上げる。分厚い雨雲が空を覆っていた。確か夕方にかけて冷え込むって、昨日ニュースでやってたっけ。降水確率は70%だったっけな。
「――お前、雨は嫌いか?」
突然違う話をし始めた俺に、禍津日神は呆気にとられた顔になった。からかおうと、右手の人差し指を俺の鼻先に突きつけようとしたが、その手はブランと垂れ下がる。長時間の戦闘は、精神疲労につながる。傷口は塞げても、心の疲れは癒せない。
「チッ」と小さく舌打ちをし、彼は苛立ちを隠すかのように声を荒げた。
「嫌いだ! 雨は血が流れるからな! それがどうした!」
「そうか、俺と一緒だな。俺も昔は雨が嫌いだった!」
つられて俺の声も大きくなる。
どんなに天気が悪かろうが、家業は休めない。曇天時、悪霊退治に出かける前、いつも俺は召使いに、雨合羽を着せられた。風邪をひかれては困るという理由で。
プラスチックの独特のにおいが嫌で、俺は毎回彼らの手をはねのけた。だけど召使の人は、「これが仕事ですから」と、一向に手を止めようとはしなかったんだ。
でも飛燕と飛鳥が、俺の誕生日に紺色の傘を買ってくれてさ。
合羽は嫌だったけど、傘をさすのは全然苦じゃなくて。むしろ楽しくて、嬉しくて。それ以降は、水たまりを蹴飛ばして任務地へ赴けたのだ。
「今は割と好きだ! むしろ降ってくれって思うよ。雨の良さに気づけたのは、それを教えてくれた人がいたからだ!」
「――貴様は何が言いたいんだ」と禍津日神。
「何が自分を奮い立たせるかわかんねえなら教えてやるよ! 人の愛と優しさと強さだ! テメーが脆く儚いものだと決めつけたものすべてだ!」
――兄様、これ、飛鳥と小遣い貯めて買ったんだ。良かったら貰って。
――これで、ウキウキルンルンでお外歩けるね!
長方形の白い箱に、綺麗にしまわれたプレゼント。
生地に縫い付けられた【HAPPY Birthday】の刺繍糸の色は、俺が好きな赤色だった。
正義のヒーローの色。悪いやつをやっつけ、弱い人を助ける、カッコいいヒーローの色。
――わあ、すっげえ。すげえすげえすげえ! わあああ! ありがとう、飛燕、飛鳥! 俺、すっげえヒーローになって、すっげえやつになるっ。
……ああそうだよ。俺はずっと、赤いマントに憧れていたっけ。
随分回り道をした。随分と沼に足を取られた。
やっとだ。こういう形で実現するとは思わなかったが、それも人生っつーわけで。
「結局人生っていうのは、自分が生きる道なんだ。何を好きと感じるか、何を嫌いと感じるかは、その人次第だ。だから」
俺は、すぅーはぁーと息を吸う。肋骨が折れているせいだろうか。あまり多くは吸えないが、精神を落ち着かせるのは基本中の基本。
……多分この術を使えば、俺はもう……。
ううん、迷うな。信じろ。お前は最強の霊能力者、番正鷹だろ。
お前のモットーは何だ。お前が本当にやりたかったことはなんだ。
自分に嘘はつかない。俺は俺が守りたいものを、俺が信じたいものを愛する。
「だから道は、自分で切り開く! 後ろを歩く奴らが迷わないように、俺が先に拓いてやる!」
「ふん、バカバカしい! 禍火・竜玉!」
禍津日神の両手から、二つの黒い球が発生する。数分前に防いだ球に比べて、直径が長い。
ざっと1メートル以上ある。防げるか?
…………いや、できる。俺ならやれる!
この一撃にすべてをかける。何を失ってでも、あの二人の未来は絶対に渡さない。
「番家流憑依術:奥義!!」
両手を再び銃の形に組む。集中しろ、集中しろ、集中しろ。
万が一の為にと取っておいた最後の霊力を一点に集める。指先が徐々に熱くなっていく。凄まじい威力のエネルギーが、全身を駆け巡る。
この奥義は、術者の死期が早まった時にしか発動できない。奥義と名がつくものは大体そうだ。
そうだろ猿田彦。口に出さずとも伝わるぜ。
お前が乗っ取りを解除した本当の意味は、俺にすべてを預けた訳は。
ああそうだよ、道開きの神様の最大の能力は、未来予知だった。
神様が人の死に介入することはご法度だった。
つまり、そういうことだろ。
お前は本当に優しいな。俺が悲しむと思って、黙ってたんだから。
(気づいてほしくなかった)
頭の中に響く友人の声。彼は俺の背後にいる。
その表情を直接見ることはできないが、声色でなんとなく伝わるよ。さては泣いてるな。
〈よく言うぜ。猿は俺が気づくとこまで読んでるのに〉
(お前に教えてもらったんだぜ。ネ〇フリもジャ〇プもYoutubeも)
俺は両手を組みながら、フフッと笑った。
〈お前、何でもハマったよな!〉
(バンのトークが上手いのが悪い。あんなの好きになるしかないだろ)
〈うっわ逆ギレ? 言っとくけど俺は全部見させてもらえなかったからな。猿は贅沢もんだぜ〉
(お前はほんと変わんねえな。普通、こういうシチュエーションは、綺麗な言葉を交わすもんだろ)
〈俺は、つまらない言葉が一番きれいだと思ってるから。あ、やべえ。そろそろ術が発動するわ。最後に言いたいことなんかあったっけ。ちょい待って〉
(もっと緊張感出せよ、ったく……なんで……お前はいっつも)
〈おっけおっけ。まとめる。簡潔にまとめる。よし、決めた。めっちゃ簡単に言う。お前はその意図をくみ取ってくれると信じてる〉
(は?)
〈空で待ってる〉
「番家流憑依術・奥義! 滅式! BANG!!」
「吹き飛ばせ、禍火!」
―――小さな霊能力者の右手から放たれた霊力の塊と、禍の神の両手から放たれた負のエネルギーは、この日一つに混ざり合い、大きな音を立てて爆発した。
(次回へ続く!)
- Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【第3章開始★】 ( No.56 )
- 日時: 2023/09/18 22:54
- 名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: viErlMEE)
長かった過去編はこれにて終了になります。
10月は、小説の更新を休載します
(学業がとっっっても忙しい時期なのです。また失踪するかもしれません。ごめんなさい!)
-------------------------
〈由比side〉
「――というわけで、俺はお前を助けたんだ。バンを犠牲にして」
空中に浮きながら、袴姿の男の子は言った。
幽霊の僕・由比若菜は歩道を歩きつつ、「ふうん」と相槌を打つ。
幽霊の身体は疲れない。この体質をいかして、僕は町を散策しながら日々を過ごしている。
会いたい友達がいるんだ。
笑顔が可愛くて、明るくて、おしゃれな女の子。自分を最期まで信じ、愛してくれた大事な人。飽きっぽいくせに真面目で、正義感が強くて。寝癖をつけたまま登校してしまう、ちょっと抜けたところも魅力的で。
今だから言えるけど、彼女のことが好きだった。友達としてもだけど、恋愛的な意味でも大好きだった。勇気がなくて、アプローチできなかったけど。
だけど僕はその子に、たくさん迷惑をかけてしまった。だから謝りたい。謝ることで解決する問題ではないけれど、それでもちゃんと想いを伝えたい。
しかし僕は方向音痴で、土地勘がない。なので頼れる助っ人である道開きの神様・猿ちゃんにナビをしてもらい、人探しを進めている。
人が多いから、もしかしたら居るのではとデパートへ向かう道中、彼がふいに過去の話をし始め、今に至る。
「その、正鷹さんはどうなったの? 犠牲って……」
「アイツはあの後、爆発でまたぶっ飛ばされて……禍津日神の身体に吸収された。最初の贄として」
禍津日神の放った負のエネルギーの球と、正鷹の放ったエネルギー砲がぶつかり、大きな爆発が起こった。俺様と大国主命は発生した爆風に吹っ飛ばされる過程で、一縷の望みをかけてお前らの魂と融合したんだ。魂が実体化してくれることを願ってな。
正鷹は俺らが逃げられるよう、必死に時間を稼いでくれたけど――。
猿ちゃんはやり切れないというように、首を振る。
「………そのあとは分からねえ。少なくとも、この世にいないのは確かだ。正鷹は自分の命と引き換えに、お前たちを守ってくれたんだよ。そして、託してくれた」
「託す?」
「お前を守ることをな」
僕は去年の秋に、学校の屋上から身を投げ命を絶った。
成績至上主義のお母さんとの二人暮らしが嫌で。世界に適合しない自分が嫌で。何をやっても怒られて、否定されて、頼んでもないのに価値観を押し付けられた。おまけに習い事に行ったら、「勉強しろ」「ちゃんと学べ」「なんでお前はこうなんだ」と言われる始末。
自分に何の価値もないと思っていた。自分を助けてくれる人は、いないんだと思ってた。
でも、そんなことはなかったんだ。
みんな、僕の為に命を張ってくれた……。僕の幸せのために、自分の未来を預けてくれたんだ。
「――僕は人殺しだ。僕のせいで、いとちゃんも、正鷹さんも……全員……っ」
足を止め、僕はうつむく。両目から、生暖かい水滴が零れ落ちた。
ダメだ、もう後悔しないって決めたのに。後悔してばっかりだ。
パーカーの裾で、乱暴に顔をぬぐう。
「全員、僕が殺したようなものじゃんか……。僕が、もっと、もっと強かったら二人はっ」
「由比、おい由比」
猿ちゃんは、僕の両肩に手を置いた。
背丈はこっちのほうが高いので、背伸びする形になっちゃった。
「お前は悪くない。お前はあの時辛かったし、苦しかったんだろ。けど、一生懸命耐えてた。誰でもできることじゃない」
言葉ってすごい。彼のセリフは、冷え切っていた心をじんわりとほぐしていく。おかげで、せっかくぬぐった涙が再び目からあふれる。押し殺そうとしていたものが、嗚咽とともに外に流れていく。
ああ、体が透明で良かった。路上でわんわん泣いたら、絶対目立っちゃうもん。
「俺は由比が好きだ。優しいお前のことが大好きだ。お前と出会えてよかったって、心から思ってる!」
彼は僕の身体を、強く強く抱きしめる。体温のない半透明の、この身体を。
「猿ちゃん……」
「生きている時に助けられなくてごめん。沢山我慢させてごめん。こうなるってわかってたのに、何もできなくて、ごめん。俺だって、沢山後悔してる。だけどバンが言ったんだ。空で待ってるって。人々の強さを信じているって」
空で待ってる。
自分の命が尽きることを、正鷹さんはそう訳したのか。
人々の強さを信じている、か。
僕は視線を空に向ける。群青色の空に悠々と浮かぶ白い雲。
あの向こうに、正鷹さんはいる。今を生きる僕らのことを、遠い位置で見守ってくれている。
「お前が友達を探しているように、俺も友達を探している。もともと俺様はそいつに会うために旅をしてたんだ」、と猿ちゃんは言葉を続ける。「あの胸糞悪い出会いさえなければ」
「そいつと合流して、力をつけて、絶対にあの禍野郎を倒す。そんで大声で叫んでやる。『お前が思ってるよりずっと、人間は強いんだぜ』って。『まだ死んでねえ!』ってな!」
「……死んでるよ。幽霊だもん」と僕は言う。
「死んでるのに生きてるって、不思議だね」
――お前が思っているより、人間は強いんだぜ。
僕はいとちゃんと会うまでに、さらに強くならなくてはいけない。ちょっとしたことで泣くようでは、再会した時100%からかわれるからね。
それに、猿ちゃんと話して気づいた。いとちゃんは、まだこの世界に存在しているんだ。大国主さんの魂と融合したのなら、彼女も自分と同じ状態ってことだ。
いとちゃんはもう、この世にいないんじゃないか。僕が特殊なだけで、全員が幽霊になるわけじゃない。 ひょっとしたら、彼女とはもう二度と会えないんじゃないか。
何度そう思ったことか。なんどその思いを否定したことか。
僕は会えるんだ。まだ、可能性があるんだ。
「――ありがとう猿ちゃん。僕、頑張る。正鷹さんの代わりに、猿ちゃんを守れるようになってみせる」
「おう、期待してるぜ。んじゃ、行くか」
前を歩く友達の背中を、僕は必死に追う。右足を恐る恐る前に出して、拙い足取りで。
それでも確実に、一歩一歩進んでいく。
これは疲れた僕ときみの話。
何もかも失った。だから今度は、すべてを手に入れて見せるよ。
□◆□
「ヒエ~、そっちの水筒取ってくれん?」
八畳ほどの広い部屋の隅に設置された木製のベンチに、ボク・夜芽宇月は座っている。
ここは町のはずれにある、閉店したスポーツセンターの体育館だ。本来は館内立ち入り禁止だが、霊能力者には特別に使用許可が出されていた。
ジャージの裾で汗をぬぐう少年の横に座っているのは、水色の髪をした少年。左耳にはピアス、膝小僧には絆創膏。程よく日焼けした肌も相まって、THE・運動系男子といった出で立ちである。
コイツはボクの後輩。霊能力者が所属できる『ACE』という討伐チームに、最近加入した新任・ヒヨッコの霊能力者だ。
「自分で取ってよ、宇月センパイ」
後輩は分かりやすく片眉を下げ、貧乏ゆすりをする。苛立った時に彼が見せる癖だ。
「無理。筋肉痛がきつくて歩けへん。模擬戦100本は頭いかれてる。なんでお前平気なん。こんなんやってたら精神がやられてまう」
「すんません。今テスト期間でストレスたまってんの」
「なんや、本当に運動馬鹿か」
「センパイ、ほんと口悪いよね」
強くなりたいから、練習に付き合ってほしい。
そう頼まれ、ボクは仕事終わりに後輩とこの体育館で練習をしている。がしかし、コイツの謎の熱量に対応しきれず、教える側なのに毎回へとへとだ。
「………そいえばセンパイ。オレ、センパイに聞きたいことあるんすよ」
「は? なに? なぜ5歳差の年下に18歳がやられんのかって? 単純にお前が狂ってるからや」
「あー違いますね」
「センパイ、禍の神についてなにか心当たりありませんか?」
※過去編完結。→第4章へ続く。
- Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【第4章準備中】 ( No.57 )
- 日時: 2023/09/20 17:52
- 名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: viErlMEE)
【第2回★憑きもん!アフタートーク】
むう「お久しぶりです。絶賛スランプ中・テンションdown気味のむうです。休載期間中ですが、第3章完結を記念して、今日だけ浮上しておりますお願いします! 私が登場したということはそうっ」
キャラ一同「本編前の小話でーす」
むう「違いますアフタートークです。本編前の小話もあるけれども!」
こいと「むうさんって本編前いきなり語り出しますよね。癖なんですか?」
むう「やめてー。痛いとこをつかないでぇ」
美祢「わかった。小話で文字数稼いでんだろ。お前1話の平均文字数3000字だもんな」
むう「やめてえ執筆の裏事情を暴露しないでえ。うわーんコマリちゃん、二人がいじめるよお」
コマリ「ちょっとトキ兄! 意地悪言わないで」
美祢「オレは事実を伝えてるだけだ。悪く言われる筋合いはない」
むう「(コマリに耳打ち)」
コマリ「トキ兄。もしかして宇月さんの真似してる? いや、いいんだよ。私はいとこ組の仲を応援してるからさ」
美祢「おいむうっ。テメエふざけんな、だるいからかい方すんなっ」
むう「美祢も初期に比べてだいぶやんちゃになったよねえ。あ、もとから厨二だったか」
美祢「ブンッッ(キッククリーンヒット★)」
むう「ゴフウ!!」
---------------------
由比「て、てことでここからは、数メートルぶっ飛ばされたむうちゃんに代わって、僕こと由比若菜が司会進行をしていきまーす……。む、むうちゃん大丈夫かな」
宇月「大丈夫なんちゃう? 知らんけど。念のためすぐ起き上がれるように術かけとこか?」
由比「お、お願いします。で、では皆さん、第3章お疲れさまでした!」
猿田彦「めーっちゃ大変だったな。収録スケジュール長かったぜ。なあ大国主」
むう「……収録って……言うな猿……(地面に倒れこみながら)」
猿田彦「おいお前今猿っつったか!? おいっ」
大国主「わらわはあまり活躍シーンはなかったんだがな。結界を貼って攻撃受けて乗り移っただけだ。猿田彦に比べれば大したことはしていない」
こいと「クニたそがいなかったらとっくに私吸収されてたよ。そんな風に言わないで」
大国主「お、おう。ありがとうな、こいと」
美祢「俺と宇月の過去シーンもあったが、あれ必要だったか?」
宇月「美祢がボクと仲よくなりたいっちゅうことを書きたかったんやろ。もー、お前ほんま素直じゃないな。もっと自分の気持ち曝け出さんと」
美祢「お前にだけは言われたくないんだが」
由比「むうちゃんのメモによると、たまたまその時はいとこ組を書きたかったんだそうです」
宇月「気分かーい! ボクがめっちゃ嫌な奴になっとるんやけど―――。ほんま作者ボクのこといじりすぎやで! あとで覚えとけよ!」
由比「やばいやばいやばいやばい。宇月さん落ち着いてっ」
正鷹「おーいおいおい。過去編と言えば鳥神様だろ。俺にもマイクを渡してくれよ」
コマリ「バンさんっ! わああ、本物だああっ」
正鷹「え。なに。俺実在しないと思われてんの?」
むう「バンは文字通り、悪に立ち向かったヒーローだからね。現代組のあこがれなんだって」
正鷹「マジで? え、めっちゃ嬉しいんだけど! あとでサイン書くわ。多分このあと出番ないだろうし、やれることはやっとかなきゃな」
キャラ一同「やったあああああああ」
宇月「正鷹さんは霊能力者の間でも有名だからなあ。第4章以降はボクに任せてください! キャラをしっかり護衛しますんで」
正鷹「つっきー、頼む!」
由比「(つっきーって呼んでるんだ……。キャチーだなあ)」
宇月「あ、美祢は次章こそしっかりコマリちゃんのボディーガードしろよ。パソコン越しに観察って、ストーカーやからな。基本的なことは教えたるから、ちゃんと好きな子守り」
美祢「お、おう……って、好きな子ってなんだよ。お、俺は別にコマリなんか好きじゃないしっ」
宇月「ほーお?」
コマリ「こいとちゃんは好きな子いるんだよね」
こいと「? そんな話しましたっけ」
コマリ「第1章で言ってたじゃん。『経験ある私でもドキドキした』って。そういえば私、こいとちゃんの過去とか全然知らないなあ」
こいと「ま、まあ、そうですね。話してないですね」
コマリ「いつか教えてくれたらいいなって思ってる。けど、ゆっくりで大丈夫だからね」
こいと「あ、ありがとうございます」
猿田彦「バン、お前はいたのか? 好きな女性とか」
正鷹「家が恋愛禁止だったからなあ。ソシャゲで好きなキャラとかはいたけど、現実で浮いた話はなかったよ。ああ、欲を言うならモテたかった」
むう「十分モテてるから自身もちなよ」
こいと「そうそう。バンさんの恋愛運、めっちゃ高いんですよ! 自信持ってください」
正鷹「ありがと。って俺もうバンで固定なんだ……。ま、いいけどさ」
美祢「かくいうお前はいないの? 好きな子」
宇月「ボク? え、えぇーっと、うーん……(こいとのほうをチラリと見る)」
こいと「?」
宇月「(ものすごい勢いで目をそらす)お、おらんと思うけど……」
美祢「………???」
★現在の恋愛事情はこんな感じです★
・コマリ←?→美祢
・こいと←〈両想い〉→由比
・宇月→こいと→由比
第4章からはラブコメ要素も増やしていくのでよろしくお願いします!
由比「ということで第3章のアフタートークはここまでです。マガっちは現在どこにいるのかわからない状況のため、お話を聞けませんでした。今後お話にどうかかわってくるのか、楽しみですね」
コマリ「第4章には、バンさんの双子の兄妹である飛燕くんや飛鳥ちゃんも登場します! 大きくなった二人とどんな感じで会えるのか、ワクワクするね!」
美祢「お待ちかね。次回からは俺がようやくボディーガードに回るぞ。実は現在、宇月から秘密の特訓を受けてて。それが結構きついんだよな……」
宇月「怪異・妖怪まわりはボクが引き続きサポートしていくで。たまーにグサッとえぐるかもしれんけど、そこはご容赦くださいな」
由比「僕と猿ちゃんも、少し離れたところで行動するから、良かったら由比ルートも追ってほしいな。正鷹さんと大国主さんはここで退場ってことで」
大国主「そうだな。わらわは正鷹と一緒に、物語を応援する立場に回ろう」
正鷹「お前ら、飛鳥と飛燕をよろしくな」
むう「ではでは、今回もお読み頂きありがとうございました。次回の更新は10月。最新話でまたお会いしましょう。せーのっ」
キャラ一同「お憑かれ様でした――――ーっ!」
- Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【第4章開始!】 ( No.58 )
- 日時: 2023/09/25 12:01
- 名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: viErlMEE)
10月から本編更新予定でしたが、プロットを書いてたらまたまた書きたい欲が抑えきれなくなってしまいました(確か第2章開始時も同じこと言ったような気がする)。
ということで、ちょっと早いですが始めちゃいます。よろしく!
---------------------
〈コマリside〉
ゴールデンウイークが終わった。
溜まっていた宿題も(トキ兄の手助けのおかげで)無事終わった。
私は今、ともえ中学校2年3組の扉の前に立っている。廊下側の窓から流れ込んだそよ風が髪を揺らす。数日間通っていなかっただけなのに、なぜかとても懐かしい気持ちになる。
さてさて。それではさっそく。
「おっはよぉ!」
ガラガラッと、扉を開け、大きな声であいさつをする。
何事もあいさつが大事だからね。落ち込んでいる時も、返事だけは明るくしようって思っているんだ。
何人かの生徒が、「おはよう」と返してくれる。その中には、幼稚園からの幼馴染である杏里と大福(福野大吉だから大福ね)の姿もあった。
「おはよう月森さん。今日も元気だね~」
「委員長!」
扉のすぐそばに立って、黒板けしを掃除していた鈴野さんが、のんびり言う。
肩まで伸びた長い黒髪。鼻先にちょこんと乗せた黒ぶち眼鏡。スカートの丈も、キッチリひざ下。
彼女はこの教室で、実行委員を務めている。私と鈴野さんは同じ図書委員で、毎週水曜日に図書館で本の整理をしているんだ。
「あれ、委員長焼けた? 珍しい」
「そうなの。G県に住んでいる大学生の姉の家に行ったんだけど、そのあと海に連れ出されてね。そんながらじゃないんだけど……」
お姉ちゃんのことを『姉』と呼ぶところが、まさに優等生って感じでカッコいい。
「良かったね。いいなあ、海。私ずっとアパートにいたよ。宿題が終わんなくて」
「言ってくれたら教えてあげたのに。LINEも一応繋がってるでしょう? 家も比較的近いし、良かったらまた一緒に勉強会をやりましょう」
学年首位に教わる勉強かあ。実際彼女に教えてもらったクラスメートの子が、『短時間の勉強会だったけど、要点を抑えて解説してくれて、すっごくわかりやすかった。正直、塾の先生よりわかりやすかった』と絶賛してたっけ。これは期待できそう。
うーんでも、トキ兄の説明もちょっと……いや、かなりわかりやすいんだよなあ。逆憑きの効果で点数は下がるものの、この前の中間テストの数学テストは56点取れたし。
「ありがとう。また考えとくね」
「うん。いつでも待ってるから」
鈴野さんはフフッと上品に笑い、黒板のほうに向きなおった。
「まあ、とりあえず鞄をおろしてきたら? 星原さんと福野くん、ずっと待ってるよ」
あ、そうだね。話は荷物を片付けてからだよね。
教室に入り、自分の席に向かう。
3組は先月席替えをし、出席番号順の並びからランダムな並びに変わったんだけど、どうやら休みの期間に配置が直されたようだ。一番左の列の最後尾だった私の席の位置は、中央列の前から二番目(つまり教卓から一番見える場所)になっていた。
「うっわ。またあそこかぁ……。これじゃ授業サボれないじゃん」
仕方ない。次の席替えまで我慢しよう。
私は机の横のフックにリュックの紐をひっかけ、椅子に腰かける。直後、このタイミングを見計らったかのように、教室の後ろにいた大福が駆け寄ってきた。彼の隣にいた杏里も、嬉しそうに席の近くへ来る。
「おっす月森」「コマちゃんおはよー」
「おはよう二人とも。って、なんでそんなにウキウキしてるの?」
二人は頬を真っ赤に染め、どこかうずうずしている。大福の両手はさっきからブンブンブンブン揺れてるし、大人しい杏里も今日は声のトーンが高い。久しぶりに友達に会えた喜びで、というわけは無さそうだった。
「それがさ。どうやら今日、この組に転校生が来るって噂なんだよ。俺日直でさ。職員室に名簿持っていくとき、偶然聞いてしまって」
「えっ? 転校生? この時期に?」
珍しい。そういうのって普通、始業式の日とか学期の初めと被せるんじゃないっけ。
ゴールデンウイークはある意味、休み明けだけど……。ってことはあの連休中に引っ越してきたのかな。
「それ、男の子なの? 女の子なの?」と聞くと、
「さあ。詳しいことはわかんねえけど、仲間が増えるのは素直に嬉しいよな」
「そうだね」
2年3組の生徒は、男子13人女子13人の計26人だ。他のクラスの人数は30人。隣のクラスの騒めきに比べると、こっちのクラスは静か。時間の進み具合も、周りと比べてゆっくりな気がする。
どんな子が来るんだろう。お友達になれるかな。
私はワクワクしながら、のんびり朝の会の開始時刻まで杏里たちと喋ったのでした。
--------------------
キーンコーンカーンコーン。
朝の会の開始を告げるチャイムが鳴り、担任の河合先生が教室に入ってきた。
河合先生は国語担当の若い女の先生で、学年でも人気が高い。
「皆さんおはようございます。朝の会始めるよー。鈴野さん、号令」
「はいっ」
朝の会の司会進行を担当する委員長が、席から立ち上がる。
「きりーつ、礼。着席。お願いします」
「「「お願いしまーす」」」
クラスのみんなは既に大福から転校生の話を聞いており、一様に浮かれている。着席したあとも、隣の席の子とコソコソ話をしたり、チラチラと廊下を確認したり。
私は先生の目の前なので、やりたくてもできない。
「それでは今朝の業務連絡です。1限目はショートホームルームで、課題の提出と係決め。2限の国語の時間は、連休明けの小テストを行います。範囲は中間試験でやった『少年の日の思い出』。長文読解と漢字中心に出題するから、しっかり解くことー」
その後もどんどん話が進み、ついにその時がやってきた。
「じゃ、皆にサプライズです。今日から3組の仲間になる、転校生の紹介です。入ってー」
来たっ。来た来た来た来たっ。
クラスメートの視線が、廊下側の扉へと集中する。
扉がスルスルと横にスライドし、待ちに待った転校生が廊下から教室に入ってきた。
生まれつきかな。ウルフカットに整えられた髪は淡い栗色をしている。学校指定のワイシャツの上に、黒いセーターを着ていて、黒いネクタイを締めている、下に履いているのはスカートではなく、スラックス。身長は150センチ前後で、かなり小柄。
くっきりとした二重まぶたに、ぱっちりとした目元。女の子のようだ。
「女子でズボンなんだ。めっずらしい」
横の席に座る遠山さんが呟く。
確かに。性の多様化を受けて、ズボン・スカートの選択権を導入したともえ中学校だけど、女の子でズボンを履いている子は今までいなかったよね。
「じゃあ、自己紹介宜しくね」
「はい」と女の子が答える。高くてかわいらしい声だった。
転校生ちゃんは先生から渡された白いチョークを右手に持ち、黒板に自分の名前を書き記す。書道の先生かと疑うような、丁寧で正確な筆運び。
番 飛 鳥
「何て読むんだろ」と再び独り言を呟く遠山さん。
「バン? とぶ……」
女の子は私たちのほうに向きなおると、ハキハキとした強い口調で名乗った。
「つがい、あすか、です。よろしくお願いします」
へえ。あの漢字、『つがい』って読むんだ。初見じゃ絶対に読めないや。
古風で素敵な名前、いいなあ。私の場合はお母さんが語感の良さだけで決めちゃったから。
「じゃあ、飛鳥さんの席はあそこね。月森さんの前」
「わかりました」
「月森さん、番さんに色々教えてあげてね」
「は、はい」
(へっ!?)
反射的にうなずいちゃったけど、頭は軽いパニックを起こしていた。
わ、私の前??
あ、そうか。出席番号順だもんね。『つがい』と『つきもり』は同じタ行だし、『つがい』が前だ。
飛鳥ちゃんはスタスタと私の前の席まで行くと、ストンと席に腰かけた。そして、首だけをくるりと後ろに回す。
「よ、よろしくね、飛鳥ちゃん」
慌てて返事をする。
何事もあいさつが大事だからね。落ち込んでいる時も、返事だけは明るく……。
「あなたが月森さん?」
飛鳥ちゃんは値踏みするような目で私を見ると、フフッと妖艶に笑った。
「これからは嫌なこと、起こらないといいね。よろしく」
………? 嫌なことって何だろう。
私、逆憑きのこと誰かに話したっけ………?
- Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【第4章開始!】 ( No.59 )
- 日時: 2023/09/27 17:09
- 名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: viErlMEE)
休憩時間になると、飛鳥ちゃんはすぐに大勢のクラスメートに囲まれた。
「誕生日はいつ?」「兄弟いる?」「好きな教科と嫌いな教科は?」「好きなアーティストは?」。投げかけられる質問にも、彼女は一つ一つ真面目に答えてる。
「誕生日は4月1日。エイプリルフール。誕生日に嘘言っても……例えば『1万円欲しい』って言ってもバレねえから結構便利」
「兄弟か。双子の兄がいるよ。うざくて僕は嫌いだけど」
「好きな教科は生物。嫌いな教科は社会。くそ眠くなるから嫌」
「洋楽のバラードが好き。え、知らない? マジか。めっちゃおすすめ」
飛鳥ちゃんは男の子っぽい喋り方をする。カラカラと明朗快活に笑い、今どきの若者言葉もスラスラ話す。かといって表立って目立つ性格ではないみたい。外見・服装・口調。全部を含めて見ても、今まで居なかったタイプの女子って感じ。
私は彼女の後ろの席に突っ伏して、会話を盗み聞きする。
あの輪に入るのは、陰キャの自分には無理そう。まずは会話のきっかけになるような共通項を、やり取りの中から見つけていこう。
こんなやり方で申し訳ない。許してくださいませ。
「えー、飛鳥ちゃんってカッコよ。あとでLINE交換しようよ」
と言ったのはツインテールのギャルっぽい女の子。
クラス女子カーストの上位にいる、高峰さんだ。
「あ、実際は校内に携帯持ってきちゃダメなんだけどさ。ルールとか知らんわって、皆こっそり持ってきてんの。これ、先生には内緒ねっ」
背が高くてスタイルが良くて、何より小顔で可愛い。読者モデルをしていて、週2日ほど学校を中退し、レッスンに行っている。現役バリバリの、芸能人中学生として校内でも人気だ。
くわえて、学級副委員長でもある。副委員長がそんなこと言っていいのかなあ。
「? えっと、あなたは……えっと、高峰、えっと、下の名前なんて読むの?」
高峰さんの名札に視線を移した飛鳥ちゃんが、きょとんと首をかしげる。
「うち、副委員長の高峰静杏。あっは、やっぱ初見じゃ読めんよね。キラキラネーム同士仲良くやろうぜっ」
「僕の漢字、キラキラネームじゃないと思うけど」
「でもさ、サイトで検索したら結構順位低かったんよ。『番』」
「そんなサイトあんの」
すごいなあ。転校初日なのに、もうクラスになじんでる。
ちなみに先生から聞いた話なんだけど。飛鳥ちゃん、実年齢は13歳だそうだ。
じゃあなんで中学2年生のクラスにいるのか。その理由が、めちゃくちゃオドロキなの。
彼女が前通っていた学校は、県内トップレベルのの難関中学・律院高校附属中学校。
トキ兄も元・律院高校生。つまり飛鳥ちゃんは私の同居人と同じくらい、とても優秀な生徒のだ。
しかし私立中学に進学したものの雰囲気が合わず、学校を休みがちになった。そしてこの度、家から近い公立のともえ中学に編入してきたのだ。
私立は公立に比べて授業の進みが早く、もう中1の学習は終わったらしい。そこで彼女は先生と相談して、一つ上の学年―中学2年生のクラスに、飛び級で所属することになったとのこと。
日本で飛び級ってあり得るんだ………。。
前後の席なのに、なぜこんなにも遠いんだろうか。
「ちょっと勉強教えてよ」さえも、言い出しにくい存在だよ。
「飛鳥さんはご自分のことを『僕』って言われるんですね」
と尋ねたのは、委員長の鈴野さん。からかっているわけではなく、純粋な疑問のようだ。
眼鏡のブリッジに右人差し指を添え、位置を直しながら委員長は飛鳥ちゃんと視線を合わした。
「なにアンタ。別にいいだろ、一人称がボクでも俺でもさ」
否定されたと思ったのか、飛鳥ちゃんは語尾を強めた。
机に頬杖を突き、足を組んで、ぞんざいな態度を取る。
「そうだよね。個人の自由だよね」と高峰さんも同調。「鈴野さん、もうちょっと言葉の使い方を気をつけたほうがいいよ。今のはあたしもどうかと思うよ」
飛鳥ちゃんは長いまつ毛の奥の目を光らせながら、棘のある口調で言った。
「それともなに。アンタも前の学校のクラスメートみたいに、痛いとかヤバいとか言って個性を否定するの?」
「す、すみません」
委員長はかぶりを振る。
「嫌な気分にさせてごめんなさい。そうですよね、個人の自由ですよね」
「そんなに謝らなくても大丈夫だよ。僕だって好きでズボン履いているわけじゃないし。色々あって、仕方なく履いているだけだから」
えっ??
私は思わず顔を上げた。
そうなの? ズボンのほうが落ち着くから履いているんじゃないんだ。
じゃあ、なんでわざわざそんな恰好しているんだろう。って、アレコレ検索するのは失礼か。
「本当に、失礼をおかけしました」
「もう気にしてないから。大丈夫だって」
なおもペコペコ頭を下げる委員長を、飛鳥ちゃんは慌ててたしなめる。
相手への気遣いとか所作とか、言葉の使い方がすごく上手い。頭のいい学校へ行くと、そういう礼儀も先生から教えてもらうのだろうか。
キーンコーンカーンコーン。
休憩時間終了を知らせるチャイムが、スピーカーから鳴り響く。
「あ、もう3限始まっちゃう。じゃあLINEはOKってことでいいよね? じゃああとでパスワード教えるよ。2年3組のグルラあるから、番さんもぜひ入って。あ、あとタメでもいいかな?」
「いいよ。好きに呼んで」
一体何を食べたら、高峰さんのようにハキハキした受け答えができるようになるんだろう。
短時間で、自己紹介からLINE交換の約束までの流れを作った副委員長のトーク力に、ただただ感心するよ。
「ねえ。そのLINEって、月森さんも入ってる?」
「「「えっ!?」」」
突然飛鳥ちゃんの口から自分の苗字が発されたので、私・委員長・高峰さんはそろって素っ頓狂な声を上げた。
学級委員の二人は、(なんでここで月森さんの名前が出てくるの?)の「えっ」。私は、(なんでそんなに私にかまうの?)の「えっ」だ。
「月森さんも、やってるよね? あんまり浮上してないけど……」
高峰さんは私に確認を求めようと、話を振った。私は反射的にうなずく。
「や、やってるよ、私。LINE」
放課後はパソコンでゲームをしているから、あんまりスマホは開かないけど、ちゃんとグループには入ってる。夕暮れの森の写真を丸くかたどった、シンプルなアイコンを使ってる。
「え、なに? 番さん、もしかして月森さんに興味あるの?」
「うん。席前後だし、仲良くしてーなって。あと、めっちゃ可愛くね?」
可愛い!? わ、私が?
わ、私と飛鳥ちゃんじゃ月とスッポンだと思うけど。メイクもしてないし、髪も寝癖直しただけのボサボサヘアだし。
あ、もしかしてアクセサリーのこと?トキ兄に貰ったお化け型のヘアピンのことを言ってる?
「か、可愛いってどういうことでですか……」
精一杯の勇気を振り絞って聞くと、飛鳥ちゃんは「小動物みたいで」とカラカラ笑う。
うっ。しょ、小動物かあ。マスコット的な可愛さってことですか? なんか舐められてる?
「もしかして月森さん、年の近い兄貴とか姉貴とかいるんじゃない? 妹オーラが出てんぜ。僕も一番下だから、気が合いそうだなって思ったんだ」
「お、お兄ちゃんはいないけど、お兄ちゃん的存在はいる」
もしかして飛鳥ちゃん、エスパーだったりするのかな。それとも勘がものすごく鋭いだけ?
さっき初対面で『嫌なこと起こらないといいね』って言ってたし……。
「ま、似たようなもんだね。僕、マジカルパワーが使えんだ。そんで、その力が教えてくれたの。月森コマリって女の子が、どんな人物なのかってね」
ど、どういうことなんだろう。年相応の厨二病って考えでいいのかな??
転校初日のプレッシャーで、少し頭がおかしくなってるって認識でいいのかな??
(次回に続く!)
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