ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 白夜のトワイライト
- 日時: 2011/12/01 18:23
- 名前: 遮犬 (ID: FMKR4.uV)
- 参照: 本編:13話♯2を更新いたしました!
何だか色々と更新したり、しなかったりで申し訳ございません。
シリアスで初めて投稿した作品なので、どうにか完結まで導きたいと思います。
オリキャラも、全員必ず出させていただきます。
どうか宜しくお願いいたします。
小ネタ劇場とかどうですか?>>120
狩人さんの小ネタ劇場とかどうですか?>>124
男の子キャラを二次元女体化してみました>>144
〜目次〜
物語を読む前の分からない用語確認…>>30
キャラごとのランクと職種公表…>>186
プロローグ…>>1
【第一章】
第1話:始まりの鎮魂歌 >>13-36
♯1>>13 ♯2>>26 ♯3>>31 ♯4>>36
第2話:断罪の花 >>41-57
♯1>>41 ♯2>>50 ♯3>>56 ♯4>>57
第3話:Daed or alive?(生死は問わず) >>63-78
♯1>>63 ♯2>>66 ♯3>>77 ♯4>>78
第4話:隠された記憶 >>82-93
♯1>>82 ♯2>>89 ♯3>>92 ♯4>>93
第5話:裁くべきもの、守るべきもの >>103-127
♯1>>103 ♯2>>117 ♯3>>126 ♯4>>127
第6話:動く政府と反政府 >>133-147
♯1>>133 ♯2>>138 ♯3>>145 ♯4>>147
第7話:戦いの螺旋 >>150-162
♯1>>150 ♯2>>151 ♯3>>154 ♯4>>162
第8話:闇に塗れた真実と地獄 >>163-168
♯1>>163 ♯2>>166 ♯3>>167 ♯4>>168
第9話:光と闇の咆哮 >>170-175
♯1>>170 ♯2>>171 ♯3>>172 ♯4>>175
【第二章】
第10話:終わりの始まり >>180-183
♯1>>180 ♯2>>181 ♯3>>182 ♯4>>183
第11話:混雑な世界 >>184-191
♯1>>184 ♯2>>185 ♯3>>188 ♯4>>191
第12話:捜し人 >>196-204
♯1>>196 ♯2>>199 ♯3>>203 ♯4>>204
第13話:惨劇の再来
♯1>>205 ♯2>>211
【番外編】(一応物語に関係したりします)
Condemnation(断罪)
♯1>>187 ♯2>>192 ♯3>>203 ♯4>>208
〜オリキャラの方々〜(○=既に登場 ●=近く登場予定)
風月 春(ヴィオラさん作)…>>3○ 宮澤 碇(ヨモギさん作)…>>4●
甘槻 無兎(瓦龍、さん作)…>>6● 吾妻 秋生(亜倉歌樹さん作)…>>8○
不知火(狩人さん作)…>>9○ 涼代 美月(乙季さん作)…>>11○
レイス・マキャベッリ(めるとさん作)…>>14○ 矢野 命中(アドレスさん作)…>>16●
藤堂 紫苑(紅蓮の流星さん作)…>>17○ 裏面 臨死(阿嘉狐さん作)…>>23○
琴覇 明(風華さん作)…>>24○ 黒槍 斬斗(パーセンターさん作)…>>27○
天道 残月(クロ+さん作)…>>33○ エルンスト・ワイズマン(祭さん作)…>>44○
阜 七姫(譲羽さん作)…>>47○ 鈴音 凛( 葵さん作)…>>49○
千原 双(世移さん作)…>>75○ 竹内 和磨(青銅さん作)…>>83●
鬼神 舞華(絶櫨さん作)…>>84● 炎牙 零影(駒犬さん作)…>>85●
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- Re: 白夜のトワイライト ( No.207 )
- 日時: 2011/11/17 21:52
- 名前: 遮犬 ◆.a.RzH3ppI (ID: rGbn2kVL)
>>世移さん
コメント返信、凄く遅れてしまってごめんなさい;
白夜とヴァンは組むというより、白夜の方がヴァンを利用する気でいます。その為に一緒に行動しているというぐらいですw本意はどうなのやら……。
伊野と瀧沢のコンビ。伊野は本場の警察ということで、瀧沢は武装警察側の人間というこの両者なのですが、ちょっと注目してもらいたい人達ではあります。特に瀧沢さんは個人的に凄く格好いいキャラだと思っているので、必見ですーw
断罪と秋生君のペアはいつかしたいと思っていましたw正直、断罪とペアにさせるキャラをオリキャラの中で選んでいました所、接点もありますし、一番適任かなぁと思う秋生君に任せることにしましたw
番外編ということなんですけど、物語関係してますので、どうぞご覧いただきたいところですw更に!地下のコロシアム的な雰囲気とか、何かを賭けて勝負といったら……ふふ、あのカキコで有名なキャラを出すしかあるまいて、なんて思ってますw
今後も白夜のトワイライトの行く末をよろしくお願いします><;
PS:お世話になっている云々は、このことですよwコメント、毎回ありがとうございます><;本当に感謝しています;
コメント、ありがとうございました!
- Re: 白夜のトワイライト ( No.208 )
- 日時: 2011/11/28 20:00
- 名前: 遮犬 ◆.a.RzH3ppI (ID: FMKR4.uV)
「う……」
周りの歓声が血生臭いコロシアムに轟く中、双は頭を抱えて今にも倒れそうに体をふらつかせていた。その足取りは段々と千鳥足へと変化していき、そして——
「おいっ、大丈夫かっ?」
双はゆっくりと秋生に体を預けるかのように倒れた。その動きはまるで一連の動作のようにごく自然なもののようにも見えた。
秋生は双を抱きかかえるようにして何度も双に呼びかけるが、全く反応を示さない。
「断罪、双にとってここは……!」
「ふふ……言い忘れていたけど、双は血の臭いを嗅ぐと高確率で気絶する。だけど……その気絶した後に、もう一人の双が現れるのさ」
不気味に表情を笑みに浮かべ、先ほどよりもより悪態のついた笑顔を見せながら断罪は言った。秋生は、ただその言葉を聞いて、呆然としているばかりだった。
歓声が轟き、この暑苦しい空気と、重い血と汗の臭いが混ざり合うこの地下コロシアムで、ゆっくりと双は目を覚ました。
秋生は驚きも含め、安堵した表情で双を見つめたその瞬間、双の口元が大きく歪み、笑みを浮かべた。
先ほどまでの双ではない。それを気付くのに、数秒もかからなかった。
「——あはは! 血の臭い……いい香りぃ……!」
秋生は絶句し、断罪はそんな双の言葉に再び不気味な笑みを増すのであった。
Bet murder。通称、賭け殺しはそれぞれタイプが違う。大抵は殺し合いが主になるのだが、ごく稀にギャンブル事で勝負をするということもあるらしい。賭け殺しと呼ばれるほどでもあって、何かを賭けて殺し合わなければならないのが原則のルールである。
賭けるものは金や命、極秘情報などでも構わない。大抵が金を賭け、それぞれに取り合うのだが、たまに極秘情報や物を賭けて戦うものもいるらしい。そんなものに命を賭けるという自体がおかしいと思われるのだ。ただ、その情報性は極めて高いものであり、試合前から取引される情報が確かなものかを確認して取引される。存在しない、もしくは有り得ない情報ならば取引は却下される。少しでも不確かならばその情報はないことになる。
様々な殺し合いがあるのだが、その中で一対一は勿論、チーム戦もある。三人一組のチームを作り、お互いが競い合うシステムである。リーダーをチーム内で一人選び、そのリーダーを倒すと強制的に勝利とすることとなる。
つまり、勝つ為の手段としてはリーダーを倒すか、もしくは相手チームの全員を倒すか。その二つのみとなっている。
コロシアムといっても、戦う場所はかなり広めに取ってあるので、思う存分戦える反面、数々の戦略を組むことが出来る。そして、最も今までとは勝手が違うのは、能力がコロシアム内では一切使えないということ。つまり、生身の人間状態で戦わなければならない。その為、武器に慣れている人間が基本的に有利な位置に立つのである。
断罪達が選んだのは、このスリーマンセルで行われる殺人ゲームであった。
「生身で戦うって……大丈夫なのかよ……ッ」
「ふふ、生身で戦うのは戦う。けれど、制限されたのは能力だけだよ、秋生君? ふふふ……」
「それ、どういう意味——」
「あはっ! 楽しみだなぁ……! 血がいっぱい見られるんだよねっ? もうウズウズが止まらないよぉ……!」
場所を移し、受付を済ませた三人は既に控え室で待機していた。秋生の言葉を遮った双は、もはや血を怖がるどころか、血を喜んでいるようになってしまっていた。
「ま、すぐに分かるよ……」
断罪は不気味な笑みを浮かべ、綺麗な着物に似た服を翻すと、ゆっくりと扉へと向かって行った。
重苦しい部屋の中、厳重に閉ざされているその扉の奥からは歓声によって生まれた轟きしか残らない。血生臭い臭いが奥から異様に放たれている。この奥には、本当に殺し合いがされている。それは現実的に秋生の心を蝕んでいく。
「殺し合い……俺は、罪の無い人間を斬れるのか……」
震える手を押し込めて、秋生は立ち上がった。仲間の元に、再び帰れることを信じて。
「両者、入場ですッ!」
奥の方から、甲高い声で司会が告げる。その声と共に、厳重な扉はゆっくりと開いた。ギギギ、という軋んだ音が鳴り響き、そのたびに胸が躍るかのように鼓動を速める。
落ち着け、落ち着け、と何度も自分に言い聞かせても、それはまるで意味のない、ただの言霊でしかなかった。
眩しい光が眼の前に現れ、それは視界を覆っていく。歓声が耳鳴りを起こすかのようにして響き渡っていくことを感じ取ると、そこは既にコロシアムが眼の前に広がっていた。
前方には真っ直ぐ一直線で相手の姿が見えた。巨大な大剣を持つ大柄の男に、フードつきの黒装束を着ている暗殺者のような格好をしている人に、もう一人は巨大な大鎌を持ってニヤニヤと不気味に笑っている女だった。どうやらその大鎌を持った女がリーダーのようで、リーダーの証となる真っ赤な腕章がわずかだが見えた。断罪のチームは、断罪が腕章を付け、リーダーを務めることとなった。
コロシアムには、周りにいくつもの砂山やらで盛り上げられており、平面なフィールドではなかった。しかし壮大で、戦うには十分すぎる場所でもある。秋生の左腕が再び狂気の痛みを帯びようとする中、
「それでは! 賭け殺し、開始いたします!」
——試合開始の合図の掛け声と共に、大きく鐘のような音が会場内へと鳴り響いた。。
- Re: 白夜のトワイライト ( No.209 )
- 日時: 2011/11/25 15:35
- 名前: 栗鼠隊長 ◆Q6yanCao8s (ID: aza868x/)
- 参照: 旬 だけど 。
お久しぶりですしゃいぬお兄さん ノ
旬の参上ですあう。
お兄さんの小説を読むべく来ました。
懐かしかったですw
番外編の1読みましたんぐbb
断罪と秋生の組み合わせが最高にいいですねw
断罪は非常にミステリアスだすなあ。
秋生が取り込まれそうで怖くなりますよwww
楽しみですね。
まだ更新待つほど小説読み勧めていないんですけどねww楽しみですwww
- Re: 白夜のトワイライト ( No.210 )
- 日時: 2011/11/26 23:16
- 名前: 遮犬 ◆.a.RzH3ppI (ID: FMKR4.uV)
>>栗鼠隊長さん
お久しぶりですー!wえぇと……何て呼べばいいだろww確か……参照の名前はダメなんだよねwってか自分で言ってないか?w
懐かしかったとかwwあぁ、でも、数日間更新してなかったですしねw
たまに読んでいただくだけでも感激ですよぉぉおっ!ありがとうございますー!
番外編ですかーw断罪と秋生の組み合わせは悩んだんですけどねw断罪は好奇心のみで突き進んでいる感じですが、ちゃんと目的はあったりしますので、それも是非見ていただきたいですw
断罪はミステリアスな感じも含め、どこか寂しい雰囲気も持ち合わせています。彼女が何を目的としているのか、これから重要かもですw
秋生君の左腕にも注目ですw狂気とかいう単語がこれからちょいと多く出てきちゃうかもしんないですw
番外編、関係ないように見えて結構関係あったりしますwコロシアム編いってますが、続きも読んでくれると嬉しいですー!
コメント、改めてありがとうございました!
- Re: 白夜のトワイライト ( No.211 )
- 日時: 2011/12/01 18:12
- 名前: 遮犬 ◆.a.RzH3ppI (ID: FMKR4.uV)
「黒獅子様」
呟くようにして言葉を漏らしたその淑女は、冷静な表情で黒獅子を見つめている。
広々とした室内には、黒獅子とその淑女以外、誰もいない。周りには身の回りの生活が最低限出来る程度の個室の役割を果たしている小物が散々と並べられていた。
黒獅子は、その淑女の表情を見つめ、静かに笑った。声も出さず、ただ口元を歪ませて笑みを作る。そんな決して自然と出たような笑顔ではないないものを見つめ、また淑女は無表情のままその小さく、薄い桃色を放つ唇を開き、言葉を続けた。
「この世界を、壊すおつもりですか?」
淑女の問いに、黒獅子は表情を変えずに見つめると、やがて淑女から目線を外し、何も無い虚空を見つめた。その瞳には、どこか感情めいたものが隠されているような、そんな悲しいともいえる瞳であった。
「最終地点が壊すということじゃない。この世界、いや、歪んだ現実を壊すことは最終地点の過程でしかない。それ以上でも以下でもないよ」
言葉を放つと、そのまま黒獅子は傍にあった椅子へと座り込んだ。年季が入っているものなのか、座るとギシリ、と木が軋む音がした。
その黒獅子を淑女はただ黙って見つめる。自身が着ている白色のローブを揺らがせ、被っていたフードを脱いだ。すると、薄い青色をした長い髪がゆっくりとローブの上へと流れ落ちるようにして揺れた。淑女の顔は、まるで女神のように綺麗に整えられていたが、ただ普通と違うのはその瞳だった。
両方の瞳が同じ色をしていなかったのだ。赤と青に分けられたその瞳は、しっかりと黒獅子だけを見つめている。
「後悔は、しないのですか?」
「当たり前さ。何の為に僕が……いや、いいさ。きっと君でも分かってくれそうにない」
ため息を吐き、椅子の肘掛に手を当てる。トン、トン、と一定のリズムでその肘掛に向けて指を当てていく。一定時間、そのような動作を黒獅子は続けていった。その様子を淑女はただ見つめるばかりで、表情も変わらない。また、黒獅子の表情は思い詰めたように、何か考え事をしているようにも見えた。
「……疲れていらっしゃいますか?」
「さぁ、どうかな。僕にも分からない。……ただ」
「……ただ?」
黒獅子は肘掛から手を離し、自分の懐からある物を取り出した。それは、銀色に輝くペンダントのようなものであった。
「この世界に、やらなければならないことがある。……それだけさ」
黒獅子は悲しそうな目でペンダントを見つめた。今度ばかりは分からないとはいえない、本当に悲しそうな瞳を浮かべていた。
淑女はその黒獅子の瞳を見つめ、ゆっくりと目を閉じた。そして、いつの間にか足取りは黒獅子の眼の前まで来ていた。
「どんなことがあっても、我らは尽くすのみです。平等な世界を実現したいという貴方の願いは、確かに我らに届いております」
「……そうか」
小さく返事をすると、黒獅子はペンダントを再び懐に仕舞いこんだ。大事そうに、しかし誰にも取られてはならないように、素早い速さで仕舞い込む。数秒間、黙って懐に手を突っ込ませたままだったが、黒獅子はゆっくりと、名残惜しそうにその懐にある手を再び淑女の前に見せた。
「負けるわけにはいかない。全ては——愛する人の為に」
「全隊員は各隊へと急げ! 繰り返す、全隊員は各隊へ急げぇ!」
曇り空が空に浮かび、薄暗い光を照らす中、黒獅子率いる者達は着々と準備を重ねていた。
その中で一人、ブリュンヒルデはその様子を伺っていた。全隊の将軍として適任されたブリュンヒルデは、この日を待ち構えていたかと言わんばかりの表情で、自信に満ち溢れていた。動き回る者共を真剣な眼差しで見つめ、開戦の時が今か今かと待ち望んでいたのである。
「ブリュンヒルデ将軍!」
その時、颯爽と翼を背中に生やし、長く鋭い爪を持った人間のようであって、悪魔のような者がブリュンヒルデの眼の前に降り立った。
その男は、見た目の歳が20代といえるほどの若さを持っていたが、それとは違う雰囲気を放つそれは、見た目から言えるものなのであろうか。跪き、その男は一礼したのを見て、ブリュンヒルデはその男を一瞬見た後、再び全隊員の様子を見るようにして前を向きながら返事を返した。
「何だ。"漆黒妖"のルーベルト」
「我らの動きを感知したのか、武装警察及びに現実世界における警察共が動き出している模様」
「ここの所在は知られているのか?」
「いえ、知られてはおりません。ですが、各地に警備を配置される恐れがあります。奇襲は難しいかと……」
「いや、大丈夫だ。向こうには"同士"がいる。つまらん情報などはいらん、準備を急がせろ」
「は……かしこまりました」
悪魔のような格好を持つ男、アバタコード"漆黒妖"のルーベルトは再び一礼すると、ブリュンヒルデの元から飛び立とうとした。
「待て、ルーベルト」
「は、何でしょうか」
「貴様に頼みがあるのだが……聞いてくれるか?」
ルーベルトは飛びかけた姿勢から元に戻すと、その視線を再びブリュンヒルデの方へと向けた。ルーベルトは、少し不思議な表情をしていたが、すぐに元に戻ると、再び跪こうとした。
「いや、いちいち跪くな。これは命令ではない、私の願いのようなものだ」
「願い、ですか?」
「あぁ。……聞いてくれるか?」
「私に出来ることがあれば、なんなりと」
ルーベルトの目を見つめ、暫くするとブリュンヒルデは小さく笑った。そしてすぐにその後、ルーベルトへと口を開いた。
「アリエルを連れ戻してきてはくれないか」
「アリエル……といいますと……あの"お方"ですか?」
「あぁ、そうだ。……潜伏している場所は分かっている。上手く追っ手から逃げたようだがな……しかしだ、その潜伏場所には少し厄介な奴がいるようだ。奴にアリエルの正体が知られたら厄介だ。交戦することになったとしても、いらぬことは喋らぬように、な」
「承知いたしました」
「……そうだな。貴様一人では少し荷が重いかもしれん。……ベルモアも連れて行け。あいつが居れば戦闘面で楽になるだろう」
「ベルモアと?」
ルーベルトは顔を歪ませ、少し嫌そうな顔をした。その態度をブリュンヒルデは見逃さず、少し眉を上げて再び口を開いた。
「うん? 嫌なのか」
「ベルモアには、その、少し因縁がありまして……」
「ならなおさらだ。この件でその因縁を吹き飛ばせばよかろう。……おい! ベルモア!」
ブリュンヒルデが声を張って名前を呼ぶと、どこからか凄まじい勢いで傍に何者かが降り立った。その者は、全身に真っ赤な装束を身に纏い、顔に狐のお面をはめている。右手には炎々と燃え盛るようにして赤黒い炎が蠢いていた。
「お呼びですか?」
ベルモアは先ほどのルーベルトのようには跪かず、小さく一礼をしてから声を出した。顔やその他から見て男女の区別が分からないが、声的には女の方であった。
「おいっ、無礼だぞっ! ベルモア!」
「……誰かと思えばルーベルトか。何だ、まだ私に恨みでもあるのか」
「黙れ! いつか必ず……!」
「威勢がいいな。私の数少ない信用できる部下だ。ベルモア、貴様のことだ。もう既に話は了承済みであろう」
「は。必ずや、アリエル様を連れ戻して参ります」
「あぁ、頼んだぞ。"黒焔"のベルモア」
ベルモアの言葉に、ルーベルトは多少不満そうな顔をしたが、すぐにベルモアが一礼をしたのと同時にルーベルトも同じく一礼をした。
(さて……と)
ブリュンヒルデはそんな二人を見過ごし、再び他の隊の様子を眺めながらもう一つの考え事を始めたのであった。
「遂に……戦う時が、来たんだな」
一人、部屋の中で佇んでいたアバタコード"螺旋翼"のレトはこれまでずっと抱き続けてきた思いが再び込み上げてきていた。
あの日、白夜と久々に出会ったあの時、白夜は恨んでいるような顔でも、冷静な顔でもなく、何故だか悲しそうな瞳をしていたことに気付いていた。それは哀れみなのか、その他か……。
もしあの場で優輝やディストが現れていなければ。更には黒獅子までもが現れた。
あれは、あの交渉の時の為に自分と白夜を会わせたというのだろうか。黒獅子の意図さえも分からない。
けれど、目的は変わらない。姉さんは白夜に奪われた。そう、だから——
「君がレト君かい?」
その瞬間、レトの後方から声が聞こえてきた。レトが後ろを振り返ると、そこには誰の姿も無いように見えたが、
「ルトの弟分、だよねぇ?」
「ッ!?」
既にその者は——レトの隣に来ていた。レトは動くことも出来ず、ただ隣にいる薄気味悪い笑みを浮かべながら話す者の言葉を聞くしかなかった。
「白夜光、いや……月影 白夜を恨んでいるのだろう?」
「どうして、それを……! いや、それより、姉さんを何故知っているッ」
その言葉を待ち侘びたかのように、その者、ラプソディはニヤリと笑みをより一層深めると「そりゃそうさ」と言葉を紡いだ。
「何故って僕は——白夜が君の姉さんを葬った所を、僕は見ているからね」
「な……!」
操られていく。
「ね、だから——」
レトの心は、荒んだ心はより深みを増し、そして、狂気へとそれは一変する。
「君が思うことをすれば、いいんだ」
ラプソディの言葉は、レトの心をだんだんと犯していく。それは狂気。人々がそれぞれに持つ、限りない闇。その狂気はレトの全てを、何もかもを暗黒へと染めていく。
「うわぁぁああああ!」
レトは狂気に叫ぶ。その様子を、ラプソディは満面の笑みで見つめていた。ずっと、その叫びが止むまで。
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