ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 白夜のトワイライト
- 日時: 2011/12/01 18:23
- 名前: 遮犬 (ID: FMKR4.uV)
- 参照: 本編:13話♯2を更新いたしました!
何だか色々と更新したり、しなかったりで申し訳ございません。
シリアスで初めて投稿した作品なので、どうにか完結まで導きたいと思います。
オリキャラも、全員必ず出させていただきます。
どうか宜しくお願いいたします。
小ネタ劇場とかどうですか?>>120
狩人さんの小ネタ劇場とかどうですか?>>124
男の子キャラを二次元女体化してみました>>144
〜目次〜
物語を読む前の分からない用語確認…>>30
キャラごとのランクと職種公表…>>186
プロローグ…>>1
【第一章】
第1話:始まりの鎮魂歌 >>13-36
♯1>>13 ♯2>>26 ♯3>>31 ♯4>>36
第2話:断罪の花 >>41-57
♯1>>41 ♯2>>50 ♯3>>56 ♯4>>57
第3話:Daed or alive?(生死は問わず) >>63-78
♯1>>63 ♯2>>66 ♯3>>77 ♯4>>78
第4話:隠された記憶 >>82-93
♯1>>82 ♯2>>89 ♯3>>92 ♯4>>93
第5話:裁くべきもの、守るべきもの >>103-127
♯1>>103 ♯2>>117 ♯3>>126 ♯4>>127
第6話:動く政府と反政府 >>133-147
♯1>>133 ♯2>>138 ♯3>>145 ♯4>>147
第7話:戦いの螺旋 >>150-162
♯1>>150 ♯2>>151 ♯3>>154 ♯4>>162
第8話:闇に塗れた真実と地獄 >>163-168
♯1>>163 ♯2>>166 ♯3>>167 ♯4>>168
第9話:光と闇の咆哮 >>170-175
♯1>>170 ♯2>>171 ♯3>>172 ♯4>>175
【第二章】
第10話:終わりの始まり >>180-183
♯1>>180 ♯2>>181 ♯3>>182 ♯4>>183
第11話:混雑な世界 >>184-191
♯1>>184 ♯2>>185 ♯3>>188 ♯4>>191
第12話:捜し人 >>196-204
♯1>>196 ♯2>>199 ♯3>>203 ♯4>>204
第13話:惨劇の再来
♯1>>205 ♯2>>211
【番外編】(一応物語に関係したりします)
Condemnation(断罪)
♯1>>187 ♯2>>192 ♯3>>203 ♯4>>208
〜オリキャラの方々〜(○=既に登場 ●=近く登場予定)
風月 春(ヴィオラさん作)…>>3○ 宮澤 碇(ヨモギさん作)…>>4●
甘槻 無兎(瓦龍、さん作)…>>6● 吾妻 秋生(亜倉歌樹さん作)…>>8○
不知火(狩人さん作)…>>9○ 涼代 美月(乙季さん作)…>>11○
レイス・マキャベッリ(めるとさん作)…>>14○ 矢野 命中(アドレスさん作)…>>16●
藤堂 紫苑(紅蓮の流星さん作)…>>17○ 裏面 臨死(阿嘉狐さん作)…>>23○
琴覇 明(風華さん作)…>>24○ 黒槍 斬斗(パーセンターさん作)…>>27○
天道 残月(クロ+さん作)…>>33○ エルンスト・ワイズマン(祭さん作)…>>44○
阜 七姫(譲羽さん作)…>>47○ 鈴音 凛( 葵さん作)…>>49○
千原 双(世移さん作)…>>75○ 竹内 和磨(青銅さん作)…>>83●
鬼神 舞華(絶櫨さん作)…>>84● 炎牙 零影(駒犬さん作)…>>85●
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- Re: 白夜のトワイライト ( No.197 )
- 日時: 2011/10/19 19:05
- 名前: 世移 ◆.fPW1cqTWQ (ID: 4OBDh6qC)
また、人が少し筒増えてきましたね。しかしついに新展開になってきましたねw続きが気になりますww
- Re: 白夜のトワイライト ( No.198 )
- 日時: 2011/10/19 21:53
- 名前: 遮犬 ◆.a.RzH3ppI (ID: ucEvqIip)
>>旬さん
むぁ、第8話からですかー……確かに、急展開続きでしたからね……本当に文章力が無く、申し訳ない……;
面白いと言っていただけるだけで感謝でございますよ!腕は鈍りに鈍りまくってますb
え、ググったんですかwwあらやだ、お恥ずかしいw
こえ部は投稿途絶えてますし、ブログは昨日から再開いたしました(キリッ
才能ではなく、煩悩なら有り余っているのですが……それでもよかったr(殴
あぁ、白夜さんですか……。正直、すげぇナルシストだなぁと思いながら書いてたりもします(ぇ
いい所に現れるというね……主人公だからしょうがないだろ、みたいなナルシストぶりが……書いてて何かうぜぇ、とか思ってしまうわけで(マテ
だから二章から白夜君のこと全く書いてない!……というのは関係しないわけなんですけどねw
アドバイス与えられるほど偉く……いや、エロくないでs(ry
あれ、煩悩についてのアドバイスじゃぁ……(ぁ
まあ、どちらにしろ、ですからねぇw
黒獅子wwあの人のことはもうほっといてくださいw何か格好付けるだけ格好付けて、全然何もしてない人なんでwほんとw
雑談ですかw旬さんのところに顔出しますぜー。
おうふ……ちゃん付けですら嫌なのね?wふふっ!僕は女の子g(黙
いえいえー、長ったらしい文ほど有り難味が出ますともさ!短文でもそうなんですけどもw
どちらにせよ、おkということですー。ていうか、偉そうに言える立場じゃないですからw
コメントありがとうございましたっ。
>>世移さん
そうですねぇ……少しずつ……といっても、自分は書きまくるだけなんですけどもwとても有難いことですよね……凄く励みになりますおっ。
新展開に無理矢理させました(ぇ
何かアップデートとかわけ分からん設定盛り込んじゃったからこんな無理矢理になってしまったわけなんですけどもw
正直、世界観が書いててもよく分からん、という事態に陥りましてw今必死に設定を集めてたりもします。
こんな感じで、今までになかった様々なパーティ+それぞれの人物がどういう立場なのかとか、オリキャラ様や新キャラを含めてこれからも更新していきたいと思っております!
世移さんのオリキャラの双ちゃんは番外編で出してますが、本編で思いっきり出ますw
それらも含めて、楽しみにしておいてください!とか生意気なことを言って返信を終わります><;
コメントありがとうございましたっ。
- Re: 白夜のトワイライト ( No.199 )
- 日時: 2011/10/19 23:32
- 名前: 遮犬 ◆.a.RzH3ppI (ID: ucEvqIip)
民家の並ぶ町並みの中に、巨大な門と柵が連なっている屋敷がそこにはあった。
豪華な振る舞いはこれといっては見当たらないが、なんといってもその大きさと豪快さだった。
屋敷の面積は民家が何十軒分だろうかというぐらいの大きさで、その門の隣には巨大な表札があり、そこに書かれてある文字は【花鳥風月】と書かれてある。その門の前に、嘉高と不知火は立っていた。
「家に帰ってきたって感じがするねぇ……嘉高さんもするでしょう?」
「家というより、楓という名の牢獄に帰って来た気がするよ」
「何言ってんですかっ! ……斎条、結構嘉高さんのこと心配してましたよ? その"能力"のおかげでただでさえ敵と出くわしやすいってのに……」
不知火はぶつくさと文句を言いながら、嘉高の様子を伺うが、相変わらずのぼんやりとした顔といい、少し微笑んだ姿がとても女の子らしい感じのする嘉高の外見に不知火は自分の吐息が何となく荒々しくなっていくような気がして慌てて止めた。
「うん? 入らないの?」
「あ、いやいや! 入りますともっ!」
考えている不埒なことを悟られぬよう、不知火はその場から逃げ去るようにして門の中へと入っていった。
その様子を嘉高は見つめ、少し首の角度を曲げて傾げた後、微笑みながら「まあいっか」と呟いて自らも門の中へと入っていった。
中は見事に掃除が行き届いていて、床が太陽の光を反射していた。磨いたばかりなのだろうか、水滴が少し付いている部分もある。
和風な感じが漂うその屋敷の中には、それ相応の庭もあった。庭といっても、嘉高と不知火の所属するここ、花鳥風月はこの広い庭で稽古を行う。鯉が泳ぐ池もあるが、丁寧にそこも手が行き届いていた。
奥に行くと、応接間やら宴会場などがあり、更にその奥には巨大な面積を誇る部屋があった。まるで道場のような雰囲気を出すそこには、今もなお一人のプレイヤーが素振りをする声が聞こえて来る。
それからまた先を進むと、ようやく会議が行われる場所が見えてくる。そのまた奥には、それぞれの門下生やらが住まう寮のような建物も庭に備えられている。
嘉高と不知火はその会議が行われる場所へと進み、その障子を開けた。
ススー、と障子がスライドした途端、障子を開けた不知火の顔のすぐ横に何かがもの凄い勢いで通り抜けた。
それは、まぎれもない手だった。その手の奥には、10代に見える若い女性が怒った表情で腕をふるっていたのだ。
「さ、斎条ぉぉっ!?」
「え? 楓?」
不知火と嘉高がほぼ同時に声を挙げる中、ただ一人、その二人の眼の前にいる女性、斎条 楓(さいじょう かえで)は違っていた。
「この——アホンダラーッ!」
楓はとてつもない速さで拳を振るった。しかし、相手が違っていることには気付かないまま。
「ぶふっ!」
楓の拳は、見事不知火の顔面を捉え、強烈な勢いで吹っ飛ばしたのであった。
不知火の体は宙に浮き、そのまま後方の庭へと勢い良く滑り込んでいった。
「ただいま、楓」
「ったく……ん、おかえり、正宗……って、えぇっ!? さっき吹っ飛ばしたの、正宗じゃないのっ!?」
嘉高は気分良く笑っている最中、楓はようやく殴った人が目当ての嘉高でないことに気付くと、驚いた声をあげて砂煙のあがっている庭の方を見つめた。
「この、バカ斎条! 良い女だからといって、調子に乗ってんじゃねぇ! 毎度毎度、何でお前は嘉高さんじゃなくて俺を殴るんだよっ!」
その煙の中から、頬を右手で押さえて立ち上がる不知火の姿を見つけると、楓は申し訳なさそうに両手を合わせ、
「ごめんッ! また間違えたっ!」
「どれだけ間違えれば気が済むんだよっ!」
「でもまあ、日頃僕の代わりに殴られてることだし、別に大したことは——」
「「お前が言うなッ!」」
嘉高が場を取り正そうとしたのだが、二人が猛烈な勢いでそれを否定した。取り正そうとしたというより、悪気の無い嘉高は二人がこんな風に言い合っているのかの事の発端が自分であることを気付いていないのであった。
「ていうより……この、アホ正宗! バカ! ボケ! アホ! ボケ!」
「アホとボケ、被ってるよ」
「どっちでもいいわッ! ……とにかくっ! またどこをほっつき歩いてんのよっ! それでも花鳥風月の"頭首"? もっと自覚持ちなさいよ! 自覚をっ!」
「あ、そうだ。楓、今日のご飯何?」
「人の話を聞かんか、ボケーッ!」
このような調子が毎度続く嘉高と楓のやり取りは、見ている者からした痴話喧嘩のようにしか見えない。二人は別に夫婦やら恋人やらの関係は無く、ただ単に幼馴染ということでこうしているのだという。
(それ以上の進展はない……って言っても、お二人さん、お似合いだと俺は思うがねぇ……)
「ちょっと! 不知火も何か言ってよっ! このボケアホのバカ正宗に!」
「はいはい……」
毎度のことのように楓から援助を頼まれるのはもう慣れている不知火にとって、これだけ微笑ましく見れる光景はこの世界の中でも有数のものだった。
「うわっ! 組長さんが帰ってきてるッ!」
「ん……お、七姫じゃないか。久しぶり」
嘉高が微笑んだその目線の先には、阜 七姫の姿があった。黒混じりの白髪に、可愛らしい黒目に似合っている赤頭巾は、その格好通りにアバターコードも"赤頭巾"である。
口を両手で押さえ、意外そうな顔をして七姫は嘉高を見つめていた。
「久しぶりも何も無いですよっ! 組長さんが依頼してたこと、とっくに終わってるのにずっと遊んでばかりだったし、アップデートのせいでどっか行っちゃってましたし、久しぶりを超えての久しぶりですよ!」
「そうだねぇ……長らく留守にしてたんだっけ? でも、とっくに戻ってきてたんだけどなー」
「えっ!? 何時ですか?」
「んー少なくとも今日じゃないね。ずっと七姫の顔は見れなかったから、報告はどうなったのか心配はしてたんだよ?」
「え、えぇっ! じ、じゃあ、私が悪いのですかっ!?」
「悪いというより、運が悪かったんだね」
「やっぱり悪いんじゃないですかーッ!」
嘉高と七姫の会話はいつもこんな感じで、七姫の回答も嘉高の回答もどちらもどこかズレているような感じのまま、聞いていると、ついツッコみたくなるような話し合いである。
「んー……そういえば、まだ"鳳仙花"と"犬神"に会ってないなぁ。二人は今どこにいるか、楓知ってる?」
「鳳仙花はー……またいつものように修行とかで江戸を離れてて……犬神っていうか、春之助は迷子」
「よく迷子になる奴だねぇ……俺が探して来ようか?」
不知火が頬を人差し指で掻きながら言うと、嘉高がその場に突然座り、
「放っておけばいいと思うよー。春之助が迷子ってことは、また何か面白い人を見つけてくれるかもしれないしね」
「鳳仙花は多分もうすぐ帰ってくると思う。またトラブルに巻き込まれてなければいいんだけどね……」
「あいつは人一倍熱血で、正義感が強いからなぁ……」
「この間、鯉にあげる餌の量を間違えたとかで凄く落ち込んでましたね……」
嘉高以外の三人は鳳仙花が何事も無く、無事にこちらに戻ってきてくれるのか心配でならなかった。
そんな頃、とある滝の流れる林の中で、一人の男が槍を振るっていった。もの凄い速さで槍を次々と振り回して行くその若者こそが、鳳仙花である。
本名は幸村 匁(ゆきむら もんめ)といい、鳳仙花はアバタコードであった。
「でりゃぁっ! はぁぁっ!」
声を張り上げ、一人黙々と鍛錬をする幸村は、幾度かそれを繰り返し、落ち着いた所で槍を動かす手を止めた。
「ん……もう帰らないと、斎条さんが怒るかな……」
空を見上げ、呟くようにして言うと、槍を背中に戻し、林の中へと歩いて行った。
林の中はいつになくジメジメした空気を放ち、湿度はあがっているようだった。しかし、そんなことを構うこともなく、幸村は歩いていく。
だが、その時、不意に奥の方から何か音を感じ取った。それは、幸村の方へと向かってきていた。
「何だ……?」
槍を構え、その林の奥に潜む闇を見つめる。距離はだんだんと近づいて行き、そうして姿を現したのは——
「誰だッ!」
「きゃぁっ!」
幸村の眼の前で地面に転んだのは、少女だった。
その少女の体は傷だらけで、とても痛々しく幸村の目には映った。慌てた様子で幸村はその少女の体を起こし、声を呼びかけた。
「おいっ! おいっ! 大丈夫か!?」
「う……」
苦しそうな顔をし、傷に手を当てるその少女を見つめ、どうしたいいものかと考えた末に幸村は、
「な、名前ッ! おぬし、名前は?」
「わ、私は……鈴音……凛、と……うぅっ!」
「お、おいっ! しっかりしろ! おいっ!」
幸村がその後何度呼びかけても、鈴音 凛は反応しなかった。
意識を失ったようで、幸村は何とかしなければならないという決意の元、花鳥風月へと連れて行くことを決めたのだった。
- Re: 白夜のトワイライト ( No.200 )
- 日時: 2011/10/24 16:06
- 名前: 栗鼠隊長 ◆Q6yanCao8s (ID: aza868x/)
- 参照: 元:旬です。『りすたいちょー』と読みます。
へい!
なんとか乗り越えほとんど読みましたっ。
まだ少しのこってますけど,それがまた楽しみなんだw
で,です。しゃいぬお兄さん,途中で確実に腕を上げましたね。相変わらず一文字ずつの間違いはあるものの,文章自体が読みやすく構成されているようで読み心地がとてもよかったです! 読みやすいというのは小説家の最大の見方ですからねっ。
素晴らしいです。さすがしゃいぬお兄さん! しかも犬ミミてwもえですね。憧れの犬ミミですっ。
最初の段階の小説よりは,絶対に読みやすくなってます。見習おう(´`*
もうすぐ旬も小説ここにあげます。そのときは是非に! 一文字でも読みに来てくださいねっ!
では,残りの話を楽しみながら読破しますぬ♪
ついでに言うと,「白夜のトワイライト」を読みすぎてしゃいぬお兄さんが夢に出てきた;
- Re: 白夜のトワイライト ( No.201 )
- 日時: 2011/10/26 22:57
- 名前: 遮犬 ◆.a.RzH3ppI (ID: ucEvqIip)
墓標がいくつも作られた丘があった。その丘は、何段にも、何重にも広がっており、石碑と共に何人もの人々の魂を眠らせている。
エデンでも形として作るだけであり、実際の魂はデータ化され、消去されるか、もしくはイルとなる為の素材となるかの二つなのだが、慰めのような対象として墓標を作っているのだ。
広すぎるその広大な墓標には、いくつか入り口があり、眠っている人はその入り口の特定ワードにおいて導かれる。通称、墓標谷と呼ばれるそこに、一人の男が一つの墓標を前にして立っていた。
「懐かしいのぉ……」
男はそう呟き、その墓標をただ見つめている。周りにも墓標で埋め尽くされ、白と青で統一された空模様とその神々しい雰囲気と統合し、見事なまでに静かである。
男は、ゆっくりと手に持っていた水の入った瓶をその墓標の上からかけていく。トクトクと、水が瓶の中から放出される音がその場に取り残された。水が全て無くなった後、ゆっくりと"男の後ろにいた者"が口を開いた。
「ヴァン・クライゼル。あんた、その墓標に何の用がある」
墓標の前に立つ男、それはヴァン・クライゼルだった。
ヴァンは、後ろにいるはずの男の声をしっかりと受け止め、振り返ることなく、
「ワシにとっても、所縁はあるからのぉ」
「……所縁?」
「そうじゃな。所縁、じゃ」
ヴァンは男の言葉を聞いて微笑み、ゆっくりと振り返った。
「お前も会いに来たんじゃろう? なぁ——白夜光」
ヴァンの眼の前にいたのは、白夜だった。
白髪に、黒のパーカーを来たその少年は、小さな野花を持っていた。腰の後ろには双剣と銃が二丁納められている。
「アップデートの影響で、ここに異変が起きていないか確かめに来た。それに……」
「今日は9月31日。この日は"この子"の命日じゃからのう」
「命日じゃない。あいつは……ルトは、生きている」
白夜は足取りを真っ直ぐ、一歩ずつ墓標へと近づいていく。しかし、その墓標にはあるはずのものがない。
それは、名前だった。名前がそこに刻まれていないのである。つまり、その墓標は誰の墓かどうかさえ、分からないのだ。しかし、この"何も無い墓"を白夜とヴァンは一人の少女のものとしている。
墓標、その言われは悪いが、この墓に本当に名前が刻まれることの無いように願ってのことだった。こうして会いに来るという名目の上で、白夜はこの場で自らの目的を再確認するのであった。
ゆっくりと、白夜は小さな野花をその墓標の前に静かに置いた。
「……あんた、知ってるんだろ? 武装警察の地下に眠っていたアーカイブのトワイライトの資料のことだ」
「……あれはもう無くなっただろう」
「いいや、違う。あんたは知ってるはずさ」
白夜は隣にいるヴァンの方へ振り返る。その目つきは、酷く冷静なものだった。ヴァンはその目線を見ることもなく、白夜から背を向けている。
「どこにそんな確信が持てるかのぉ……ワシは、ルトの"見舞い"と死んだ部下達の報いの為に来たんじゃが……」
「あんたがあの時、地下を瓦礫で埋めたのは、あんたの計画通りだった。そうした方が都合の良い、いや、そうしなければならなかったからだ」
「……どういう意味じゃ? お前はワシの与えたタイムリミットに間に合わなかった。ただそれだけの——」
「いや、タイムリミットなんてそもそも存在しなかった。それは……アーカイブにはもう、極秘資料は存在していなかったからだ」
「……!」
ヴァンは少し表情を驚きで露にすると、そのすぐ後にニヤリと口を歪ませ、笑みを浮かべた。白夜はそんなヴァンの様子を冷静な瞳で見つめ、無表情・無言のままでいた。
「名探偵にでもなったつもりかのぉ? 白夜光。まぁ、大体が正解じゃがな」
顎にある白髪の髭を撫でながら、ヴァンは頷き、ゆっくりと、しかし重みのある言葉で、
「それで、何の用じゃ? 白夜光」
白夜は再び墓標の方へ顔を向けると、白夜は置いたばかりの野花をもう一度手中に収めた。その様子を訝しく見ていたヴァンに対して白夜は再び振り返り、その手にある野花を手から離した。ゆっくりとその花は地面へと落ちていく。その様子をヴァンは見つめている最中、
「用は無い。トワイライトの資料を調べた所で何もならない。ただ今日は、ここに来て決別したかっただけだ」
「決別?」
思わずヴァンは白夜の言葉に対して聞き返してしまった。その様子を見て、白夜はふっと笑うと、
「——無いものを有るものとして見、そしてそれにすがることに」
白夜の言葉が何も無い虚空へと響く。それを聞いたヴァンはその言葉を意味が理解できず、それを問う為に一歩踏み出したその瞬間、
「思わぬ面子だなぁ、これは」
ヴァンの後方から足音と共に男の声が届いた。そこには——ディストと凪の姿があった。ディストは微笑みながらこっちを見ているのに対し、凪の方は白夜達を睨みつけ、今にも襲いかかってきそうなほど凶暴な目をして、両手が既に腰元にあるハンドガンに伸びようとしていた。しかし、それをディストが手で制止させ、ゆっくりと微笑み、白夜に向けて声を発した。
「やぁ、元気かい?」
「……どうしてここに来れた」
「僕にとっても、ここはとても所縁のある場所だからね」
「……何時からここにいた?」
「何時からだろうね?」
気にした様子もなく、ディストは淡々と答えていく。白夜も後ろの腰に装備してある双剣へと手を移すところであった。
まず間違い無くディストは最初からここにいたことになる。僕にとってもここはとても所縁のある場所。この言葉は最初からずっとヴァンと白夜の会話を聞いていたことを示唆するのには十分な言葉だった。
「何しにここに来た? それにあんた、エルトールにいなくていいのか?」
「何しにここに来たという質問は、そこにいるヴァン・クライゼルさんに会いに来たんだ。そして二つ目の質問の、エルトールにいなくていいのか。いなくていいさ、権限はもう無いに等しい。この状況はあの惨劇、トワイライトと同じようなものだね。違うといえば、現実世界が混入したことぐらい」
「そんなによく喋る奴だったのか?」
「知らなかったかい? ……ま、いいや。僕に質問してきたんだし、僕も君に質問させて欲しいね」
ディストは懐から雨模様のマークが入ってある紙包みを出し、その中から飴玉を取り出して口に放り込んだ。
暫くしてから、口の中で飴玉が割れる音がし、ディストはようやく口を再び開いた。
「白夜光。この件に関しては君は関わらないで欲しい」
「それは質問じゃない」
「……まぁ、仕方ないか。白夜光、ちょっと席を外してもらえるかな? ヴァン・クライゼルさんと話がしたいんだ」
「あんたはもうエルトールの何でもない。指図される覚えも何もない」
「元から君は僕の指図は受けなかったからそんなことは関係ないと思うんだけどなぁー」
「関わらせてもらう。それが今の最短ルートだ」
「そうか……残念だね、白夜光」
その瞬間、白夜に向けて銃声と共に銃弾が飛んで来た。それを白夜は咄嗟に体を反転して避ける。だが、その避けた先にも弾丸は放たれていた。左手をかざし、黒色の光が白夜の正面を覆う。弾丸はほとんど全てその闇に触れるや否や、勢いを失って地面へと落ちていく。
しかし、白夜の腕と足の方に弾丸が掠れ、赤く血が滲んでいた。白夜はすぐに名前も知らない墓標の後ろへと隠れる。
「ここは神聖な墓地だぞっ! わかっとるのかっ!」
「仕方ないさ。白夜光はこうでもしないと分からない。時に引くことも肝心ということは大事だろう? ヴァン・グライゼルさん」
「お前がエルトールの長か……! 黒獅子の小僧に一番繋がっとるのはお前じゃな?」
背中に背負っていた巨大な槍をヴァンは取り出し、構えた。しかし、ディストは冷静にその様子を見て、
「ややこしくなったね……。ま、とりあえず——凪、頼むよ」
ディストが言ったその時、凪は懐からハンドガンを取り出し、ヴァンへと向けて乱射した。どれも正確にヴァンを捉えていくのに対し、ヴァンは槍でその銃弾を弾き返しながら凪へと近づいて行く。
「ワシもなめられてもんじゃのぉ……! うぉぉッ!」
槍を大きく振り上げ、横に薙ぎ払う。一閃、凪の眼の前を通りすぎていく。凪が後方へ下がったのだ。
そのまま後方へ下がりつつ、凪は銃を撃っていく。何度かその弾はヴァンへと掠っていくが、
「ふんっ!」
右足を大きく上げ、勢いよく地面へと叩き付けた。
叩き付けた場所から地面が割れ、揺れ始める。その震動のせいで、凪は体勢を崩し、よろけたが、片手を地面に付き、その体勢のままハンドガンを撃った。地面の割れ目と割れ目を丁度挟んだ辺りに凪は片腕をついただけの体勢で撃ったのだ。
激しく揺れ動き、尚且つそんな無茶な体勢で銃を撃つこと自体が困難なことだが、凪は銃を放った上に、さらにはその銃弾をヴァンの足へと直撃させた。乾いた音が地面の揺れる音と同化する中、
「ぐぁぁっ!」
ヴァンは呻き声をあげて地面へと倒れ込んだ。地震は程なく止み、辺りを地割れまみれにして終わった。
凪はいつの間にか立ち上がっており、白夜の隠れているであろう墓標へ目掛けてマシンガンを撃っていく。墓標が穴だらけになり、粉々になった先を見ても、白夜の姿も無く、ただ一滴か二適のごく少量の血痕しかそこにはなかった。
「——どこを見ている」
「ッ!」
白夜は凪の後ろへ回っており、両手に構えてあった双剣を振り下ろした。しかし、凪は倒れるようにして体を横転させると、横転している最中だというのに銃を白夜に向けて放った。両手に双剣を持っている為、能力は発揮出来ない。速い弾丸を至近距離で避けるのは困難だが、白夜はその銃弾をかろうじて受け流すことに成功した。
金属と金属が弾ける音が響き、更に銃声が次々とその中へと混ざる。白夜は着地した瞬間、空中にいた時に双剣を戻していた為、能力が発動できる素手の状態でその右手を振り下ろした。
その瞬間、右手に眩しい光が包み込み、その光は真っ直ぐ凪を捉え、閃光がその辺りを包みこんだかと思うと、爆発が起きた。
煙が立ち込め、周りが見えない中、凪は——無傷の状態でスナイパーライフルを構え、白夜を狙っていた。
バァンッ!
重い銃声が響き、その煙の中に包み込まれていった。
やがて、その煙が全て無くなると、白夜の姿は無く、更にはヴァンの姿も無くなっていた。
「く……! 逃がしたか……!」
凪はスナイパーライフルを背中に収め、軽く舌打ちをした。
「申し訳ございません……」
「気にしなくていいよ。ま、好きにやらせておくよ。好きに……ね」
口を歪ませ、微笑みというには程遠い笑みを浮かべたディストは煙が去った後に残してあった"血痕"を見つめていた。
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