ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 白夜のトワイライト
- 日時: 2011/12/01 18:23
- 名前: 遮犬 (ID: FMKR4.uV)
- 参照: 本編:13話♯2を更新いたしました!
何だか色々と更新したり、しなかったりで申し訳ございません。
シリアスで初めて投稿した作品なので、どうにか完結まで導きたいと思います。
オリキャラも、全員必ず出させていただきます。
どうか宜しくお願いいたします。
小ネタ劇場とかどうですか?>>120
狩人さんの小ネタ劇場とかどうですか?>>124
男の子キャラを二次元女体化してみました>>144
〜目次〜
物語を読む前の分からない用語確認…>>30
キャラごとのランクと職種公表…>>186
プロローグ…>>1
【第一章】
第1話:始まりの鎮魂歌 >>13-36
♯1>>13 ♯2>>26 ♯3>>31 ♯4>>36
第2話:断罪の花 >>41-57
♯1>>41 ♯2>>50 ♯3>>56 ♯4>>57
第3話:Daed or alive?(生死は問わず) >>63-78
♯1>>63 ♯2>>66 ♯3>>77 ♯4>>78
第4話:隠された記憶 >>82-93
♯1>>82 ♯2>>89 ♯3>>92 ♯4>>93
第5話:裁くべきもの、守るべきもの >>103-127
♯1>>103 ♯2>>117 ♯3>>126 ♯4>>127
第6話:動く政府と反政府 >>133-147
♯1>>133 ♯2>>138 ♯3>>145 ♯4>>147
第7話:戦いの螺旋 >>150-162
♯1>>150 ♯2>>151 ♯3>>154 ♯4>>162
第8話:闇に塗れた真実と地獄 >>163-168
♯1>>163 ♯2>>166 ♯3>>167 ♯4>>168
第9話:光と闇の咆哮 >>170-175
♯1>>170 ♯2>>171 ♯3>>172 ♯4>>175
【第二章】
第10話:終わりの始まり >>180-183
♯1>>180 ♯2>>181 ♯3>>182 ♯4>>183
第11話:混雑な世界 >>184-191
♯1>>184 ♯2>>185 ♯3>>188 ♯4>>191
第12話:捜し人 >>196-204
♯1>>196 ♯2>>199 ♯3>>203 ♯4>>204
第13話:惨劇の再来
♯1>>205 ♯2>>211
【番外編】(一応物語に関係したりします)
Condemnation(断罪)
♯1>>187 ♯2>>192 ♯3>>203 ♯4>>208
〜オリキャラの方々〜(○=既に登場 ●=近く登場予定)
風月 春(ヴィオラさん作)…>>3○ 宮澤 碇(ヨモギさん作)…>>4●
甘槻 無兎(瓦龍、さん作)…>>6● 吾妻 秋生(亜倉歌樹さん作)…>>8○
不知火(狩人さん作)…>>9○ 涼代 美月(乙季さん作)…>>11○
レイス・マキャベッリ(めるとさん作)…>>14○ 矢野 命中(アドレスさん作)…>>16●
藤堂 紫苑(紅蓮の流星さん作)…>>17○ 裏面 臨死(阿嘉狐さん作)…>>23○
琴覇 明(風華さん作)…>>24○ 黒槍 斬斗(パーセンターさん作)…>>27○
天道 残月(クロ+さん作)…>>33○ エルンスト・ワイズマン(祭さん作)…>>44○
阜 七姫(譲羽さん作)…>>47○ 鈴音 凛( 葵さん作)…>>49○
千原 双(世移さん作)…>>75○ 竹内 和磨(青銅さん作)…>>83●
鬼神 舞華(絶櫨さん作)…>>84● 炎牙 零影(駒犬さん作)…>>85●
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- Re: 白夜のトワイライト ( No.192 )
- 日時: 2011/10/16 21:40
- 名前: 遮犬 ◆.a.RzH3ppI (ID: ucEvqIip)
「用意は出来た?」
「……あぁ。といっても、特に何の用意をする必要もないしな」
「クスッ、そうだね」
秋生はしっかりと自分の手に黒い手袋を装着し、左腕にだけ黒色のガントレットを装着した。
触れる感触は感じないが、重力はまた別のようだった。重みがあるということで動いていることが認識できる。そのおかげで普通の腕並みとはいかなくても、秋生の左腕は十分に動かすことが出来るようになった。
何度も左腕をグー、パーと繰り返して動かし、腕を振り回してみたりして、この奇妙な感覚に早く慣れるようにと願っていた。
断罪の荷物こそ全く無く、言うなれば背中に掲げられた長い十字架の槍と、体のあちこちに装備されたいくつもの鎌が見えないように装備されているぐらい。他は何も見つからなかった。
「断罪様ぁ、準備出来たんですかー?」
パタパタと元気よく駆けつけてきた学校の制服姿の少女は、青い長髪を揺らし、目が黄色と青のオッドアイという珍しいものだった。
「あぁ、月蝕侍には言ってなかったね。今回、この子も同伴することになったから。名前は千原 双(ちはら そう)。アバターコードは、紅火霧だね」
断罪から紹介にあずかると、双は突然秋生の眼の前に飛び出してきて、
「私結構じっとしてられなくて、確かー……2分45秒ぐらいしかじっと出来ないの! 鬱陶しくてうざったいーって思っても仕方ないと思うけど、そこんとこ宜しくね?」
「あ、あぁ……ていうか、断罪がこんなよく喋る奴と行動を共にするなんてな……」
「ふふ、そうかな? 僕だって年頃の乙女だよ? 不思議じゃないじゃないか」
(……普通じゃないから言ってるんだけどな)
秋生は声には出さずに、断罪と双の二人を見比べてため息を吐いた。
これからこの奇妙なパーティで過ごさなくてはならない。しかし、これも自分自身があるべきところに帰る為に行うこと。それだけは確信付いた目標だった。
秋生は剣を二つ腰に装備すると、黒い衣装で身を装ったその体を翻して、
「そろそろ行かないか? 時間だろ?」
「あー私、貴方の名前聞いてないよー? 私だけ言って貴方の聞いてないとか、不公平じゃんー」
拗ねたようにして双が言うのに対し、秋生は出来る限り冷静に、
「吾妻 秋生だ。アバターコードは……月蝕侍。これでいいか?」
「うん、オーケーオーケー! じゃあ、しゅう君って呼ぶね?」
「……は?」
「はい、決まりー! それじゃ、断罪様! 行きましょう!」
突然の呼び名に戸惑う秋生を置いて、断罪と双は歩き出した。
「……なぁんか調子狂うぞ?」
これでも、この眼の前にいる一人の女、双はのことはまだ知らないが、断罪は人殺しの中の人殺しであることには間違いは無い。いつ、何時でも目が離せないことは明確である。
もし油断でもしたら、それこそ命取りかもしれない。これは命取りの旅だということを自覚させなければいけない。
寂れた砂漠の土地を、急いで秋生は二人の元へと走って行った。
長い砂漠の道が待っていた。この世界は、どうやら砂漠が極端に多い世界らしく、見る先々は砂漠が延々と続いていた。
アップデートのせいで世界と世界が結合したということが信じられないほどの変わった世界観だった。
砂漠と言えば、熱い日差しの中の砂地というイメージがあるのだが、この世界は違う。空は曇り、今にも雨が降り出しそうな雰囲気を醸し出し、砂地を盛り上がっている所は全然なく、ほとんど平面の砂地だった。これでは砂漠とは言えず、荒野のようだった。
「奇妙な場所だなぁ……」
秋生が呟くと、断罪は笑みを浮かべ、
「ふふ、僕にはこのメンバーが奇妙に見えるけどね」
「俺だってそう思ってるさ。今すぐにでも、俺はお前の眼の前から——」
「あーっ、喉渇いたぁー!」
双が秋生の言葉を遮って大きな声をあげて言った。秋生はその勢いに飲まれ、その後の言葉を発しなくなった。それを境に、双は自分の荷物の中から水筒のようなものを取り出し、それを開けて飲み始めた。
「……ぷはー、生き返るぅー」
ほんわりした顔で言う双とはまた別に、その瞬間、一度だけ何者かの殺気が沸いた。
断罪でもなく、秋生のものでもない。勿論、双のものでもなかった。それは——上空から発せられたものだからだった。
「避けろッ!」
「え——」
秋生の言葉とほぼ同時に双は上空を見上げたが、そのほんの数秒後、凄まじい砂飛沫が双のいる場所であがった。上空にいた何者かが双へと向けて追突したらしく、上空からの殺気は既になくなっていた。
「くそっ!」
秋生はすぐに剣を二つ取り出して構えようとしたが、左腕が自由に言うことを訊かない。右手のみ、剣を構えて双へと駆け寄ろうとしたその時、
「不意打ちかぁ〜……あはははは! あっぶなかったなぁ〜?」
「……紅火霧?」
「うーん? 何? しゅう君」
「どうしたんだ、その——服に付着した"血"は」
砂飛沫から数秒、双の服にはべっとりと赤い血が付いていた。しかし、それは双のものではなく、他の誰かの返り血だということは明白だった。
砂煙がだんだんと無くなり、双のいる場所が露となったその時、飛び込んできたと思われる誰かの血溜まりがそこにあった。
「この双はいつもの双じゃなくて、裏の方の双だよ」
断罪が横から口を出す。双はその死体を見下し、声高らかに笑っていた。一体何がスイッチだったのかは分からないが、双は明らかに先ほどまでの双とは違っていた。
「二重人格で、双は表と裏がある。真逆の顔を持っているのさ」
「真逆……」
それは……あの時の自分なのではないか。
秋生の心には、あの狂気に犯された時のことが鮮明に繰り返された。双の今の姿は、まさにそれで、自分は仲間を傷つけたのではないだろうか。この、腕で。
そう思うと、やりきれない思いと共に、憎しみが募ってきた。その憎しみは、自分に対して。
「ぐぅ……!?」
その時、秋生の左腕が疼いた。その痛みは感覚を取り戻そうとするかのように暴れ出す。暫くその痛みに耐え、抑えていると、自然に痛みはなくなっていった。
「始まったようだね、君も」
「これが……狂気が俺を取り込もうとするっていうあれか」
「まあ、そういうことかな」
断罪はいつでも笑みを浮かべながら言ってくる。その言葉の端にはどこか殺気が眠っているような感触で話してくる為、冷や汗をかくこともあった。
「う……うぅん……あれ? 断罪、様……?」
双はいつの間にか普通に戻っており、断罪の名を呼んだ。
そして、すぐに自分の身の回りを見て、
「え……!? いやぁぁぁぁっ!!」
と、叫び声をあげたのである。
先ほどの嬉しそうに高笑いする表情とは違い、今度は戸惑いや恐怖を混じらせた声。それは明らかに違う態度だった。
「君の片方が殺しちゃったんだね。大丈夫、僕がいるからね……——大丈夫さ」
断罪の言葉には、やはり殺気がこもっているような感じがした。そして、冷徹な笑み。それは断罪の本性の表れなのだろうか。それとも……また別の何かなのだろうか。
秋生はその様子を見つめ、不思議な感じを眼の前から感じ取っていた。
- Re: 白夜のトワイライト ( No.193 )
- 日時: 2011/10/17 21:02
- 名前: 朝倉疾風 (ID: QHlX.g1E)
- 参照: http://ameblo.jp/ix3x-luv/
初めまして……でもなかったような。
少し前だけれど
紅蓮の流星さんからSkypeで
「渡犬さんの小説は面白いですよ」
ということを聞いたので、
足を運んでみました。
だけれど、朝倉は絶賛テスト期間中
ということもあって、まだ全然読めて
いないのです…゜(゜´Д`゜)゜
またテストが終わり次第に
じっくり読ませていただきます。
朝倉のコメントは多少長いのですが、
読んでくれたら嬉しいです。
でわでわ。
- Re: 白夜のトワイライト ( No.194 )
- 日時: 2011/10/18 22:50
- 名前: 遮犬 ◆.a.RzH3ppI (ID: ucEvqIip)
>>朝倉疾風さん
初めまして……でしたっけ?wうーん、どこかでお話しました……いや、してないしてない!多分してないと思いますよっ!w
こんばんわ、こんにちはでございます。挨拶の順序が逆といわれるのが定番であったりなかったりの遮犬と申します。
そう、遮犬と申すのです。
渡犬……よくある間違いktkrっ。久々すぎてわはーい、となってしまいましたw渡鳥が渡犬ならどんなに可愛いだろうか。そんなことを思っちゃったりした今日この頃でございます。
……初めてのご挨拶ですのに、こんな感じで申し訳ないですwいや、正直ちょいと興奮気味だったりするわけです、はいw
あ、僕も紅蓮さんの紹介で結構前に朝倉さんの包帯戦争ヤバすぎて困る。俺の師匠さすがだぜ、やっほーい、みたいな感じで紹介されましt(ぁ
だからなのかもしれませんw初めましてーなんて感じじゃないのはw
お、同士ですねぇw自分も絶賛テスト期間中ですw(ぇ
いやはや、お恥ずかしい作品でございますので……1年前の小説だったりもするので、当時の駄目駄目っぷりが見事に発揮されていたりします。
なのでー、最初の方は適当にスルーしてもらっても全然構わn(殴
大層なこと書いてもおらず、無理矢理第二章に引っ張った結果がこれです。そんな駄作なこの作品、是非とも見下していってくださると嬉しい限りでございますです。
コメント、長い方が好きです。ていうか、僕のコメントもとんでもなく長いです。↑ご覧の通りでございます。小説の方もこんな長ったらしい感じなので、すぐに飽きられがちなわけですが……。
それはともかく!コメントいただき、ありがとうございますー;
さて、テスト勉強頑張るか……あ、いや、テスト勉強に兼ねてのテスト当日に出す提出物を……。
PS:彼女が消えた理由、読破したりしましたw一人称であれだけそれぞれの感情が綺麗に出来ていたのはさすがだなぁと感服いたしました!これからも頑張ってくださいませ! ……うわ、コメントで800字以上とかorz
- Re: 白夜のトワイライト ( No.195 )
- 日時: 2011/10/18 23:32
- 名前: 旬 ◆Q6yanCao8s (ID: aza868x/)
第8話くらいから話の展開が読めなくなってきたので途中挫折します。
というより,一旦休憩入りまーす ノ
でも,面白かったですよw そこらへんの人とはやっぱり腕が違いますねえ。それにいろんなところで活動なさってるみたいですし,旬には手が届かない存在です;
あ,ググったんですよ,しゃいぬお兄さんのこと!
記事がズラリでしたわw こえ部とか入れなかったなー……憎きセキュリティーめ。次は突破してやる。
今度その才能下さい! 味見だけでも! いやくれ! よこせ! うわああああああッ
……いやぁ騒がしい。
えっとですね,個人的には白夜光が好きです! 冷酷なようで「ん?」みたいな感じがっ。
こんど是非是非,旬の小説にアドバイスをくだされ(お時間のあるときに)。
名前変えてますけど。意味ないかw
(あ……黒獅子のことかいてないや……)
でわ! 雑談にも顔出してくださいね? 旬寂しいですからw
あと旬ちゃん呼ばわりしないでくださいね。僕女の子嫌いですから。
でわ,長ったらしい文失礼しました。
- Re: 白夜のトワイライト ( No.196 )
- 日時: 2011/10/19 21:38
- 名前: 遮犬 ◆.a.RzH3ppI (ID: ucEvqIip)
広い部屋に、コーヒーがスプーンで掻き混ぜられる音しかそこにはない。カップとスプーンが擦れる音を、巨大な椅子に座っている男が右手に持つスプーンによって鳴らしているのだ。
ほとんど無音のその中、それを破ったのはドアをノックする音だった。
「失礼します」
女性の声が室内に交じり合った。だが、男はスプーンを回すことを止めない。そのまま掻き混ぜ続けているばかりで、その他は微動だにしなかった。
彼女は見た目10代、20代程度の若さで、金色の髪をショートにし、一つに小さく纏めあげている。服は軍服のようなものを着ており、見た目やスタイルからしてもあまり似合わない感じである。
彼女のそれらの他に、更に気になるものは背中に掲げられた大型のスナイパーライフル。そして、腰元にあるマシンガンやショットガン、懐にある二丁のハンドガンなど、様々な場所に銃が装備されてあった。
そんな彼女は、ゆっくりと手に持っていた書類に目を通し、真っ直ぐ閣下と呼んだ男を見つめて、口を開いた。
「……閣下。武装警察のアーカイブに眠っていた極秘資料ですが、やはり"あの者"が持っていることが判明いたしました」
「……そっか」
ようやく口を開いた男は、女性に背を向けたまま、ゆっくりとコーヒーのカップに口を付け、一口飲み込んだ。何も言わずに、そのカップを再び机に戻すと、どこから取り出したのか砂糖をカップの中へ何個も入れ始めた。
そしてまたゆっくりと口に含み、飲み込む。すると、男は満足そうに何回か頷き、唸ると、彼女の方へと振り返った。
男は清々しい笑顔を見せ、傍にあった二本の刀を手に持ち、ゆっくりと机の上に置いた。
「そろそろ動こうか、凪」
「閣下が出向かずとも、私が——」
「凪一人に行かせられないよ。エルトールの権限とかも、今となっちゃ無いに等しいしね。閣下ってのも止めて欲しいんだけどなぁ」
「は……——ディスト様」
頭を下げる彼女、凪に対して苦笑いしながら、ディストは椅子から下りながら「様もいらないよ」と、付け加えた。
刀を二本、腰に帯刀すると、ゆっくりと凪の元へと近づいていく。
「着いてきて、くれるかい?」
「はい、勿論です」
しっかりと頷き、凪はディストの前に立った。その様子を見て、ディストは安堵したように微笑み、
「じゃあ、行こうか。頼りにしてるよ、凪」
「はい。……あの」
「ん? 何?」
「コーヒー、飲まれて行かないのですか?」
「あぁ、あれ?」
ディストはコーヒーの置いてある机に目を向けて、そうして言い放った。
「ラプソディが、飲むからいいんだよ」
「ラプソディ……?」
「ふふ、行くよ?」
「あ……はい」
何故か嬉しそうなディストを凪は急いで追いかけていった。
部屋に残ったコーヒーは、いつの間にか空っぽになっていた。
第12話:捜し人
「ご、ごごごごめんないッ!」
「いやいや、俺は別に——」
「ほんま堪忍やっ! 俺が臨ちゃんから目ぇ離さんかったらよかったんやっ! 俺の責任や!」
三人が三人とも、それぞれに言葉を交わす。
突然襲いかかってきたイルを撃退した春之助と裏面、そして優輝は戦闘が終わるや否や、このように自分が悪い、何がどうたらと言葉を交わすのみで、話がまとまりようがない状況だった。
「ちょ、ちょっと落ち着こう。とりあえず、自己紹介だけでもした方がいいんじゃないか?」
「た、確かに……」
「そやなぁ……」
優輝の提案に二人は了解し、早速自己紹介をすることになった。
「俺は日上 優輝。一応、武装警察に所属してて……アバターコードは"神斬"だ」
「日上 優輝、か……。ほな、優輝って呼ばせてもらうわ! ってか、自分警察官? 武装警察ってー……本部の要塞、破壊されたとかいう?」
「ん……あぁ、一応警察官で、まあ、そうだな。本部は破壊されたよ。その現場にいたし」
「え、えっ、た、確か、その本部の要塞が破壊された時の事件って……ほとんどの警察官が死んだって……」
「よく知ってるな……。俺は一応、その生き残り。他にも仲間がいて、その人達のおかげでもあるな」
優輝は話しながらそのことを思い返した。あの無惨な血の海の光景は頭にこびり付いて取れなくなっていたのだ。
多くの仲間が死に、自分は生き残った。罪のある、自分が。ただ復讐の為に此処にいるというのと、死んでいった人達の中、ただ生きたいっていう人との違いを考えれば、自分よりも救われてよかった命は幾らでもあったのだ。
そのことを実感して思うと、急に胸が締め付けられたように苦しくなった。
「おい、大丈夫かいな?」
「あ、あぁ……。少し、そのことを思い出してしまって……」
「ご、ごめんなさい……私が、いらないこと言ったから……」
「いや、君のせいじゃないよ。ごめん。……あ、次、どっちが自己紹介を?」
「ん、じゃあ俺がいこか!」
春之助は元気良く返事をして立ち上がった。
さっきまでの少し暗い雰囲気をまた元に戻そうと明るくしてくれている。そう思うと、優輝は感謝をしたい気分になった。
「俺は緒川 春之助っちゅーもんや! 特に言うほど経歴はないさかいに……アバターコードを言うわ。犬神"ってアバターコードや。よろしゅう頼むわ、えーと、臨ちゃんはもう言うたさかい、優輝、頼むわな!」
「え、あぁ、よろしく」
突然名前を呼ばれ、手を差し出されたので、慌ててそれに返した。春之助はそんな優輝の様子を見て微笑み、
「俺のことは春でええよ。ほとんどそれやからな」
「あぁ、分かった。よろしく、春」
「おぉー! よろしくなぁ、優輝ぃ!」
嬉しそうに優輝の背中をバンバンと音を鳴らして叩く。何だかそれが、仲間の有難さみたいなもののように感じて、心が少し和らいだ。
「えっと、次は臨ちゃんやな」
「あ、は、はい……えっと、裏面、臨死って名前です……。あ、アバターコードは、なるようにならない最悪っていいます……よ、宜しくお願いしますっ」
行儀良くお辞儀をする裏面に、優輝と春之助は拍手で送った。
何となくお互いを少しでも知り、親近感が湧いたような気がしていた。
「そういやぁ、優輝は何でここに来たん?」
「あ、そうだった! そうだな……中年の男性で、クリーム色したコートを着ている人、ここら辺で見かけなかった?」
「うーん……そんな刑事みたいな奴、見かけんかったけどなぁ」
「そうか……」
ようやく知り合いと会えると思っていた優輝にとって、愕然とする思いが心に残った。
「何や? そんな見つけたい奴なんか?」
「あぁ。俺の上司なんだけど……ここで待ち合わせしてた時、何が起きたのか、どこかへ行ってしまったみたいなんだ」
「ここで、何かが……ですか?」
不思議そうな顔をして裏面が優輝に返した。その表情は、どうにも優輝の言っていることに疑問を感じている表情であった為、優輝は裏面に顔を向けて、
「何か知っているのか?」
「い、いえ……ただ、ここで何かが起きるといっても、それは優輝さんの上司さんの身に何かが起きたのではなく、その上司さんは誰かを追っていたのではないかな……と、お、思いまして……」
裏面は、この場で優輝の上司である橋野に何かが起きたとしたなら、優輝と待ち合わせをしているその場にいる時に起こったとされるので、普通なら優輝に助けを求めたりするはず。
けれど、橋野は急用が出来た、としか言っていない。つまり、橋野は誰かを追っていて、もしくは探していた誰かが現れて、それを追うことにした。その方が辻褄に合う。
「橋野さんは、誰かを追っている……?」
一体それは誰なのか。優輝の知っている人物とすれば、それは誰か。優輝との待ち合わせを崩してまで追わなければならなかった人物。それは重要な人物とするのが一番妥当なのではないだろうか。
「人に無茶するなって言うクセに……!」
優輝は唇を噛み、自分を頼ってくれなかったことがこれほど辛いことなのだろうか、と心の中で悲しんだ。
その様子を見ていた春之助はゆっくりと優輝の肩に手を置くと、
「これからどないすんねん?」
「これから……」
「せや。お前がしたいことをすればいいやろ。この世界はただでさえ狂うとるんや。自分がしっかりせなあかんやろ」
春之助の言うことはもっともだった。
ただでさえ、右も左も分からないようなこの混沌した世界で、一体一人、何が出来るのか。ただ、眼の前に与えられたことをがむしゃらに突き進むしかない。優輝は、ゆっくりと口を開いた。
「俺は……橋野さんに頼っていたのかもしれない。心の中では、自分の目的を果たす果たすって言ってるクセして、実際は周りに頼ってばかりだ……。だから俺は……俺の道を進む」
息を吸い込み、ため息を吐く。そうして決めたことを春之助と裏面に顔を向けて言った。
「俺は今から中央に行く。橋野さんからも言われていたし、そこで情報を集めたい。きっと中央というぐらいだから、プレイヤーが多いと思うからな。そこで、人を捜すことにする」
「誰を捜すんや?」
春之助の言葉に、少しの間口を閉じ、そしてゆっくりと言い放った。
「高宮 修司。俺がこの現実と混入した世界に来る前の最後に会った奴だ。あいつはアップデートの最中にも関わらず、普通に立っていた。ログインできていたんだ。今回のアップデートの件に関わっているかもしれない」
高宮 修司。それは、優輝が現実世界からエデンと混合された世界に来る前に会っていた謎の男のことだ。その男は、意味深な言葉を残し、優輝の前から去っていったのだ。最も今のところ怪しい人物といえば高宮しか優輝には思い浮かばなかった。
「高宮 修司? うーん……どっかで聞いたことあるような名前なんやけどなぁ。まぁ、ええけど、その話がほんまやったら、かなり巨大な敵ちゃうの? こんなアホみたいな世界と現実を混入させるなんちゅーことは、専門の科学者でも無理な話やろ? とんでもない奴な気がするんやけどな」
「確かに……だから、俺は高宮の情報を少しでも集めながら、仲間も集めていきたいと思ってる」
「……それが出来たらええねんけどな。結構難しい思うで? それに、そこまで使命染みたことせんでもええやろ?」
春之助の言うことは間違ってはいない。しかし、優輝にとってそれは関係のあることだった。
アップデートをした犯人。それは、必ず黒獅子と繋がっているような気がしてならなかった。そして、また何かをしようとしている。周りから見たらこの行動そのものが偽善なのかもしれないけれど、それでも優輝は守りたかった。
もう、眼の前で大事な人を失うのは見たくなかったから。
「出来る限りやってみるさ。それが、どれだけ無謀でも。やるかやらないかとか、そういう二択じゃなく、やってみなきゃ分からないの一本だと俺は思ってるから」
心に決めた優輝は、真っ直ぐに春之助と裏面を見た。
その様子をずっと見ていた裏面はオドオドしていたが、春之助は真顔でそれを見つめた後、笑い始めた。
「おもろい奴やなぁっ! まあ、そやなぁ。やってみな分からんわな。……よーし、俺は優輝に付いて行くわ」
「え? いいのか?」
「いいも何も、こうして出会った縁やろ? 俺もその賭けに乗ってみてもええかなぁ思たんや」
「そうか……。ありがとう、春」
「礼とか、照れ臭すぎるやろー!」
先ほどまで微塵も動いてなかった春之助の犬耳と犬尻尾が前後、左右に揺れる。嬉しそうにしている証拠だった。
「あ、あのっ、私も……付いて行っても、いいですか?」
「え、裏面さんも?」
「は、はい……足手まといに、なっちゃうかもしれませんが……」
「そんなことないよ。ありがとう。お願いしてもいいかな?」
「あ、は、はいっ!」
嬉しそうに裏面は笑顔で答えた。
これで春之助と裏面と共に行くことになった優輝は、二人に感謝しつつ、一歩踏み出した。
(強く、ならないと……!)
その決意は固く優輝の胸の中に篭ったのであった。
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