ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 白夜のトワイライト
- 日時: 2011/12/01 18:23
- 名前: 遮犬 (ID: FMKR4.uV)
- 参照: 本編:13話♯2を更新いたしました!
何だか色々と更新したり、しなかったりで申し訳ございません。
シリアスで初めて投稿した作品なので、どうにか完結まで導きたいと思います。
オリキャラも、全員必ず出させていただきます。
どうか宜しくお願いいたします。
小ネタ劇場とかどうですか?>>120
狩人さんの小ネタ劇場とかどうですか?>>124
男の子キャラを二次元女体化してみました>>144
〜目次〜
物語を読む前の分からない用語確認…>>30
キャラごとのランクと職種公表…>>186
プロローグ…>>1
【第一章】
第1話:始まりの鎮魂歌 >>13-36
♯1>>13 ♯2>>26 ♯3>>31 ♯4>>36
第2話:断罪の花 >>41-57
♯1>>41 ♯2>>50 ♯3>>56 ♯4>>57
第3話:Daed or alive?(生死は問わず) >>63-78
♯1>>63 ♯2>>66 ♯3>>77 ♯4>>78
第4話:隠された記憶 >>82-93
♯1>>82 ♯2>>89 ♯3>>92 ♯4>>93
第5話:裁くべきもの、守るべきもの >>103-127
♯1>>103 ♯2>>117 ♯3>>126 ♯4>>127
第6話:動く政府と反政府 >>133-147
♯1>>133 ♯2>>138 ♯3>>145 ♯4>>147
第7話:戦いの螺旋 >>150-162
♯1>>150 ♯2>>151 ♯3>>154 ♯4>>162
第8話:闇に塗れた真実と地獄 >>163-168
♯1>>163 ♯2>>166 ♯3>>167 ♯4>>168
第9話:光と闇の咆哮 >>170-175
♯1>>170 ♯2>>171 ♯3>>172 ♯4>>175
【第二章】
第10話:終わりの始まり >>180-183
♯1>>180 ♯2>>181 ♯3>>182 ♯4>>183
第11話:混雑な世界 >>184-191
♯1>>184 ♯2>>185 ♯3>>188 ♯4>>191
第12話:捜し人 >>196-204
♯1>>196 ♯2>>199 ♯3>>203 ♯4>>204
第13話:惨劇の再来
♯1>>205 ♯2>>211
【番外編】(一応物語に関係したりします)
Condemnation(断罪)
♯1>>187 ♯2>>192 ♯3>>203 ♯4>>208
〜オリキャラの方々〜(○=既に登場 ●=近く登場予定)
風月 春(ヴィオラさん作)…>>3○ 宮澤 碇(ヨモギさん作)…>>4●
甘槻 無兎(瓦龍、さん作)…>>6● 吾妻 秋生(亜倉歌樹さん作)…>>8○
不知火(狩人さん作)…>>9○ 涼代 美月(乙季さん作)…>>11○
レイス・マキャベッリ(めるとさん作)…>>14○ 矢野 命中(アドレスさん作)…>>16●
藤堂 紫苑(紅蓮の流星さん作)…>>17○ 裏面 臨死(阿嘉狐さん作)…>>23○
琴覇 明(風華さん作)…>>24○ 黒槍 斬斗(パーセンターさん作)…>>27○
天道 残月(クロ+さん作)…>>33○ エルンスト・ワイズマン(祭さん作)…>>44○
阜 七姫(譲羽さん作)…>>47○ 鈴音 凛( 葵さん作)…>>49○
千原 双(世移さん作)…>>75○ 竹内 和磨(青銅さん作)…>>83●
鬼神 舞華(絶櫨さん作)…>>84● 炎牙 零影(駒犬さん作)…>>85●
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- Re: 白夜のトワイライト ( No.202 )
- 日時: 2011/10/24 21:27
- 名前: 遮犬 ◆.a.RzH3ppI (ID: m16n.Ntt)
>>栗鼠隊長さん
うへぇ、バレちゃいましたk(ぁ
途中で腕が上がったように見せかけてるだけですおw根本的にはあまり変わってないです。
一文字ずつの間違えwごめんなさい;推敲していないもので……。
読みやすく……心がけてるようにはしているつもりですが、全く出来やしません;まだまだ頑張らないと……。
犬耳といえば春之助君のことですかw名前をこれでいこうとした時、オリキャラの春ちゃんと名前が被っちゃってかなり焦ったり。直すのもあれなので、春之助でいきたいと思っておりますw犬耳、いいよね!絶対こういうキャラは入れたかったのさ!
褒め言葉、ありがとうございます><;身に染みますなw
これからも精進いたしますので、宜しくお願いいたします(_ _)
えwwどういうことなのw
僕が夢に出てきたとか!犬の状態でか!人面犬でサーセンorz(ぁ
- Re: 白夜のトワイライト ( No.203 )
- 日時: 2011/10/28 19:43
- 名前: 遮犬 ◆.a.RzH3ppI (ID: ucEvqIip)
砂漠を超えると、ようやく街が見えてきた。アラビアのような雰囲気を漂わせる建築物が立ち並ぶそこには、プレイヤーの姿がどの方向を向いてもいるというぐらい、辺りには溢れかえっていた。
まだ肩を震わせる双に毛布を羽織らせ、秋生達は街の中を歩いた。
「情報が必要だねぇ……さて、どこにいるのやら」
「誰を捜しているんだ?」
「それは内緒のお楽しみさ。見てから驚くといいよ」
断罪はクスッ、と声を出して笑みを浮かべると、賑わいをみせている繁華街に商店街を背中に向け、逆に人気の無い場所へと向かって行こうとした。
「おいっ、双も連れて行くのか?」
秋生は慌てて断罪を呼び止める。そんな秋生のすぐ傍には、双が体を震わせ、青ざめた顔色のまま虚空を見つめている。余程先ほどの出来事が怖かったのだろうと安易に推測することが出来た。
「んーそうだねぇ……じゃあ、君は双を連れて宿でも取っておいて。僕は少し、用事があるから」
「そういうわけにも行かないだろ。双を一人にさせる方が危険だ」
「い、いえっ! わ、私は……大丈夫、です……! 断罪様に付いて行きます! 足手まといになるかもしれないけど……」
俯きながら双は段々と声が小さくなっていく。その様子を見ていた秋生から見れば、無理をしているような気がして仕方がなかった。
「おい、やっぱり——」
「なら着いて来ていいよ」
断罪はすぐさま了解の旨を伝えたのである。表情は笑みを浮かべたままで、少しも双のことを考えたような素振りは見えなかった。
「お前——!」
「大丈夫だって言ってるじゃん! ……しゅう君は黙ってて」
気を遣っている相手に対してここまで言われた秋生は、もうそれ以上口を挟むことは出来なかった。
「それじゃあ、行こう」
断罪はどこか満足そうにそう言ったのであった。
路地裏のような場所が真っ直ぐ、一本道となって続いていた。高い堀に囲まれ、壁が周りにぐるりと円状にして聳え立っている。所々分かれ道などがあったり、広場のような場所に着いたりと繰り返し、ようやくバーらしきものが見えてきた所で断罪は立ち止まった。
「ここに、何かあるのか?」
秋生が不思議そうに断罪に聞くと、黙って再び断罪は眼の前を歩き出した。その先は、誰もいなさそうな人気の無いバーの中だった。
店内に入ると、案の定誰もおらず、割れたグラスや酒瓶などがそこらに散らばり、椅子や机も散乱していた。既に営業していないということがこれを見るだけで分かる。
しかし、明かりが点々と光る辺りを見れば、まだ何かに使っていることを意味していた。
「何だ? ここに、裏世界でもあんのかよ」
秋生が言った傍から、断罪が店の奥へと歩き出し、コンコンと何度かそこらの壁を軽く叩いて行く。そうして行っている内に、明らかに音がおかしい場所が一点見つかったのである。
その壁に向けて笑みを零すと、断罪は思い切りよくその壁に向けて蹴りを放った。
すると、バキバキと木が裂け、割れる音ではなく、ガコンという何かが開いた音が店内に響いたのだ。そうした後、その壁の横から鍵の開くような音が聞こえた。横には、棚のようなものがあるだけ。しかし、断罪はそれを手で軽々と倒すと、そこから扉のようなものが見えたのである。
「——正解だよ、月蝕侍」
「……マジかよ」
半分呆れつつ、半分驚いた秋生は、笑みをなおも浮かべている断罪が開き、歩いて行ったその扉の先を双と一緒に追いかけて行った。
扉の先には長い下り階段が続いていた。明かりが点々とついているが、その光は弱弱しく、足元程度しか見えないぐらいである。足元を気をつけながら行く秋生と双とは違い、断罪は足元など見ずにどんどん先へと進んで行く。すると、奥から扉が見えてきた。随分と大きな扉で、頑丈な造りをしているようだった。ゆっくりと断罪はその扉を押して、開いた。
中から聞こえてきたのは、大歓声に似たようなものだった。
「これは……?」
「あぁ。ここは金、命、情報、名声、何でもいい。賭けるものがあれば成立するコロシアム。ただし、敗北者はほとんどが死亡さ。通称、Bet murder(賭け殺し)と呼ばれる不法なコロシアムだよ」
「賭け殺し……?」
秋生は眼の前の光景に驚きを隠せなかった。
辺りを円状に囲むように、まるでドームの観客席のようにして集う人々が真中のかなり広い面積を保つフィールドに向けて歓声を贈っていた。
秋生達が入ってきた場所からフィールドを見ても小さくしか見えないが、それでもどういう状況なのかがよく理解できるように上には巨大モニターがいくつも取り付けられている。
見ると、一方がほとんど無傷で、もう一方は血だらけなうえに、腕が一本無かった。
「も、もうやめてくれぇ……!」
血だらけの男は怯えた表情で対戦者を見つめる。しかし、対戦者は狂ったように笑うと、手に持っていた凶器で怯えた相手へとトドメを刺したのである。
「酷い……なんだよ、これ……!」
秋生が呟いている言葉は、スタジアム内の観客の声によって掻き消されていった。
そして、司会者のような者がスタジアムの奥の方に現れると、
「勝者には、賭け金の二倍の賞金を獲得ぅっ!」
マイク越しに聞こえた司会者の声は、ますますスタジアム内を盛り上げる。どうやらあの男は金目当てでここに来ているらしく、画面には賭け金と思われる数値が跳ね上がっていく。
「観客が自分に賭けた金の倍の金額をもらうことが出来るシステムさ。観客も、賭けている方が勝つとその分の金額が毎回のレートごとによって跳ね上がる形式。敗北者には負け分のリスクを払うと共に試合後はほとんどが対戦者に殺されているというおまけ付きなわけ」
断罪は淡々とフィールドを見つめながら言った。その言葉に一瞬言葉を失った秋生だったが、すぐに断罪がどうしてここに来たのかの意味が分かったような気がした。
「断罪、もしかして……」
「ふふ、ここで情報を手に入れるとするよ。正規のルートじゃ手に入らないと思うからね」
ニヤリと口を歪ませて笑う断罪は、とても楽しそうに、これから起こる殺し合いを待ち望んでいるかのように見えたのであった。
- Re: 白夜のトワイライト 番外編更新っ ( No.204 )
- 日時: 2011/11/10 00:05
- 名前: 遮犬 ◆.a.RzH3ppI (ID: ucEvqIip)
「追っては来ない、か……」
周りを見渡してから、白夜は呟いた。その隣にはヴァンが足を押さえて座っていた。地面には足から出血されて出来たと思われる血の水溜まりが小さく出来ている。
「ぐぅ……不覚じゃわい。まさか、あの小僧に遅れを取るとは……。まさか、絶撃の凪がいるとは思わなかったわ……」
「絶撃……」
白夜は絶撃の名を呟き、その名を思い出していた。
絶撃と呼ばれたその者は、あらゆる銃機を使いこなし、どんな状況下でも命中させることの出来る異状な身体能力を合わせ、第六感覚と呼ばれる6つ目の感覚を呼び起こし、それを起用していかなる戦場でも無類の強さを誇ったとされている。
どの人間でも第六感覚は持っているが、呼び起こすまでは凄まじく難しい。大抵の人間は自分の中に眠る第六感覚に気付かずに生涯を終えることがほとんどである。その理由は、生活において必要性がないからだ。
しかし、この第六感覚を目覚めさせることによって様々な予知が可能となる。それに異状な身体能力を合わせた絶撃と呼ばれる者は脅威の強さだという。
「絶撃は一人ではない。軍隊のように沢山いたのじゃが……今では稀だな。戦争で使われ、皆相打ちで死んでいったとされておるが……」
「あいつはその生き残りか?」
「そういうことになるな。あの機敏な動きに、洗練された技はまさにそのものだろう。人間の化け物というのはアレが当てはまるわい……」
実の所、白夜にも弾は当たっていた。何とか掠れた程度で治まったのだが、あの煙で視界が遮られている中での射撃。普通ならば当てれるはずがない。しかし、予測して当てたかのように狙ってきた。もし左手の闇の引力を発動し、弾の軌道を変えていなかったら直撃していただろう。それも、心臓にだ。
掠れた部分は、左腕の内側だった。左手を開いて引き寄せた為、心臓に当たるはずの弾を逸らし、瞬間的に掠らせただけで済ませたのである。
一閃、弾が掠れた痕が切り傷のようにして残り、そこから血が滴り落ちるのを右手で押さえる。ヴァンは直撃なので、今すぐでも治療をした方が良い状況だった。
「とにかく、場所を移す。そこで治療することが出来る奴を捜す」
「ふふっ、白夜光の小僧。ワシを助けるのか?」
「お前からはまだ聞いてないことが沢山ある。それに、ディストとの関係も知りたい。それに、さっきので確信した。あんたは、黒獅子について何か知っている。それを聞き出す為に助けるまでだ」
白夜はヴァンを立ち上がらせると、巨大な盤が置かれてある場所へと歩いて行った。
その盤上からは無数の風のようなものが吹き荒れ、辺りへと撒き散らしている。異様な雰囲気を漂わせるそれは、世界と世界を跨ぐ次元の発生装置のようなものだった。ただ、どこに向かうかは未知数である。自分で自発的に選べなくなってしまっていた。これも世界との混入のせいなのかは分からない。いや、知り得ない事実だった。
「行くぞ——」
白夜とヴァンは光に包まれ、一瞬の内に吹き荒れる風と共にその場から姿を消したのであった。
深い闇の中、ゆっくりと深い椅子から腰を上げ、悠然と部屋の中にたった一つだけある扉へと向かい、その扉のドアノブを握り締めたその男は、少しの間そこで立ち止まり、不敵に笑みを浮かべてから扉を開けた。
その瞬間、大勢の何かが薄暗い宮殿のような造りの柱ごとに蠢き、一斉に声をあげた。
「黒獅子様、万歳!」
その歓声は無数に宮殿内に響き、轟音のような形で扉を開けた黒獅子へと降りかかった。その様子を見て、黒獅子はまたも笑みを零すと、ゆっくりと階段を下りていく。
黒獅子の傍に、すっと何者かが隣に並んだと同時に黒獅子の歩みが止まる。
「ご機嫌は?」
「まあまあだね。良くも無く、悪くも無いよ」
「ツクツク法師殿は?」
「あの人はまだNoLogic(不完全論理)のことを見て笑っているよ。あの力を存分に引き出せるのも時間の問題かな」
再び黒獅子は歩き始めた。その後をその"女"は着いて行く。綺麗な白いシルクの布で作られた装束を身に纏い、背中に巨大な二つの剣を背負っている。見た目は美しい女性の姿で、その煌びやかな容姿は見る者を惑わせる。
「ブリュンヒルデ。君の機嫌は?」
「言わずながら……これから攻め込むというように、そんな無粋なことを仰るおつもりで?」
「ふふ、本当に君は戦いを好むんだね……」
「何の為に私がここにいると? それこそ無粋な言葉ですね、黒獅子殿」
ブリュンヒルデと呼ばれたその女性は、鼻で笑うようにして黒獅子へと言葉を紡いだ。ゆっくりとその目は黒獅子より先に前方の方へと向いた。その様子を見て、黒獅子はニヤリと口を歪ませて笑うと、同じように前方を振り向いて歩くのを再開した。
「黒獅子殿、ラプソディは?」
「あぁ、きっと今頃はNoLogicの亡骸でも見ている頃だと思うよ。一人が好きだしね、ラプソディは」
「奴は侵略の一手だったはず。大丈夫なので?」
「問題ないさ。思うままにやらせるまで。狂気はどこにでも広がっていく」
ククク、と笑い声をあげて黒獅子は笑うと、左右に広がるようにして群がっている者達が一斉に頭を下げていく様を見届ける。
人であるものもいれば、人ではない形のものもいる。この電脳世界と現実世界を混入させたのは、この者達の願いでもあった。この世界を、そして世界を正義などふざけた偽善などではなく、再び再構築させる為に。電脳世界は世界を上書きする為に使う。力を持たない者が、この世界では力を持つことが出来る。強い者に刃向かうことが出来る。
そして今、トワイライトが再び始まるのだ。
「皆の者、よく聞け!」
黒獅子が後ろを振り返り、何千といる者達に目掛けて声を投げかけた。
その隣にはブリュンヒルデが腕を組んでその様子を観察している。一斉に静まり返ったその宮殿の中で、黒獅子は大きく声を張り上げて宣言した。
「我らが世界の不条理を正す時が来た! 何年前のトワイライトの意思は費えない! この力は、我らが世界を自由にする為に行動する為にある! 全てを還元出来た時、世界は我らの思うままに、正しい形として存在される! 弱い者、強い者などは存在せず、皆が自由に平等される世界を!」
「黒獅子様! 万歳!」
「今此処に、宣言する! ——世界へ宣戦布告を!」
「万歳! 世界に復讐を!」
宮殿の中にいつまでも歓声は響く。
その轟音は、黒獅子の笑みと同様にいつまでも保ち続けた。
トワイライトが、再び幕を開けるのである。
- Re: 白夜のトワイライト 参照2500突破。ありがとうございます! ( No.205 )
- 日時: 2011/11/12 01:36
- 名前: 遮犬 ◆.a.RzH3ppI (ID: ucEvqIip)
現実と混ざった電脳世界の中、警察署と連結させた巨大な城がある。その城内がいまや警察の本部となっている。
電脳世界が現実に介入する、といった異状すぎる事態は警察の方にも影響を大きく与えていたのだ。
現実世界と混入したということは、今や全世界中でこのような事態が起こっているということなのだろうか。外国との連絡手段もなく、警察だけではなく、政府との連結も薄れかけていた。
政府は何故、このような事態になっても連絡をよこしてこないのか。その手段がないのは分かるが、このような事態が起きた以上、このまま何日も過ぎていく日々の中、何もしないままでいるつもりなのか。
警察の幹部らは皆、我慢の限界を要していたのである。
武装警察と現実世界における警察とはまた種類が違う。武装警察の階級は軍の階級制度と同じく、警察とはそういう面で変わっているのだ。
武装警察のほとんどは自衛隊で統一されているが、警察から変転して武装警察に入るものもいる。更にはどちらにも対応しているといったものもいる。
その警察本部の中を一人の男が足音を鳴らしながら歩いていた。髪型はオールバックの黒色で、服装は青い軍服で、警察が着る制服とはまた異なっている。左腰には長く、厚い軍刀が帯刀されている。軍刀を小さく上下に揺らし、男は悠然とした顔でレッドカーペットの上を行く。
そうしてようやく一つの扉の前で立ち止まった。人気のないそこは、誰もが近づける場所ではない。相当な幹部階級でないと行けないような場所であった。
男は一度咳払いをし、二度扉に向けてノックをした。
「入りたまえ」
扉の向こう側から重苦しくプレッシャーの放つ返事が聞こえてきた。だが、男はそのようなものに慣れているのか、平気な顔で「失礼します」とだけ答え、扉を開いた。
中には、三人の男が座っていた。真正面と左側の男は40、50代を軽く突破している年齢の男だが、その右側の男だけは違っていた。オールバックの男同様に若々しい感じのする青年だったのだ。
「来たか、瀧沢」
丁度三つに分かれて座っている中の左に位置する場所に座っていたこの三人の中でも若い方の男が声をかけてきた。
瀧沢と呼ばれたオールバックの短髪の男は、ゆっくりとお辞儀をして再び正面を見つめた。
その正面には、白髪頭で、もう60、70にはなるだろうかと思われる男が深くソファーに腰を掛けて座っていた。この白髪の男が警視総監の伊野 平八郎(いの へいはちろう)その人である。この警察本部とされた場所をほとんど取り仕切っているのは実質、この男なのであった。
「村松君。君の言っていた"信頼出来るキャリア"は"コレ"かね?」
「ええ。瀧沢は私の部下の中で、最も信頼が出来ます」
「ふむ……」
伊野は顎をしゃくり、疑うような目線で瀧沢を見つめた。その重苦しい空気の中、伊野はゆっくりと言葉を開いた。
「まあ、何だね。瀧沢君……だったかな? いや、瀧沢将軍と呼んだ方がいいかね? ……疲れただろう? 座りたまえ」
「いえ、結構です」
瀧沢は伊野の言葉を断った。その行為は、伊野にとっても、村松上級大将にとっても実に衝撃の言葉だった。
「な、何を言っているんだ! 瀧沢!」
村松は慌てて瀧沢へと怒鳴りつけた。だが、瀧沢の様子は全く変わりはしない。ただ平然な顔で眼の前の伊野を見つめているのだ。
その様子に、伊野は暫く呆然として言葉が出なかったが、途端に笑い始めた。
「いいじゃないか! いい根性をしている! それで、何故座りたくないのか答えを聞こうじゃないか」
伊野は瀧沢の様子を伺うようにして前鏡になり、聞いてきた。その様子を見つめ、瀧沢はふっと笑うと、
「私がそこに座るのは、逆にあまりに無礼だからです。私はいつか血を浴びる者。そのような汚れた者は、臭うわけですよ。目の前まで近づくと、ね。だから私はそこに座るのを拒んだわけです。この血の臭いを、警視総監殿に与えたくないのでね」
「おい! 無礼だぞ!」
村松が立ち上がり、瀧沢を睨みつける。
どう見ても信頼出来るやら、信用のある、といった関係性には見えなかった。だが、それこそが伊野の求めていた人材。こうして狂ったように権力の力に従わずに刃向かって来る者。これほど強い"獣"は他にどこにもいない。
「ククク……! なるほど、なぁ……。信頼出来る人間だよ、瀧沢将軍」
「ありがとうございます」
瀧沢は頭を下げずにお礼の言葉を言った。その様子を見て、再び佐野は笑い声をあげる。村松はそんな瀧沢の様子を見て、ゆっくりとソファーへと再び座り直した。
そもそも、村松は武装警察の人間ではなく、警察から武装警察へと移動した身分であった。力ではなく、頭脳として上級大将の座についているのだが、ほとんどは他の者が指揮をしている形となっていた。
ただの表面だけこうして出てくるだけで、本来ならば元帥であるヴァン・クライゼルが此処にいなければならないのだ。しかし、あの武装警察の要塞が崩落して以来の行方不明扱いとされていた。崩落からわずかな時間でアップデート化され、世界は混乱したのだ。ただでさえパニックになっている中、ヴァン・クライゼルただ一人の為に動員させるほどの人数も余裕もなかったのである。
「瀧沢君、紹介しよう。こちらが警察側からの有力な男だ。警察側でエデンの調査をさせていた——高宮君だ」
右側に座っていた男が立ち上がる。どう見ても20代か10代後半に見えるその容姿は、この場には似合わないほどの雰囲気を漂わせていた。
どこか、奇妙な感じが瀧沢の全身を襲う。これは歴戦の証としても残っているのか、感覚が強く訴えかけてくる。
ゆっくりと高宮は右手を差し伸ばし、そして微笑むと、
「よろしく。瀧沢将軍」
その瞬間、瀧沢は変にこの男は危ないと直感的に思ったのである。その理由は分からないが、何かこの男には裏がある。そして、伊野にも。どうにも本来の警察は怪しい雰囲気を漂わせていたのである。どこでどう政府と繋がっているかも分からない。そのような連絡は一切武装警察には入ってこないのだ。軍と警察。今となってはどちらが正義を名乗れるかも分からない。
「よろしく」
瀧沢はその手を握り返した。そして、微笑む。ずっと瀧沢は高宮の顔を見つめていた。その表情は、揺れることのない笑みだけが広がっていた。悪寒が全身を駆け巡る。何かが、襲いかかってくるように。
「これから、宜しく頼むよ——"君達"」
伊野が表情を歪ませて、不気味な笑みを浮かべて言った。
第13話:惨劇の再来
私は、どこにいるの?
ここは、どこなの?
辺りは真っ暗で、何も見えなくて、どうすることも出来ずに、ただ足掻くようにして、呼吸を求めているのかも分からず、ただただ眼の前の虚空を掴もうとするけれど、手は動かなくて、そもそも手があるかどうかさえも分からずに、ただ動きたくて、けれど言うことを利かなくて、全身が麻痺しているように身動きがとれずに、ただただ足掻いている。足掻きまわっている。
私は一体何なのだろう。きっと死んだのだろうか。いや、生物だったのだろうか? 私は——何?
何も思い出せない。けれど、意識はある。そんな虚空の中、私は叫んでいる。誰かの助けを求めている? いや、分からない。
きっと何か、私は求めている? いや、分からない。
怖い。悲しい。切ない。辛い。逃げたい。暴れたい。無くなりたい。消えたい。終わりたい。
——私の求めているのは、何?
- Re: 白夜のトワイライト ( No.206 )
- 日時: 2011/11/13 11:46
- 名前: 世移 ◆.fPW1cqTWQ (ID: 34QCmT3k)
白夜さんとヴァンさん、伊野さんと瀧沢将軍、断罪さんと秋入さん。
それぞれでどんどん話が進んでいきますね。しかし白夜さんとヴァンさんが組んでいるのはびっくりでしたww
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