ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- crazy diary
- 日時： 2012/03/18 17:09
- 名前： hei （ID: Fa1GbuJU）
初めましてheiです。
亀更新ですが小説を書いていこうと思います。
シリアスめのストーリーになると思いますが、今後の参考にしたいので途中でもどんどん感想等お願いします。
今回はどこかにありそうな街で男の子が家族の為に時々やってくる敵を殺していくという（全然分かりませんねｗｗ）話です。
長くなるかも知れませんがよろしくお願いします。
第一話>>1〜>>13
第二話>>14〜>>38
第三話>>39〜>>64
第四話>>65〜
第１話
今日も俺の一日はギリギリの状態で始まる。
高校まで走って１０分だが、朝は走りたくない。
しかし走らなければ遅れる。
まだ始業のチャイムまでは１時間もあるのに。
こんな状況を生み出しているのは、もう一人の家族のせいだ。
「姉貴、いい加減早起きしてくれ・・・。」
姉というものは性格によって、家族や兄弟に与える負担が全く変わる。
俺の姉は、はっきり言って出来が悪い。
仕事には就いているがいい給料でもないし、家事もほとんどできない。
だから俺が朝食や昼の弁当も作り、そのせいで遅刻寸前になる。
だが同時に、俺にとってはたった一人の家族でもあった。
「・・・・・・、早く起きろよ糞アマ！！」
だからといって家族愛がある訳でもないが。
今日は意外にいつもより早く家を出られた。
姉をベッドから蹴り出したのは正解だったようだ。
歩いて学校に向かう道中、そろそろ梅雨の季節か、と思いを巡らせる。
だがその感傷はごく軽い手の震えによって遮られた。
正確には手の震えが意味する事実によってだ。
もう何回も経験したその震えが収まったとき、俺はため息を吐いた。
また誰かが能力を使ったようだ。
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- Re: crazy diary ( No.66 )
- 日時： 2012/03/18 17:09
- 名前： hei （ID: Fa1GbuJU）
七月三十一日。
夏休みの初日からもう十日以上経っている。
「そろそろ真面目に宿題終わらせないと駄目だな…」
夏休みの課題一覧表を見ながら、俺は一人呟く。
時計を見ると、午前十時を少し回った所だった。
（姉貴は……起きてる訳ねえか。今日は休みって言ってたしな）
夏休みに入って、俺の生活リズムは崩壊しきっていた。
朝は遅い時には十一時半ごろに起き、朝食と昼食が重なる事など珍しくも無い。
元々そんなにいい加減な性格ではなかった筈なのだが、どうも体の動きが緩慢だ。
何をするにもやる気が出ない。
ただ起きて、時々トイレに行って、食って、寝る。
そんな生活を十日近く続けている。
（…だるい…）
刺激が欲しい。
人がバラバラに飛び散るようなスプラッタ映画でも、たった一杯の冷えた水でもいい。
何か、乾いた心を沸き立たせるきっかけが欲しい。
「姉貴！おい、起きろ！！もう十一時だって！」
「…んー…わかった…」
姉が乱れた髪を揺らしながら起き上がる。
俺は急いで朝食を作りに掛かった。
十五分後、俺はテーブルの前に座り、…姉のぼやきを聞かされていた。
「最近ずっと朝ごはん目玉焼きとサラダだけなんだけど」
「嫌なら自分で材料買ってきて作れよ。」
「それは言っちゃ駄目でしょ！？あたしが言ってるのそういう事じゃないし！」
「あーあー分かった分かった。明日からは変えるよ。俺も飽きてきたし。」
これ以上姉の脈絡の無い戯言を聞いている心の余裕は俺には無い。
ここは早々に折れておく事にした。
午前十一時二十分。
食器を洗い終え、たちまち昼食のメニューを考えなければいけないと思っていた所に、携帯電話が鳴り響いた。メールが届いたようだ。
（……）
嫌な予感がした。第六感とでも言うのだろうか、論理や経験則を離れた部分で感じる、この不快な緊張。
恐る恐る、メールを確認する。
「仕事有り 二十分後 住宅街路地 赤いネクタイの男」
俺は心の中で大きな溜息と悪態をついた。
（こんな刺激は要らねえんだよ、クソ野郎）
悪態をつきながら、俺は靴を履く。
- Re: crazy diary ( No.67 )
- 日時： 2012/03/22 17:58
- 名前： hei （ID: Fa1GbuJU）
姉には昼食の材料を買いに行くと言っておいた。
自宅のマンションから歩いて十二、三分の住宅街まで、何も考えずに歩いていく。
考えた所で仕方が無い。どうせ俺は汚れ仕事を引き受けざるを得ないのだから。
俺自身の意思など、介入の余地は無い。
無心で歩いていると、いつの間にか目的の路地に着いていた。
例によって通行人はいない。寂しい路地だ。
いや、よく見ると人はいた。電信柱の陰で、風景に溶け込んでいる。
「…おい、来たぞ」
電信柱の陰から、のっそりと男が姿を現した。
もう、特に驚く要素も無い。赤いネクタイを締めたサラリーマン風の男だ。
「資料は？」
そう言うと男は首を横に振り、俺にメモを渡した。
「同行願う 国道沿い 『デニーズ』」
（…おいおい）
全く意味が分からない。どうしてファミレスに連れて行かれるのか。
理由など、想像も出来ない。
（……でも、なあ…）
ついて行くしか道は無い。それは分かっていた。
そこからさらに十分程歩き、俺と赤いネクタイの男はデニーズに着いた。
店内に入ると、俺たちの顔を見たウエイトレスが何故か顔を強張らせた。
そのまま何も言わずに奥へと入っていく。
（…？）
程無くして、入れ替わるように小太りの中年男が出てきた。
エプロンをつけたその男は、無言で俺たちの前を歩き、奥の席へと案内した。
（…ああ。そうか）
俺はここで初めて一連の出来事の理由を理解した。
この店は「安息の理」の息がかかっているに違いない。
今の中年男は店長で、恐らく信者か関係者。
都合の良い信者の会合の場として利用されているようだ。
「お連れしました」
店長らしい中年男が、そう言った。
俺はその言葉が誰に向けられた言葉か分からなかったが、奥の席に目を向けて、言葉の受け手が座っていると知った。
金髪の男だ。漆黒のスーツを着ているが、すらっとした体型のお陰でモデルの様だった。
「はじめまして。」
流暢な日本語だった。
- Re: crazy diary ( No.68 )
- 日時： 2012/03/27 20:07
- 名前： hei （ID: Fa1GbuJU）
金髪の男はオランダ人という事だった。
「ピーター・ファン・スピノザです。『ピーター』でも『スピノザ』でもお好きなように呼んでください。」
「はあ…。はじめまして…」
生でオランダ人を見た事は無かったので、どう応対したら良いのか分からず、戸惑ってしまう。
「…おい、何でオランダの人が———って、あれ！？」
赤いネクタイの男に問い質そうと左を向いたが、合成皮革の席の上には誰もいなかった。
「そちらの方なら先程出て行ったよ？」
「…意味分からねえ…。無茶苦茶だろ…」
どうして俺が見ず知らずのオランダ人と二人きりで座っていなければいけないのか。
「…それで、君が話に聞いていた恭一君だね？」
「え？ああ、はい、そうですけど…。『話に聞いていた』ってどういう事ですか？」
「あれ、聞いてないかな。今回の仕事では私と君とでチームを組めと言われたんだが。私は大浦さんから指示を受けてここで待っていたんだ。」
「…チー、ム…？」
また、意味の分からない言葉が飛び出した。
思わず聞き返してしまう。
「え、チームってどういう事ですか…？俺と…、あなたが？チームを組む！？」
オランダ人——ピーターさんは俺の驚きの混じった問いに対して、ただ頷いた。
「そう言えば、君に資料を渡せと言われてたんだ。はい、これ」
思い出したようにピーターさんが茶封筒を取り出した。俺がいつも赤いネクタイの男から貰っているのと同じものらしい。
中にはいつもと同じ、仕事の概要が書かれた書類が入っていた。
だが一つだけ、いつもは入っていない物が入っていた。
（…写真？）
葉書より少し小さい位の、一枚六十円で買った修学旅行でのスナップ写真と同じ大きさの写真が入っていた。
（誰だこいつ？）
黄土色の壁をバックに、一人の男が映っていた。
長めの髪を後ろで纏め、浅黒い肌に彫りの深い顔。
ギラギラした目で真正面から俺を見据えていた。
「アルベルト・シルバ。」
「え？」
顔を上げると、ピーターさんも俺の持つ写真を覗き込んでいる。
「こいつの名さ。アルベルト・シルバ。…私達二人が殺せと命令された男だ。」
- Re: crazy diary ( No.69 )
- 日時： 2012/04/10 20:08
- 名前： hei （ID: Fa1GbuJU）
「ツインタワーハンバーグをご注文のお客様は…？」
「はい。私です」
「鉄板の方が熱くなっておりますのでご注意下さい。では、ごゆっくりどうぞ。」
険しい顔の俺を尻目に、ピーターさんは運ばれてきた二段重ねのハンバーグにナイフを差し込んでいた。
「…この男は何者なんですか」
「さあ。詳しい事は分からないが、略歴は貰ったよ。これだ」
ピーターさんが紙を俺に渡してくる。
今回のターゲット—アルベルト・シルバの経歴が年表になっていた。
「凄いですねこいつ…。十五歳から傭兵として活動して、第一次チェチェン紛争、コンゴ紛争、…イラク戦争まで出てやがる。傭兵としちゃあ一流の経歴だな…。」
「だろ？でも、年表の下の方を見てごらんよ。イラクでの任期を終えた五年前から、二年前にベトナムで保護されるまでの三年間、消息が全く分からない。この三年間一体どこで何をしてたのか。何の情報も無い。」
年表を見ると、確かにその部分は何も書かれていなかった。
「どういう事なんですか？ベトナムで保護されたって…。
何かの目的があってイラクからベトナムへ向かったって事ですか？」
「そこなんだが…。どうも自分の意思でベトナムに居た訳では無さそうだ。彼はベトナムの漁村で海岸に打ち上げられている所を地元の漁師に
助けられたようだ。漂流していた訳だね」
（……）
いつの間にかピーターさんはツインタワーハンバーグを完食していた。
俺はもう一度、アルベルト・シルバの写真を見る。
このギラギラした眼の中には、一体何が潜んでいるのだろうか。
湧き出てくる好奇心を無理矢理押さえ、俺は自分に言い聞かせる。
（関係無い。俺はこいつを殺すだけだ）
しっかりとそう、言い聞かせた。
- Re: crazy diary ( No.70 )
- 日時： 2012/04/16 20:05
- 名前： hei （ID: Fa1GbuJU）
「姉貴、これ昼飯。」
「わっ！ピザだ！どこで買って来たの！？」
「ファミレス！ちょっと先に食っといて。俺は用事があるから！」
ピザの箱を投げるように姉に渡すと、俺はまた玄関を飛び出した。
帰って来てからゆっくりとピザを食べよう。
エレベーターで一階まで降りると、ピーターさんがマンションの前で待っていた。
自動ドアを通り、二人で並んで歩き始める。
「ここから二十分程歩くよ。『コーポ小手島』という賃貸のアパートがあるんだが、二日前…二十九日の深夜から三十日の未明にかけてマンションのオーナーが物音で目を覚ましたらしい。」
「何があったんですか？」
「一言で言うと、人が死んでいた。そのアパートの一室の玄関先に一人、裏庭に一人。二人とも服装は普通の背広だったが、拳銃を所持していた。」
俺は黙り込んだ。その先にピーターさんが言うであろう事が予想出来たからだ。
「…殺されたんですね、アルベルト・シルバに…。
どうせ襲撃しようとして返り討ちに遭ったんでしょ？」
呆れたように言うと、ピーターさんは苦笑した。
「変な所で察しが良いんだな。まあ、その通りなんだが。
この部屋にはシルバが入居していた。『返り討ちに遭った』というのも
事実だよ。『安息の理』上層部はシルバがここまで強いとは想定していなかった様だ。…現場は保存してある。アパートのオーナーは、まあ…、『迷惑料』を渡したら納得してくれたよ」
（……迷惑料、ねえ…）
ピーターさんはぼやかしたが、俺にだってその言葉がどんな意味を持つのかぐらいは解る。
もうそんな程度の薄汚さでは動揺しない程、俺も汚れてしまった。
「着いたよ。『コーポ小手島』だ」
顔を上げると、小豆色の建物が町並みに同化する様に建っていた。
微かに漂う血の匂いと共に。
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