ダーク・ファンタジー小説
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- 守るべきもの〜守リ手ノ戦争〜
- 日時: 2016/01/06 23:15
- 名前: 裏の傍観者 (ID: 2PmCSfE.)
はじめまして、裏の傍観者です。
シリアス・ダークで小説明を書かせてもらってます。
戦争系のお話しということで、今回は国内での戦争を描いた「守るべきもの〜守リ手ノ戦争〜」を書いてみました。
自衛隊と国防軍の戦闘が繰り広げられた日本が舞台となります。
恋愛も入れてますが、他の作者より下手です。(自覚してますm(。_。)m)
初心者ですが、よかったら読んでみてください。
オリキャラ・コメント歓迎します!
では、本編をお楽しみください!!
〜本編紹介〜
日本が大きく変わった平成32年。
高3の時から自衛隊にあこがれていた少年は、やがて自衛隊に入隊。
長いようで短いような教育期間を終えた彼は、やがて部隊に。
そこに待ち受けていたのは、自衛隊の裏の世界。
いくつも重なり山となる理不尽とストレス。
彼はこんな自衛隊が日本を守るなんて冗談じゃないと考え始める。
その頃日本政府では日本の国防力を高めるために新たに組織を設立していた。
日本国憲法第9条をねじ伏せてまで強引に設立した組織は、突如日本国内にあるすべての自衛隊施設を襲撃する。
緊急呼集をかけられた機甲科隊員である彼は、完全武装し状況に入る。
その際、敵が自分と同じ日本人であり、攻撃してきたのは最近設立されたばかりの日本国防軍だったことを知り、彼は敵に向けていた銃口を乗り合わせていた戦車乗員の車長に向ける。
乗員の小銃弾、車長の拳銃を強奪し味方の戦車を破壊した彼は、自分に銃口が向けられているにも関わらず日本国防軍の指揮官に接触する。
「殺したければ殺せ、今はすぐにでもこの戦闘服を脱ぎたい。」
血まみれになった戦闘服の上を脱ぎ捨て火に投げ込み燃えた。
彼は日本国防軍に捕獲されるが、接触した指揮官により日本国防軍へ階級を飛ばした異例の入隊を果たした。
自衛隊員をためらいもなく小銃で殺した彼は自衛隊を敵に回してまで何を守ろうとしているのか、彼の記録が語られる。
〜登場組織〜
<軍事組織>
・防衛省
・自衛隊(陸・海・空)
・国防省
・国防軍
・民間軍事会社 日本武装傭兵団
<民間組織>
・戦争撲滅の党
・国防の党
・新未来の党
・平和実現会
・自衛隊父兄会
・日本を愛するデモ運動集団
・左翼&右翼
<勢力不明>
・新宿武装集団
ー日本国防軍階級ー
国防大臣
国防長官
国防総将官
国防総補将官
国防1等佐官
国防2等佐官
国防3等佐官
国防1等尉官
国防2等尉官
国防3等尉官
国防准尉官
国防先任曹官
国防1等曹官
国防2等曹官
国防3等曹官
国防先任士官
国防1等士官
国防2等士官
ー陸上自衛隊階級ー
陸将
陸将補
1等陸佐
2等陸佐
3等陸佐
1等陸尉
2等陸尉
3等陸尉
准陸尉
陸曹長
1等陸曹
2等陸曹
3等陸曹
陸士長
1等陸士
2等陸士
自衛官候補生
※空・海自は陸から空・海の文字に入れ替わる。
〜登場人物〜
・結美 玲也 ムスビ レイヤ (19) 国防2等尉官
元自衛官。自衛隊員を殺害し、国防軍に入隊。防衛省では最高レベルの要注意人物であり、自衛隊の特殊作戦群では抹消対象者にされている。中隊長を務めていて、部下や上司からは評価が高い。皆からは親しみを込めて、名前と階級を混ぜ合わせて省略した玲兄さんと呼ばれている。中には兄さんと呼ぶ人も増えているらしい。お互い両想いだと気づき、夕美と交際を始めた。優しいのか甘いのか、敵味方関係なく多くの人が彼のもとに寄って来る・・・との噂もあるらしい。
・相模 勝負 サガミ ショウブ (52) 国防1等佐官
玲也が状況中に接触した指揮官。彼を国防軍に入隊させるために国防省に駆け寄った。玲也からはヤジさんと親しみをこめて呼ばれている。喧嘩っぱやいおっさんで
、今は落ち着いた性格だが昔は戦闘中にとある事案で自衛官と殴り合いになったくらい荒かったらしい。
・貴志川 有 キシガワ ユウ (19) 国防2等士官
入隊したばかりの新兵。入隊早々、射撃が最も優れており、狙撃手に。玲也に誘われ、玲也の部下になる。玲也とは同い年で、兄弟的な存在。よく玲也と夕美の3人で行動している。位置的には玲也と夕美の専属スナイパーとも言える。
・日暮奈 夕美 ヒグナ ユウミ (19) 国防3等尉官
尉官試験を一発で合格した成績優秀者。教育を終えて部隊に配属される。クールな性格上、ストレートに物事を言ってしまうが、実は寂しがり屋。玲也に助けてもらった事が多く、言動や行動でまれに玲也に対する好意がみられるが、お互い両想いだということに気づき、玲也と交際を始めた。
・河瀬 颯太 カワセ ハヤタ (36) 国防2等曹官
第1中隊、通称結美中隊に所属する国防官。物を丁寧に扱うのが特徴で、彼が使用した物は知っている限り壊れたことはない。そこで玲也から車両管理者を任される。車両を常に万全な状態にしてくれている。また、大家族のビッグダディをしている。
・華目 匠 ハナメ タクミ (23) 国防3等曹官
結美中隊に所属している。衛生を担当していることから、曹官または士官の間では先生と呼ばれている。昔病院の医院長をしていたことが理由である。面倒見が良く、常に中隊全員の健康をチェックしてくれている。また、心の病にも対象できる。小さな怪我でも心配してくれるのが特徴。
・慶田 武 ケイダ タケシ(45)国防先任曹官
結美中隊の先任。曹官・士官をまとめる小隊長。玲也と夕美の親父的存在でもあり、何かと2人のことを心配してくれている。貴志川と性格が似ているところもあり、2人がそろうとそこはもう熱血地獄になりかねないほど熱くなる。
・機十 編 キジュウ アミ(20)国防技術技官
国防軍技術研究本部に所属する技官。研究に全てを捧げる。特技は剣道で、六段。常に不機嫌、口調が悪い。幼少期、自衛隊員だった両親に虐待を受けていた。親が居た自衛隊に対し、快く思っていないがために、国防省に入った。
・浜田 意識 ハマダ イシキ(47) 2等陸佐
戦車大隊の大隊長。信頼が高く、大隊での評価は高い。玲也が国防官になった事を知り、部下の状態を把握していなかったことから責任を感じている。部下にはそれを表に出さず、大隊長としての任をまっとうする。
・小森谷 辺句朗 コモリヤ ヘクロウ (39) 准陸尉
戦車大隊の最上級先任曹長。常に考え事をしているのが特長。玲也が国防官になったことを知り、最近はなぜ玲也が国防官になったのかを考え始める。
・風神花月 フウジン カゲツ(23)2等空佐
防衛大学を成績優秀表で卒業し、強い復讐を糧に佐官クラスに登り詰めた。自衛隊に両親を殺された復讐のため自衛隊に入隊するも、国を守るなど考えておらず、常に復讐のことしか頭にない。また、表と裏の差がとても激しく、今の所殆どの隊員で彼女の裏を見たものは今の所ない。
※表・明るく、フレンドリー
裏・腹黒く、人を見下し、自分の奴隷のように扱う
・古城 哉良 コウジョウ ヤヨイ(23)2等空尉
Fー15を操るファイターパイロットでタックネームはルド。一人で一作戦の相手を任せられるほどの脅威な実力を持っている。しかし、至って本人は人命を奪いたくないと思い続けている。航空学校をトップで卒業し、自衛官となる。間違っている自衛隊を、内側から変えていく事を目標に、奮闘している。国防軍からスカウトが来るも、武力で押さえるのは違うと考えて、それを蹴る。国防官に未練はないと言ったら嘘になる。また、女性の様な自身の名前を気にしている。普段は温厚で、誰にでも慕われるが命を軽視する者や奪う者を相手にした時は、怒りをあらわにし相手を震え上がらす。
・三溝 晋三 サミ シンゾウ(40) 1等陸曹
特殊作戦群所属の自衛官。冷静沈着である彼は小隊長を務める。いかなるときも常に任務を優先とする真の自衛官。玲也との面識はないが、遭遇すればそこは今までに見たことのない激戦区となる。
・神野 啓喜 カンノ ケイキ (19) 陸士長
自衛官時代の玲也の同期。玲也が国防軍に入隊しても気にせず玲也と関わりを持つ。心配性だが、何よりも敵同士である玲也と戦うことがないか常に心配している。
・波森 悟卓 ナミモリ ゴタク (19) 陸士長
自衛官時代の玲也の同期。元から仲が悪く、敵対することが多い。玲也が国防軍に入隊したことにより、敵対心が大きくなる。
・吉川 泰毅 ヨシカワ ヤスキ (19) 陸士長
自衛官時代の玲也の同期。前から自衛官を退職したいと希望していたが、人手不足から所属している大隊長に継続を命令され、未だ現役自衛官となっている。玲也が国防軍に入隊しても変わらず敵対心等を抱かない。戦場で遭遇すればお互い上司からの命令であり、仕事だから仕方ないと考え、互いに争う関係に。
・原島 羽吹 ハラシマ ハブキ(39)武装傭兵団社長
日本で初の民間軍事会社を設立し、国内戦争から民間人を守るため傭兵派遣サービスを提供し続けている。まれに自分自ら派遣活動に参加することがある。会社を設立する前は日本警察の特殊部隊、SATの隊員として公務をしていた。国内戦争が勃発しそれにおびえた国民を見て考えが変わり、会社を設立した。なぜ考えが変わったのかは不明で、本人もまたそれを明らかにすることはない。
・帚木 冥 ハハサギ メイ(17)武装傭兵団社員
民間軍事会社、武装傭兵団の社員。常に冷静。というか冷めている。感情表現がほとんどない。まれに怒ったとき「Fuck(死ね)」と呟く。ホロサイト、赤外線レーザーサイト、暗視装置、低倍率スコープ、フォアグリップなどを装備し通常の重量を大幅に超えたSCAR−Hを酷使する。
〜活動記録目次〜
状況1.桜ノ心ナクシ自衛官、国防官ヘ
>>01 >>02 >>03 >>04 >>05 >>06 >>07 >>08 >>10 >>11 >>12 >>13 >>14 >>15 >>17 >>18 >>19 >>20 >>21 >>22 >>23 >>24 >>25 >>27 >>28
状況2.躊躇ウ里帰リ、空ノ刺客アリ
>>31 >>33 >>34 >>37 >>39 >>41 >>42 >>43 >>44 >>45 >>46 >>47 >>48 >>49 >>51 >>53 >>54 >>56 >>57 >>58 >>59
状況3.属サヌ傭兵、影ト成リ結美中隊
>>60 >>61 >>62 >>63 >>64 >>66 >>67 >>69 >>70 >>71 >>73 >>75 >>77 >>78 >>81
状況4.始マル争イ、揺レル日本ノ平和
>>82 >>83 >>84
- 守るべきもの〜自衛隊を敵に回した元自衛官〜 ( No.2 )
- 日時: 2015/03/07 16:39
- 名前: 裏の傍観者 (ID: mNUslh/H)
状況1.桜ノ心ナクシ自衛官、国防官ヘ
「・・・さん?玲兄さん?・・・結美国防2等尉官!」
誰かに呼ばれ、薄れかけていた意識がはっきりと戻る。
薄れていたとしても、まわりから見れば意識が完璧に落ちてしまっていたのかもしれない。
目覚めると大勢の国防官がこちらを覗き込んでいる。
手には、飲んでいた飲み物がこぼれて半分になっていたコップが握られている。
「・・・こぼれたのか。」
コップを机に置き、ポケットからハンカチを取り出しこぼれた飲み物をふき取る。
「大丈夫ですか玲兄さん?」
紺色の戦闘服を着た国防官が心配しながら新しい飲み物を出してくれた。
「・・・どれくらい寝ていた、河瀬2曹官。」
「ざっと30分ってとこですかね。ミーティング中に落ちるなんて珍しいですね。何かありました?」
そうだ、今日は市街地戦闘について部下に事前教育をさせた後ミーティングを行っている最中だった。
こんなことで失敗をしてしまうとは、中隊長として情けない。
「大丈夫かよ玲也。」
「おう、心配してくれてありがとう。」
国防2等士官、貴志川 有。
国防軍に入隊し教育を終えたばかりの19歳の少年。
俺と同い年で、階級は違うが優れた射撃の持ち主で、中隊の狙撃手。
自衛隊にいたら、下っ端の分際で、尉官にため口とはなにごとかといわれそうだ。
だが、ここは自衛隊じゃない。
それに、こいつはおれにとって兄弟であり、敬語など不要だ。
堅苦しすぎても、仕方ないしな。
「兄さん、時間ないですが、どうします?」
曄目3等曹官はミーティングがどこまで進んでいるかを説明しながら、事後の行動を聞いてきた。
現時刻は1700。
あと10分で国旗が降ろされる。
業務はもうすぐ終わろうとしていた。
「俺が寝てしまったばかりに、時間を無駄にしてしまったようだ。すまんな、また明日にしよう。今日はこれで解散、そのあとは一人ジュース1本だ。」
『よっしゃぁ!!』
部下たちが喜びの声をあげる。
そういや、自衛隊にいた時もよく「ジュース1本」という言葉を使っていた。
おもにじゃんけんジュースの時にだが。
席を立ち部下を解散させる。
「今日も1日お疲れさん、終礼は省くぞ。外出する奴や家に帰る奴は事故の無いようにな。」
『オッス!!』
中隊は解散し、業務は終了した。
国防陸軍、第零攻撃戦闘大隊。
その中で、中隊長を務めて指揮っているのは第1中隊。
通称、結美中隊。
国防軍が初めて行った戦闘で、真っ先に前線に送られた大隊であり・・・自衛官だった俺が初めて戦った大隊でもある。
しかし、その戦闘はただのデモンストレーションだったらしく、世間ではあまり知られていない。
よく知られている戦闘は練馬前線。
デモンストレーションとして国防軍が最初に攻撃したのは、陸上自衛隊第1師団に属する戦車大隊。
俺の古巣だ。
東富士演習場で起きた戦闘は、世間からはただの演習だったのだろうと思われたらしく何とも感じなかったらしい。
戦場が練馬駐屯地付近になってからは世間はやっと目が覚めたらしく、練馬が火の海にされた時、日本中の人間はこう呼んだ。
練馬前線。
自衛隊に最初に攻撃したのはこの第零攻撃戦闘大隊だが、世間では第1歩兵戦闘団が攻撃したという認識が多い。
そのせいか、俺のいる大隊は零とつけれられてしまった。
- 守るべきもの〜自衛隊を敵に回した元自衛官〜 ( No.3 )
- 日時: 2015/04/12 23:27
- 名前: 裏の傍観者 (ID: GlabL33E)
業務を終え、生活隊舎にある部屋に戻った。
そこで私服に着替え、いつも通り外出の準備をする。
自衛隊では、営内者と営外者で分けられていて、営内者は外出するたびに外出申請書という書類を申請しなければ外出できない。
外出するのにそんな面倒なことをする自衛隊と違い、国防軍は身分証さえあればいくらでも外出できる。
門限なんてものは存在しない。
馬鹿みたいに固い自衛隊なんかと比べるまでもない。
平和ボケした自衛隊とは違う。
実戦を経験した国防官は必ずと言っていいほどストレスがたまる。
そのストレスが溜まってしまい、戦闘の士気を少しでも下げまいと考えた国防省は外出を自由にしたらしい。
国防軍に入隊してまだ日が浅い俺は、正直そんなことは関係なかった。
俺の目的は、戦場の中で答えを探すこと。
ただそれだけのことだ。
部屋をでて鍵をかけた俺は、生活隊舎を出る。
「お疲れ様。」
声をかけられ足を止める。
横を振り向くと、そこには同じ中隊の女性国防官が私服で立っていた。
「日暮奈3尉官か。」
すると彼女は頬を膨らます。
「もう、私服では夕美と呼びなさいって言ったじゃない。もう忘れたの?」
「すまん、まだ癖が抜けないんだ。」
「全くよ。・・・自衛官だった時のことを考えてたの?」
「そうかもしれない。」
「どうしようもない男ね。・・・まぁいいわ、少し付き合ってくれないかしら?たまには私の愚痴ぐらい聞いてもいいでしょう?」
彼女がこう誘ってくるときは、2人きりで食事しないかという誘いだ。
夕美と出会ってから、いつもこんな感じだ。
「戦闘では忙しいが、こういう時は常に暇人だ。どこにする?」
「昨日見つけたお店があるの、そこにしましょう。」
国防3等尉官、日暮奈 夕美。
尉官試験を一発で合格した成績優秀国防官で、4カ月前に部隊に配属されたばかりの女性国防官だ。
そして結美中隊の副中隊長でもある。
歳は俺と一緒で、美女であるため中隊では大人気らしい。
クールな性格ではあるが、結構気の強い女だ。
「貴志川から聞いたわ、ミーティング中に寝込んだんですって?」
「あぁ。侘びとして皆にジュースを奢った。」
部下全員に奢ったせいで、軽く数千円は消費した。
「ちゃんと休んでるの?休む時はしっかり休まないと倒れるわよ。今回はミーティング中だったからよかったけど。」
「なんか説教を受けてる感じがするな、次からは気を付ける。」
「別に説教してるわけじゃないわ。・・・心配してるんだから。」
「何か言ったか?」
「なんでもないわよ、早く行きましょう。お腹空いたわ。」
基地の門へ向かい、警衛をしている国防官に身分証を提示する。
「いつもお疲れ様です、結美2尉官。ミーティングでの噂、こっちまで流れてきましたよ。」
「佐竹先士官、その情報は誰からだ?」
なんとなく誰だかわかってきた。
きっと貴志川に違いない。
「貴志川2士官からですよ。あまり無理せず、ゆっくりとお休みください。」
佐竹先士官は敬礼をしてきた。
答礼をすると警衛所から一人顔を出してくる。
「よう結美2尉官。また日暮奈3尉官とデートかい?」
慶田先曹官はそういって敬礼をしてきた。
俺と夕美はそれに対し答礼をする。
「慶田先曹官、ただ食事に行くだけです。」
「それをデートって言うんじゃねぇか。」
そういって彼は笑い出す。
まったく、愉快なおっさんだな。
「結美、毎度言うがお前さんは自衛隊の特殊作戦群では抹消対象にされとるんだ。気をつけろよ。」
慶田先曹官はそういって、俺の脇にあるホルスターに指をさす。
ショルダーホルスターにはシグザウエルP226が入っている。
防衛省で俺は要注意人物と指定されていて、厄介なことに特殊作戦群では抹消対象者に指定されてしまっている。
そのせいか、自衛隊につけ回されるときが多々ある。
国防官は武器の携行を許可されているため、護身用として所持している国防官が多い。
現に夕美も・・・。
「特に日暮奈、お前さんのは流れ弾で民間人にあてないようにな。」
「分かってるわよ。」
手荷物の中に3点射が可能なM93Rを所持している。
「そうかい、んじゃ気を付けて楽しんで来い!後でラブホ行くなら写真よろしく!・・・なんちって。」
「「このエロ先曹官!!」」
2人で慶田先曹官に突っ込みを入れた後、警衛をしている国防官達に見送られて赤羽基地を後にした。
- 守るべきもの〜自衛隊を敵に回した元自衛官〜 ( No.4 )
- 日時: 2015/03/08 07:41
- 名前: 裏の傍観者 (ID: z5Z4HjE0)
夕美が紹介してくれた店に到着した。
驚いたことに、その店はつい最近テレビで紹介されていた有名な和食店だった。
ある番組で紹介されていた時に気になってテレビに夢中になっていた。
そのとき紹介された和食メニューの中に、日本全国の新鮮な魚介類を集めた全国海鮮祭セットという商品が紹介された。
あれを見てからこの和食が食べてみたくて、部下に調べさせてもらっているが今のところ発見したという情報はなかった。
「驚いたかしら?」
夕美が自慢げに言う。
その笑顔が時々、可愛く見えてしまうのはあえて伏せておく。
「あぁ、かなり気になっていた店だったんだ。でもなぜ?」
部下には頼んだが、夕美に頼んではいない。
「河瀬2曹官から聞いたのよ。食べたくて仕方ないくらい本気で探している店があるらしいって。」
そういえば、あの時かなり熱くなってつい本気で探してくれと頼んだ記憶がある。
全然情報が来ないから、見つからずに落ち込んでいた。
ここでご対面するとは思ってもいなかった。
「玲也ってば、意外と食いしん坊なのね。また1つ、貴方のことが知れたわ。」
最近よく思うことがある。
なぜ皆は俺の事を知りたがっているのだろうか。
知ってくれる分には何も問題はないが、1つだけ知られたくない事がある。
元自衛官だったことではない。
俺が自衛官だったとき、味方であった自衛官を手にしていた小銃で殺したことだ。
どうぜ皆は知っているかと思うが、だとしてもそれだけは話題にされたくはない。
ふと、彼女が背中をこちらに向けて何かをしている。
一瞬だけ見えたが、手にしていたのはメモ帳だった。
「・・・何をメモに書き留めている?」
「え?あ〜・・・お店の場所を書き留めているのよ!ほら!皆知りたがってたし、宴会とかで記録しておくと便利かなぁって・・・。」
俺が見たときは「結美2等尉官の記録帳」という怪しげなものに見えたが、気にしないでおく。
店に入り、店員に席を案内される。
早速テレビで気になっていた商品を注文する。
夕美は女性で人気が高いという噂のカニ飯セットを注文していた。
全国海鮮祭セットも気になるが、夕美の注文した商品にも少し興味がある。
「さてと、来るまでしばらく時間はかかるわ。のんびり話さない?」
「確か、夕美の愚痴を聞くお願いだったな。」
すると彼女は急に笑いだす。
「なにかおかしいこといったか?」
「いえ、ただちょっと意外だと思っただけよ。」
夕美は注文した後に店員が用意してくれたお茶をすする。
「その愚痴なんだけど、玲也の古巣に関係するの。」
話題にされたくないことが出てくる可能性がある。
がだ、今回は彼女の愚痴を聞いてあげることになっている。
夕美からの頼みなら、断る必要も無いので続ける。
「嫌がらせを受けたのか?」
「そのようなものよ。広報勤務だったの。事務室で書類まとめてたんだけど、その時に電話がかかってきたのよ。」
その電話は、防衛省からかけてきたらしく、面白いことに俺を探しているらしい。
理由はいくらでもある。
自衛官を殺害した罪を償わせるか、あのとき使っていた小銃や拳銃をそのまま国防軍に持ち込んできたからか。
そして俺はいつの間にか、特殊作戦軍では抹消対象者に指定されてしまっていた。
「防衛省ったらしつこかったわ。なぜか私のことも聞いてきたのよ。」
「それまたどうして?」
「こっちが知りたいわ。適当に流してたけど、最後は自衛隊へ来ないかって馬鹿げた事をぬかしてたわ。」
ヘッドハンティングか。
防衛省も、やり方が汚くなったもんだ。
それだけじゃない、全国に自衛隊の出張所が存在する。
要は、自衛官になるための窓口だ。
そこで、入隊希望者が手続きをし試験を受けて合格すれば晴れて自衛官となる。
だが、入隊前は必ずと言っていいほど不安なことがたくさんある。
どんな訓練をするのか、休みはあるのか。
どんな職種があるのかなどなど。
まぁ広報官は優しく教えてくれるだろう。
と思ったら大間違いだ。
広報官の中には、ありもしない充実した生活を語りだし騙して入隊させるという連中がいる。
入隊したらすぐに免許が取れるというのが、最近の口癖らしい。
金がすぐに溜まり、任期満了すれば任満金が貰え、その後どうするかは自由だと宣伝している奴もいるらしい。
その言葉に騙され憧れてしまう、高校を卒業したばかりの少年少女たちは入隊してしまう。
入隊し教育を終えて部隊に配属されると、話が違うじゃないかと誰もが言う。
結果、広報官に騙された。
これが自衛隊の広報官の汚いやり口だ。
俺の経験では、貯金がたまると言われて入隊したが、職種が機甲科に決まり、戦車大隊に配属されすぐに金を食われた。
演習で戦車乗員に出すためのコーヒーセットとやらで軽く3万円は消えて、それに菓子類を加えて+1万円。
演習に行く度に、毎回金を消費する。
菓子を食った分、乗員に請求をするが、どんなに計算しても赤字になるばかり。
1師団の戦車大隊は、俺から見ればただの金喰い虫だ。
実戦を想定した訓練だと言うのに、のんびりコーヒーなんか飲むのは恐らく自衛隊だけだ。
他にもたくさんあるが、これが自衛隊の裏の世界であり、真実だ。
入隊するときは冷静になって考えて、それでも入隊したいという奴がいるなら止めはしない。
俺に殺されるだけだけどな。
まぁ、実際国防軍と戦闘になった自衛隊はのんびりしていられないとは思うが。
- 守るべきもの〜自衛隊を敵に回した元自衛官〜 ( No.5 )
- 日時: 2015/03/08 08:32
- 名前: 裏の傍観者 (ID: z5Z4HjE0)
「貴方の言ってた通りだわ。私も一時期自衛隊に入隊しようって考えてたけど、もし騙されるってことを知らずに入隊してたら・・・想像したくないわ。」
「そうだな。」
頭がよくて成績優秀な夕美が自衛隊に入るのは、正直勿体ない。
彼女に軍というものは似合わないが、自分の意志となれば何も言うことはない。
「ごめんなさい、経験した玲也の前で言うことではなかったわ。」
「気にするな、今の俺は国防官だ。それに、夕美のいっていることは間違っていない。」
「そういって貰えると助かるわ。」
「話したかったらまた俺を誘えばいい。・・・お、来たみたいだぞ。」
店員が大きな箱を持ってきた。
机に置き、蓋を開けると中は全国海鮮祭セットだった。
そしてもう1つの箱が置かれ、蓋を開けるとカニ飯セットが入っていた。
「すごい迫力ね・・・。」
「テレビで見たときは小さく感じたが・・・、ここまでデカいとは思わなかった。」
俺が注文した商品は、この量からして恐らく4人分はある。
「夕美、最悪食いきれないから一緒に食べてくれ。」
「いいわよ、カニ飯セット食べてみたいでしょ?」
「気づかれたか。」
「分かるわよ、さっきからチラ見してたんだから。」
その後、約1時間かけて夕美と食事をした。
注文した品の旨さと量で俺は大満足だった。
夕美から少しもらって食べたカニ飯もかなり旨かった。
食事を終えて店を後にした俺と夕美はしばらく都内を歩き回った。
時間は2100。
遅い時間だというのに、未だに都内は慌ただしい人達で騒がしい。
「不思議ね。」
夕美が突然そんな事を言い出した。
「なにがだ?」
「昼は車がたくさん走ってて、人がたくさんいて、慌ただしい所だって思うのに、どうして夜になるとこんなにも美しくなるのかしら。」
「なるほど、夜景か。」
夜になると、色々なものが光を発する。
高層ビル、東京タワーにスカイツリー。
道路を走る車、道路の脇に設置されている街灯など。
店の看板も邪魔くさいと思うときはあるが、なぜこうも美しく見えてしまうのだろうか。
「確かに不思議だな、俺でも分からない。」
「あら、珍しく意見が一致したわね。」
「言われてみれば確かに。他の人間はどう思っているんだかな。」
「きっとバラバラよ。戦闘でもそう、自衛官や国防官の中にいろんな考えを持った人は沢山いるわ。」
夕美の言う通りだ。
誰もがなにも考えずに戦っている訳ではない。
何故日本人同士戦っているのかと思っているはずだ。
恐らく、自衛隊に残っている俺の同期も考えているはずだ。
自衛隊を裏切った俺を撃てるのか、殺せるのか。
だが俺は違う。
俺は戦場でしか出ない答えを探し続けるだけだ。
俺達国防官として、一個人として守るべきものはなんなのかを。
きっと夕美もそんな事を考えているのだろうか。
全く、いいことを考えるものだ。
自然と、俺の手は夕美の頭を撫でていた。
「ちょっ・・・いきなりなにするのよ。」
彼女は顔を真っ赤にして、なぜか嬉しそうな顔をしていた。
「すまん、つい癖でな。」
「玲也は癖が多いわね・・・。今のはいいけど!」
彼女は突然走り出す。
「お、おい!どこにいくんだ?」
彼女は足を止めて振り向く。
「帰りましょ、私達の居場所へ!」
そういって、夕美は笑顔で手を差し伸べる。
時々思うことがある。
夕美はクールで頭のいい奴だが、実際は純粋な女子なんだと。
「おう、帰ろうか!」
考えるのはやめた俺は、はっきりと返事をした。
差し伸ばされた手をとり、俺は夕美と赤羽基地へと帰隊した。
- 守るべきもの〜自衛隊を敵に回した元自衛官〜 ( No.6 )
- 日時: 2015/03/08 18:54
- 名前: 裏の傍観者 (ID: cYeSCNTQ)
現時刻、0600。
目覚まし時計で目が覚めた俺は、いつものように起床して朝飯を食べに行く。
向かう先は赤羽基地の食堂。
1日に3食出る飯はこの食堂で作られ、国防官はここで食事をする。
業務開始が9時なので、起床する時間は人によって違う。
俺みたいに6時に起床するか、ギリギリまで寝て8時に起床するか。
業務開始まで間に合えば何時でもいい。
6時に起床するのは、自衛隊にいたときに嫌でも聞いた起床ラッパのせいだ。
ラッパがならなくても、体内時計が強制的に6時で起床するようになってしまったため、毎日ほとんどが6時起きだ。
「今日の朝飯は・・・と。」
食堂入り口に展示されている今日のメニューを見る。
ご飯・納豆・魚・サラダ・味噌汁・ヨーグルト。
そして・・・卵。
「・・・・・!」
ついその場でガッツポーズをしてしまう。
これさえあれば、卵かけご飯通称「TKG」があれば戦える!
「何ガッツポーズなんかしてるのよ。」
後ろから声をかけられて振り向く。
起きたばかりの夕美だった。
「おはよう、ゆっくり寝れた?」
「お、おう・・・日暮奈3尉官。」
さっきのポーズ、完全に見られてしまった。
「それで、何でガッツポーズなんかしてたの?」
「そりゃ言うまでもねぇよ、玲也はTKGの信者なんだからさ。」
戦闘服姿の貴志川が笑顔で登場。
戦闘服でいるということは、4時くらいに起床して2時間もランニングと筋トレをやっていたに違いない。
「あぁ、納得だわ。」
「遅くなったが、おっす2人とも。」
「おはよう貴志川2等士官。また筋トレか?」
「おう!目指すはボディービルダー!!」
「「気持ち悪ッ!!」」
こいつは筋肉バカの狙撃手といっていいかもしれない。
朝飯を済まし、国防軍では普段着と呼ばれている紺色の作業服を着る。
これは基地内だけでの格好で、戦闘が発生した場合は戦闘服を着る。
自衛隊迷彩と呼ばれるものはなく、単純に市街地戦闘では真っ黒の戦闘服、森林戦では新型迷彩の戦闘服を着る。
ここ最近では、陸自の駐屯地を狙うことが多くほとんどが市街地戦闘だ。
そろそろ森林戦が来てもおかしくはないかもしれない。
支度を済ませ、登庁する。
0900時、業務開始。
「それじゃ、今日も1日頑張ろう。ミーティングはさっき示した時間に行うから、遅れないように。以上、業務開始。」
『オッス!!』
敬礼をした後、皆一斉に仕事に取り掛かった。
「WAPCの修理、昨日4両終わったってよ!」
「まじ?早いな!丁度いい、操縦訓練に回してくれ!」
「へいよ!」
事務室では色々なやり取りが聞こえてくる。
96式装輪装甲車、通称WAPC。
陸自が所持している装甲車だが、国防軍でも所有している。
ただ違う所がいくつかあり、装甲は勿論搭載する重火器も変更された。
12.7mm重機関銃は2つ合体させた2連装12.7mm重機関銃で、同時に国内初の遠隔操作射撃システムを搭載した。そして米軍が使用するジャべリンATGMが積載されている。
自衛隊のものと比べ、国防軍のは本格的な戦闘能力を得た攻撃戦闘装甲車だ。
先の戦闘で、陸自のWAPCと国防軍のWAPCが激突した。
その際、陸自隊員は同じ車両だとなめてかかっていたらしく、隊員を降ろして捕獲しようとしたところを2連装12.7mm重機関銃で粉々にされた。
装甲車本体は、ジャべリンATGMで吹っ飛ばされた。
その後、陸自の10式戦車の120mm滑空砲で攻撃され、当たりはしなかったものの爆風で中破した 。
それがたったの1週間で修理が終わるとは、国防軍の整備大隊は優秀だ。
「結美2尉官、現在の装備一覧表の確認をお願い。」
夕美が中隊で保有している装備の状況をまとめた資料を渡してきた。
「まかせろ。」
「それじゃ、操縦訓練の現場見に行ってくるわね。」
「おう、監督よろしく。」
夕美は戦闘帽をかぶり、現場へ向かった。
さて、渡された資料を確認するか。
この資料には、主に戦闘車両がまとめられていた。
WAPCについては先程偶然聞いたから把握した。
目を通した俺は、確認したことを証明するため印鑑を押した。
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