ダーク・ファンタジー小説

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殺人病棟
日時: 2016/03/07 18:06
名前: 死蘭 (ID: zflF3NFd)

こんにちは。死蘭です。
このお話は少しグロい表現を使いますが、そこは気にせずに読んでいただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。

殺人病棟ー始まりの悲劇ー ( No.61 )
日時: 2017/01/24 19:49
名前: 死蘭 (ID: DdBicf6e)

復讐当日…

「…おい、お前本当にいいのか」
ロビーでは髪をショートカットにして病衣を着た香織と相変わらずマントについているフードを深く被ったドクロがいた。
「どうしたのドクロ?そんな急に」
香織は不思議そうにドクロを見つめた。
「お前は人を殺すのが嫌だったはずだ。たとえそれが自分を殺した相手であっても、ここに来た当初のお前はそんな事など考えなかっただろう…なぜ復讐をしようと考えるようになった?」
ドクロは苦しそうな感じの声で目の前に立っている彼女に聞いた。
香織はそんなドクロを驚いたような表情で見た。目を丸くさせ、ただジッと彼を見つめた。暫くすると彼女はフッと花のように優しく微笑んだ。まるでドクロの気持ちを察したかのような微笑みをしながら、彼女はこう言った。
「私はただ、私に優しく接してくれた人達に恩返しがしたいだけ…その人達が危険な目に合うような事は絶対嫌なの」


「あ、香織様〜遅いですよぉ」
ランは扉の前で手を振りながらムスッとしたような口調で香織に向かって叫ぶ。
「早くしないと遅れますよ〜」
「あ、うん!」
香織はランの所まで走っていく。その後ろからは、ドクロがゆっくりと後を追うように歩いている。
「ほら、ご主人も早く〜」
「…あぁ」
ランの言葉にドクロが返事する。
ドクロが扉の前に到着すると、ランはコホンと咳払いすると、
「それでは今からあちらの世界に向かいます。こちらにある扉をくぐれば、香織様がいた病院の病棟に到着致します…香織様、覚悟は宜しいですか?」
と言って、香織の目を見た。
香織は深く息を吸ってからはっきりと「うん」と返事を返した。
ランはそれを見て満足したように頷き、「ではでは!参りましょうか」と明るい声を出して、香織と共に扉を開ける。開け放たれた扉をランと香織は臆することなくくぐっていく。
ドクロは未だに浮かない顔をしながら嫌な予感を抱えたまま、扉をくぐっていった。

殺人病棟ー始まりの悲劇ー ( No.62 )
日時: 2017/02/20 20:23
名前: 死蘭 (ID: DdBicf6e)

「…それでここに来て、この男を殺した後に中富さんがドアを開けた…というわけなの!」
香織はニッコリと微笑んだ。香織の頬にはあの男の血がついていた。そのせいなのか、香織の微笑みは非常に薄気味悪かった。
中富はそんな彼女を見て困惑していた。会えたことへの嬉しさの反面、彼女が平気で男を殺したことへの驚きと恐怖が入り混じり、中富の頭の中は混乱していた。その位の衝撃だったのである。
「そ、それでその…ランさんとドクロさんは?」
中富は何とかしてその質問を絞りだした。
香織は一瞬キョトンとした感じだったが、すぐに笑顔になり、「あー…ランはもう戻っちゃったけど」と言って言葉を続ける。
「でもドクロはほら、そこにいるよ」
香織はそう言うと中富の斜め後ろを指さす。
中富は香織が指さした方向に視線を移すと、確かにそこには誰かが腕を組んで壁に寄りかかりながら立っていた。
「あ…あなたがドクロさん?」
「……あぁ」
ドクロは黒いマントで身を包み、顔はフードを被っているのでよくは見えない。中富はそんな彼を見て、ほんの一瞬だけ死神だと思ってしまった。大きな鎌を持っていたのなら、彼女は間違いなく彼を死神と認識していただろう。そう思うほど、彼の身なりは死神そっくりだった。
「…俺は先に帰る」
ドクロがそう言った瞬間、彼の体を黒い霧が覆い隠した。霧がはれると彼はどこにもいなかった。
「………」
暫くの間、二人の間に重い沈黙が訪れた。
中富が何か話さなくてはと口を開きかけると、香織が先に話し出した。
「あのね、中富さん」
香織は寂しげに呟くように言った。
「私ね、本当は人殺しなんて…復讐なんて馬鹿げてると思ったんだよ…復讐したところで私はもう生き返れないもん…でもね、この男が何の罪もない人を殺してると知って初めて怒りを感じたの……この男とはね、退院できると知ったその日に出会ったの…」
“お嬢ちゃん、なんだかご機嫌だね”
“うん!だって私、もうそろそろ退院なの!”
“…お嬢ちゃんは早くここから出たいかい?”
“勿論!早く退院したいよ!”
“……なら、おじちゃんに任せておきな。大丈夫、すぐに出してあげるからね”
「…今思えば馬鹿だよね、私。そのせいで私死んだようなもんだもん…自業自得だよね」
「そんなこと…」
ない、と中富が言おうとしたのを香織は手で制した。
「いいの。もう全部終わったの…でもまだ、後片付けが残っていたわ…」
香織がそう言うと同時に部屋のあちこちから呻き声が聞こえた。
「まだ、ここに縛られている人を解放できてない…だから私、今からここを壊すの」
香織は独り言のように呟いた。
「待って!香織ちゃ…」
中富が香織を止めようと叫びながら手を伸ばした瞬間だった。突然強い風が吹き荒れ、中富は声がだせなかった。しかし、香織はそんな風の影響をうけていないようで、言葉を続けている。
「…ねぇ、中富さんはいつも私の味方だったよね。いつでも私を助けてくれたよね…だから私、あなたに恩返ししたいから、ここから出してあげるね」
香織が中富の方を見てどこか寂しそうに微笑んだ。そして何か言葉を発する。
最後に中富に向かって言った言葉は、確かに中富の耳に届いた。


「………今までありがとう、さよなら」

殺人病棟ー始まりの悲劇ー ( No.63 )
日時: 2017/03/10 14:56
名前: 死蘭 (ID: DdBicf6e)

中富が目を覚ましたのはあの病院とは別の、隣町の病院の病室であった。
自分がなぜここにいるのかを近くの看護士に尋ねると、"病院が突然竜巻のような強い風によって倒壊した"という内容の返事が返ってきた。
「真夜中だったから救助が大変だったらしくて…でも不思議なことに患者さん達に怪我はなかったそうです。被害が酷かったのは確か…404号室?だったかな?そこが特に酷くて病室が無くなる程だったそうですよ…え?そこにいた患者さん?…いえ、確かそこには誰も入ってなかったって今朝ニュースで聞きましたよ」
看護士の女性は首を傾げながら中富に話した。中富は内心驚きながらも「そうですか」と看護士の女性に言って小さく溜め息をついた。
(おかしいわ…どうして患者がいないといったの?死者が出たことを隠したかったから?いいえ違うわ。きっと香織ちゃんが連れ帰ったんだわ。あのドクロさんっていう方と一緒に……あぁ香織ちゃん、どうしてあなたはあんなことしたの?ドクロさんと出会った場所で一体何があったの?)
中富は退院するまでその事で頭を悩ませていた。しかし、いつまで経っても答えが出ることはなかった。


それから半年後…中富は香織と同じ病気に冒され、この世を去った。
自分の娘にこの言葉を残して。

「あの病院は…可哀想な子が捕らわれているの。どうか彼女を…救ってあげて」


中富が働いていた病院には前々から奇妙な噂が出回っていた。
"夜中の12時の鐘が知らせる死への誘い"、"捕らわれた死者"、"狂気の殺人者が眠る病棟"、そして"死を祝福する死神"…中富が亡くなった後もその噂が絶えることはなく、むしろ増していった。
そしてある日ある患者がまた新たな噂を広めた。
"死者を惑わす災厄の魔女"、という噂を。


それからさらに一年後…その噂に名前が付けられた。中富の日記帳を見つけた娘が日記を読んだ事がきっかけである。
娘は全てを読み終えると最後に書かれてあった言葉を静かに読み上げた。
「可哀想な殺人者が眠る病棟」
        “殺人病棟”



中富が亡くなってから何年経ったのかは分からない。
しかし、あの噂…殺人病棟は決して忘れられることはないだろう。たとえこの先、どんなことがあっても。
…ただ、あの少女が復讐を終えた時、この悲劇は終わりを告げるだろう。
だが、恐らく少女が復讐を終えてもここから出られることはないだろう。
少女はこの病棟からまた別の理由で捕らわれているのだから。

殺人病棟:お知らせ ( No.64 )
日時: 2017/03/12 15:39
名前: 死蘭 (ID: 8fHYICVX)

皆さんこんにちは。
殺人病棟ー始まりの悲劇ー、いかがでしたか?
香織という少女が物語の中心となった今回の作品は自分にとっては「もう少し面白く出来たのでは?」と思っています(泣)
文才がなくてすみません

さて、皆さんも少しくらいは気になっていると思いますが(思っていてほしいです)、次回はいよいよ殺人病棟の関係者がでてきます。少しだけ内容をお話しますと、次回の殺人病棟の主人公は殺人病棟のある役職を担っています。主人公はなんと香織の友人で香織に嫌われまいと毎日必死で仕事に励みます。しかし、主人公は「自分はここに居続けるしかないのだろうか」と悩み始めます。果たして主人公はその悩みをどう向き合い、解決していくのでしょうか。
それでは皆さん、また次回の作品でお会いしましょう。皆さんに会えることを楽しみに待っています。

Re: 殺人病棟 ( No.65 )
日時: 2017/03/15 16:54
名前: 舞々 (ID: 1v8J9i1X)

とてもおもしろいです!
私の作品とは全く違いますね!
読んでてとてもゾクゾクします!
次回も楽しみにしています。(๑•̀ㅂ•́)و✧


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