二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 【スマブラX小説】The Promise
- 日時: 2013/01/07 07:09
- 名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: 4HUso7p7)
- 参照: この小説は新板に移転しました。
計れ。
その発言は正気か狂気か。
全ての裏を掻き、真実を見よ。
その判断が世界の存亡を分ける。
——————————
案ぜよ。
その戦いは正しいか否か。
激情の最中であっても、静けさと共に在れ。
嵐は時に身を滅ぼす。
——————————————————————
どうも、駄文士ことSHAKUSYAと申します。
時代のニーズからは甚だしく外れた小説ですが、お付き合いいただけると嬉しいです。
<注意>
・ この小説はジャンル「スマブラX(DX組を含む)」「長編」「シリアス・ダーク」「オリキャラ主人公」「擬人化有り」「オリジナル設定有り」「オリキャラ登場」を含む小説です。
一つでもダメ! と言う方はUターンを推奨いたします。
・ キャラクター崩壊が非常に激しい小説です。
特に剣士組と遊撃隊の扱いは酷いので、アイクやファルコ好きな方には閲覧をお勧めできません。
・ 駄文士の趣味嗜好、話の進行の都合、キャラの設定上などの点から、キャラクターの登場回数にかなりひいきが見られます。
クッパとヨッシーとDrマリオを除くマリオファミリー、バウンティハンター二人、エムブレム勢、プププランド勢の活躍を見たい方は他の小説に行くか、頑張ってスレ主が物語後半を更新するまでお待ち下さい。
・ 一応二次創作ですが、設定の詳細が不明なキャラ・曖昧な世界観に関しては最早オリジナルと言って過言でないほどのオリジナル設定が用いられています。
「手袋陣は最早別世界の神様」「医者と配管工は名前すら違う別人」「リンクはトワイライト仕様のみ」「ゲーム&ウォッチが平面でない」「ポケモン勢がスマブラ以外の技を使う」 以上がダメそうな方はUターン推奨です。
・ スレ主、実はスマブラどころかゲーム自体をやったことがほとんどありません。適宜リサーチをかけつつ執筆していますが、使用している技やゲームシステムに誤解が生じていることがあるかもしれません。
何かお気づきの点がありましたら、コメント等で指摘してくださるとありがたいです。
・ 当然ながら、荒らし・中傷・喧嘩・過度の雑談・無闇な宣伝など、スレ主と読者様の迷惑になるような行為は厳禁です。
ネチケットを守って閲覧してください。
Written By SHAKUSYA (スレ設立H.24 8/24)
【お知らせ】
・ 参照4000突破!(H25 1/1)
・ マスターの立ち絵うp >>125
・ クレイジーの立ち絵うp >>126
【もくじ】
第零章 「The Strongest Fighter?(最強の戦士?)」
第一篇 >>1
第二篇 >>2 >>3 >>4 >>5 >>6
第三篇 >>7 >>8 >>9
第四篇 >>10 >>11 >>12
第五篇 >>13 >>14 >>15 >>18 >>19
第六篇 >>20 >>24 >>25
第七篇 >>26 >>27
第一章 「The Clack(傷)」
第一篇 >>30 >>31
第二篇 >>32 >>33 >>34 >>37 >>38 >>39 >>40 >>41
第三篇 >>42 >>43 >>44 >>47 >>48 >>50 >>51 >>52
第四篇 >>57 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>65 >>66
第五篇 >>69 >>70 >>71
第六篇 >>74 >>75 >>76 >>77 >>78 >>79
第二章「The Reason,Why? (何故? どうして?)」
第一篇 >>82 >>85
第二篇 >>86 >>87 >>88 >>89 >>92 >>95 >>96 >>97 >>98 >>99 >>100
>>101 >>102 >>103
第三篇 >>104 >>105 >>108 >>109 >>112 >>113 >>114 >>115 >>116
第四篇 >>117 >>118 >>119 >>120 >>121 >>122 >>123 >>124
第五篇 >>128 >>129 >>130 >>134 >>137 >>138
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
- 第零章/The Strongest Fighter? ( No.5 )
- 日時: 2012/08/27 01:55
- 名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: x40/.lqv)
- 参照: 第二篇/Nice to meet you. (まずは、「初めまして」から)
それから数秒もかからず。
「此処だな……ん、右手?」
「Master hand? Why are you in there?」
「@+~¥$〜〜」
どやどやと、あの画面越しにしか見たことのなかった面々が駆け込んできた。暗くてよく分からないが、先頭は懐中電灯を持っている。あの渋い声と口ぶりからするに、そうめ……いや、ファルコか。それからミスターニンテンドーと、何やらぽよぽよぺぽぺぽ言ってるのはきっとカービィだろう。
「君、今の内にそれ」
「あっはい」
マスターハンドから貰った翻訳機のスイッチを入れ、イヤホンを耳にかける。途端、今まで何と言っているのかサッパリ分からなかったいくつもの言葉が、私の分かる言葉になってイヤホンから流れてきた。
「マスター! 断末魔みたいなのが聞こえたんだが!?」
これは日本語。八十年ローンを背負った遊撃隊の隊長だ。マスターハンドは生返事している。
「あれ、キミは? 見たことないけど」
配管工兄弟の緑の方……ルイージが私に気付いた。
その一声で皆の視線が一斉に私へ向かって集中する。誰もそういうつもりで見てるんじゃないとは思いたいけど、目つきが鋭いです皆さん。怖いです。威圧されてるようにしか感じないです。ちょっと殺気を感じます。
「ホラ、早く」
小さく右手に促されて、私はやっとの思いで口を開いた。
「え、っと……その、あたしは小夜子(さよこ)と言います。どう言ったら良いのかな、そう、『あっち』の世界からマスターさんに招かれて、あの、その『こっち』の世界に来ました。いきなりのことだったから何が何だか分かんないし、『こっち』の世界のことは全然知らないんですが、ヨロシク……」
「あっち……?」
「こっち?」
何だか眠そうな声を上げたのは、子供勢のようだ。その中でもきっとリーダー格なのであろうネスは、パジャマ姿ながらも若干警戒態勢。さすがネスサンと言った所だ。ただ、警戒中の彼は割かし怖い。
「ネス、そう警戒するな。私が招き寄せた客人だよ、彼女は」
「あら。そんなこと出来まして? マスターさん」
苦笑するマスターに聞いたのは、こちらも就寝モードのゼルダ姫。……と言うか、見回してみれば大人もほとんど就寝体制だ。ナルシスト王子に至っては何を焦ったのやら、パジャマの上から甲冑を着ている。
「一応な。だが、無理矢理連れて来たわけじゃない。彼女が自分で此処に来ることを選んだのだよ」
そう、私は私が選んで此処に来た。
そして釣られたら、とんでもない水槽に入れてもらったのだ。
そうじゃなかったら、今私はこうして辛うじてながらも冷静を保っていられるわけがない。いきなり空の上から落とされて、ゲームで見慣れたとは言え自分の背丈よりも大きな掌にキャッチされて、ゲームの中でしか見たことのないキャラとこうして顔を付き合わせて、平然としていられるわけがない。
「そうなのか、小僧」
何で此処で豚の魔王なんだろう。とりあえず質問には答える。
「そうです、自分で此処に来ました」
身長百六十センチの私より頭三つ分くらい彼は高いから、見上げないと顔が見れない。
てか、意外に眼優しいなこのおっさん。
「ふん」
鼻で笑うなよ! こっちは大変な思いしたって言うのに!
「とりあえず、庭で立ち話はなんだ。リビングの方に行かないか」
「すぁんせぇーい……」
ダルそーな声の主は、私の足元にまとわり付いているこのピンク球だ。熟睡していたところを叩き起こされたのだろう、帽子と抱き枕を抱えて、今にも寝そうに半眼をこすっている。口元のとめどないヨダレは、夢でご馳走でも堪能していたのだろうか。起こしてごめんなさい。
「さあ、行こう」
そんなこんなで、私達は目の前に聳え立つ赤い屋根の屋敷、その一階をほぼ占拠している、リビングへ向かうことにしたのだった。ちなみに、一階は外観を見た感じ、リビングと台所しかない。
To be continued...
ちなみに「豚魔王」とはガノンドロフのことです。
スマブラ屋敷は赤い屋根の家。
- 第零章/The Strongest Fighter? ( No.6 )
- 日時: 2012/08/28 22:08
- 名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: x40/.lqv)
- 参照: 第二篇/Nice to meet you. (まずは、「初めまして」から)
「ミス・サヨコ。大丈夫かい?」
空を眺めて歩いていると、不意に右横から声を投げかけられた。
赤いシャツに青いオーバーオール、赤い帽子にヒゲ、そんでこのラテン臭い声と来たら、マリオしかいないだろう。とりあえず、他の二次創作で見るような猛々しい喋り方ではないらしい。それが少し安心だった。彼まで他のメンバーみたいに俺とか私とか言っていたら、私は怖くて誰にも近寄れない。
「あたしは大丈夫です。さっきは怖かったけど、もう結構慣れました」
「そうか、ならいいんだけれどね。ホラ、人ってさ、他人から聞かれたら大丈夫でもないのに「大丈夫だ」「心配要らない」って言いたがるから。僕等の世界は君の居た世界とは結構勝手が違うから、あんまり無理はしないようにね。それじゃ、僕は一足先に行ってるよ」
優しい人なのは分かった。でもあまり立ち入りすぎるとピーチ姫のカンシャクが怖い。
走り去っていく背を見届けて、ほっと一つ安堵の溜息。が、一難去ってまた一難。
「サヨコさーん」
背後から飛び掛るおっとりした声。振り返ってみれば、こちらもパジャマなアイスクライマー。私を呼んだのはその内女の子の方、ナナだ。余談だが、二人とも寝巻きに護身用のハンマーが似合ってない。
「だいじょーぶですかー?」
「うん、大丈夫」
「それならいいんですー。あ、それとボクたちアイスクライマー。ボクがポポで、相棒のナナでーす」
眩しいくらい純粋な笑顔のポポくんの方から、身振り手振りつきで説明が来た。
「あっ、うん、ヨロシク、ヨロシク」
二つ返事と生返事、あわせて生返事二つ。居酒屋のメニューかっ。
「よろしくお願いしますー」
知ってるんだ。友人の使い手が君らなんだ。複雑な気分だなあ。
特に意味もなくほっぺたをぽりぽり掻いてみる。そこにナナちゃんの声。
「そうそう、今日はワタシたち試合なんですー。良かったら身に来て下さいねー」
うほ、マジか! ああ、スマブラストーリモード『亜空の使者』の、あの天空闘技場が見れるのか! ドキがムネムネするとはこういうことか。何言ってるんだ私。テンション上がりすぎだな。
「絶対行く。絶対見に行くよそれっ」
「うれしいですー。それじゃあ、約束ですよー!」
最後は二人揃って喜びの舞。それからこの世界にもあるらしい指きりげんまんを一人ずつにして、ポポくんとナナちゃんはぱたぱた皆の後を追いかけていった。お友達に困ることはないかな、これで。
ぬぼーっとして歩いていると、ぐいっとシャツの襟首を掴まれた。ぐえっ、と軽く踏み潰した蛙みたいな声が喉の奥から飛び出す。くそ、二難去って今度は三難めか。今日はぐっすり眠れそうだ。
色々考えながら手の主を辿ると、大型の懐中電灯。ってことは……。
「何やってんだあんた? オレたち追い抜かしたと思ったらサッサと玄関通り越しやがって」
「あはは……ランバルディさんちっす」
本名ファルコ・ランバルディ。
「気持ち悪ィな、ファルコでいい」
通称そうめん。
遊撃隊『スターフォックス』の隊員だ。二次創作だとイジりキャラで定着してるが、ファルコでゲキむずボスバトルをハートのうつわなしでクリアした、マリオを極めた私ですら倒せない超絶な使い手を知っている私としては、ちょっと侮りがたきキジだったりする。
「おら、こっちだよ。あんたが居なけりゃオレたちは寝れねえんだ、あんたも寝てえならとっととしろ」
「うへへぇ」
襟首をむんずと掴んだまま、ファルコは私をズルズルと玄関口まで引っ張ってくる。日本のと違って靴は脱がなくていいらしい。その代わり玄関前のマットで一応靴の汚れを落として、私は遂にスマブラメンバーの住む屋敷の中に潜入したのだった。
To be continued...
とりあえずマリオ、アイクラ、そうめ(ryファルコ登場。
ミスター任天堂の一人称が「僕」ってのは、実は結構珍しいんじゃなかろうか。
- Re: 【スマブラX小説】The Promise ( No.7 )
- 日時: 2012/08/28 22:10
- 名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: x40/.lqv)
- 参照: 第三篇/In the Kitchen/With Children(台所にて。子供勢と共に。)
玄関からすぐの両壁に、階段が一つずつ。そしてすぐ目の前は、なぜかもう扉になっていた。予想通り、一階はほとんどリビングと台所で占領されているらしい。後がつかえているとマスターに促され、私はおじゃまします、と一言上げて、恐る恐るドアを手前に引いてみる。
「うわぁ」
中は灯りを絞っているために薄暗く、そしてとんでもなく広かった。 六畳半の部屋が二十は軽く入るくらいある。食卓も兼ねているのか、最奥の台所付近にはどっしりしたテーブルと椅子がずらり。南に面した大きな採光窓の近くには、七十二型どころの騒ぎでないほどの巨大な薄型テレビが据え置かれている。
テレビの近くにはソファの類もあるし、中々上品なガラスのテーブルもある。それ以外にも結構調度は多めに置いてあるが、部屋がとんでもなく広い所為か、全体的には結構がらんとした雰囲気だ。冬は少し肌寒い感もあるかもしれないが、住み易さで言えば、モノで溢れている私の狭い住居と比べ物にならない。
「何もないんでびっくりしたろう?」
すこし呆れたようなマスターの声に、私は首を横に振る。
「いや、あんまり広すぎて……」
「嗚呼、確かに。あちらでは旧時代の宮殿にでも入らない限り、こんなに広い空間はないだろうからな。しかし知っての通り、彼等は全員で四十人を越えている。クッパだのガノンドロフだのと言った図体がでかいのも多いから、全員ここに入ると案外狭いものさ」
「へぇ」
手元にへぇボタンがあったら間違いなく二十へぇを出す自信がある。なくていい。
ついと背を押され、入り口で立ち往生していた私は中に一歩足を踏み入れた。フローリングの床はこれでもかと言うほど磨き上げられて、大きな窓から届く星の光までも、微かに映している。薄暗いだけに幻想的な雰囲気だ。いっそしばらく見惚れていたかったけれど、そういうワケにはいかない。
続けて二歩、三歩と入り、促されるままに中へ足を進める。そしてそのまま台所付近の席に直行させられ、一番台所に近い、他よりもちょっとだけ上等な椅子に私は座らされた。引かれた座布団のふかふかさが、あのとき抜けた腰にいい感じ。きっとマスターの席だ。
「皆は席に。王侯貴族諸君、お茶でも淹れてやってくれ」
マスターは立って皆に指示を飛ばしている。ふと見ると、額に脂汗がにじんでいた。さっき私を受け止めたときにぶつけた背中が痛むのか。かなり無理して堪えているのが素人の目にも丸分かりだ。そして、私はそんな人を見てみぬフリが出来るほど冷酷な女じゃない。
「あたし大丈夫です。マスターさんは座っててください」
「え? いや、しかし君は」
「大丈夫ですから」
どう見ても疲れ果てた顔で断ろうとするのを遮り、私は席を立つ。メンバーの大半がすこし不思議そうな、一部の人はどこか感心したような眼で私を見たけど、気にしない。ふらっ、と一瞬よろめきかけた身体を掴んで引き留め、私は彼を少し強引に座らせた。
To be continued...
スマブラ屋敷、潜入。
王侯貴族諸君は女性陣とエムブレム組の総称です。
- 第零章/The Strongest Fighter? ( No.8 )
- 日時: 2012/08/30 01:34
- 名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: x40/.lqv)
- 参照: 第三篇/In the Kitchen/With Children(台所にて。子供勢と共に。)
椅子に座ったメンバーからの視線を避けるように、私は台所に走る。
底なしの大食漢が二匹もいるせいか、台所は普通の家にあるそれより倍以上広い。冷蔵庫に至っては業務用が五台も並んで、来る出番を待っている。扉に張られた「Today」「Tomorrow」「Day after tommorow」と言う付箋は、あえて気にしないことにした。
「手伝います。何かありますか?」
寝巻き姿のままヤカンでお湯を沸かしているキノコ王国の姫のところに走る。ネットに流出しているワガママ姫ではなくて、しごく上品なお姫様が私の声に答えてくれた。
「あら、ありがとう小夜子さん。それじゃあ、そこのカップとソーサーを暖めて」
「はーい」
指したのは洗濯機と見まがうばかりの食洗機、の横にある、見上げるほどの食器棚。同じ食器が四十強枚一組になって並んでいる光景はなかなかシュールだ。見上げてばかりで首が痛くなり、私は少し足を引いてカップとソーサーを探す。お姫様がお茶会でもするのか、下の方にまとめて置いてあった。
が……。
「ど、どう出したらいいんですか?」
「あっ……」
食器棚のスペースを節約するためなのか、カップとソーサーの組が、横ばかりでなく縦にまでみっちり詰められているのだ。それだけなら無理矢理でも掴み取ってしまえるが、横にも入れすぎて手を差し入れる隙間がない。いや、隙間自体はあるのだ。それが五ミリと言うだけで。
どうしようかと私が顎に手を当てかけたとき、背後から特徴的なピコピコ音が近づいてくる。ああそうか彼が、と振り向いた私の横を通りすぎ、薄暗さに紛れてしまう真っ黒な奴が、私の横で食器棚に手をかけた。
「ど、どうも」
五ミリの隙間から手を伸ばし、奥の方からカップとソーサーを用心深く引っ張り出して、携えたお盆に載せてくれるその人こそ、“平面人間”ことミスターゲーム・アンド・ウォッチ。ホームランコンテストではガノンおじさんと共にお世話になってます。長いので以下ミスターと呼ばせていただく。
チリリリ、と鳴るベル一つ。
私の耳に掛けた翻訳機は、それを少し掛かった後で言葉に変換した。
「ヤルコトはしました。オヤスミなさい」
「……あっ、ハイ」
言ったとき、既にミスターの姿は何処にもなく。
私は薄暗がりに消えたミスターに頭をちょっと下げて、お盆に乗せられたカップとソーサー、全四十四セットを流しに持っていく。言っておくが、無論何度かに分けてだ。ミスターはあの短時間で私の出せない所を全部出してくれたけれど、女子高生の腕力で陶器二十セットを一息に運ぶのはちょっと出来ない。
To be continued...
「Today」は今日、「Tomorrow」は明日、「Day after tomorrow」はあさって。
冷蔵庫が五台あってもスマメンの前では三日分に過ぎない。
- 第零章/The Strongest Fighter? ( No.9 )
- 日時: 2012/08/31 21:58
- 名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: x40/.lqv)
- 参照: 第三篇/In the Kitchen/With Children(台所にて。子供勢と共に。)
「お疲れさま」
苦労して全部のカップとソーサーを流しの給湯器で暖め終わったころ、王侯貴族の方々は既に紅茶を作り終えているところだった。どっと疲れてしまって溜息をついた私に、ピーチ姫がねぎらいの言葉をかけてくれる。こっちの女性陣はいい人が多いのかな。
何かやることはないかと見回す。おっ、ゴキブリ発見。
一人退治に向かおうとしていた私の背後から、声。
「後は私達がやる」
振り向いてみれば、刃物のように鋭い水色の眼が私を見ていた。睡眠時も戦闘のことを忘れていない、動きやすそうな男らしい服。それで括り上げた金髪とくれば、サムス姐さんか。四十枚の皿を片手に持って平然としてるのは、流石バウンティハンターといった感じ。
「手つきから察するに、四十人分の食器を扱うことなど今までしたことないだろう? 当たり前だ、腕力が要る上に要領も要る。普通ならば慣れた者のやることだ。素人は下手に手を出すべきではない」
うっ……け、結構心に痛いことを仰る。でも、言ってることは真実だ。素直に聞くしかない。
まあまあ、とサムス姐さんをなだめる姫に、大丈夫ですから、とだけ言って、私は捕らえる前に逃げられてしまったゴキブリのことを少し気にしながら、そっと台所を抜け出す。
リビングにはこうこうと灯りが点いていた。多分、誰かが暗いからと言って点けたのだろう。
「あっ、サヨちん」
「あそぼー」
最初は眠そうな顔をしていた子供勢だったけれども、いざこざがある内に目が覚めてしまったらしい。リビングの空いたスペースで遊び始めている。誘われて断るわけにもいかないので、私はちょっと待っててと告げて、まずマスターの様子を見に行った。
「大丈夫ですか?」
聞いた私に、マスターは苦笑い。
眼を閉じ、声は上げず、ただ一つうなずいた。大丈夫と言いたいらしい。
人ってさ、他人から聞かれたら大丈夫でもないのに「大丈夫だ」「心配要らない」って言いたがるから——。
そのとき、マリオの言葉が一瞬頭をよぎったのは、きっと偶然ではないのだろう。頬杖をついて平然そうに笑っているその姿が私には、今も何かと闘う、寂しい後姿のように思えてならなかった。
「サーヨーちーん、はーやーくぅー」
「おう、はいはーい」
待ちぼうけた子供勢の声で、現実に戻される。私は笑顔をつくろって精一杯明るく声をあげ、のほほんと手を振って待っている方に走っていった。まだ私は『こっち』に来てから一時間足らず、『こっち』の世界の事情に、あまり深く立ち入らないほうがいいだろう。さっきみたいに、迷惑をかけることになるから。
「ごめんごめん、何して遊んでた?」
リビングの真ん中で車座になっている中に、私は飛び込む。
「神経すいじゃく。でもさでもさ、ヒドいんだよサヨちん! ネスってば、ちょーのーりょく使うんだもん! こんなんだれも勝てっこないやい! ネスに勝ってよぅ!」
投げかけた問いに答えたのは、さっきまで完全熟睡モードだったピンク球、カービィだ。声と手にしたがってネスのいるほうを見ると、なるほど、満面に無邪気な笑みを浮かべるネスの手元にはカードの束がある。超能力でカードのありかでも見たのだろう。だが私だって負けはしない。
「よぉし、それじゃあたしがやろうじゃないの」
「おぉおおお、カッコいいぞサヨちーん!」
「うっし、何処からでも」
To be continued...
サムス姐さんと子供勢の皆が登場。
ここでは「子供組」ではなく「子供勢」なのです。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28