二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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銀魂 【江戸炎上編】
日時: 2010/11/02 23:10
名前: 灰色の空 ◆zbc0mftbJU (ID: ObYAgmLo)

初めまして灰色の空です
つい最近久しぶりに銀魂を見て銀魂の小説書いてみたいなって思いました
初心者でしかも記憶があいまいな所もあって間違いが生じるかもしれませんので、おかしな所を見つけたら教えてやって下さい

注意!
グロイ描写あります
パクリとかでます
銀魂の小説です
ギャグ下手です

宜しくお願いします!


***

プロローグ ≫No.2

第1章 万事屋
≫No.3
≫No.4
≫No.9
≫No.31

第2章 「灰雷」
≫ No.34
≫ No.37
≫ No.38
≫ No.39
≫ No.46
≫ No.47
≫ No.48
≫ No.50
≫ No.52
≫ No.53

第3章 神楽
≫ No.54
≫ No.56
≫ No.57
≫ No.58
≫ No.59
≫ No.60
≫ No.61

***

第1訓【冷蔵庫の中身はちゃんと確認すること】
≫ No.65

第2訓【母と子の絆の間に幽霊も人間もクソもねェ!前編】
≫ No.66

第3訓【母と子の絆の間に幽霊も人間もクソもねェ!中編】
≫ No.67

第4訓【母と子の絆の間に幽霊も人間もクソもねェ!後編】
≫ No.68


【銀時編】

第5訓【夜に町歩く描写は何かある前触れ】
≫ No.69

第6訓【地図は下手くそが描くとアートに見える】
≫ No.70

第7訓【一度言ったらやりぬき通せ!】
≫ No.71

第8訓【ピンチに駆けつけてくれる友を持て!】
≫ No.72

第9訓【助けてもらったらお礼を言いましょう】
≫ No.73

第10訓【背中の大きい大人になれ!】
≫ No.74

第11訓【苦しみを分かち合えるのが親友、家族】
≫ No.77

第12訓【オレは気にせず先へ行けって死亡フラグ?】
≫ No.78

第13訓【諦めたら全部終了】
≫ No.81

第14訓【敵はパワーアップするとたまにわけのわからない生物になることも】
≫ No.82

第15訓【傘は雨を防ぐために使いましょう】
≫ No.83

第16訓【常に相手の二手三手先を行く】
≫ No.84

第17訓【人は見かけによらない】
≫ No.85

第18訓【人は誰でもかけがえのない宝を持ってる】前編
≫ No.86

第19訓【人は誰でもかけがえのない宝を持ってる】後編
≫ No.87

***

第20訓【記憶障害で都合の悪い記憶だけ消しておきたい】
≫ No.90

第21訓【ペットは飼い主の心を癒す】
≫ No.92

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Re: 銀魂 【銀時編】 ( No.70 )
日時: 2010/10/03 22:48
名前: 灰色の空 ◆zbc0mftbJU (ID: zdDXpDJz)

第6訓【地図は下手くそが描くとアートに見える】


 銀時達の万事屋に珍しく依頼者が訪れる。昨夜のことも気になるが、仕事とあっては仕方がない。銀時と神楽はソファに、新八は床に座って60代くらいの神の薄い依頼者の男の話を聞く。

「実は、ここ数年息子との連絡が一切繋がらないのです。 息子は元は侍だったのですが天人の一件以来収入は悪くなりました。 私もこんな老いぼれなものですから働き先なんて見つかりませんでした。 息子はそんな私と自分両方を養うために職を変え、カラクリの職に就くために弟子入りしております」

 そこでいったん老人は出された茶を一口飲む。

「それからちょくちょく手紙を出してくれたのですが、それが突然途絶えてしまったのです。 私がいくら手紙を出しても返ってきませんでした。 そんなでえっと……何年かな……ああ、2年くらい過ごしてきたのですが、ここいらに万事屋があると聞きまして」

「で、オレらにその息子を探してきて欲しいってか?」

「ええ」

「んー、まあ探すくらいならどうってことないし引き受けてもいいんじゃないか? なあ神楽?」

「そうアルな。 そいでもって見つけたら私達の代わりに仕事してくれるカラクリ作ってもらうアルよ」

 理由はともあれ、老人は依頼料を少額だが払い、礼を言って万事屋を後にする。
 老人はさぞ安心したかのように息をつく。ゆっくりと町を歩き、自宅へ向かう。だが何故だろう、急に体中から元気が溢れ出るようで、嬉しくてたまらなかった。まだ息子が見つかったわけでもないのに。
 そうだ、近道でもして帰ろう。そう老人は決め、暗い路地を曲がる。以前銀時達の立ち入った闇市ほど危険そうな雰囲気ではないが、やはり人目には着かない場所だろう。

「この道を歩くのも何年ぶりじゃろうなァ? 昔まだ元気だったころはどうどうと歩いていたのに、歳をとってからは怖くて入れんかったな」

 独り言をぶつぶつと言う老人。すると突然、彼の首元に何か冷たい物が当たる。

「おい爺さん、アンタか? カラクリの工介ってのは?」

 恐る恐る背後を確認する。が、突然首元にチクリと痛みが走る。冷や汗を隠せなくなった。

「今少しでも妙な真似しやがったらこの場で叩き斬っても良いんだぜ?」

 背後から若い男の声が聞こえる。

「随分探し回らせてくれたじゃねえか。 さあ、おとなしく着いてきてもらおうか?」

 工介、と言う名で呼ばれたその老人は両手を上げ目隠しをされる。すると、今度は何か違う、ガチャリと音を立てた冷たい物を首元に当てられる。

「連れて行け」

 男のその言葉に、女の声で返事をしているのが耳に入る。どうやら二人組みらしい。

***

「カラクリ道場? うーん、知らないねェ」

 依頼人からはカラクリ道場と呼ばれる場所に息子は弟子入りさせてもらいに行ったらしい。場所は彼も特定はできていないらしく、配達人に訊ねてもそんな場所は知らないと言う。

「なんであのジジイ住所すら知らねえんだよ……! 普通ハガキ書いてりゃ住所分かるだろうよ……!」

 イライラとした口調で銀時がぶつぶつと呟く。と、その時、新八が何か思いついたようにポンと手を叩く。

「あ、もしかしてパソコン使ってんじゃないですか? 最近誰でも持ってるって言うし」

「バカ野郎。 いくらなんでもあんな貧乏なジジイがパソコン持ってるわけねえだろ。 ったく、オレも欲しいよ、ウィンド○ズとかさァ」

 ぶつぶつと念仏のように独り言を口にしながら歩いていると、団子屋の長椅子に桂小太郎、そしてエリザベスの姿を目にする。だが銀時は、彼だけでなく三人ともそこの二人を無視して歩く。

「ちょ、ちょっとまて銀時! 何故オレを無視する!?」

 桂の声が背後から聞こえてくる。

「うっせえぞヅラ! 今仕事中なんだよ!」

「そうアル。 分かったらとっととどっか行くネ。 気色悪い」

「リーダーまでそんなこと言うんですか!?」

「ま、まあまあ、桂さんなら情報網も広いし、何か知っているかも知れませんよ。 カラクリ道場の事」

 すると、桂が表情を一変させ、まじめな顔になる。

「カラクリ道場だと?」

「何か知っていることありませんか?」

「あそこに行くのはやめておけ。 あそこの主は裏でカラクリ兵器を作って金にしているらしい。 行っても門前払いされるだけだ」

「んなこたァどうでもいい。 とにかく場所教えろや、気色悪い」

「そうネ、気色悪い」

「……イジメですか……?
 カラクリ道場は……」

 桂は背中を見せ、何か紙に書きしるしている。数秒で書きあげ、桂はその紙を銀時に渡す。

「そこに書かれた場所へ進め。 さすればカラクリ道場へは……」

「見つけたぞ桂ァ!!」

 土方と沖田、それに数名の真選組が恐ろしい勢いで走ってくる。桂は言葉が終わらないうちに、それじゃあなとだけ言ってさっさと逃げ出す。鍛えられたその逃げ足は確かなものだった。
 真選組が行ってしまった後、銀時は桂のくれた紙に目を落とす

「なんだよこれは……!」

 書かれていたのはまるで小学生の落書きのような絵だった。もはやどれが通れる道でどれが通れない道でどれがカラクリ道場なのか分からない。

「っざっけんなよ! あの野郎! もう宇宙人にでも捕まってキャトルミューティレーションでもされちまえ!!」

Re: 銀魂 【銀時編】 ( No.71 )
日時: 2010/10/03 22:49
名前: 灰色の空 ◆zbc0mftbJU (ID: zdDXpDJz)

第7訓【一度言ったらやりぬき通せ!】


 川沿いにある一軒の家。銀時達はそこで働く灰雷にカラクリ道場について訊ねてみた。

「カラクリ道場ならボク、前に黒兵江の護衛で連れて行ってもらったことあるヨ」

 洗濯物の入った籠を持った灰雷の隣には同じく洗濯物を手に持っている少年、慶太の姿があった。母親を失った彼のために灰雷はここにたまに来て世話をしているらしい。

「ならオレ達をそこまで連れて行ってくれねェかな? 依頼受けたのはいいんだが場所が分かんなくてよォ」

 頭を掻きながら言う銀時の頼みを灰雷は快く引き受けた。

「いいヨ、この仕事今終わらせるからそこで待っててネ」

 そう言って一旦二人は家の中に入っていく。

「いやァ、神楽ちゃんが灰雷君の居場所知ってて良かったよ。 あのまま桂さんの地図頼りに進んでたら一生かかってもカラクリ道場まで着かなかったもんね」

 神楽も何度かここに手伝いに来ていたことはあった。さっき自宅を訪ねてみたが、誰もいなかったため、ここだろうと神楽が案内したのだった。

***

「そう言えば、この辺りの地図とか持ってない? あれば絶対に迷わないからあった方がいいかも」

 準備も終わり、かぶき町を出て少し歩いたところで灰雷が訊ねる。銀時はさっき桂に貰った地図を手渡す。すると、灰雷の目が点になる。

「何これ? アート?」

「地図だよ。 地図があれば迷わないんだろ?」

「え、あ、ああ、うん。 そうだヨ! 迷わない迷わない!」

 苦笑いをして灰雷は地図を見ながら歩き出す。新八はそれを同情するような目で見ていた。
 と、そこで新八が何か気がついたように指をさして言う。

「あ、誰か来ましたよ。 あの人に聞いてみましょうよ?」

「聞く必要ねェよ。 コイツ、地図があれば絶対迷わないって言っただろうよ?」

「そうネ! 灰雷は絶対嘘言わない人ネ!」

 灰雷のがっくりしたような背中を見て新八は気の毒でいられなかった。

「か、神楽、嘘をつかないわけじゃないよね?」

「それってまさか本当は道わすれちゃったとか言うための布石じゃねェだろうな?」

 心臓がびくりとする。灰雷は、そんなことないヨ、と言って笑いながら前を向く。実際彼はうろ覚えだった。だがあんな事まで言ってしまったからにはもうやっぱり分からないなんて言えはしない。
 次第にさっき新八が見つけた藁作りの被り物で顔を隠している侍らしき男と距離が迫っていく。

(どうしよう……道聞こうかな……。 あ、でもきっと銀時さんに何か言われるヨ……! どうしよう……どうしよう……!!)

 考えている間に灰雷は男とすれ違ってしまう。後に続いて新八、神楽、銀時もすれ違う。
 すると、突然銀時が木刀を抜き、振る。刀をぶつける振動が伝わってくる。男の刀は銀時の木刀で止められていた。同時にその男の頭上に灰雷の拳が振り下ろされる。男はサッと身を引き、その一撃を回避する。だが、藁作りの被り物は裂け、顔がその場にいた全員にさらされる。
 青みがかった長髪で細い目で笑みを浮かべるその男はまさに昨夜出会った男であった。

「またテメェか」

 男はやはり無言でいる。冷たい、感情の無いその目は銀時達を一人ずつ順番に見、もう片方の刀を抜く。

「銀さん、誰なんです? この人?」

「知るかよ。 昨日こいつにいきなり斬りかかられたんだよ。 とにかく見方じゃねェみてェだ。 構えろよ」

 新八も腰の鞘から刀を抜く。すると、今度は相手の男のすぐ近くの地面に亀裂が入り、手入れをしていないようなぼさぼさの髪の男が這い出てくる。

「またこいつアルか!?」

 その男も昨夜見た大男に違いはなかった。
 無言の二人。表情は正反対で一方は笑みを、もう一方は怒りの色をあらわにしている。

「ったく、いいですねェ、おたくはそんなサラサラヘアーで。 引っこ抜いてカツラにでもしてやろうか?」

 長髪の男は何も言わず、ゆっくりと足をあげる。そして、何もない、届きもしないような蹴りを放つ。

「!」

 銀時が素早く木刀を立てに振る。何かが弾かれる音がする。
 弾かれたのは小刀だった。さっきの蹴りはこれを放つためだったのだろう。
 長髪の男はそれを見て素早く銀時との間合いを詰め、刀を振る。大男もそれに続き、灰雷と神楽に襲いかかる。

「っと危ねェ!」

 銀時は振られた二本の刀を木刀で止める。両腕は封じられている。そう考え、新八は背後からその手の刀を長髪の男に振りかざす。ところが、その一閃は長髪の男のつま先から突き出していた小刀によって止められる。

「新八! 気をつけろ! コイツ、いろんな所に刀隠してやがる!」

 銀時が言った時には新八の口から血が垂れていた。
 長髪の男の袴にひざ部分から刀が突き出ていた。それが新八の胸を突き刺している。

「て、テメェ……!!」

 銀時の顔にも怒りの色が浮かぶ。対照的に長髪の男は足を戻し、突き出た刀を放り投げ、笑みを浮かべた。

Re: 銀魂 【銀時編】 ( No.72 )
日時: 2010/10/03 22:50
名前: 灰色の空 ◆zbc0mftbJU (ID: zdDXpDJz)

第8訓【ピンチに駆けつけてくれる友を持て!】


「テメェ……!」

 木刀を握る手に次第に力が加わっていく。いつものやる気のない目ではない、力のこもった目で長髪の男を睨む。
 男は銀時に切りかかってくる。感情のこもっていな、無情で、達筋が読めない。気を抜けばいつどこから刀が伸びてくるかはわからない。

「うおォォォォ!!」

 雄叫びをあげながら銀時が刀を振り下ろす。受け止める暇すら与えなかったその一閃は男の頭を叩き付けた。苦痛に顔を歪める男。だが、それでも一言も言葉を発することはなかった。

「新八、くたばんなよ! 今すぐコイツをぶった押してすぐその傷ふさいでやらァ!」

***

「連れてきたぜ」

 目隠しを外された工介は背後から男に暗い部屋に押しいれられる。ろうそく一本の火のみが照らす一室。真っ暗で何があるのか、誰がいるのかもわからない。

「工介……お主が天才カラクリ師の工介か」

 闇に包みこまれた部屋の奥から年輩の男の声が聞こえてくる。

「な、何故そのことを!?」

「お主の息子がワシに教えてくれたわ」

 その言葉に、工介はハッと息をのむ。

***

 額から冷や汗が流れる。大男の拳が打ちつけられたそこは隕石でも落ちたかのような跡が残っていた。しかも昨夜より断然一撃一撃の速度が違う。
 新八の負傷。それが神楽と灰雷を焦らせていた。助けに行こうとしても男の巨体によって遮られてしまう。

「邪魔だヨ!」

 灰雷が男の顔面を思いっきり殴る。少しよろめいたようにも見えたが、男は灰雷の腕を握り、地面に叩き付ける。その威力は以前戦った天人や夜兎の一撃とは大きく違う、重かった。夜兎でも気を抜けば一瞬で体中の骨を抜かれるであろうその拳が灰雷に振り下ろされる。しかし、とっさに飛び出した神楽が男の足元を蹴り、転倒させる。

「ありがとう、神楽……」

「そんなこといいネ! それより早くコイツ片付けて新八を手当てするアル!」

***

 すぐに立ち上がり、男は体制を立て直す。銀時の刀さばきに翻弄されている。
 男は下駄に仕込んであった小刀を銀時に向かって放つ。それを一振りで叩き落とす。すると、どこから取り出したのだろうか、いつの間にやら男の両手の指にはクナイが挟み込まれている。

「ちィ!」

 男の放ったクナイも銀時は刀で撃ち落とす。隙を見た男が銀時に突進する。
 だが、銀時も負けじと体制を一瞬で立て直し、向かって来る男に対して木刀を構える。互いに交差したその瞬間

(————ッ!!)

***

 神楽が敵を蹴りで打ち上げ、灰雷が落ちてきた敵に蹴りを放つ。重い一撃ではあったが、男は少しも痛がりも、表情にも表さない。

「やっぱりコイツ、私たちの攻撃通用してないネ!」

 神楽の焦りがだんだんと表情にも出てくる。さっきからいくら攻撃しても敵の反応は全くなし。眉すらも動かさない。

「神楽……一つ試したいことがある。 付き合ってもらっていい?」

 灰雷は神楽の耳元で作戦を囁く。すると、神楽も頷き、灰雷は背中の傘から針を一本抜き取り、ポケットにしまう。

「はァ!!」

 初めに神楽が男に殴りかかる。拳を突き出すが、男はその太い腕を交差させ、その攻撃を受け止める。返しに男は神楽を踏みつぶそうと足を上げる。神楽はそれを避け、今度は腹部に蹴りを放つ。相変わらずよろけはするが、特にダメージはなさそうに見える。しかし、これで十分だった。灰雷が男に気付かれず、彼の背後に着くのには。

「今ネ! 灰雷!」

 灰雷が男の首元に針を突き立てる。この針には痺れ薬が塗られている。本当は普通に刺しに行けばいいのだが、あの男もそう易々と針を刺させてくれるほどマヌケではないだろうとわざわざ神楽に気を引かせ、灰雷は気付かれぬように背後から忍び寄っていたのだった。

「これで痺れるはず————ッ!」

 灰雷の体が地面に叩きつけられる。男の打ちつけた拳は灰雷を打つと同時に地面をも砕き散らす。同時に、銀時の背中から鮮やかな紅色が吹き出しているのを神楽は目にする。

「灰雷!? 銀ちゃん!?」

 灰雷は地面に埋もれてもう立つことすらままならない状態でいる。銀時も背中を切り裂かれ、地面に倒れ込む。何が起きたのか分からない神楽にはただ悲しむことしかできなかった。

「灰雷……銀ちゃん……新八……」

 ドクン、と体中の血が沸騰するような感覚を覚える。
 まただ。また、夜兎の血を抑えられなくなってきている。いけない。負けてはいけない。そう意識していても神楽の、夜兎の血はおさまろうとはしなかった。

「させるかァ!」

 その声と共に刀を持った男と白い生物が走ってくる。男二人はそっちに目が釘付けになってしまっている。

「この声……」

 聞き覚えた声に神楽は顔を上げる。桂とエリザベスだ。

「心配になって後をつけてきたが……やはりこんな事になっていたか!」

 ゼェゼェと息を切らしながら桂は刀を構える。男二人も神楽の事など眼中にはないように彼女から目を離し、桂とエリザベスの方に向く。

「リーダーは早く銀時達の治療を!」

 そう桂が言うとエリザベスは救急箱を神楽に投げる。
 
「お前達……何者だ?」

 桂の質問には二人とも応じず、一方は刀を握り、もう一方は拳をつくる。
 両者の間を一陣の風が吹き抜ける。ピリピリとはしる緊張感。思えば桂はこうして刀を握るのは久しぶりだった。果たしてそれでこの男二人に勝てるのだろうか。
 だがそんな心配は必要はなかった。風の流れに乗り、何処からともなく笛の音が聞こえてくる。
 それに反応したのか、一方の男は素早く駆け去り、もう一方は地面に穴をあけ、その穴に潜って逃げて行く。それはほんの一瞬の出来事だった。桂もエリザベスも呆気にとられていて彼らを追う事が出来なかった。

***

 そびえ立つ機械仕掛けの城を背後に、男は煙管を吹いている。

「こいつァおもしれェ祭りになりそうじゃねェか。 ええ? 銀時よォ?」

 その男、高杉晋助はそこにいもしないその人に向かってそう言い、不気味な笑みを浮かべるのだった。

Re: 銀魂 【銀時編】 ( No.73 )
日時: 2010/10/03 22:50
名前: 灰色の空 ◆zbc0mftbJU (ID: zdDXpDJz)

第9訓【助けてもらったらお礼を言いましょう】


 視界がぼやけている。次第に焦点があってくるものの、この場所が何処なのかすぐには判断できなかった。起き上った銀時は額に手をあてる。包帯が巻かれている。誰かが治療してくれたのだろうか。

「あれ……オレ生きてる……?」

 体を動かそうとすると、全身を針で刺した様な痛みが襲う。隣では新八と灰雷が寝かされている。

「そうだ……確かオレは……」

 次第に記憶が戻り始め、銀時は全て思い出す。

「銀ちゃん! 大丈夫アルか!?」

 突然襖を開けて入ってきた神楽が銀時に抱き付く。

「イテテ!! おい、こら離れろ!」

「あら、銀さん。 元気そうで何よりね」

 新八の姉、妙が嬉しそうに微笑んでいる。

「桂さんがここまで運んで下さったのよ」

「ヅラが? アイツ今どこにいる?」

「私の手料理を御馳走してあげているわ。 銀さんも食べる?」

 銀時の頭の中に桂が顔を青くして妙の卵焼きを食べている様子が映る。

「謹んでお断りします」

「あら、残念ね」

「あ、あの……お妙さん……? トイレは何処に……?」

 壁に手をつけ、口にも手をつけてそう言ったのは桂だった。彼の背後には同じようにエリザベスも気分が悪そうにしている。

「よォ、ヅラ。 オレ達をここまで連れて来てくれァそうじゃねェか。 ありがとな」

「ほう、お前が人に礼を言うとは珍しい。 オレに気でもできたか?」

「んなわけあるか!!」

***

「相変わらず無表情な連中ッスね」

 帰ってきた二人の男を上から見下ろし、金髪の髪を頭の左側でハーフアップにしてまとめている女が言う。隣で高杉が相変わらず煙管をふかして空を見上げている。

「晋助様?」

 返事はない。高杉は空から目を離そうともしていなかった。左目を包帯で隠し、開かれた右目に何が映っているのか、何を考えているのかその女、来島また子には知る由もなかった。
 すると、高杉の額にポツリと、包帯を巻いていても分かる。雨粒が落ちてきた。次第にそれは勢いを増し、雨が降り始める。

「晋助様、風邪をひいてしまいますよ。 戻りましょう」

 また子が言うと、高杉は黙って部屋の中に戻っていく。そんな彼の背中をまた子は追う。

***

布団を出て縁側に座っていた銀時は高杉と同じく、空を眺めていた。

「雨が降ってきやがったな」

 辺りに雨の独特な臭いが広がる。

「それにしてもヅラ! テメェなんだあの地図は? 何年生の絵だよ?」

「分からぬか? アートと言うものが」

「知るかよ! だいたい、地図をアートっぽく描くバカが何処にいんだよ!」

「まあそんなことはどうでもいい。 それより問題はお前達を襲った。 その男達だな」

「ったく、あんなわけのわかんねェ連中い足止めされれるたァ、白夜叉の名が廃れるってもんだぜ」

「今回お前が受けた依頼と何らかの関わりを持っていると考えるのが妥当だろう。 カラクリ道場の回しものか……?」

 桂が腕を組んで考える。銀時も何故自分は切られてしまったのか思い出せないでいる。

「とにかく、アイツらが危険な奴だってことは良く分かった。 アイツらにも無理させらんねェな……」

 襖の開いた部屋に銀時は振り向く。神楽は疲れ切った様子で壁にもたれかかって寝てしまっている。灰雷と新八も少しも動かない。

「可愛らしい顔して寝やがってよ……」

「……行くのか?」

 銀時の考えに感付いたのか、桂がそう言う。

「……」

 だが銀時は何も言わず、ただ雨粒が落ちるのを黙って見るだけだった。桂もそれ以上は何も聞こうとはしなかった。

Re: 銀魂 【銀時編】 ( No.74 )
日時: 2010/10/03 22:51
名前: 灰色の空 ◆zbc0mftbJU (ID: zdDXpDJz)

第10訓【背中の大きい大人になれ!】


 雲が空を覆い隠す夜。夜空を眺めながら銀時は原っぱに寝そべっていた。もう夏も終わりに近づき、涼しい風が草木を揺らす。

(もしも……もしも今この夜空に流れているかもしれない流れ星が本当に願いが叶えてくれるってんなら……オレは……)

 立ち上がった銀時は背中に着いた雑草を払う。志村家に戻ろうとしたその時だった、揺れる原っぱの中に人影を銀時は見つける。明かりがないせいでそれが誰なのかは分からなかった。しかし、こっちをじっと見ているのはよく分かる。

「昔もこうやって夜空を見上げたもんじゃねェか?」

 その声に反応し、銀時は腰の木刀を抜く。

「テメェは————」

 次第に雲が晴れていく。雲の消えた夜空は星々が輝き、満月が江戸の町を、照らす。人影の正体は、まさに銀時の思っていた通り。

「高杉!!」

 銀時が睨むのに対し、高杉は煙管をしまい、不気味な笑みを浮かべている。

「よォ、銀時。 テメェ、あの時より強くなったか?」

「こんなところで何してやがる!?」

 高杉は銀時から視線を外し、夜空に輝く満月に目をやる。

「久しぶりにこんな夜空見てよォ、昔のこと思い出しちまってな」

「っけ、どうせまた悪だくみしてんだろうよ?」

「言っただろう? オレはただ破壊するだけだ。 オレから大切な師を奪ったこの腐った世の中をな」

 銀時を見る高杉のその目は何処となく悲しみが表れていたような気がした。それから二人は満月に目を向け、黙り込んでしまう。
 先に沈黙を破ったのは銀時だった。

「……高杉……テメェはいつまで過去を背負い続ける? 今を生きるオレ達が過去に縛られてどうする?」

「フン、お前が言えることか?」

「……」

 銀時は黙り込んでしまう。彼ら、桂も含め三人は同じ師に習い、同じ戦場を駆けた。しかし今となってはもう交わらない道。高杉は師を奪ったこの世への復讐のために生きているも同然だった。
 当時の事はもちろん銀時にも、桂にも忘れられない、捨てられない思い出だった。

「この世には歳をとらない不死身の男がいる」

 不意に高杉が口を動かす。

「その者は今は亡きもの者をも蘇生させる天才」

「何の話だ?」

「ククク……おもしれェだろ? もし人が蘇りでもしたら? 無情の人形として」

「無情の……人形……————! テメェ、まさか!?」

 銀時は高杉の言う意味を感じ取ったのか、穏やかだった目は再び睨みつける鋭い目へと変わった。

「おもしれェ祭りが始まろうとしてんだ。 銀時、テメェも招待してやりたくてよォ」

「そいつァありがたいね。 まさかテメェがカラクリ道場の頭か?」

 すると、高杉が紐で結ばれた紙を銀時へ投げ渡す。

「ククク……。 真実はテメェのその目で確認しな……」

 気味の悪い笑いをもらし、高杉は闇の中へと消えて行く。銀時はそれを追おうとはせず、その場に工緒kしたように佇んでいた。

***

「銀さん!? 銀さん!?」

 早朝から新八の声が家中に響き渡る。どうやら銀時が行方不明らしい。神楽、新八、妙は家中のありとあらゆる場所を探してみたが、銀時の姿はなかった。

「まさか銀さん、ボクらを置いて一人でカラクリ道場に……!?」

「そうだったら危ないアル! またアイツらに襲われたら流石の銀ちゃんも……」

「姉上! ボク達は銀さんを追います! 幸い桂さんがちゃんとした地図を置いていってくれたようですし!」

「姉御! 灰雷のこと頼んだアルよ!」

「あ、ちょっと————」

 妙がの言葉が終わらない内に神楽と新八は家を出て行ってしまう。二人の後姿を見送り、妙は仕方がない、と言う様にため息をもらす。

「……銀さん、アナタの背中を追って新八は強い男の子になりましたよ。 アナタの思っている以上に」


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