社会問題小説・評論板
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- むすびば。〜咲かないつぼみが開くとき。〜
- 日時: 2015/05/29 20:31
- 名前: kurin(チェリー) (ID: rMENFEPd)
咲かないつぼみが開くとき。
そんなとき、くるのかな?
固く閉ざされた私の心のつぼみ。枯れることのない悲しみ。
でも私は——、私は、この花を咲かせたい。
だから
いつか
私はきっと、
誰よりも素敵な花を咲かせてみせる。
これは、受験と友情、そして難しい恋でゆれる、私の小6の、たったひとつの物語——。
*登場人物*
片瀬結葉(かたせゆうは)
私立桜沢学園をめざす、無邪気で明るい女の子。引っ込み思案で運動オンチだが、一度決めたことにはまっしぐらに頑張る。
塚田理奈子(つかだりなこ)
結葉と同じ塾。通称:塚ちゃん。まじめで、本が好き。ちょっと変わっているが、優しくて大人。家があまり裕福でない。
竹本美里(たけもとみさと)
結葉とは塾の同期。元気で、誰とでもすぐに仲良くなれるちゃきちゃきした子。岸本が好き。
本田まり(ほんだまり)
結葉の学校のクラスメイト・おさななじみで、おっとりしている。学校では常に結葉とともに行動している。受験はしない。
中村亜理紗(なかむらありさ)
結葉と同じ学校。クラスは別。スポーツ万能!でちょっとキツイ性格。
新川仁菜(しんかわにな)
結葉と同じ塾。活発で美人。理系が得意で、将来は色の研究家になりたいと思っている。
岸本流星(きしもとりゅうせい)
結葉と同じ塾。勉強ができるみんなの人気者。
****************************
こんにちは〜kurinです!
ちなみに今は本館で、チェリーという名前で「らくだい魔女と幻の魔法」という小説も書いています。
興味があったらこちらもよろしくお願いします(*^v^*)
そして、本作は私のいじめ体験談です。
もちろん、ちょっと設定は違いますが…
私自身、受験という忙しい時期につらくて、苦しくて何度も悩みました。
これは、みなさんが共感できて、勇気をあたえられるように…という私の思いをこめて書きます。
がんばりますので、ぜひ最後までお付き合いください。
- Re: 咲かないつぼみが開くとき。〜夢、受験、友情、恋〜 ( No.1 )
- 日時: 2014/10/31 18:07
- 名前: kurin(チェリー) (ID: jV4BqHMK)
キーンコーンカーンコーン。
塾の授業の終わりを告げるチャイム。
外はもうすっかり暗くなっていて、キラキラと星がまたたいている。
う〜んっ。今日も算数、やっぱり難しかったなぁ。
すると、元気な女の子が私を呼んでいた。
「結葉っ!ほらそんなとこでのびてないで。こっちこっち〜♪」
見ると、美里がこっちを見て手まねきしている。
「なに?」
美里は「聞きたい?」とさもうずうずしたような顔で、
「明日、この塾に入塾体験の子が来るんだって。しかも女の子!」
「そうなんだ〜!楽しみだね」
うわあ。さすが美里、情報がはやい。
入塾体験か。なんか思い出すな。
私と美里はまったくおんなじ日にこの塾に体験にきたんだよね。
学校はちがうけど、ひとみしりな私にも優しくしてくれる美里にはとっても感謝している。
「どんな子なんだろ。わくわくしちゃう〜♪」
そう言ったのは、長いポニーテールをゆらした美人!の仁菜。
サバサバはきはきしてて、算数もできて、もう憧れの存在なんだ。
「こんな子だったらいいな〜」とか理想を語って盛り上がっていると、
「みんな。もうそろそろ帰らない?私、おなかペコペコだよ」
私たちに誰かがさり気な〜くかつを入れてくれた。
そう、超頭がよくて特待生を目指している塚ちゃんこと塚田理奈子ちゃんだ。
大人びていて、その子のまわりだけ違ったオーラが湧き出している。
「はあ〜い。ようし、かえるぞぉっ!」
美里の声につられて、私も「お〜っ!」っと声を出してしまう。
けど、だれも「お〜っ!」のおの字さえも言わなくて。
ん?
あ。もしかして、こ、ここはそういうとこじゃなかった?//
「あ〜もう。結葉って本当におもしろい」
「笑わないでよ// ま、間違えちゃっただけだもん」
階段をコツコツと談笑しながら下りていく。
ピンクの桜は夜のあわい蛍光灯に照らされ、白い光をおびながら散っていく。
受験までもう一年もない。
だけど、こうやってみんなで笑っていられたらいいな。
だって今、すっごく幸せんなだもの。
そうして、みんなそれぞれ第一志望に受かるの。
その時のことを想像したら、ふっとまた笑ってしまった。
きっとその時、みんなで笑顔を交わしあって、私の心のたくさんのつぼみも、いっせいに咲き誇って祝福してくれる。
そして咲き誇った後、美しい若葉が風でゆられて重なり合って、やさしい木漏れ日でたたえてくれるんだろうなぁ。
そう、「結葉(むすびば)」のように。
桜舞い散る道で、そんな、あわい未来への思いを描いていた、月の綺麗な夜。
——これから、私たちの関係がものすごく複雑になってしまうことも知らないで。
- Re: 咲かないつぼみが開くとき。〜夢、受験、友情、恋〜 ( No.2 )
- 日時: 2015/05/29 20:34
- 名前: kurin(チェリー) (ID: rMENFEPd)
*次の日。
「ゆーはっ。ハロ〜」
「あ、美里。今日は遅かったんだね」
「そうなの〜。電車乗り遅れてさ。マジでショック」
今、塾の教室は転校生の噂でざわついている。
この塾には同じ学校の子がいないから、おんなじ小学校の優しい子がくるといいな。
そう思いながらみんなで他愛のない会話を交わしていると、「よう」と誰かが私の机をたたいた。
そしてにっとほほ笑む、整った顔立ちの男の子。
「「岸本!」」
ふたり同時に声がはねた。
岸本が好きな美里が頬を染めて興奮してる。
恋をして、楽しそうな美里を見ると、初恋もまだな自分がすごく幼く感じるんだよね。。。
それって、なんか取り残されてるみたいでちょっとさびしいな。
すると、パン、パンと先生が手でいい音を鳴らして入ってきた。
その音からも今日はご機嫌だということがうかがえる。
それは合図のように、あわててみんなを席につかせた。
「静かに。はい、実はみなさん、今日は体験の子がくるんですよ〜♪」
にやにやと満面に喜色をたたえ、喜びを隠しきれていない塾長の加藤。
…もうみんな、知っているよ〜。
この人はいつもこんな調子でお気楽モードだ。
それとは対照的に、算数担当の川中は「今日はどんな授業にするかな…」とぶつぶつ教科書に顔を近づけてつぶやいている。
明るくて人あたりのいい、国語の加藤。
まじめで冷静な算数の川中。
いつ見ても、やっぱり2人は正反対だなあと思う。
加藤が「入りなさい」と言うと、ドアが元気よくバーン!と開いて、髪の短い女の子が歩いてきた。
ん?どこかで見たことがあるような…。
思わずじっとその子を見てしまう。
つり目の、カッコイイ感じの女の子だ。
すると驚いたことに、その子も私を見ていた。
(わ、私の顔、なんかついてる??)
「ああ、誰かと思ったら、結葉じゃん!もー、この塾ならもっと先に言ってよ〜。」
? その口調に、少し聞き覚えがあった。
そういえば、2組でいっつもクラスの中心になって騒いでる子!
私が「あーっ」と声をあげると、「思い出した?」というようにいたずらっぽく笑ったその子はホワイトボードの前に立って、自己紹介を始めた。
「中村亜理紗です!野球やってて、スポーツ全般が好きです。どんどん話しかけるから、みんなよろしく〜☆」
野球少女!そりゃカッコイイよね。
しゃべり方がはきはきしてて、もう一瞬で教室は亜理紗ちゃんの空気につつまれた。
みんな「活発そう」だとか「しっかりしてる〜」みたいな賞賛の言葉を発している。
(本当、すごいなぁ…。私だったら絶対、あんな風に言えないよ)
ひっこみじあんでスポーツが大の苦手な私。
どうやらここにも、正反対のタイプがいたみたい。
- Re: 咲かないつぼみが開くとき。〜夢、受験、友情、恋〜 ( No.3 )
- 日時: 2015/05/29 20:36
- 名前: kurin(チェリー) (ID: rMENFEPd)
休み時間。
亜理紗(そう呼んでって言われたんだ。でも、なんかなれないなぁ…)の机のまわりには人だかりができている。
そこだけぱっと花が咲いたように騒がしい。
(きっとあの子だったら心のお花も、満開でさぞ素敵なんだろうな…)
はあ…とためいきをつく私に、仁菜が
「なによ〜。らしくないなぁ。ほらほら次結葉の得意な社会だよ!元気をだしなさい!」
「は、はい。あ、ありがとうね。塚ちゃんも」
「…やっぱり、美里のこと、気になる?」
まるで私の心を見透かしたかのように、澄んだ瞳で問いをなげかけてくる塚ちゃん。
わ〜、なんでわかったんだろ。あ、もしかして塚ちゃんってエスパー?
そんなバカなことを考えてる間、美里は私たちのことなんか見向きもせずに、机をたたいたり筆箱の中をのぞきあったりして、キャッキャッと楽しそうに亜理紗と話し合っている。
その姿を見ると、ちょっぴり切ない。
だって、美里は不安でいっぱいだった私にできた、この塾最初の友達だったんだよ?
だれにでも優しくて、私の知らないこと、いっぱい知ってて。
「美里、どうしちゃったんだろ…」
ポツリとつぶやく。
仲間の一人が欠けると、さみしくなるね。
オレンジ色の夕日が窓からそっと差し込んで、2人を照らした。
「大丈夫だよ。結葉、ほら、これ結葉の好きなきなこもちチョコだよ」
「わああっ!ありがとう、2人とも!」
「ほーんと、結葉ってころころ表情が変わっておもしろいよね」
その言葉に顔がふっとほころぶ。
友達の言葉って、元気が出るね!
満足げに笑いあう私たちをとりかこむこの雰囲気。
やっぱり、あったかくて大好きだよ。
だから、美里にもはやくもどってきてほしいな。
でも、亜理紗が入塾した月日がたつにつれ、美里と私たちとの距離は広がるばかりだった。
一緒に帰ることもなくなったし、必要最低限のことぐらいしかしゃべらなくもなった。
私はそれでも美里のことを信じて、優しいふたりといっしょに美里の帰りを待っていた。
そんなある日のこと、塚ちゃんがなんと全国で50位以内の超優秀な成績をとったんだよ!
教室中そのことで大騒ぎ!
「すっごぉ〜い!!さすが塚ちゃん。ねえ今度、私にも国語教えてよ〜」
「そんな…。たまたまだって。うん、これからも一緒に勉強しようね!」
「もう、ケンソンしちゃって〜」
そんないつものやりとりをして、笑い合っていた時、最初の事件は起きたのだった。
- Re: 咲かないつぼみが開くとき。〜夢、受験、友情、恋〜 ( No.4 )
- 日時: 2015/05/29 20:39
- 名前: kurin(チェリー) (ID: rMENFEPd)
「あれ、塚ちゃん。これ、新しいアリスのペン?」
「そうそう。近所の丸山文具店でね、今20%オフやってるんだよ♪ね、こんどよかったら一緒に行かない?」
塚ちゃんの微笑みに私と仁菜はキラキラと瞳を輝かせる。
アリスのペンは、先にキーチャームがついてて、シルエットが大人っぽいという以前から私が気になってたものだ。
素敵素敵!私、最近財政ピンチだから助かっちゃう。
「行くいk…「へぇ。さすがは貧乏女だね」
え?
その声に驚いて顔をあげると、ニヤニヤした顔で亜理紗と美里が立っていた。
シンとにぎやかな教室が静まりかえる。
「ねえ、あんた父親のかせぎが悪くて、そんなんだからいっつも同じような服着てるんでしょ?かわいそ〜」
亜理紗が意地悪な笑みを浮かべて言った。
塚ちゃんはだまって悔しそうにうつむいてる。
それ、ひどくない?
そんなの、塚ちゃんのせいじゃないし!
ガタッと立ち上がった私と仁菜に、亜理紗はさらに圧力をかけた。
周りの子も塚ちゃんをチラチラ見ながらくすくす笑っている。
少しひるんだ私たちの、極めつけに。
「ほんっと、かわいそ〜だよね。お金ないから特待生なんてめざしてんだって?調子にのるのもいいかげんにしたら」
……嘘。
美里——!
しゃあしゃあと罪悪感もさらさらないような美里の態度に、亜理紗は満足したようだった。
ドックンドックンと心臓が激しく波打つ。
「そーいうこと。あたしたち、あんたのことうざいと思ってたんだ。じゃあね〜」
仲よさそうに肩をならべて歩く美里と亜理紗。
その姿も、さっきの言葉も私は信じられなかった。
唇がわなわなとふるえる。
(私たち、友達だったのに。どうして…)
仁菜も信じられない、という顔をしていた。
「塚ちゃん…」
弱点をつかれて、その日一日中笑われ続けている塚ちゃん。
その姿は、
唇をかみしめ、必死に涙をこらえているようにも見えた…。
はやく帰りたい。
そう、こんなに思ったのは、今日が初めてだった。
次の日も、次の日も、悪口は続いた。
っていうかさりげない意地悪が、日に日にエスカレートしている。
すれ違うたびに、「ビンボー女」「お金かしてあげようか?」「勉強オタク」とか言われたり、この間は机にひどいらく書きがしてあった。
(これって、いじめ、なのかな…?)
この間の堂々とした悪口を廊下でふざけてて聞いてなかった男子をのぞき、クラス中の女子が、塚ちゃんに冷たい目線を送っている。
塚ちゃんから、あの優しい笑顔が消えてしまった…。
- Re: 咲かないつぼみが開くとき。〜夢、受験、友情、恋〜 ( No.5 )
- 日時: 2015/05/29 20:40
- 名前: kurin(チェリー) (ID: rMENFEPd)
この頃、塚ちゃんは休み時間もずっとひとりで勉強している。
最近、一言もしゃべっていない——。
「まったく亜理紗ってばなんなのよ!自分の成績が悪くて、ただねたんでるだけなのに」
仁菜が憤慨している。
ホントに、ひどいと思う。
塚ちゃんは全然悪い子じゃないし、成績をひけらかしていばったりするような子でもない。
黙って机に向かい、カリカリとペンを動かす塚ちゃんの姿に、ズキンと胸が痛む。
痛む。
——けど、
結局私たちはなにもできなかった。
三日前。
私たちは亜理紗と美里に呼び出された。
『ねえ、今日からあいつのことあんたたちも無視しなよ。あのビンボーなくせにクッソ生意気なやつに、優しくする必要なんてないって」
え?
『そんな…塚ちゃんはそんな子じゃ…』
必死に抵抗する私に、亜理紗の冷たい言葉がのしかかって、グチャグチャにつぶしていく。
『逆らったら…。どうなるか、わかってるよね?』
(——ッ)。
言い返せない私たち。
『じゃあ、そういうことで♪バーイ』
手を振り去っていくふたりの姿を、私はただぼーっと見つめることしかできなかった。。。
「うん。自分が、がんばればいいのにね…」
仁菜に答える。
でも、私は今、大事な友達が困っているのをただ「私には関係ないから」というふうに目をそらしている。
手を差し伸べずに。
身勝手。
わがまま。
そんなのわかってる。私だって塚ちゃんを助けたい。でも、「おはよう」 そのたった4文字の一歩の言葉が、動かなくて、出てこないの。
先には、進めない。
ああ、情けないよ。塚ちゃん、本当に私もつらい…。
もう一度、塚ちゃんの笑顔が見たいよ。
見上げた空は、かすかににじんだ灰色の雲。
まるで、私の心をそのまま写し取ったよう。
ポタ…。
しずくが一滴落ちて、スカートの色を変える。
私の心も空も、
雨模様みたいだね…。
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