複雑・ファジー小説

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 殺戮 は  快楽 で  最新話保留解禁
日時: 2012/07/21 16:38
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: P4ybYhOB)
参照: 真っ暗闇の 街灯に照らされる君の 僕は土台さ

 ——人なんて脆いもの、誰かが壊さなくちゃいけないんだよ。その役割を僕が担うだけ。
 
 そうだ、賭けよう。僕が勝つか君が勝つか。

 僕が勝ったら。ねぇ、君を殺しても、いいですか?
 僕が負けたら。さぁ、僕を殺しても、いいですよ?

   殺戮主義だなんて言わないでよ。
    僕に主義はない。
     ただ『殺戮』は『快楽』なだけさ。




■特殊性癖保有キャラクタ募集中「>>064


□観覧して下さった神々しい方々

*風猫様(能力物の小説を執筆されている古参のお姉様! 凄腕作者様で御座います!)
*ゼンアク様(複ファジで活動している新人作者様! 個人的に、今後執筆を続けていくと凄い化けそうな気がします!)
*狒牙様(能力系小説の執筆に長けている作者様! 独特の雰囲気が柚子は大好きです!)
*風山 なつき様(柚子のリアルの友達殿! 地味にいい味出してるお方です)
*秋桜様(複ファジで活動している読み手&書き手様! 面白い小説を書いています)
*たろす@様(複ファジで小説を書かれている書き手様! 小説の世界観がすごいです!)
*檜原武甲様(凄い方! そうとしか表現できませぬ! バトル小説好きな方にお勧め!)
*白波様(百合に嵌ってきたという作者様! 描写が秀逸でございます!)
*水月様(王道ファンタジーを書いていらっしゃる作者様!)
*日向様(柚子の小説を鑑定してくださった方! 観察眼が素晴らしいです!)

*ステ虎様(複ファジでラノベ風小説を書いていらっしゃる有名な方! 皆様ご一読あれ!)
*愛河 姫奈様(リク板で面白い質問スレを行っている方! コメディで執筆してます!)
*藤桜様()
*刹那様(小説鑑定をしてくれた方! 書いている小説は面白いです!)
*ガムキャンディ様(オリキャラをくださいました! 小説を書かれている書き手様!)
*飛鳥様(コメディと複ファジで執筆をなさっている書き手様! この方の作品をお読みになって!)

ただいま『16』名のお客様!
こんなに来て頂いていいのかしらん^p^


□能力持ちキャラたち(影人)
>>009」高木 新羅/黄金の鷹眼/学生・影人守−−狒牙様に頂きました!
>>014」フルリナ・ミタージュ/恋傷勇気/学生−−秋桜様に頂きました!
>>016」荒瀬 芥/盲目の正義/便利屋・影人(?)−−たろす@様に頂きました!
>>020」焔 信二/爆撃の感情/フリーター・影人−−風猫様に頂きました!
>>034」真中 公平/下上対反/何でも屋−−檜原武甲様に頂きました!
>>036」ルエ・ハーミア/聖なる力/高校生・影人−−水月様に頂きました!


□特殊性癖持ちキャラたち(陽人)
>>073」知君 全知/タイラント/天然+ドジ/警官・陽人−−狒牙様に頂きました!
>>076」明蓮寺 美夜/全植物操/死体愛好/小学生・陽人−−秋桜様に頂きました!
>>086」朝森 美鶴/知の芸術品/殺人衝動/医者・陽人−−ガムキャンディ様に頂きました!


□頂きもの
>>083」 木月奏 − 柚子の姉作

□挨拶
どうも、柚子です。
挨拶が苦手でたまりません!

楽しんでいっていただければ、幸い!


□るーる。
*荒らしバイバイ。中傷バイバイ。宣伝どーぞ。
*更新は蝸牛といい勝負!
*駄作です。神文求むかたはバイバイ。
*グロ表現多数。お気をつけて
*微エロ表現多数。お気をつけて
*能力(アビリティ)多数。お気をつけて
*厨二表現少数。お気をつけて


□めにう
第一幕
序章『影人に』
>>001
第一章
第一話『なんちゃって高校生?』
>>003」「>>007」「>>013」「>>026」「>>029」「>>033

第二話『犬と伊野塚と映像と』
>>044」「>>045」「>>056」「>>057

第三話 『儚く散る死相と思想』
>>059

第五話『最後の日常』
>>073」「>>074」「>>079」「>>080

第六話『今晩時刻午後九時半』
>>084」「>>088」「>>091」「>>092」「>>095」「>>096」「>>098

第七話『作戦実行献灯君』
>>100」「>>103」「>>104」「>>105

□記念シリーズ
参照100突破記念『煌く木暮と輝く夕日』
*高木新羅視点「>>019
参照200突破記念『アイスを買うだけ』
*荒瀬芥メイン視点「>>043
参照300突破記念『スイーツ男子を目指して』
*木月奏視点「>>046

*記念番外編『BAD*END』(不思議の国のアリスモチーフ)
Part1 「>>082
Part2 「>>099


□ちょっとしたシリーズ
ちょっとしたキャラ紹介『1』「>>002
ちょっとしたキャラ紹介『2』「>>021
ちょっとしたキャラ紹介『3』「>>085

ちょっとした語句説明『1』「>>006
ちょっとした語句説明『2』「>>」


□お知らせ
02月08日シリダクから複ファジへ移転。
元「殺しても、いいですか? 能力の無差別乱用いいでしょう?」

□更新履歴
スレ建て日。2012年02月07日
スレ移転日。2012年02月08日

2012年02月11日 − 参照100突破
2012年02月18日 − 参照225突破
2012年02月22日 − 参照300突破
2012年02月29日 − 参照400突破
2012年03月11日 − 参照500突破
2012年03月17日 − 参照600突破
2012年03月23日 − 参照700突破
2012年03月28日 − 参照800突破
2012年05月26日 − 参照930突破
2012年06月03日 − 参照1000突破!
2012年06月24日 − 参照1100突破 返信100突破

Re:   殺戮 は  快楽 で ...... ( No.1 )
日時: 2012/03/30 19:57
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: vQ/ewclL)
参照: 良小説探しに嵌る今日この頃。

第一幕
序章『影人に』

 ——ハァッ、ハァッ
 暗い闇の中に誰のものか分からない荒い息が響く。こんな夜更けにトレーニングでもしている様を思わせるこの息を目印にしている二人がいた。

「影人」
「あぁ、ちゃーんと見つけてるから心配しないでくれよ」

 “影人”と呼ばれた男が、獲物を見つけた獣同様舌なめずりをする。影人の目は血走っており、じょじょに息も荒々しいものに変化していく。二人が狙っている獲物は高いビル群の間の狭く細い路地にいた。このビル群、元はホームレスの巣であったが現在(いま)はヤクの受け渡し場と変わっていた。

「影人、二人目」
「うっさいな……。まぁ、見えてなかったから有り難いんだけど」

 よいしょ、と団塊世代の人間が口に出しそうな決まり文句を穿きながら影人は高層ビルの屋上で胡坐をかく。先程から『影人』と呟いていた女はその横でじっと獲物を見つめていた。二人がいる高層ビルの高さは約168メートルくらいである。地上にいるよりも風が強く冷たいため、この高さから銃を撃とうとするならば防寒手袋が必須だ。だが、この二人は普段着を思わせる服装をして寒さを感じていないという雰囲気を漂わせる。

「影人、逝きましょう」
「ああ、逝ってきます」

 そういうと、影人は両手を大きく広げ、躊躇なく屋上から飛び降りる。すぐに影人は、暗い静かな闇に溶け込んでいった。重力で引っ張られ続けている影人の体は延々と加速が続く。着ている服もバタバタと風で波打っていた。下から吹き上げる強い風を物ともせずに影人は屋上から見た路地をじっと見つめる。中に白いスーツを着た男が入っていったのだ。

「よっ!」

 カツン! と革靴が大きな音を響かせる。相当な勢いが付いていたためだった。影人は地面につくが早いがビジネスマンのように革靴の音を鳴らしながら暗い路地へ迫っていった。

『影人』

 耳に女の声が響き、影人は足を止める。薄っすらとたち込めて来た靄の影響で視界が段々と白く変わっていく。
 終には7メートル先をみるのが精一杯になるほどだ。

『上からお許しが出たわ。どうぞ、好きなように“壊して”』
「……りょーかい」
『あら? 嬉しくないのかしら?』
「壊し方考えてんだよ、うるさい」

 通信を一方的に切ると口元を緩ませにこやかな笑みを浮かばせる。軽い足取りで影人が向かうのはあの路地。影人は路地が好きだった。黒く細く、誰も気にも留めない路地で獲物を殺しても見つからなく、見つける人もいない。その獲物の死を知っているのは自分だけ……。そう考えると体の底からじんわり、じんわりと快感の渦が湧き上がってくる。その獲物の数も多ければ多いほど影人の快楽を深くしていった。

「ねぇ」

 路地の目の前まで歩いてきた影人は路地に向かって問い掛ける。影人は誰かが自分を見ているのを感じ、再度口を開く。

「君達の壊し方、考え付いたんだ」

 コツ、コツと靴を鳴らしながら路地を進む。狭い路地に置かれている細いパイプを見ると影人が笑顔を浮べた。

「ぐちゃぐちゃの、ばらばら死体なんてどう?」

 ヤクの取引をしている二人の目の前に立ち、営業スマイルで言う。売人は瞬時に笑顔の影人にガンを飛ばした。対照的だったのは、着ている服から見てコンビニ店員。ネームプレートに書かれた『研修中 献灯 望(けんとう のぞむ)』という名前を、影人は一秒と立てずに、暗記した。恐怖で口をパクパクさせるコンビニ店員に、影人は鯉みたい、と笑ってみせた。

「なぁ、にーちゃん」
「ねぇ、おじさん」

 売人と同じような物言いで相手を挑発していく。売人がヤクザものなら面倒臭い奴が多いと踏んでの行動だった。その二人の様子をプルプルと小型犬のように震えるコンビニの店員が見る。

「バイバイ」
「な゛っ……!?」

 言葉を紡ごうとした売人の左胸を容赦なく何かが貫く。それは銀色の刺身包丁のようなものだった。影人にビチャビチャと男の返り血が沢山付く。影人はそれを愛しいというようにうっとりとした恍惚の表情で見る。それからはもう嬲り殺しのようなものだった。一度心臓に刺した刃物で、今度は男の指を一本一本切り落していく。そのたびに影人は恍惚の表情を浮べるのだ。

「まだ続きだけど……。次はおにーさんね?」

 うっとりとした表情のまま、店員に近付いていく。店員は震え、へたり込んでいた体を無理に立たせ、路地から走り逃げようとする。その行動に笑顔を見せていた影人が虫でも見るかの様な表情を浮べる。

「殺す……。快楽主義(ワール・ド・エンド)で、死ね」

 店員の後姿にそう言うと、影人は面倒臭そうに店員とは反対側へ歩いていく。後ろを振り向いた店員は影人が消えたことに笑顔を見せる。そして心の中で『勝った!』と大きくガッツポーズをしたのも束の間、店員は体の節々から血を噴出しバタリとまるでアニメのように倒れる。店員の最後の言葉は、誰にも聞こえなかった。その「気持ちいい」という呟きは……。

Re:   殺戮 は  快楽 で ......『序章更新』 ( No.2 )
日時: 2012/02/08 17:12
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: bJXJ0uEo)
参照: 良小説探しに嵌る今日この頃。

□ちょっとしたキャラ紹介『1』


「サンプルボイス」
キャラクタ名【】
読み【】
性別【】
年齢【】
性格【】
容姿【】
身長【】
体重【】
能力【】
職業【】
備考【】



「人なんて脆いもの、壊して罪に問われるんですか?」

キャラクタ名【木月 奏】
読み【きづき かなで】
性別【男】
年齢【17歳】
性格【裏/歪んでる。危険思想の持ち主で、快楽を殺戮から得る。表/優しくて爽やか。】
容姿【黒の短髪で、目は灰色。黒ブチ眼鏡をかけている。ワイシャツに黒のベスト、黒のだぼついたズボンを着用。】
身長【178】
体重【64】
能力【快楽主義/ワールドエンド】
職業【高校生/影人】
備考【表/ごく普通の進学校生。裏/殺戮を繰り返し行う影人】



「貴方は大事な影人なの。影人守のいないところで暴れないでもらえる?」

キャラクタ名【山中 ヨミ】
読み【やまなか よみ】
性別【女】
年齢【16】
性格【表/大人しく誠実。人当たりがいい。裏/冷めている。奏と同じく危険思想を持っている。】
容姿【赤茶色の髪のツインテール。ゴムは黒。オーバーオールを着てることが多い。目は黒。】
身長【163】
体重【47】
能力【最後の守り/ラストエディション】
職業【高校生/影人守】
備考【表/普通の進学校生。裏/影人を守る影人守をしている】



「全があるから一がある。一があるから全があるんですよ」
キャラクタ名【伊野塚 圭二】
読み【いのづか けいじ】
性別【男】
年齢【27歳】
性格【客観的に物事を考える。頭の回転が速く落ち着きがある。】
容姿【ラフなTシャツに大き目のベージュのパンツにサンダルを履いて、白衣を羽織っている。黒髪黒目。
   耳にはピアスを、左手の小指にはベビーリングをつけている。イケメン。】
身長【187】
体重【73】
能力【強欲の糸/レイテンス・目先の情報/アイビル・データ】
職業【小学校保険医/影人の長】
備考【】



「……俺が口にすることは、一つもない」
キャラクタ名【三日月 上弦】
読み【みかづき じょうげん】
性別【男】
年齢【20歳】
性格【大人しく、無口。無鉄砲で無謀な事を好む。】
容姿【黒髪碧眼の左分け。身長が高く細身。黒い服を好んで着ている。】
身長【185】
体重【65】
能力【暴飲暴食/ワイルド・イーター】
職業【専門学校生/影人幹部】
備考【下弦は双子の弟】



「テクは俺より兄さんのほうが上かな? 
 まぁ、それ以外の人よりは俺のほうがテク、上だと思うけど」
キャラクタ名【三日月 下弦】
読み【みかづき げげん】
性別【男】
年齢【20歳】
性格【活発でよく喋る。計画的で慎重に行動する。】
容姿【黒髪紅眼で右分け。身長が高く細身。白い服を好んで着ている。】
身長【185】
体重【65】
能力【大胆欠落/コーリング・ネスト】
職業【専門学生/影人守幹部】
備考【上弦は双子の兄】

Re:   殺戮 は  快楽 で ......『序章/人説明更新』 ( No.3 )
日時: 2012/02/08 18:42
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: bJXJ0uEo)
参照: 脳内うふふ状態なう。

第一章
第一話『なんちゃって高校生?』

 影人が人を壊してから数時間で夜が明けた。
 現在の時刻はAM7:49。学生が起きるには少々遅い時間に、少年は目覚めた。目が覚めた少年が真っ先に行ったのは普通の人なら行わないであろうゲーム機の電源を入れる、というものだった。コントローラーを持ってキャラクタを操作するわけではなく、ただ電源をいれゲームのスタート画面を意味も無くテレビ画面に映し出していた。つまらないBGMが鳴り響く部屋の中で、少年はベッドから転げ落ち、服を無造作に詰め込んでいるクローゼットへ向かう。彼が出たベッドから見え隠れしていたのは誰のものとも分からない謎の大量の血液だった。

「影人守、僕のベッドから出て行ってくれない? こんな朝早く目を覚ますつもりじゃなかったんだけど?」
「あら。影人は欲望のままに盛ってたくせによく言うわね」

 げんなりとした表情を鏡で確認しながら影人は呟く。それにすぐさま応戦するように返事をしてくる影人守に、影人は朝から無駄に疲れているような感じがした。シュッとネクタイ同士がすれる音を心地よく響かせながら、影人はテレビの電源をつける。真っ先にテレビに映し出された文字は『昨夜未明、影人による犯行と思われる変死体発見』だった。

「わお」
「……影人」

 有名人気分で変な声を出す影人に、影人守は呆れる事しか出来なくなっていた。それを気にせずに食い入るようにテレビを見る影人の後ろから影人守もテレビの中で必死に原稿を読み上げる女性キャスターを凝視する。キャスターはVTRの映像を交えながら、一定のペースを乱すことなく文章を読み続ける。それが現代のアニメっ子たちには耐え切る事の出来ない苦痛なのだろう。

『昨夜未明、由苅町五番の路地で変死体が二つ発見されました。一つは左手の指が何本も削ぎ落とされているもの、もう一つは血塗れで体全体が青白くなっているものだそうです。死体の状況から考えて、死後数時間は経っているようです。
 警務署では影人の犯行と見て捜査を進めていく方針です』

 現場の映像が映し出されていた画面が瞬間的に和やかな子犬たちの映像へと切り替わる。その画面を放置したまま影人は明るい木漏れ日が射し込めるリビングへと移動する。影人に続いて影人守の少女もショートパンツだけを身に纏った状態でリビングへ移動する。リビングのテーブルには二人分の朝食が、リビングのソファには見慣れない白衣を着た男が座っていた。

「やぁ、お二人さん。派手にやってくれちゃってもう……」
「誰」
「影人! この方は私たちの長でしょう!」

 中々のイケメンハスキーボイスをもつ見知らぬ変な男に声を掛けられたのだから、こう返事をするのが当たり前だという風な顔で影人守をジッと横目で見る。その影人に影人守はなんの反応も見せずに、気を付けをした状態で白衣の男を見つめていた。影人守が浮べていた表情には恐怖と緊張が滲み出ているのが分かった。

「ヨミちゃんに、奏くん。君らの本業は学生だろう? それなら朝食を早く食べて学校に行きなさい。遅刻をして、補修を受けたり叱られたりするようだったら一週間程度謹慎処分を言いつけるよ」

 先程の柔らかい口調とは打って変わって、鋭く突き放すように言葉を紡いだ。影人守であるヨミは素直に「はい、申し訳ありませんっ」と言い、テーブルに用意された朝食を上半身裸のまま食べ始める。そんなヨミの行動を見て食欲が失せたのか奏は眉間に深いしわを作り、テレビをつけっ放しにしていた寝室へと戻っていった。白衣の男は、まぁ仕方が無いか、と言う様にクスッと笑い、立ち上がる。彼が座っていたソファの一部分は大きな重りがなくなったため、ゆっくりと元々の形に戻っていった。

「ヨミちゃん、私はもう仕事に行くから遅刻しないように君たちも行くんだよ」
「ふぁいっ」

 マーガリンがたっぷりと塗られた食パンを頬張りながら返事をするヨミに小さく微笑む。土足厳禁の室内でサンダルを履いている男に一瞬怪訝そうな表情を見せるも、ヨミも社交辞令と言わんばかりにニッコリと微笑んだ。ヨミの笑顔を見ると安心したのか、男はマイペースにベランダへ向かい、外に出ると17階建てマンションのベランダからなんの迷いも無く飛び降りた。普通の人であれば、知り合いがベランダから飛び降りたとなると何事かと思い直ぐにそのベランダから地面を見るのだろう。だが、ヨミはそのような行為は一切せずに、開け放しのベランダを閉めに行っただけだった。

「かげび……じゃなくて奏。私の制服を取ってくれないかしら」
「ヨミ。俺はさ、もう登校しようと思っているんだ」
「奇遇ね、私もよ」

 ニッコリと微笑んでいるのであろうヨミの表情が寝室にいる奏には手に取るように分かった。

「上裸で、しかもBかC程度の胸しかない女に俺は命令されたくないんだけどなぁ……」
「貧乳はステータスって言葉、知らないのかしら?」
「………。ベッドに出してるよ」

 そう言うと、奏は寝室にある大きな窓からあの白衣の男を同じように飛び出した。ビュウッと風を切る音を耳にしながらヨミは静かにコーヒーを飲んでいた。


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