複雑・ファジー小説

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たか☆たか★パニック(松浦鷹史くん・武藤なみこちゃんCV)
日時: 2013/04/11 17:11
名前: ゆかむらさき (ID: E/MH/oGD)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

 ※たか☆たか★パニック〜ひと塾の経験〜を読んでくださる読者様へ
 この物語はコメディーよりの恋愛物語なのですが 性的に刺激的な文章が処々含まれております。
 12歳以下、または苦手な方はご遠慮頂く事をお勧めいたします。


 ☆あらすじ★
 冴えない女子中学生が体験するラブ・パラダイス。舞台はなんとお母さんに無理やり通わせられる事となってしまった“塾”である。 
『あの子が欲しい!』彼女を巡り、2人の男“たか”が火花を散らす!


 視点変更、裏ストーリー、凝ったキャラクター紹介などを織り交ぜた、そして“塾”を舞台にしてしまったニュータイプな恋愛ストーリーです!
 読者の方を飽きさせない自信はあります。
 楽しんで頂けると嬉しいです。


 ☆ドキドキ塾日記(目次)★
  >>1 宣伝文(秋原かざや様・作)
  >>2 はじめに『情けなさすぎる主人公』
  >>3 イメージソング
 塾1日目(主人公・武藤なみこちゃん)
  >>4-5 『塾になんかに行きたくない!』
  >>6-7 『いざ!出陣!』
  >>8 『夢にオチそう』
 塾1日目(主人公・松浦鷹史くん)
  >>9-10 『忍び寄る疫病神』
  >>11-12 『もの好き男の宣戦布告!?』
 塾2日目(主人公・武藤なみこちゃん)
  >>14-15 『初めての恋、そして初めての……』
  >>16-17 『王子様の暴走』
  >>18-19 『狙われちゃったくちびる』
  >>20-21 『なんてったって……バージン』
 塾3日目(主人公・武藤なみこちゃん)
  >>22-23 『キライ同士』
  >>24 『怪し過ぎ! 塾3階の部屋の謎』
  >>25-26 『一線越えのエスケープ』
  >>28 『美し過ぎるライバル』
 塾3日目(主人公・高樹純平くん)
  >>29 『女泣かせの色男』
  >>30-31 『恋に障害はつきもの!?』
  >>32-34 『歪んだ正義』
 塾3日目(主人公・武藤なみこちゃん)
  >>35-37 『ピンチ! IN THE BUS』
  >>41 『日曜日のあたしは誰のもの?』
  >>42-44 キャラクター紹介
  >>45-47 >>48 キャラクターイラスト(ゆかむらさき・作)
  >>49 >>50 キャラクターイラスト(ステ虎さん・作)
  >>102 キャラクターイラスト(秋原かざや様・作)
 日曜日(主人公・武藤なみこちゃん)
  >>51 『祝・ドキドキ初デート』
  >>52 『遅刻した罰は……みんなの見てる前で……』
  >>53 『少女漫画風ロマンチック』
  >>54-55 『ギャグ漫画風(?)ロマンチック』
  >>56 『ポケットの中に隠された愛情と……欲望』
  >>59 >>61-65 >>68-69 たか☆たか★“裏ストーリー”第1章(主人公・松浦鷹史くん)
 日曜日(主人公・松浦鷹史くん)
  >>70 『残され者の足掻き(あがき)』
 日曜日(主人公・武藤なみこちゃん)
  >>74-78 『王子様のお宅訪問レポート』
 日曜日(主人公・松浦鷹史くん)
  >>79-80 『拳銃(胸)に込めたままの弾(想い)』
  >>81 『本当はずっと……』
 日曜日(主人公・武藤なみこちゃん)
  >>82-83 『闇の中の侍』
  >>84-85 『こんな娘でごめんなさい』
  >>86 『バスタオルで守り抜け!!』
  >>87-89 『裸の一本勝負』
  >>90-91 『繋がった真実』
  >>92-96 インタビュー(松浦鷹史くん・高樹純平くん・武藤なみこちゃん・蒲池五郎先生・黒岩大作先輩)
  >>97 宣伝文(日向様・作)
  >>98 キャラクター紹介(モンブラン様・作)
  >>99 たか☆たか★“裏ストーリー”(主人公・高樹純平くん)
 日曜日(主人公・高樹純平くん)
  >>106 『もう誰にも渡さない』
  >>114 たか☆たか★(松浦鷹史くんCV・トレモロ様)
  >>115 たか☆たか★(武藤なみこちゃんCV・月読愛様)

Re: たか☆たか★パニック〜ひと塾の経験〜(恋愛バトル!) ( No.40 )
日時: 2012/11/18 15:59
名前: ゆかむらさき (ID: ocKOq3Od)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

悠さん>
ありがとうございます^^ 頑張ります……っていうか、頑張ってます(笑)

文章の初めから、只今描写を増やす作業と、鑑定で多くの鑑定士様に指摘を頂いた、改行の仕方を修整中です。
もう一度読まれると、「おお……」ってなるかもです。

お気づきだとは思いますが、サブタイトルも付けました♪

これからもよろしくお願いします^^

日曜日のあたしは誰のもの? ( No.41 )
日時: 2012/11/19 14:57
名前: ゆかむらさき (ID: ocKOq3Od)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

「——と、すみません! 遅くなりました! 中の方で少々取りこんでおりまして……すぐに送ります!
 保護者の方には連絡をしてありますので、安心してください」
 蒲池先生は息を切らしながら、あたし達に申し訳なさそうに頭を下げてバスに乗り、エンジンを掛けた。
「では、出発しますね」
 そしていつもより30分程遅れてバスが動き出した。
 信号待ちをしている時に手でトントンと叩くハンドル。いつもよりも力の込められている発進する時のギアチェンジ。地肌の見える後頭部から吹き出ている油汗。焦ってはいる様だけど、きちんとスピード制限を守って安全運転であたし達を家まで送り届けようとしてくれている。蒲池先生は大変だ。塾の先生だけではなく、わざわざあたしと松浦くんたった2人だけの為にバスの運転手もしているのだから————
(今度、お礼に何かあげたいな……)
「————ねぇ、松浦くん……」
 あたしは隣に座っている彼の腕に軽く指をつついて聞いてみた。


「は? 蒲池の喜びそうなもの? そりゃ……髪の毛じゃねぇの?」
 やっぱり松浦くんなんかに聞くんじゃなかった……。この人は“人への感謝の気持ち”というものがないのか、ふざけた答えが返ってきた。
(もういい。あたしひとりで考える……)
 あたしは、ほっぺたを膨らませて窓の外を見た。
「おい、なみこ。そんな事より今度の模試……もうすぐだけど大丈夫なのか? おまえの母さんから聞ーたけど、英語が相当苦手らしーな……」
 そのまま松浦くんはわざと声のボリュームを上げて先生に聞こえる様に話した。
「塾に入って初めての試験で、いー結果が出せたら……それが一番蒲池喜ぶと思うぜ! おまえの母さんもな。————カタチのあるものだけが“プレゼント”とは限らねぇよ」
 カバンの中から出したチューイングガムを口の中に入れながら話す松浦くんの言葉が、あたしのほっぺたの空気を抜いていく。松浦くんの傍にいると、今までは冷気だけしか伝わってこなかったけれど、今は不思議と……微かにだけれども温かさを感じる。ただ単に先生がかけてくれた暖房が効いてきただけなのかもしれないけれど————


 窓の外に向けていた視線を松浦くんのムースで固くセットされたツンツンヘアに変え、ボーっと眺めていたら信号が赤になり、バスが止まった。
 運転席の蒲池先生がシートから顔を出して、にっこりとあたしに微笑み掛けてきた。
 隣で松浦くんが少し恥ずかしそうに顔を背け、「暑っちー」と言って手の平で顔をあおいでいる。
 そんな彼に、
「……そうだね」
 ————とは言ったものの、よく考えてみたらあたしは勉強の仕方すら分からない。(ちなみに前回の英語の模試の点数は100点満点中12点……とヒサンな結果だったし)


「……俺が教えてやっても、いいぜ」


「え?」
(い、今、この人……何て、言ったの?)
 向こうを向いたままではっきりとは聞こえなかったけれど、松浦くんが突然信じられない事を言い出した。
 聞き間違えたかと思い、あたしはもう一度聞き返した。
「ねぇ、あたしバカだよ? こんなあたしなんかにに……本当に教えてくれるの?」


 信号が青になり、再びバスが動き出した。
「——プッ。そんな事、ずっと前から分かってるって。英語なんて、俺にかかれば一日漬けで6、70点アップは、あたりまえ」
(6、70点アップ……)
「仕方ねぇな。蒲池とおまえの母さんだけじゃなく、おまえもついでだ。……喜ばせてやる」
 チューイングガムを風船にして膨らませながらだけど、彼はあたしに優しい言葉をくれた。


 急カーブに差し掛かり、バスが少し傾いた。あたしの心も一緒に。
 松浦くんの腕があたしの肩にそっと触れ、心臓の音が再びさっきの様に騒ぎだす————
 今日松浦くんに強引にされた2回のキスを、今の言葉で許してあげる事にした。正直、高樹くんには悪いけれど、軽いキスだけならば、もう一回されても構わないかな? って……思ってしまうくらいに嬉しかった。


「……どうするんだ? ところでおまえは今度の日曜日……空いてンのか?」


 松浦くんはガムを噛みながらカバンの中から黒い皮張りの分厚いスケジュール帳を出し、あたしの顔をジッと見て言った。
(えっ……? に、日曜日!?)
 だって日曜日は……高樹くんとデートの約束の日。
 普段は塾以外のスケジュールなんてものはなく、スケジュール帳を持ち歩かないくらいのあたしなのに……。
 よりにもよって、今度の日曜日に2つの(しかも男の子との)約束が重なってしまう事になるなんて……思ってもみなかった。
「えっと……にっ、日曜日しか……ダメ?」
 あたしは手の平を擦り合わせながら松浦くんをチラリと見た。


「——ダメだ」


 彼はスケジュール帳を閉じてカバンにしまった。
「じゃ、この話はな無かった事に」
(どうして……?)


「悪ィな。俺だっていろいろと用事があンだよ。日曜日しか受けつけない。……残念だったな」


     ☆     ★     ☆


「はい、着きましたよ」
 あたしの家の前でバスは止まった。重たい気持ちのままで座席から腰を上げると、
「わたしも玄関まで一緒に行きます」
 きっと遅れた事のお詫びをするためだろう。多分お母さんはあたしの勉強の事だけしか心配していないだろうから、別にそこまでしなくたってもいいのに……と思うけれど、先生は車のハザードランプを点けて運転席から降りた。そして外から回り、スライドドアを開けてあたしの事を待ってくれている。


 日曜日の“臨時家庭教師(?)”の話を断ってから、結局、松浦くんとは一言も話をしなかった。
 断った理由は聞かれなかったけれど、もし聞かれたとしたら都合のいい嘘をついてごまかしていたかもしれなかった。彼に“は”高樹くんとのデートの事は話したくなかった。なんとなく……言わない方がいいのかと思ったのだ。 
 その日が日曜日じゃなかったとしたら、きっとお願いをしていただろう。(6、70点アップだったし)
 本当は————松浦くんの優しさを受け止めてあげたかった。


「…………」
 あたしは、せっかくの松浦くんの優しい気持ちを踏みにじっちゃったんだ————
 バスから降りたはいいものの、そのまま帰る気持ちになれなくて立ち止まっていた。
 先生は、どうしたらいいのかと困った顔をして、おでこに手を当ててオロオロしている。


「はやく帰れ! 先生待たしてんじゃねぇ、バカ!!」


 後ろから来た松浦くんに背中を押され、急かされた。彼にこんな扱いをされるのはいつもの事で慣れているはず。……なのに、さっきの優しい言葉をくれた彼が“本当の松浦くん”だと信じたい————
 松浦くんはあたしを睨み、舌打ちをして、自分の家に向かって歩いて行った。
「おやすみ……なさい……」
 あたしは小さく震えた声で言った。
(……あれ?)
 松浦くんは足を止めて振り向いた。……そして、何故かまたこっちに戻ってくる。
(どうしたんだろ……。あれ?)
 声だけではない。あたしの体も一緒に震えている————
 気が付くと、あたしの目からポロポロと涙がこぼれていた。
 今までは、松浦くんにどれだけ酷い事を言われても絶対泣かない、って心に決めていたのに……どうしてだろう……。彼の優しさを見てしまったからなのだろうか。
 こんな顔、見られたくなかったのに……。
 あたしは両手で顔を覆って隠した。
「——チッ! 何やってんだよ……。本当めんどくせぇ女だな!」
 今までとは違う……まるで壊れ物を扱うかの様に優しく————松浦くんに抱き締められた。
 彼に抱き締められたのに何故なのか今回は初めて鳥肌が立たなかった。
 あたし達の姿をチラチラと見ながら、先生はさっきよりも困った顔をして、赤く染まったおでこに手を当ててオロオロしている。


「————どうせ腹でもへったんだろ。はやく家帰ってメシ食って寝ろ。
 ……おやすみ」

たか☆たか★パニック〜ひと塾の経験〜【キャラクター紹介】 ( No.42 )
日時: 2012/11/19 15:04
名前: ゆかむらさき (ID: ocKOq3Od)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

 日曜日までは……あと僅か。
 決戦は日曜日。“学年トップの先生の臨時個人授業”か、それとも“キス付きのおうちデート(?)”か。
 ————さて、なみこちゃんはどちらの男の子と過ごす事になるのでしょう。


 ————そして気になる“北風と太陽”2人の男の子。


 1人は“北風”の男の子、松浦鷹史。14歳。AB型。
 あだ名は“ムッツリ”。(命名・冷やしトロ はぢめました。さん)
 原黒中学校に通う中学2年生。サッカー部所属。


 頭が抜群にきれ、成績はなんと全教科学年トップである。
 加えて容姿端麗。ワイルドなツンツンヘアで色黒で、右目の下のほくろがチャームポイント。
 かなりクールだが、キケンな魅力で女の子に非常にモテる。
 人付き合いは“広く、浅く”を心掛け、見事(一部の人を除き)周りからの印象はパーフェクト。
 しかしプライドがとても高く、絶対、人に自分の弱い所を見せたくない。自分の気持ちに素直になれないところで誤解を招き、損をしてしまっている。
 そんな彼は今だ一度も女の子と交際をした事が無い。恋愛小説を1人でコソコソ隠れて読んでいるくらいだから、“恋愛”とか“女の子の裸”とか“アレ”とか……には実はかなり興味があるらしい。馴れ馴れしく近付いてくる女の子は苦手で、逆に逃げる女の子を追い込む事にどうやら快感を感じる様だ。


 秘密だが、最近彼は毎晩ベッドで“誰か”の裸を頭の中に描きながら、まくらでキスの練習をしているらしい。


 そしてもう一人“太陽”の男の子、高樹純平。13歳。A型。
 あだ名は“両刀使い”。
 釜斗々中学校に通う中学2年生。バスケ部所属。


 男の子なのにサラサラと風になびく髪、長いまつ毛を持つ可愛らしい顔で、誰にでも優しく、ちょっとお茶目な所が多くの人達を惹きつける(癒す)そばかす王子。
 成績は理数系が特に優れており、性格の中にも計算高さが見られる。
 一見マジメそうだが、実はセレブな親を困らせるちょっとした問題児。可愛さの裏にチラリと見える大胆さに妖しい魅力を感じられ、女の子に非常にモテる。
 欲しいものを手に入れる為ならば、自分を犠牲にしてでも何だってするといった特攻隊精神な所が玉にキズ。
 手先が器用で驚く事に両利きらしい。
 趣味は何とも紳士らしい遊び“ビリヤード”。本人曰く、かなりの“テクニシャン”らしい(ビリヤードに限らず)。
 手先の事だけではなく、何に対しても要領が良く抜け目がない。
 今まで眠り続けていた恋心が最近になって目を覚まし、現在“その女の子”に熱烈な愛をアピールしている。


 これも秘密の話だが、塾への通り道の途中にあるドラッグ・ストアーで……すごい物を買ってきたらしい。

たか☆たか★パニック〜ひと塾の経験〜【キャラクター紹介】 ( No.43 )
日時: 2012/11/19 15:31
名前: ゆかむらさき (ID: ocKOq3Od)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

(ここは……どこ? ……ん? なに時代?)
 物音一つしない静かな夜の中。
 何百年も昔に造られた超豪華な日本風の宮殿の様な建物の中央のお庭に、あたしは何故か一人ポツンとたたずんでいた。
 何ともキレイに手入れの行き届いた広い庭。足元の小さな木製の掛け橋の下に広がる水の澄んだ池の中には、上品な紅白模様のニシキゴイが何匹か気持ち良さそうに泳いでいる。そんな事より————
(重ぉっ。……なにコレ)
 あたしはまるで雛人形のお姫様にでもなった様な何重にも重なった分厚い着物を着ている。
 ずりずりと、ひょっとしたらあたしの体重よりも重たいのかもしれない着物のすそを引きずりながら、“すのこ”でできた様なテラスに上った。
 手すりに掴まってふと上を見上げると、赤い月が妖しい光を放ち、あたしを照らしている。
 ————何か嫌な予感がする。生温かい風が化け物のうめき声の様なヘンな声をあげて耳をくすぐる。
 あたしは怖くなって、慌てて近くにある部屋へ飛び込んだ……つもりだったけれど、ふすまを開けた途端、足で着物のすそを踏ん付けて派手に転んでしまった。
(……痛いぃ)
 八畳くらいの広さの畳の部屋の中に、あたしは大の字の格好で倒れていた。
 鼻血は出てはいなかったけれど、思いっ切り打ちつけた低い鼻をヒクヒクとさせながら顔を上げ、ゆっくりと部屋の中を見渡した。和風アンティークな家具があちこちに置かれており、金の屏風が立っている。その屏風の奥に豪華な金色の大きな布団がチラリと見えた。
(いつの間にあたし、こんなにお金持ちのお嬢様になったんだろう……)
 着物が重たくてなかなか立つ事ができない。あたしはゆっくりと這いながら布団の上まで移動した。
(やわらかくってふわふわ……。なんだかホントにお姫様になっちゃったみたい……)
 布団の上にほっぺを付けたら眠たくなってきた。
 ここでこのまま寝ちゃっても大丈夫……なのかな……
 このおうちにはあたし以外誰も居ないのかな————


「——姫ッ!!」


「 !! 」
 ふすまの向こうから誰かの大きな声が聞こえた。 まるで誰かを探して呼んでいる様な————
 あたしはとっさに下に敷かれた布団の中に身を隠した……つもりが顔だけしか隠していなかった。
「ふふっ。それで隠れたつもりなの? ……出ておいで。ほら、僕だよ」
 それはどこかで聞いた事のある声だった。おそるおそる布団から顔を出すと、雛人形のお内裏様の様な格好をした高樹くんがあたしの隣で肘をついて寝そべっていた。
 彼は微笑みながら、なんだろう、あの不思議な形の……学校の歴史の授業に眠気覚ましのために落書きをしてしまった聖徳太子が写真の中で被っていた様な帽子を外して、あたしの手の指を絡ませて握ってきた。


「姫を待たせちゃうなんて、だめだな、僕。
 ……ごめんね。もうずっと……一緒だから、ね」


(何これ? もしかして、あたし高樹くんと……“お雛様ごっこ”して遊んでる……のかな?)
 高樹くんは優しくあたしの手の平にキスをして仰向けで横になっているあたしの上にまたいで膝をついた。
 ————ワケないじゃん!!
 心の中で1人でボケてツッコんでいる間に、彼は何重にも重なっているあたしの着物を慣れた手付きで次々と1枚ずつ脱がしていく————
(ちょっと待って! あたし……)
 重い着物を脱がされていく度に、体は少しずつ軽くなっていくけれど不安な気持ちがどんどんと重たくなっていく。
 浴衣の着付けもできないあたしが、結婚式で花嫁さんが羽織る様なこんな豪華な着物を裸の状態からきちんと元通りに着直す事ができるのだろうか……って、そんな事をのん気に心配している場合じゃない!!
(ううっ……。だって、あたし、まだ……心の準備が……)
 会ったばっかりなのに、いきなりこんな展開になるなんて思ってもみなかった。 
 真上にある高樹くんの顔が怖くて見れない。あたしは目をつむり、顔を横に向けて布団を掴んでギュっと握り締めた。


「りゃあああああ!!」


 ふすまを蹴り倒した様な大きな音と同時に、誰かがすごい声で叫びながら部屋に入ってきた。しかし、屏風に遮られていて入ってきた人の顔が見えない。
 高樹くんは解いていた腰紐から手を離し、サッと立ち上がった。そして枕元に置いていた刀を取って“さや”を抜き、あたしの前に立ち、構えた。
「くっ! やっぱり来たな……。
 ————“あいつ”だ」
 構えた剣先をキラッと光らせ、彼は右手を横に大きく伸ばしてあたしを守りながら呟く。
「姫。後ろの扉から……逃げて」
 振り向くと足元の辺りに、しゃがんで入れる位の小さな隠し扉があった。
「——はやく!」
 高樹くんは冷や汗を流しながら、あたしに微笑み掛けた。
(でも……ここであたしが逃げたら……。高樹くんは……高樹くんも一緒に逃げれるの……?)
 今あたしに見せたのが彼の最期の笑顔にしたくない。 
 いやな予感がする。彼は、きっと……あの人と戦う————


「姫は、どこだあああ!!」


 屏風を蹴り飛ばし、入ってきた“そのひと”は、あたしたちの前に姿を現した。
 まるで地獄の闇の底から這い上がってきたかの様な深紫色の着物を羽織り、顔に恐い鬼の面を付けている。そして……右手に不気味に光る、刀————
「ククク……。隠れてもムダだぜ……」
 面で隠れて顔は見えないけれど……その声はどこかで聞いた事のある男の声だった。
(やっぱりそうだ、この人は……!!)


「今ごろノコノコと戻ってきやがったか……。
 この女はな……もうすでに俺とビリヤードの関係なんだよ!」
(ビッ……ビリヤードォッ!?)


 鬼の面を付けた怪しい男はいやらしく高笑いをしながら、天井に向けて掲げた刀を思いっ切り力を込めて振り下ろした。

Re: たか☆たか★パニック〜ひと塾の経験〜(恋愛バトル!) ( No.44 )
日時: 2012/11/19 16:15
名前: ゆかむらさき (ID: ocKOq3Od)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

「やめてぇ—————ッッ!!
                 …………」


「 !! 」


 チュン……。
        チュン、チュン……。


 ————小鳥のさえずりが聞こえる。
(高樹くん……。鬼の人は……? んっ。——眩しっ!)
 気が付くと、あたしはオレンジ色のラグマットの上でうつ伏せになっていた。
 よだれを拭いてムクッと起き上がり、辺りを見回した。
 畳じゃなくフローリング。和風アンティークがカントリー調家具。金色の布団がパッチワークの布団が敷かれたベッド。
 あたしは重たい着物……ではなく、パジャマを着ていた。


 そして、もう一人……忘れてはいけない夢見る“旅人”。
 彼女の上着を脱がす為に“北風”と“太陽”が服……ではなく、理性を捨てて戦う……。


 “旅人”の女の子、武藤なみこ。14歳。A型。
 あだ名は“ギンガムチェック”。
 この物語の主人公。原黒中学校に通う中学2年生。陸上部所属。


 極度の人間アレルギー。 
 特に男の子に対してはいつも逃げ腰……な、はずなのに、ある日突然三角関係の頂点(標的?)のポジションとなってしまった。
 学力、友人、彼氏なし。おしゃれに目覚める年頃のはずなのに、寝癖もたいして気にならない程の無頓着なショートカットの天然パーマ。 
 決して美人とはお世辞でもいえない……ガキ。(身長138センチ)
 そんな彼女だが、現在、“天然ボケ”というミラクルな魅力で、本人も気が付かないうちに様々な男の子達を惑わせている。
 錯覚の様だが、確かに優しい心を持つ純粋な彼女の前向きに頑張る姿は健気で可愛らしい……のかもしれない。
 しかし人をすぐ信じてしまうという傾向があり、非常に騙されやすく、優柔不断でガードが甘い。
 やはり彼女には優秀なボディーガードが必要らしい。————誰か、立候補してくださる方がいらっしゃれば、ご連絡を。


 もうすでに多くの人に知られている情報ではあるが……現在、彼女は……“処女”らしい。


 “北風と太陽”には全く関係ない人物だが、もう一人……。
 “ガリバー旅行記”の“ガリバー”。黒岩大作。15歳。B型。
 あだ名は“ゴリラブッチョ”。
 釜斗々中学校に通う中学3年生。元バスケ部部長。


 この物語の脇役のくせに、予想外の存在感……よくヤった。
 180センチを超える長身(超人)で、正直バスケよりもプロレスに向いているキャラクターである。
 “にきび”だらけのいかつい顔に、ソバージュのかかったロングヘア。恐い目付きにチラリと覗く八重歯。
 彼に目を付けられると逃げられないので要注意。
 人のズボンを脱がす事に快感を感じる最低最悪の怪物。
 以前、同じ部活だった後輩の“男の子”に、恋焦がれている。


 その後、彼は毎晩のように神社に出没し、ついに通報をされ、警察に捕まる事となる。————手には、わら人形とハサミを持っていたらしい。


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